就任2シーズン目を迎えた松橋力蔵監督。昨シーズンの積み上げを糧に、優勝を明確な目標に掲げた明治安田J1百年構想リーグをどのようなスタイルで臨もうとしているのか。そのために大切にしていかなければならないこと、そしてクリアしなければならない課題とは。
ビルドアップを武器とする両選手が、真の強さを手にするために求められることについて語り合った。

──2026シーズンのチームにはどんな変化が起きそうですか。
森重真人 2025シーズンは最終的には現実的な戦い方になってしまったと思っています。今シーズンはイナ(稲村隼翔)とかハシケン(橋本健人)が入ってきて、ボールを握れる選手が揃ったことでビルドアップがよりスムーズにいくと思うし、それが結果的に前線の個の能力を活かすことになると思う。昨シーズンで苦労した部分もあるけど、全体像はイメージできていて、足りないピースを補強できたと思う。ここからリキさん(松橋力蔵監督)のやりたいサッカーが洗練されて、チームとして表現できるようになっていくと思います。
稲村隼人 新加入選手で話すことが多いんですけど、「もっと強くなれるチームだよね」とよく話しています。選手の質はものすごく高いし、みんな素晴らしいものを持っている。だけど、それがなかなか噛み合っていない。それは外から見ていても、入ってみても感じたところです。昨シーズン、4バックに戻してからの守備の強さやカウンターの鋭さは東京の素晴らしさですし、そこは自分たちが入っても崩してはいけないと思っています。それにプラスして違う部分を出して、より前線の選手たちを活かせるプレーができれば優勝に近付くと思います。

──今シーズンに入って、松橋監督がより強調していることはありますか。
森重 後ろからのビルドアップをパスだけでなく個人でも剥がしていくところをより強調しているなと。パスで逃げるんじゃなくて、「一つ外した後に景色が変わる」という言葉はよく耳にします。
稲村 練習で“つながり”という言葉をよく監督が言っていて、モリくん(森重真人)が言ったように「パスだけじゃなく、個人で剥がすところも周りとつながってほしい」とアルビレックス新潟時代にも言っていました。ただ、そこはまだ東京も課題なのかなと思います。選手間の距離感もそうだし、意識的なところでもつながりができれば、もっとうまくボールが回ると思う。選手の質の高さも活かせると思っています。“つながり”と言われると、パスが回るところに意識がいきがちですが、リキさんは得点をとるためにどうしようかを考えている監督です。ロングパス一本で点を取ってもいいし、20本つないでも良いという監督なので。そういう意味でのつながりは強調していると思います。
──そうしたつながりを作っていくことは確かに課題だと思います。
稲村 みんな意外としゃべらないし、練習中、試合中、紅白戦でももっとコミュニケーションをとったほうが良いと感じました。ケンカをするわけではないので、もっと意見を伝えていいと思うし、要求し合って受け入れることもそう。それもつながりだと思う。年齢に関係なく言うことも大事だし、それこそスタッフと選手とのコミュニケーションももっとあって良いと思ったのが、実際に入ってみて感じたことでした。仲の良さじゃないですけど、しゃべればしゃべっただけプレー中の理解が深まっていく。チームメイトの考えていることがイメージできるし、そのためには日常からの会話が大事になると思います。みなさん優しいんですけど、黙々とやる選手が多いなと感じました。
森重 確かにそういうタイプはやっぱり少ないかもしれないね。
稲村 もっと若い選手たちも発言していいんじゃないかと感じました。もっと話すことで一体感みたいなものが生まれてくると思います。

──今シーズンは選手、スタッフ、クラブが優勝というキーワードを掲げています。それを成し遂げるために必要なことは何でしょうか。
森重 今、イナが言ったことがすべて。パスをつなぐためにとか、試合中のエラーを改善するには、その時々、その場その場でしゃべって解決しなければいけない。誰が何を考えているかはコミュニケーションをとっていかなければ分からない。誰がどんなもらい方をしたいのか、誰がどういうパスの出し方が得意なのか、ここにいたら絶対にパスをくれるとか。そういったつながりが見えれば自ずとパスは回る。そうなると、いちいち声にしなくても普段から話していれば、スッと動けるし、阿吽の呼吸も出てくる。そういう関係性をどんどん作っていかないと。最終的にフィニッシュの部分はクオリティが必要になるけど、このサッカーをする上ではすごく重要で、ある程度そこまでは作り上げることができる。その作業をみんなでやらないといけない。昨シーズンみたいに結果が出なくて途中で大きく方向転換するような形になってはいけないし、そこをどれだけ追求できるかだと思う。
稲村 東京は昔から見ていて、波があるチームだなと思っていました。すごく強い時はどこが相手でも東京のゲームになって勝っている。逆に、今日はどうしたんだろうという試合も多くありました。そういうゲームをなくさなければ、もったいない試合が増えてしまう。昨シーズンの鹿島アントラーズは調子が悪いとゲーム中に感じたら、割り切ってやれることをやろうというスタイルで勝負強く勝利を積み重ねていました。そういうことも大事になりますし、それもコミュニケーションあってのことだと思うんです。もちろん理想のサッカーがあって、選手たちも理想のプレーを追求していくなかで、どこかで割り切るところは必要になってきます。勝つために、チームのためにどう行動するかが大事なので、新加入選手ではありますけど、そういったところは自分も担っていきたいと思います。
──今シーズンに大きな期待を寄せているファン・サポーターの方々は多いと思います。最後にお二人から意気込みを聞かせてください。
森重 選手は揃ったと考えているので、あとは観ている人に喜んでもらえる結果を届けるだけです。しっかり勝って、笑顔で帰ってもらえる試合を増やしたいと思います。
稲村 勝ち続けて、自分が中学生の時に見ていた4万人くらい入って盛り上がる味の素スタジアムをピッチから見上げたいので、とにかく勝ち続けていきます。
(文中敬称略)
Text by 馬場康平(フリーライター)



