<前節・サンフレッチェ広島戦のレビュー>
あと5試合となった今シーズンの明治安田J1リーグ。インターナショナルマッチウィーク明けの試合はアウェイ広島で行われる金曜開催のナイトゲーム。東京はSAMURAI BLUE(日本代表)帰りの長友佑都選手、韓国代表としてパラグアイ戦の完封勝利に貢献したキム スンギュ選手が再合流して試合に臨むことになった。

立ち上がりからサンフレッチェ広島のハイプレスを受けて攻撃の形を作り出せない時間が続いたが、全員が集中したプレーを見せて奮闘。球際のバトル、自陣ゴール前での身体を張った守備で相手に決定機を作らせないように立ち向かっていく。
スコアレスで迎えた後半立ち上がり、スンギュ選手が立て続けのファインセーブでゴールを守れば、後半11分には相手に押し込まれたところから守備陣が決定的なシュートを連続ブロック。気迫の守りで失点を許さない。

さらに後半30分には広島の迫力あるカウンターに対して、長友選手が背後をケアしながら対峙して並走したアタッカーのシュートを封じ込める見事な駆け引きでの守備を披露。続く、コーナーキックから合わせられたヘディングはスンギュ選手が抜群の反応で横っ飛びのスーパーセーブを見せ、日韓の代表選手が守備で魅せていく。
後半40分にはアカデミー出身の山口太陽選手が途中出場でプロデビュー。短い時間ながら前線で起点となるなど存在感を示した。
終盤は東京がポゼッションしながらカウンターを狙う攻撃で広島陣内へと攻め込んでいったが、オープンな展開になりながらもネットは揺らせず。攻撃面に課題を残しつつ、緊迫した展開を高い集中力でしのぎ切って、アウェイで勝点1を持ち帰る結果となった。
<今節のプレビュー>
堅守をベースにしながら、いかにして得点を奪うか。これこそが今節の、そして現在の“力蔵トーキョー”が掲げる最大のポイントだ。
1-0での3試合連続完封勝利から第32節の横浜F・マリノス戦では11分間での3失点という脆さを見せ、続く清水エスパルス戦では一瞬のスキから精度の高いクロスボールを送り込まれて1点を失ったものの、戦い方の根底にハードワークが根付き、失点を少なくするところから積み上げていくスタイルが浸透。クロスボールからの失点が増えていた点も改善されつつあり、前節のサンフレッチェ広島戦でも集中した守備でクリーンシートを記録するなど、チーム全体の目線を合わせて安定した試合ができるケースが増えてきた。
このベースを大事にしながら、どうやって臨機応変な攻撃でゴールを奪うかを全員でフォーカスしていかなければならない。当然ながら守っているだけでは勝利を引き寄せることはできない。松橋力蔵監督は「ゴールが一番生まれる場所にどれだけボールを届けられるか。そこで何回ボールを受けられるか。良い崩し方をしても、そこに人がいなかったり、ボールが入らなければゴールは生まれない。ずっとボールを握っているだけではなく、トライしてボールを失ったとしても、切り替えの速さや即時奪回で二次攻撃、三次攻撃につなげていくことは、ずっと選手たちに求めている。そのうえでゴールを奪うという本質を大事にしていきたい」と得点への意識を強調する。
攻撃面ではボールを奪取してからパスが思うようにつながらない点も課題とされてきた。キャプテンの小泉慶選手は「そこは距離感良くプレーすることが必要。人任せにせず、味方を助けてあげることを全体で意識したい」と話しつつ、「今シーズン、味の素スタジアムでの試合はあと2試合ですし、ここまで勝てなかった分、ここでしっかりと勝ち切って天皇杯につなげたい」と可能性を残すビッグタイトルへの意気込みを口にする。

対するファジアーノ岡山は現在11勝8分15敗で15位。リーグ戦7試合未勝利と苦しんでいるが、J1リーグ初年度ながらアグレッシブな守備を中心とした堅いサッカーで着実に結果を残してきた。岡山のスタイルについては、松橋監督も「本当に守備が固くて、攻撃もただダイナミックだけではなく、前線のパワーや高さを活かすだけのチームでもない。しっかり足下でつなぎながら、威力のある攻撃に変換できるプレーヤーもいる。そういうところはしっかり警戒しないといけない」と気を引き締める。
チームとしては目の前のゲームに一戦必勝の覚悟で臨みながらも、来月に控える天皇杯に向けて練度を上げていかなければならない時期でもある。前節でJ1リーグ通算150試合出場を記録した遠藤渓太選手は「自分たちに残っているタイトルは天皇杯。チームとしてどう準備して、どう連動性を高めていけるか。とにかくそこへ向かっていくだけ。そのためにも目の前の試合に勝っていきたい」とコメント。チーム全体が高いモチベーションで日々の成長を求めていけることをポジティブに捉えて、さらなるレベルアップを図っていきたいと意欲を燃やす。

アウェイで行われた前回対戦では、試合終盤に4月のJ1リーグ月間ベストゴールに選ばれた田部井選手の一撃で0-1と敗戦を喫し、悔しい想いで東京に帰る結果となってしまった。チーム一丸となって前回の借りを返し、堅守を軸にしながら高い得点意欲を見せて天皇杯につながる勝利を手にしたいところだ。
なお、青赤から岡山へ育成型期限付き移籍中の佐藤龍之介選手は今月、U-20日本代表としてチリで行われたFIFA U-20ワールドカップに出場。岡山では主に左右のウイングバックでプレーし、前節のセレッソ大阪戦でカットインから先制点を決めるなどチーム得点王となる6ゴールを記録している。今節は契約の関係で出場しないが、岡山で大きな成長を見せている19歳の今後の活躍にも注目しておきたい。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、前節のサンフレッチェ広島戦の試合を受けて、チームにどのようなフィードバックをされましたか。
A、しっかりと守り切れたことは評価しています。あのような試合展開で、自分たちが守備に重きを置かなければいけない時間帯が長くなってしまいましたが、しっかりと抑え切ることができました。次の試合も、チームとして苦しい時間帯があると思いますし、一つの自信として大事にしていこうと伝えました。
Q、広島戦前には相手の矢印をどのように折って、自分たちの攻撃にどうつなげていくかという話もありました。
A、自分たちがプランニングしていたものに対してのアクションや目線を揃える意識はありましたが、良い受け方や良いポイントでボールを受けているけれども、その後のプレーが次につながらないことが多くありました。相手が前がかりにくるチームだからこそ、トランジション(攻守の切り替え)をポイントの一つにはしていましたが、うまく攻撃をやり切れなかったと思います。
Q、そのお話を受けて、チームにはどのようなことを落とし込みましたか。
A、大きな変更はありません。ファジアーノ岡山も広島と同じようなシステムなので、構造上のウィークポイントや狙う部分に大きな変わりはないかと思っています。そのなかで、攻撃も守備も、相手がどうこう関係なく、振られずにもう一度反復していくことが重要だと思います。
Q、岡山の印象はいかがですか。
A、本当に守備の堅いチームであり、攻撃もダイナミックさや前線のパワーや高さだけをただ生かすのではなく、足元でつなぎながらポイントを突いてくるチームです。威力のある攻撃に変換できるプレーヤーもいるので、しっかり警戒しないといけません。
[選手インタビュー]
<マルコス ギリェルメ選手>

Q、前節のサンフレッチェ広島戦は守備の時間が長いタフなゲームだったと思います。
A、調子の良い広島ですし、我々にとってもアウェイという難しい試合になりました。守備の時間は確かに多くなってしまいましたが、相手の隙を突いた攻撃で少ないチャンスを得点に繋げられれば良かったと思います。無失点で終えられたことを前向きに捉え、攻撃の精度をもっと意識していきたいです。
Q、広島と似た選手配置のファジアーノ岡山が今節の相手ですが、広島戦を踏まえてどのような試合運びをしたいですか。
A、岡山も3バックをベースにするチームですし、先週の広島戦に引き続き、狙いや対策をトレーニングからしっかりと共有できていると思います。選手間の良い関係性で相手を崩していきたいです。個人としては、セットプレーが得点につながるように貢献したいです。キックのフィーリングも練習から段々と良くなってきている感覚があるので、試合で活かしていきたいです。
Q、試合に応じて、室屋成選手や長友佑都選手と縦の関係を組んでいますが、彼らとのコンビネーションはいかがですか。
A、二人とも非常に素晴らしい選手ですし、彼らのような能力の高い選手が後ろにいることがとても頼もしいです。長友選手とはスペイン語で試合中はコミュニケーションをとっていますし、ピッチ内で起こったことやお互いの意見をスムーズに話すことができています。室屋選手もヨーロッパでのプレーをはじめ、経験豊富な選手です。室屋選手とは英語でやりとりをしていますが、試合や練習では積極的に後ろから声を掛けてくれます。どちらも素晴らしい選手です。
<遠藤渓太選手>

Q、サンフレッチェ広島戦で、J1リーグ通算150試合出場となりました。
A、横浜F・マリノスで100試合を達成した時は、そこまで時間がかからなかった感覚でしたが、そこからドイツに移籍して試合に出られない期間も経験しました。そういう意味では、ここからどれだけ日本で出場数を伸ばせるかを考えていきたいです。東京では自分よりも何百試合も多く出場している先輩たちがいるので、150試合出場はそこまですごいと感じていません。これからも1試合1試合しっかりと積み上げていきたいです。
Q、広島戦では無失点の引き分けで、守備の構築はできていたと思いますが、試合に勝利するためには何が必要だったと思いますか。
A、良い守備だけでは、やはり試合には勝てません。ボールを奪いゴールを決めないと試合には勝てないので、そこのバランスを大事にしたいです。特に攻撃の選手は、バランスを考えてプレーする意識が求められると思います。
Q、セカンドボールを拾った後にパスがうまく攻撃に繋がっていない印象があります。どのようなことが重要になると思いますか。
A、個人の問題が大きいと思っています。受け手になる選手が顔を出してあげることや、パスコースを作り出してあげるだけで変わります。広島戦のようにタイトにくる厳しい状況の時こそ、受け手が逃げるのではなく、自分からパスコースを作ってあげることを意識して、チーム全体でボールを受ける意識が大事です。流れが良い時は、みんなボールを受けたがるし、ボールを受けたらすぐ前を向けますが、試合展開が悪くなってくると、自分もそうですが相手に隠れてしまうことがあります。そのような場面でしっかりとチーム全員が顔を出せるようになると、セカンドボールも自然と回収できて、良い攻撃にもつながると思います。
Q、代表活動による中断もありましたが、約1か月勝利がない状況です。
A、自分たちに残っているタイトルは天皇杯しかないですが、そこに向けてどのように準備していくのか、明日の試合でも何ができるのかを証明しないといけません。チームとして練度をどれだけ高めていけるかが重要で、チーム全体で向かっていかなければいけません。個人的にも数字は足りていませんし、ここから得点をもっととり続けていきたいです。明日の試合もそうですが、やはり味の素スタジアムで勝利できることは特別なことなので、しっかりと勝ちたいです。






