青赤のコンダクターとして中盤を司る高宇洋選手と万能型ストライカーとして存在感を強める長倉幹樹選手。東京のセンターラインに欠かせない両選手はかつてアルビレックス新潟でともにプレーし、松橋力蔵監督の指導を受けた経験を持つ。今回は二人の出会いから日常、松橋監督との記憶を含めたオフ・ザ・ピッチについてのクロストーク。再び同じクラブで高みをめざすことになった“つながる関係”をひも解きながら、お互いのキャラクターが感じられるエピソードとともにお届けする。
──まずはお二人の出会いと第一印象を教えてください。
高宇洋 アルビレックス新潟時代ですね。J1リーグに昇格した2023シーズンの夏に長倉選手が移籍してきて出会いました。移籍してきて初めてしゃべったのが加入から2か月後ぐらいだっけ。
長倉幹樹 いやいや(苦笑)。
高 全然しゃべらない選手だなって思いましたが、プレーはとても堂々としていたし、能力も高かったので、すんなりチームに入っていった印象があります。ある程度、チームのスタイルがあったので、そこにしっかりとフィットしたなという印象です。でも、そこまで仲良くはありませんでした(苦笑)。新潟の時は、あまり食事に行く機会もなかったので。逆に、東京にきてよくしゃべるようになったよね。
長倉 当時は半シーズンしか一緒にいなかったので。やはり足りなかったです、時間が(笑)。当時から高選手は守備も攻撃もできて、チームの中心として毎試合出ていたイメージがあります。でも、仲の良い選手同士でグループができあがっていたので、なかなか入っていくのは難しかったです。
高 幹樹の殻を破るのには半シーズンじゃ短すぎましたね(笑)。

──今シーズン夏に再びチームメイトになりましたが、移籍の際に長倉選手から相談されたと聞きました。
高 幹樹が今シーズン開幕前に浦和レッズへ移籍して、なかなかスタートから出場する機会がないのは外から見ていました。松橋力蔵監督も東京にいたので、移籍するかもしれないという話を聞いた時は、間違いなくチームにプラスアルファをもたらしてくれると思いましたね。交渉の最終局面あたりで幹樹から連絡がきて、チームのことやこういうサッカーをしているという話はしました。その時は「来いよ、来いよ」って誘いました。
長倉 ヤンくん(高選手)の言葉が僕の背中を押す一つのきっかけになったことは間違いないです。チームの話を聞けたことは大きかったですし、やっぱり求めてくれた感じがあったのもうれしかったので。
──東京で再会して仲も深まったと思いますが、お互いのエピソードなどがあれば教えてください。
長倉 いやぁ、やばいですね。ヤンくんはやばいです(苦笑)。
高 ちょうど昨日、食事に一緒に行く予定で場所とかは全部送ってあったんですけど、時間を伝え忘れていて。店に着いてから電話したら……幹樹、寝ていました(笑)。
長倉 それで「何時からですか」って聞いたんですけど……。
高 「17:00からだよ」って(笑)。
長倉 16:58なのに、「まだ家です」って。それでキャンセルになりました(苦笑)
高 そんなトラブルもありましたけど、幹樹は新潟時代に僕がJ1リーグ初ゴール(2023明治安田J1リーグ第28節横浜FC戦)を決めた時にめちゃくちゃ喜んでくれたんですよ。めっちゃ叫んでいて、それが印象的でした。「こいつ、普段はおとなしいのに、こんなに叫ぶんだ」って思いました。あとはそのシーズンの最終節でゴールを決めて、勝って、僕を送り出してくれたのも幹樹だった。そういうのも何か嬉しかったです。
長倉 ヤンくんが東京に移籍して以降のプレーを見ていると、“ゴラッソ”ばかり決めているイメージですね。成長したんだなと思ったのと同時に、新潟でもそういうプレーをしてほしかったなと思いました(苦笑)。

──食事に行く機会もあるようですけど、プライベートではどんな話をしていますか。
長倉 僕があまり話さないので。
高 (長倉選手が)謎に包まれているんですよ。
長倉 全然普通にしゃべりますけど、ここで話せるようなエピソードはないですね(苦笑)。
──松橋監督との想い出はいかがでしょう。
高 リキさん(松橋監督)が初めて監督をやった2022シーズンに、J2リーグ優勝と昇格を経験しました。長いリーグ戦を戦い抜いて、ともにそれを成し遂げられたことが一番嬉しかったですね。
長倉 普段から良い言葉や良い話を口にするなと思っています。そういう言葉をちょこちょこ頭に入れてきたので。今はパッと出せないんですけど、自分は意外と聞いていないようでちゃんと聞いています(苦笑)。
高 本もたくさん読む人だから、ミーティングでのリキさんの言葉はすごいですよ。僕が一番刺さったのは、「考えるな、本能で動け」という言葉ですね。自分が迷っていたタイミングだったこともあって。「考えればコンマ何秒の世界では遅れをとってしまう。本能で自分が思ったように守備も攻撃もやることが、結局は一番速い」と聞いて、すごく迷いを解いてくれた記憶があります。あと、リキさんはとにかく毎日走っていますね。時計も何も持っていかず、感覚を頼りに5㎞走ったと思ったら折り返すみたいです。
長倉 僕は「どんな状況でも冷静に」って解釈した言葉がありました。「正確にプレーするのが一番速い」で、何事も慌てず、冷静にプレーしようと思えるようになった言葉です。

──では最後に、お互いにどんなことを求めていきたいですか。
長倉 ヤンくんには守備で全部刈り取ってもらって、そこから自分に良い縦パスの供給をお願いしたいです。
高 頑張ります。幹樹にはすべてを求めます。走り続けてもらって、起点になってもらって、点もとってもらって、ゴールパフォーマンスをしっかりやってほしいです。高い要求に見えるかもしれませんが、それができる選手だと思っているので。
Text by 馬場康平(フリーライター)

