東京が手にしたリーグ戦3連勝は、いずれも無失点勝利という形で実現した。これは戦術面の整理と守備意識の徹底がもたらした必然である。
1-0で勝利した川崎フロンターレ戦後のキム スンギュのコメントを借りると、「どのタイミングでプレスをかけるのか」「どうポジションをとるのか」が直近の試合では全員に共有されているという。ボール保持者に対するアプローチと周囲のカバーリングを同時に成立させることで、連動性を生み出している。
アビスパ福岡戦後に森重真人は「無失点の1-0勝利が3試合続くことは“東京らしくない”のかもしれない」と冗談めかしつつも、「引き締まった試合ができている証」と胸を張った。

今シーズン序盤は立て続けの失点が多かった東京が、安定感を武器に勝点を積み重ねていることは間違いなく進化と言っていい。
加えて、その成果は固定メンバーに依存するのではなく、ローテーションを組み合わせながら導き出したものだ。東京ヴェルディ、川崎、福岡と続いた連戦では、出場選手を入れ替えながらもチーム全体のパフォーマンスは落ちなかった。
松橋力蔵監督が掲げる「誰が出ても同じように戦えるチーム」の理想像が、いま形になりはじめている。
ショルツを軸としたビルドアップの安定
フィールドプレーヤーで唯一、直近の3試合でフルタイム出場を果たし、守備の安定感をもたらしたアレクサンダー ショルツは、守備だけではなく、攻撃のスイッチャーとして象徴的存在だ。
ショルツはセンターバックの相棒が誰であっても補完し合える柔軟さを持つ。川崎戦では土肥幹太と組み、縦パスとドリブルでの持ち運びでテンポを上げると、福岡戦では森重と連携し、落ち着いたビルドアップを展開。自身は左右どちらに配置されても同じクオリティを発揮し、相手の前線の選手がプレスに出てきても慌てることなく前進の糸口を作る。

特筆すべきは、ドリブルでの持ち上がり。目線が上がった状態のドリブルは対峙する相手選手に的を絞らせず、とりどころを見失った相手を横目にスルスルと中盤の位置まで持ち運ぶ。
これにより、ビルドアップの選択肢が増え、横パスの停滞感、縦パスが通らないノッキングが格段に減少した。安定したボールコントロールがピッチ全体に好循環を与え、厚みを増している。
松橋監督が掲げる「良い攻撃が良い守備につながる」という言葉を、最終ラインにポジションをとるショルツが体現しているということも踏まえると、攻守の連動性が直近の3連勝に大きく関わっているといっても良いだろう。
横浜F・マリノス戦に向けて
今節、ホームに迎えるのは横浜FM。前節のガンバ大阪戦では1-3の逆転負けを喫したとはいえ、ジョルディ クルークスを筆頭に推進力あるアタッカーを揃える攻撃力は脅威。東京にとっては、連勝を重ねてきた守備の強度と、試合を締めるための追加点を奪えるかが、勝敗を分ける大きなポイントになりそうだ。
ホームでの対横浜FM戦勝利は2019シーズン以来遠ざかっているが、今の東京は、過去の対戦成績で相性が悪かった“勝てていなかった相手”を次々に乗り越えてきた。その流れを自信に変え、勢いを持って臨めば、過去の壁を破る可能性は十分。また、今シーズンの横浜FMは、相手に先制点を与えた試合で勝利がない。調子の良さを図る意味でも先制点を奪い、3連勝で得た自信をさらに深めたいところだ。

今シーズンも混戦の明治安田J1リーグ。1試合の勝敗が順位に大きく直結する。上位との差を縮め、僅差で順位を争う清水エスパルスやファジアーノ岡山との差を広げるためにも、今節の勝利は極めて重要だ。勝てば4連勝。2021シーズン以来となる無失点での連勝記録更新も視界に入る。
熱狂が熱狂(ドラマ)を生む、その瞬間を味の素スタジアムは待っている。積み重ねた無失点勝利の自信を胸に、勝負どころの一戦で東京は次なる一歩を踏み出す。
(文中敬称略)


