J2リーグベストイレブンの勲章を手に数奇な運命に導かれて青赤へ
GK 1 田中颯
2026年の明治安田J1百年構想リーグに臨む全青赤戦士を紹介する『PLAYERS FILE 2026』。果たしてハーフシーズンの特別大会を控えた選手たちはどんな想いを抱き、いかなる覚悟で一年に臨もうとしているのだろうか。
昨シーズンのJ2リーグベストイレブンに選出された田中颯が徳島ヴォルティスから覚悟の移籍を決めた。彼が“師”として仰ぐのは、かつてFC東京の守護神として一時代を築き上げた土肥洋一氏。数奇な運命に導かれ、師匠と同じ背番号1を託された田中颯が青赤で見据える未来とは。

徳島ヴォルティスからのステップアップという言葉だけでは言い表せない数奇な運命に導かれ、田中颯が青赤のユニフォームに袖を通した。
「自分にとってはあの方の教えがすべて。ゴールキーパーのあり方、人としてのあり方も一から教えてもらった。あの方はFC東京のレジェンド。その名に恥じないよう、このクラブでしっかり活躍できるように頑張りたい」
田中が言う“あの方”とは、ドイツで行われたFIFAワールドカップ2006の日本代表メンバーで、FC東京でJ1リーグ通算230試合に出場した“鉄人”土肥洋一氏である。東京ヴェルディのジュニア時代から育成部門のゴールキーパーコーチだった土肥氏の指導を受け、今も師と仰ぐ存在。ゴールキーパーとしての考え方、プレースタイル、勝利への執念、守護神に欠かせぬエッセンスといった“青赤のレジェンド”の魂を受け継いで大きな成長を遂げた。
土肥が2001シーズンから7シーズンに渡って背負い続けた青赤の『背番号1』を託された田中は、「これ以上ない」と重圧を楽しむかのような不敵な笑みを浮かべる。重圧、緊張感が高まれば高まるほど、舞台が大きくなればなるほど、その自信は膨らみ、培ってきた実力を安定的に発揮できるという。
「メンタル面はジュニアの時から備わっていたものがあるので、ネガティブになることはない。自分のプレーを出せる自信はある。他のプレーヤーがネガティブになっているのを利用できるような感覚はずっと持っているので、J1リーグのより大きなスケールで試合ができるのは楽しみでしかない」
周囲が気後れするような場面さえも、田中にとっては絶好機に他ならない。その強心臓ぶりは、まさに“土肥譲り”と言えるだろう。
昨シーズンはJ2リーグでわずか三人しかいない全38試合フルタイム出場を果たした。失点数はリーグ最少となる24で、クリーンシート総数、ゴールキーパーのセーブ率はともに堂々の1位。文句なしでJ2リーグのベストイレブンに輝いた。圧倒的なシュートストップ力に加え、「攻撃にも関わっていけるのは自分の長所」と最後尾から攻撃の起点となるビルドアップ力も兼ね備え、松橋力蔵監督が掲げるスタイルとも合致する。
韓国代表のキム スンギュ、U-23日本代表の小林将天、U-20日本代表の後藤亘とのレギュラー争いでも一歩も引くつもりはない。「今は試合が待ち遠しい。本当に強い想いを持って、このクラブのタイトル獲得に貢献したいと思っている」と語る田中。
迷いはない。『背番号1』は自信に満ち、希望に溢れ、その胸は誰よりも高鳴っている。
(文中敬称略)
Text by 松岡祐司(中日スポーツ)



