<マッチレビュー>
今シーズン初のリーグ戦4連勝をめざす戦い。勢いを自信に変えて、決して受け身になることなく眼前のバトルを制していくことで、しっかりと勝利を手繰り寄せたいゲームとなる。
相手の出方を見ながら臨機応変なサッカーを展開し、そのうえで自分たちらしさを発揮していくスタイルで3連勝という結果を手にしてきた東京。良い守備から良い攻撃を狙うのはもちろん、攻撃の形を意識した守備を心掛けることでピッチの選手たちがシームレスにプレーできるようになってきた。
今節対戦する横浜F・マリノスは前線から最終ラインをコンパクトに保ち、チャレンジングな守備をベースに戦ってくるチーム。今シーズンはここまで勝点28の17位と苦しんで残留争いに巻き込まれているだけに、ここでも懸命の戦いを見せてくることが予想される。東京としては相手の勢いに呑まれることなく強度の高いプレーで球際の戦いを制し、ストロングポイントでもある鋭いアタッキングで攻撃に怖さを見せていきたいところだ。
3連勝を収めた前節のアビスパ福岡戦からスタメンを6人変更。ゴールキーパーにはキム スンギュ選手、最終ラインは右から室屋成、土肥幹太、アレクサンダー ショルツ、長友佑都の各選手が並び、ボランチは高宇洋選手と橋本拳人選手。アタッカーは右に遠藤渓太選手、左に俵積田晃太選手が入り、2トップはマルセロ ヒアン選手と仲川輝人選手がコンビを組んだ。
また、試合前には前日27日に来シーズンからのトップチーム昇格が発表されたFC東京U-18所属の尾谷ディヴァインチネドゥ、菅原悠太、鈴木楓、田中希和の4選手がファン・サポーターにあいさつ。周囲への感謝やプロの世界に挑む覚悟、意気込みなどを熱く語った。
1stHALF—相手のコンパクトな陣形に苦しみ、決定機を生み出せず
試合は立ち上がりから横浜FMのハイプレスを東京がどう裏返すかという予想どおりの展開となる。いきなりプレッシャーにきた相手に対し、東京はヒアン選手のポストプレーからスピードアップして右サイドを遠藤選手、室屋選手の連携で崩しにかかるが、オーバーラップした室屋選手の折り返しは惜しくも相手ディフェンダーにカットされてしまう。
その後もコンパクトな布陣を敷いてきた横浜FMに東京が鋭い攻撃を仕掛けるシーンが増えていく。ファウルで倒されるケースやコーナーキックのチャンスも多くなり、セットプレーからどう仕留めるかも試合の行方を左右することになりそうだ。
前半15分頃から徐々に相手のプレスが落ち着き、東京がボールを保持して攻め手を探る時間が長くなる。ただし、横浜FMがしっかりと中央を締めてきたこともあり、なかなか効果的な縦パスを差し込むことができない。

この課題をピッチ内でどう解決していくか。前半30分には相手選手の負傷で生じた時間を使って各ポジションで選手たちが積極的にコミュニケーション。攻撃の狙いどころ、サポートの動き、タイミングなどをすり合わせて改善を図った。
前半34分にはセットプレーからジョルディ クルークス選手の左足キックを中央で角田選手にヘディングで合わせられたが、これはクロスバーに救われる形で難を逃れる。
ハイプレスとミドルブロックを使い分けて東京の良さを封じにくる横浜FM。前線から最終ラインまでセンターサークルの縦幅程度のコンパクトな陣形を保つことで差し込むパスコースが消され、パスの出どころへもしっかりアプローチされ、2トップも厳しいマークを受けて裏のスペースを自由に狙うことができない。
それでも粘り強くチャンスを探り、前半アディショナルタイムには左ショートコーナーの流れから押し込んで惜しいシーンを作るが、それでも決定機を生み出すには至らない。
前半45+4分にはジョルディ クルークス選手のセットプレーから谷村選手になだれ込まれて頭で決められたかと思われたが、VARのサポートでオフサイドと判定されノーゴールに。東京はこの判定に救われ、このまま前半がタイムアップ。試合はスコアレスのままハーフタイムを迎えた。
2ndHALF—立て続けの失点が響き、終盤の追い上げも一歩届かず
前半に見えた攻撃の課題をどう解消していくか。ビルドアップの出口をしっかりと作りながら、シンプルに裏を狙う攻撃を徹底していくことで怖さを出していきたい。ハーフタイム明けのゴール裏からは仲川選手へのチャントが飛び、後半への期待が届けられた。
後半も立ち上がりから攻め手を探る東京。だが、自陣から攻撃に転じようとした横パスをプレスバックしてきた選手にカットされ、そのまま横浜FMが左サイドに展開。ここで角田選手の左足クロスを喜田選手にダイビングヘッドで合わせられて先制点を許してしまう。4試合ぶりとなる失点で1点のビハインドを背負うことになってしまう。

東京も左サイドで長友選手が持ち替えて右足でクロスボールを入れ、エリア内の橋本選手が左足インサイドで合わせるもミートせず。早い時間に同点、そして逆転を狙っていきたいところだったが、ここから立て続けに一瞬の隙を突かれてしまう。
後半14分、エリア内で喜田選手の抜け出しを許して折り返されると、中央で谷村選手に押し込まれて失点。さらに同17分、相手の攻撃をクリアしたところで守備陣の足が止まると、右サイドでボールを拾ったジョルディ クルークス選手の鋭い左足に対応しきれず、またしても谷村選手に飛び込まれて痛恨の3失点目。わずか11分間で3ゴールを奪われるという悔しい展開となってしまう。
2点目を奪われたタイミングで俵積田選手、仲川選手に代えて左アタッカーにマルコス ギリェルメ選手、2トップの一角に佐藤恵允選手を投入していた東京。彼らの推進力とアグレッシブなプレーを反撃の糸口としたいところだ。
1点ずつ決めていくしかない東京。サイドバックの室屋、長友両選手を活かしながら敵陣に迫っていく。後半32分にはヒアン選手から山下敬大選手にスイッチ。前線でターゲットとなれるストライカーにゴールを期待して送り出した。さらに後半38分には橋本選手、遠藤選手に代わって東慶悟選手、野澤零温選手がイン。最後の交代枠を使ってピッチ内の選手に反撃を託す。
何とか意地を見せたい東京。後半44分、ショルツ選手のフィードをペナルティエリア内で受けた山下選手がシュート。これは相手ゴールキーパーに防がれたが、そこを室屋選手がすかさず狙い、こぼれ球に高選手が詰めてゴール。VARのサポートが入りながらも得点が認められ、まずは1点を返すことに成功した。
後半アディショナルタイムは6分。残された時間はわずかだが、それでも東京が猛攻を仕掛けていく。後半45+4分にはショルツ選手のフィードに室屋選手が頭で合わせるが、ゴールキーパーの頭を越えるかと思われたボールは朴選手が左手を伸ばしたセーブに阻まれてしまう。
そして後半45+5分、右サイドから仕掛けた野澤選手がエリア内で倒されてペナルティキックを獲得。これをショルツ選手が右足でキッチリと沈め、東京がついに1点差に詰め寄る。
その後も攻勢に出る東京。スタジアムの大声援にも後押しされて相手陣内に攻め込んでいくが、野澤選手が再度仕掛けてエリア内で倒されるもファウルはなし。ここでタイムアップのホイッスルが鳴り、試合は2-3で終了。“魔の11分間”とも言うべき連続失点が響いて東京の連勝は3でストップ。悔しい黒星を喫する結果となってしまった。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK キム スンギュ
DF 室屋成/長友佑都/アレクサンダー ショルツ/土肥幹太
MF 高宇洋/橋本拳人(後半38分:東慶悟)/遠藤渓太(後半38分:野澤零温)/俵積田晃太(後半15分:マルコス ギリェルメ)
FW マルセロ ヒアン(後半32分:山下敬大)/仲川輝人(後半15分:佐藤恵允)
SUBS
GK 波多野豪
DF 森重真人/安斎颯馬
MF 小泉慶
MANAGER
松橋力蔵
GOAL
後半44分:高宇洋 / 後半45+7分:アレクサンダー ショルツ
<横浜F・マリノス>
STARTING Ⅺ
GK 朴一圭
DF 加藤蓮/ジェイソン キニョーネス/角田涼太朗/鈴木冬一
MF 喜田拓也(後半35分:山根陸)/ジャン クルード(前半31分:渡辺皓太)/植中朝日(後半35分:オナイウ情滋)
FW ジョルディ クルークス(後半21分:天野純)/谷村海那/ユーリ アラウージョ(後半21分:宮市亮)
SUBS
GK 木村凌也
DF 諏訪間幸成
FW 井上健太/ディーン デイビッド
MANAGER
大島秀夫
GOAL
後半6分:喜田拓也 / 後半14分:谷村海那 / 後半17分:谷村海那
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、本日の試合の総括をお願いします。
A、シンプルに今日は、勝利を得られるだけのチームとしてのパフォーマンスを発揮することが、残念ながらできなかったゲームだったと思います。終盤、選手の頑張りでなんとか2点を返すことができたことはしっかりと評価しながらも、連戦ではありますが、勝ち続けていたなかで、表情がガラッと変わってしまうようなゲーム内容というものがなぜ起きてしまったのか。そこはしっかり突き詰めて、また次のゲームの準備を進めていきたいと思います。
Q、相手が良かったというよりは東京の出来が悪かった印象です。とくに前半はとても動きが少なかったように見えました。そのあたりを現時点ではどのように感じられていますか。
A、狙いは持ちながらしっかりとプレーしているなかで、そこが一つうまくいかないとなった時に、動きが止まってしまう。次にどうするのかというプランがなかなか見えなかった部分もありました。リハーサルのなかで伝えた部分はありましたが、あまり強調をしてはいなかったので、ハーフタイムでそこを少し強調して伝えてリズムを作りながらというところはありつつも、失点が重くのしかかってしまって、我々の出来も良くなかった。ただ、スタートからそれだけではないような感じもしましたし、コンディションの問題なのか、動きも決して良くなかったという部分は近くで見ていて感じていました。
Q、本日は右サイドに室屋成選手、左サイドに長友佑都選手を配置しましたが、その意図を教えてください。
A、残念ながら失点につながってしまったケースをどう防ぐかというところも、土肥幹太選手と室屋選手に託しながらというところはありました。今はまだ全部を細かく見られてはいないですが、相手のワイドの選手は非常に特長のある選手でもありますし、クルークス選手をしっかり長友選手が止めて、もちろん全部は難しい部分があるので、中に入ってきた時には、高さというかそういう部分を割られないようなタイトな守備ができるというところも彼らの良さでもあると思うのですが、そこを割られてしまったというところはあったと思います。もちろん、すべてがそこだけではないですが、そういう意図で右と左に両選手を起用しました。
[選手インタビュー]
<高宇洋選手>

Q、試合全体の振り返りをお願いします。
A、失点がすべてだったと思いますし、ただ前半から少し何かうまくいかないなという感覚があったので、そこをどうやってピッチのなかで修正するかという意識の統一だったり、合わせ方というものは、もっとやらなければならないと思います。
Q、相手の出方に対して、中盤のポジションでどのようなことを感じていましたか。
A、横の連携では、4-3-3のような感じで一人が前に入っていくこともやっていました。マルセロ ヒアン選手と仲川輝人選手と僕のところで入っていく意識はあったのですが、前進する部分での距離感も良くなかったので、少しポジションを落としながら、前半途中から意識してボールを前進させようというところはありました。ただ、前のアクションを見逃さない配球などはもっとできたと思いますし、それは全体を通して、どのポジションからでも配球の質も含めてやっていくべきだったと思っています。
Q、ここまで無失点で勝っていたなかで、今日は立て続けにやられてしまいました。
A、一つ失点してから連続でやられてしまったので、本当にもったいないですし、やはり3失点してしまうとこういう結果になると思います。失点しても、もう一回しっかりと切り替えて修正する力も絶対に必要でしたし、まだ映像を見ていないのですが、最初の失点につながってしまったクロスボールへの対応などもここまでしっかりトレーニングしてきていたので、もっと全体的に反省というか、映像を見ながら意識統一できればと思います。
Q、3点のビハインドになってから、相手が引き気味になったところでボールを持てる時間も増えて、裏を狙うような配球も見られたと思います。
A、相手が3点をとったので明らかに引いてきましたし、押し込む展開というのも必然的にできたので。それは自分たちというよりも、点差を含めた相手の状況によってできた形だと思います。そこから2点をとることはできましたけれど、そういうものを自分たちから作り出せるようにやらなければならないと思います。
<アレクサンダー ショルツ選手>

Q、前半はビルドアップの部分で手詰まりになっていたように見えました。どのようなことが原因でしたか。
A、非常に相手がタイトでなかなかスペースを見つけることができなかったことと、自分たちのテンポも少し足りなかったと思います。前半は相手の守備ブロックに対して、自分たちがもう少し我慢強くボールを展開して、相手の守備ブロックを拡げることをしないといけませんでした。
Q、相手がハイラインとハイプレスでくるのは事前に分かっていたかと思いますが、どのようなプランで回避しようと準備していましたか。
A、もっと相手の背後を使うというところはプランとしてありましたが、タイミングが上手く合わなかったです。距離が遠過ぎたり、近過ぎてしまったことが裏をとることができなかった要因だと考えています。
Q、立て続けに3失点した原因をどのようにお考えですか。
A、シンプルに守備が良くありませんでした。特に、ボックスでの守備が良くなかったです。
Q、後半の残り15分くらいから、ショルツ選手がボールを前に持ち運んだり、長友佑都選手へ対角のパスを通せるようになってから、チームが2点をとり返しました。
A、相手が3点をリードして引いてくれたこともあり、スペースを見つけることができました。自分としては、スペースがあればそこに運んでいくのが得意なので、自分の特長を出せたと思います。2点を返すことはできましたが、遅過ぎました。
<野澤零温選手>

Q、3点ビハインドの状況で送り込まれましたが、監督からはどういった指示がありましたか。
A、相手の背後にスペースがあるので、どんどん背後を狙っていけという指示をもらっていました。そこは僕の長所でもありますし、そこで違いを出して得点につなげることが大事でした。一つその形ができたのは良かったのですが、最後のクオリティは全然まだまだだなと思いました。
Q、野澤零温選手が入ってからチームが勢いづいたように見えました。
A、時間帯も難しかったですし、状況も難しかったです。ただ、どんな状況でも自分のやることは変わらないと思っていたので、自分の仕事を全うしただけです。ただ振り返ってみれば、勝てずとも負けない試合にはできたと思うので、勝点1を持ってこられなかったのは自分の責任でもありますし、個人としてもチームとしても課題がたくさん見えた試合だったかなと思います。
Q、ペナルティキック獲得のシーンを振り返ってください。
A、背後にスペースがあるのは分かっていたことですし、東慶悟選手が持った時に目が合ったので、絶対に出てくると思っていました。ボールを持ったらまずはしっかり仕掛けて、どんどんクロスやシュートを狙うことをピッチに入る前からイメージしていたので、迷わずプレーした結果がペナルティキック獲得につながったと思います。ああいうプレーを続けて、自分がチームのプラスアルファになれるようにしていきたいと思っています。
Q、次節はアウェイでの清水エスパルス戦です。どのように準備していきますか。
A、チームとしてもここまで良い流れできていましたが、今日は勝てずに終わってしまいました。4連勝はできなかったですが、シーズンは続きますし、一つでも上の順位に自分たちはいかないといけません。そこはもう良い意味でしっかりと消化して切り替えて、もちろん課題とは向き合って、この短い期間でもしっかり修正して、自分たちの良さをもっともっと出していきたいと思います。0-3になっても、最後まで応援し続けてくれるファン・サポーターの方々がいるので、僕らが結果で応えないといけません。そこはもっと責任を持って全員がプレーしていきたいです。

