11/9 町田戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

INTERVIEW2025.11.09

11/9 町田戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW


<マッチレビュー>  

今節の2025明治安田J1リーグ第36節、そして来週末の天皇杯準決勝と続くFC町田ゼルビアとの連戦。東京としては過去三度の対戦で全敗を喫している相手でもあるが、まずは監督や選手たちも目の前の試合にフォーカスしており、今回のリーグ戦で勝利を収めて流れを変えて未来につなげていきたいところだ。

東京はゴールキーパーにキム スンギュ選手、最終ラインは右から長友佑都、アレクサンダー ショルツ、森重真人、室屋成の4選手が並ぶ布陣。ボランチは高宇洋選手と小泉慶選手がコンビを組み、アタッカーは右にマルコス ギリェルメ、左に俵積田晃太の両選手を配した。そして2トップには前節のファジアーノ岡山戦で2ゴール1アシストの活躍を見せた佐藤恵允選手、そして古巣対戦となる仲川輝人選手が入った。

また、町田の右ウイングバックに入ったのは、昨シーズンまで東京に在籍していた中村選手。味の素スタジアムでの前回対戦を欠場しており、今回が東京との初対戦となる。

今節はアウェイゲームながら国立競技場での開催、そしてSpecial Kitを身にまとって戦う特別企画のラストマッチ。一戦必勝の覚悟を固め、 “俺たちの国立”でアウェイ側スタンドを埋め尽くした青赤ファミリーとともに試合に臨んだ。

1stHALF—序盤は我慢の展開。突破口を探りつつ後半へ

試合は立ち上がりから町田のロングボールに押し込まれる時間が続く。セカンドボールを拾われることで自陣でのプレーが増え、奪ったボールをうまくつなげず、なかなか攻撃に転じることができない。前半10分には町田のハイプレスを受けて中盤でボールをロスト。中央から左サイドを崩されてゴール前でピンチを迎えたが、至近距離からのシュートをスンギュ選手がファインセーブ。危ないシーンをしのぎながら攻め手を探る展開となった。

その後も町田がマンツーマンディフェンスで東京の良さを消しにかかる。東京としては前節岡山戦のように4-4-2システムで生じる中央のスペースをうまく使いながら攻撃の形を作っていきたいところだが、町田がスペースと時間を潰してきたことで立ち位置を修正させてもらえず、狙いどおりの攻撃を構築することができない。


それでも前半25分には左サイドで俵積田選手、マルコス選手とつないだボールを高選手が鋭い縦パス。これが相手選手に当たったこぼれ球を佐藤選手が左足で狙ったが、これは惜しくもミートせずゴール右へ外れてしまう。

引き込んでのカウンターで少しずつチャンスを作るようになってきた東京。その後も鋭い速攻で打開をめざしていくが、相手の守備が堅いこともあって崩し切るには至らない。反対にハイプレスを受けて前を向けずに苦しむ場面が目立ち、前半は自陣から出られない時間が続いていく。

前半は2分間のアディショナルタイムでもスコアは動かず。チームとして相手のプレスをどうはがし、どこにズレを生じさせていくかという部分に課題を残してハーフタイムを迎えた。

2ndHALF—耐えて、つかんだ勝利。安斎選手の一撃で町田に初勝利

ハーフタイムはお互いに選手交代なし。前半と同じメンバーで後半キックオフを迎えた。

後半に入ってもなかなか展開は変わらない。マンツーマンディフェンスとハイプレスで持ち味を消しに来る町田に対し、引き込んでのロングカウンターで好機を見いだそうとする東京。

東京は前半からセカンドボールを拾う意識が高く、最後の最後で相手に決定機を作らせないようにする守備はできている。ただし、蹴られたあとへの対応をケアするあまり前線からのプレスがかからず、町田にボールを持たせすぎてしまっているところをどうしていくかが後半のポイントになりそうだ。

後半最初のビッグチャンスを迎えたのは町田。後半22分、左サイドからのクロスボールに昌子選手がドンピシャのタイミングでヘディングを合わせたが、これはわずかにゴール右へ。東京としてはヒヤリとしたシーンとなった。

ここで東京ベンチが動く。後半24分、仲川選手、マルコス選手に代えて野澤零温選手、安斎颯馬選手を投入。野澤選手は2トップの一角に、安斎選手は右アタッカーの位置に入った。

攻め込んだ状態から町田のパスワークに乱れが生じた後半32分、高い位置でボールを奪った野澤選手が、前に出てくる相手ゴールキーパーを見ながらガラ空きのゴールへ狙いすました右足ループ。だが、大観衆の目線を集めながら柔らかな軌道を描いたシュートは左ポストに弾かれ、絶好の得点機を逃してしまう。


後半37分には町田に崩されて大ピンチを迎えるが、ペナルティエリア内でのシュートにショルツ選手が滑り込んでブロック。さらにこぼれ球を狙われたところに小泉選手が身体を投げ出してシュートを阻み、チーム全体で懸命にゴールを守り抜いていく。

この気迫が攻撃陣に伝播する。試合終盤、後半42分のことだった。自陣から発動したカウンターで左サイドを突き、中央の高選手がダイレクトで前方の佐藤選手へ。このグラウンダーのパスをファーサイドで安斎選手が蹴り込み、東京が土壇場で先制ゴールを奪う。ゴールキーパーを弾き飛ばす強烈なシュート。気迫の守備でゴールを守り、狙っていたカウンターアタックからの意地の一撃でゴールにねじ込んで、東京がついにリードを奪った。

試合はこのまま1-0で東京が勝利。なかなか攻撃で持ち味を発揮させてもらえないなかで勝負強さを見せ、“4度目の正直”で町田から初勝利を奪取。翌週末に控える天皇杯準決勝に向けてはずみをつける勝利を手にした。

試合終了のホイッスルが鳴った直後、ゴール裏のファン・サポーターからは「カップを奪いとれ」の大声援が国立に響き続けていた。


MATCH DETAILS

<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK キム スンギュ
DF 室屋成/森重真人/長友佑都/アレクサンダー ショルツ
MF 高宇洋/俵積田晃太(後半40分:山下敬大)/小泉慶/マルコス ギリェルメ(後半24分:安斎颯馬)
FW 佐藤恵允(後半45+5分:山口太陽)/仲川輝人(後半24分:野澤零温)

SUBS
GK 波多野豪
DF 土肥幹太/エンリケ トレヴィザン/白井康介
MF 東慶悟

MANAGER
松橋力蔵

GOAL
後半42分:安斎颯馬

<FC町田ゼルビア>
STARTING Ⅺ
GK 谷晃生
DF ドレシェヴィッチ/昌子源/中山雄太
MF 望月ヘンリー海輝/前寛之(後半38分:下田北斗)/仙頭啓矢(後半18分:ナ サンホ)/中村帆高
FW 増山朝陽(後半45+2分:藤尾翔太)/相馬勇紀/オ セフン(後半38分:桑山侃士)

SUBS
GK 新井栄聡
DF 林幸多郎
MF 白崎凌兵/ネタ ラヴィ
FW 沼田駿也

MANAGER
黒田剛

GOAL


[松橋力蔵監督 インタビュー]


Q、試合の総括をお願いします。
A、本当に90分を通してお互い非常に難しいゲームだったと思います。最後にチャンスをモノにできて勝つことができたことは、非常にうれしく思っています。

Q、相手にかなり圧力を受けた試合になりましたが、センターバックの二人を中心によく跳ね返したと思います。そのあたりの監督の評価はいかがでしょうか。
A、これまでのゲームでは、そこからの失点というものを重ねてしまっていたなかで、時崎悠コーチを中心に守備のセッションを本当に数多く、この期間に繰り返し重ねてやってきました。その成果というものがしっかり出せたという部分が、このゲームの勝利に結びついているということは間違いないです。そこをどれだけ続けていけるかというところが、今後のゲームでもポイントになってくると思っています。

Q、安斎颯馬選手が最後にゴールを決めましたが、彼の起用タイミングや彼への期待、評価はいかがでしょうか。
A、本来は右サイドバックを主戦場として起用してきた選手ではありますが、攻撃力も非常に高く、前線からの守備力も兼ね備えた選手でもあるので、相手に対してのプレスがうまくいかなくて自陣に引き込まれるような状況が生まれる可能性もあることを考えれば、彼を一つ前のポジションで起用することで守備を安定させる意味でも、非常に大きな役割を果たしてくれる選手です。加えて、先ほども申し上げたとおり攻撃の部分でも、本当に思い切りの良い飛び出しであったり冷静さも持っているので、彼の力がこの短い時間でもしっかりと発揮されたことは非常にうれしく思いますし、大きいことだと思います。交代のタイミングというところは、かなりコーチたちとも話をしながら迷ったなかで、少し遅い時間という形にはなりましたが、相手の出方も見ながらだったというところです。

Q、この試合と同カード、同会場で次の天皇杯が組まれているという状況は難しさもあると思いますが、この試合の位置づけと、この結果を受けて次にどう繋げていきたいかを教えてください。
A、それはもうずいぶん前から分かっていることなので、いたってニュートラルな感じでいます。勝ったから難しい、負けたからもう1回チャレンジできるとか普通に考えればそういうことはあると思いますが、僕らは今日の課題というものをしっかり見据えて、また次の準備をします。お互いの強みというものや、相手の今日の動きであったり、おそらく相手による我々の分析への対策も含めて、普段のゲームの位置づけと同じように準備をするだけだと思っています。ただ、本当に大きなチャンスが目の前にあるので、次のゲームを勝つことによってまた新たな景色が見えると思うので、だからこそ次の一戦に対してはニュートラルに、いつもと同じように準備を進めていくだけだと思っています。


[選手インタビュー]

<安斎颯馬選手>


Q、まずはゴールシーンを振り返ってください。
A、佐藤恵允選手が抜け出した瞬間に自分の前にスペースが空いているのが見えて、あそこに入っていくのは、昨シーズンからやり続けていたことでしたし自分の役目でした。自分のゴールでチームの勝利に貢献できたことは良かったです。

Q、その前には、ディフェンス陣がブロックを重ねた後のチャンスでした。そこから自分の元にボールがつながってきた時の気持ちはどうでしたか。
A、簡単なシュートではありませんでしたが、自分の気持ちもそうですし、その前のピンチを全員で防いだ時の気持ちも乗っかったゴールでした。

Q、真っ先にゴール裏に向かって走っていきましたね。
A、身体が勝手にゴール裏に向かって動いていました。いろいろな想いがありつつ、最高の瞬間でした。

Q、相手の黒田監督は高校時代の恩師ですが、その前で成長した姿を見せられたのではないですか。
A、対FC町田ゼルビア戦に3連敗していて、自分は人一倍悔しい想いをしていたので、今日は一つ返すことができましたが、本当に返すのはここではないと思っています。来週は、今日よりも難しい試合が待っていると思いますし、気持ちはすでにそこに向かっています。また今日のような景色が見られるように、また一週間で準備していきたいと思います。

Q、ここ最近は練習試合に出場することも多かったなかで、良いアピールになったのではないですか。
A、自分自身としては、リーグ戦も含めて練習試合でも結果を出し続けていると思いますが、次にピッチに立つ機会があれば、自分に与えられた時間のなかで、今日のようにチームの勝利に貢献できるように頑張りたいと思います。

Q、今日勝ったことで、次の試合にどんな影響があると思いますか。
A、ロッカールームで長友佑都選手が言っていたのですが、この勝ちにより町田が気を引き締めることにつながっていると思うので、自分たちはそれ以上のパワーを出さないといけないと、みんなもすでにロッカーのなかで切り替えています。難しくなると思いますが、いろいろな局面に対応できるように準備していきたいと思います。


<佐藤恵允選手>


Q、試合を通していかがでしたか。
A、最近は東京らしさが出てきて、それを90分通して感じることができた試合だと個人的には感じました。90分を通して全員が身体を張って守り、攻撃では次々と追い越して、戦うチームということが、まだ一年目で東京らしさとか軽々しくは言えない立場だとは思いますが、それを感じました。魂が震えるものがありました。

Q、それを体現して、けん引していたのはまさにご自身のプレーや姿勢だったと思います。
A、少しでもチームが活気づくようなプレーを心がけていましたし、プレスもそうです。チームのためになるプレーをしようと心がけていましたし、それが東京らしさにつながっているのであればうれしいです。ただ、守備の選手たちも本当に何度もブロックしてくれていましたし、全選手がしっかり戻って身体を張って守っている姿を見て、自分も燃えるものがありました。そうやって一人ひとりがまわりを巻き込んでいる感じがして、やはり東京は良いチームだなと感じました。

Q、対面の選手に絶対負けないというフットボールの基本的なところでの強い気持ちを感じましたが、ご自身ではいかがでしたか。
A、今日は特に相手がほぼオールコートでのマンツーマンのような形だったので、対人での勝負というところはわかりやすかったと思いますし、1対1で負けなければ試合にも勝てるとピッチのなかでもわかっていました。90分を通して声を掛け合い、それを切らさず最後までやっていたから、それが最終的に終盤のゴールにつながったと思います。そこは執念というか、戦う姿勢を存分に出せたからこその勝利だと思います。

オールコートマンツーマンの相手に対してどうやってスペースを作り出してそこを使っていくのかという部分は、この一週間練習でやってきたものを前半はうまく出すことができなかったのですが、ピッチのなかでもああしたほうがいい、こうしたほうがいいと話し合って改善できた結果が、相手のハイプレスをかいくぐるキッカケにもなったと思います。多少は強引になったところもありましたが、それもひとつの手段として、一対一で来ている相手にシンプルに背後を取ってセカンドボールを拾うこともできましたし、そこは試合のなかで柔軟にできて良かったところだと思います。

Q、見事なアシストとなった安斎颯馬選手のゴールシーンを振り返ってください。
A、ハーフタイムで松橋力蔵監督から、セカンドボールだったりロングボールのこぼれ球を全員が拾いにいく姿勢をもっと出そうという話があって、それを心掛けて後半に臨んでいました。ロングボールが多い相手に対してはセカンドボールを拾えるかどうかがカギになるので、そういうところを意識し続けているなかで相手のエラーも増えて焦りもでてきたので、そこにうまくつけこむことができたと思います。切り替えのスピードで奪って、あそこはもう安斎選手がいるだろうな、と思っていました。見えてはいなかったんですが、彼ならそこにいるだろうなと思っていたし、前半にも俵積田晃太選手が入ってきていることを伝えてくれていたので、チームとして逆サイドから入ってきてくれるという信頼関係があるからこそゴールにつながったと思います。良いボールを出すことができて良かったです。

Q、次はまた同じ相手、同じ会場、そして絶対に勝ちたい試合ですが、どのように臨みますか。
A、今日は自分たちが勝って、相手は次は今日よりももっと強い意志で向かってくると思うので、受け身にならずに自分たちがチャレンジャーの気持ちで、またやるべきことをしっかりとみんなで追求したいです。今日出てきた課題もありますし、相手が今日とはやり方を変えてくるかもしれないので、そこはまたチームとして、ベースの部分は変えずにさらに上積みしてこの一週間で基準をもう一段階上げて、絶対に勝ちたいと思います。


<森重真人選手>


Q、試合の振り返りをお願いします。
A、堅い試合展開のなかで、先制したチームが勝利するような雰囲気がありました。今日の試合では、僕らがそのチャンスをしっかりと得点につなげられた試合だったと思います。

Q、前半から相手がマンツーマンディフェンスで圧をかけてくるような試合でしたが、ピッチではどのように感じていましたか。
A、相手は良い守備を仕掛けてきましたし、そのなかで繋ぐ意識ばかりになってしまうと、これまでのように良い結果に繋がらないケースも予想できていました。割り切ること、試合に勝つことから逆算したゲーム運びをここ数試合ではチームとして表現できていると思います。今日の試合も我慢強く、ワンチャンスを仕留めなければいけない展開でしたが、しぶとく勝利できたことは次につながると思います。

Q、相手のロングボールや我々の耐える時間が長くなることはある程度想定の範囲内だったのでしょうか。
A、ここまで耐える時間が長くなってしまうことは想定外でしたが、どのような試合展開になろうとも、相手の出方を見てプレーの選択ができるようにチームとして成長していると思います。今日の試合も“相手がこのようにくるから自分たちがどう戦うのか”という視点で、臨機応変に戦うことができたと思います。

Q、一週間後には同じ相手と天皇杯準決勝を戦います。
A、次の試合も大事であることは全員が分かっています。次も難しい展開が待っていると思うので、しっかりと回復して良い準備をしたいです。