青赤のコンダクターとして中盤を司る高宇洋選手と万能型ストライカーとして存在感を強める長倉幹樹選手。東京のセンターラインに欠かせない両選手はかつてアルビレックス新潟でともにプレーし、松橋力蔵監督の指導を受けた経験を持つ。今回は試合の流れを読みながらゲームをコントロールする背番号8と、前線でターゲットになりながら機転の効いた判断で好連携を見せる背番号26が見せるピッチ上での “つながり”を深堀り。力蔵トーキョーの中心となっている両選手が、チームの現状と今後の可能性を語り合った。

──お二人を見ていると、あまり型にはまっていないプレーをしていて、松橋力蔵監督も型にはまらないプレーを求めていますよね。
高宇洋 確かにおっしゃるとおりで、「相手を見て決めれば良い」という監督なので。相手に対してのやり方は最低限の提示をしてくれますが、松橋監督も「ピッチに立ったら自ら判断して選択していくほうが面白いよね」と考えていると思います。僕もそういうプレーをアルビレックス新潟時代から続けてきて、自分が成長した部分だと思います。本当にそういうサッカーがハマった時は攻撃でも守備でも常に支配し続けられる。それこそJ2リーグで優勝した2022シーズンはどんな相手にも試合の主導権を握って、守備でも相手を誘導できて、ポゼッションでもカウンターでもセットプレーでも得点がとれる状況だったので、全員が分かり合えていたと思います。
長倉幹樹 僕はもともと駆け引きの部分が自分の特長でもあったので、そこがリキさん(松橋監督)のサッカーでうまく出せていると思います。
高 東京は強烈な個が揃っているチームですけど、なかなかそれがつながっていかない。それは昨シーズンからよく「つながり」という言葉を使ってきたけど、長倉選手がこのチームに来て、僕が「いてほしい」と思うところにいてくれる。この場面ではこういう選択肢からこう判断するよねとか、ボールを簡単に預けるよね、そこではターンするよね、運ぶよねといった判断やプレーがある程度同じ感覚を共有できる。そうなると、二人の関係で数メートル運べたり、局面を打開できるので、それは僕自身もすごく助かっています。でも、驚いたのは「こんなに決定力あったの」というくらいに幹樹がゴールを決めること。そこはもう良い意味でのサプライズだったし、驚きでした。
長倉 僕自身、それほど難しいことはやっていないんですけど、味方との連係で打開できるところはあるので。あとはチームにうまく入れたのだと思います。

──今シーズンの東京は非常に苦しい時間を過ごしてきました。ここから怪我人が戻ってきて、どうサッカーが変化していくと思いますか。
高 僕が離脱する前の柏レイソル戦(第23節)や浦和レッズ戦(第24節)、鹿島アントラーズ戦(第25節)は、みんなが手応えを感じながらプレーできていたゲームだったと思います。勝った試合も負けた試合もあるけど、鹿島戦はチャンスを作りながら自分たちがゲームを支配できていたので、あの感覚を継続しながら勝負の際のところを突き詰めていきたいですね。
長倉 もともと新潟でやってきたサッカーと東京のサッカーは違いますし、東京の良さとリキさんのサッカーの良さをうまく融合することができれば、さらに上にいけると思うので、ここからよりそういう取り組みをしていきたいです。
──先ほど高選手が話したように、同じ目線でプレーできる選手が増えていくほどつながりも広がっていくはずです。そのためにはどんなことが必要ですか。
長倉 そこは練習から繰り返し反復するしかないと思っています。ぶっつけ本番で同じ絵を描くのは難しいと思うので、練習でどこまで味方との関係を構築していけるかが大事になっていくはずです。日々の練習で疑問をクリアにしていくことも大事ですし、自分や相手がどういうプレーをするのかを見て学ぶというか、それぞれがどういうプレーをすれば良いのかを考えて僕はプレーするようにしています。
高 そうそう。ボールを持って主導権を握るサッカーをやるには、やっぱりブレずにやり続けるしかない。ただ、さっき幹樹が言ったように東京には東京の良さがある。それをうまく融合させることは大事になってきます。縦の速さは伝統的にある特長なので、ポイントはそこの見極めとコントロールするところの使い分けですね。そういった判断の部分で共通意識を深めれば、遅攻でも速攻でも相手が怖がる攻撃ができると思う。僕自身はそれをコントロールするポジションにいると思うので。いろいろな選手と会話をしながらトレーニングですり合わせていくしかないです。

──松橋監督からは「考えるな、本能で動け」という言葉もあったと話していました。迷いを取り除くにはどうすればいいですか。
高 一人ひとりがやるべきことはハッキリしているので、ちゃんとまず全員がボールを受けようとする意志を持たなければいけません。そうすることで常に選択肢が多くなる。東京は(ボールを)受ける意志をもっともっと示していかないといけない。だからビルドアップのパスが相手に引っかかって失点するというもったいないことが起きてしまう。もちろんそればかりではなく、相手のプレスをひっくり返すこともやっていきたい。そこは相手を見て、勇気を持ってやるだけだと思います。
長倉 良い距離感や関係を作らないとボールは回らないですよね。迷いがあるわけじゃないけど、その距離感が良くなれば、ヤンくん(高選手)が言っていたように選択肢が増える。そういう状態でプレーできれば、心にも余裕が生まれると思うので、そういうことの積み重ねが迷いを消すことにつながると思います。
──さて、今シーズンのリーグ戦はあと10試合です。個人としてもチームとしてもどんなプレーをしていきたいですか。
高 今はとにかく試合がしたいです。ここ数試合離脱しているのでピッチでプレーがしたいし、もう試合が少ないので。一つでも上にいかなければいけない。これからの試合は全部勝たなければいけない想いがすごく強いです。とにかく勝ちたいです。
長倉 リーグ戦はとにかく上の順位を、天皇杯は優勝をめざしています。個人としては自分のプレーエリアが定まっているので、そういうチームでどれだけ自分ができるのか。そのなかでどれだけ打開できるか、そしてゴールにつながるようなプレーができるかにこだわってやっていきたいです。とにかく練習でコンディションを上げて、今できていることをいつもどおりできるように準備をしていくことが大事だと思います。

──最後にシーズン今後に懸ける想いをそれぞれ聞かせてください。
長倉 まずは怪我をせずに最後までやり続けて、勝利につながるプレーが一つでもできるように頑張ります。
高 ファン・サポーターのみなさんと喜べるように勝利を重ねていきたいですし、ピッチでしっかりと自分たちができる最大限戦う姿勢を持ちながらプレーしていきます。天皇杯でタイトル獲得の可能性も残っているので、そこは本当にこだわって最後に喜べるようにしたいです。
Text by 馬場康平(フリーライター)


