8/31 名古屋戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

INTERVIEW2025.8.31

8/31 名古屋戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

<マッチレビュー>  

中2日で臨んだ浦和レッズとの天皇杯準々決勝で気持ちのこもった戦いを見せて逆転勝ちを収め、さらに中3日で迎える名古屋グランパスとのアウェイゲーム。過密日程の最中だが、勝点2差の16位につける相手との一戦だけに、通常以上に大事な試合になる。

今節は長友佑都、橋本拳人、小泉慶という経験豊富な3選手が出場停止という苦しい状況。しかし、松橋力蔵監督は「“代わり”ではなく、チャンスを得た選手にしっかり自分を表現してもらえれば」と送り出した選手たちに期待を寄せる。

そんな青赤のスターティングイレブンは、浦和戦から6名を変更。ゴールキーパーにキム スンギュ選手を起用し、右サイドバックには約1か月半ぶりに安斎颯馬選手が戦列復帰。センターバックは浦和戦でベンチメンバーに戻っていた森重真人選手とアレクサンダー ショルツ選手がコンビを組み、左サイドバックにはバングーナガンデ佳史扶選手が入った。ボランチはキャプテンマークを託された東慶悟選手と、天皇杯に続いてスタメン出場を果たした常盤亨太選手との並びに。攻撃的なミッドフィールダーは右に野澤零温、左に俵積田晃太の両選手を起用し、2トップは山下敬大選手と天皇杯の浦和戦では契約の関係上、出場できなかった長倉幹樹選手が名を連ねた。また、佐藤恵允、遠藤渓太の両アタッカーが戦列に戻ってベンチ入り。攻撃陣の選手層に厚みを加えることになった。

試合に出られない選手が増えてしまった一方で、戦列復帰した選手が多いのは好材料。浦和戦で披露した気迫のプレーを続け、連携面を意識しながら選手個々の持ち味を発揮したいところ。

1stHALF—集中した守備から好機を窺うも得点にはつながらず

試合は開始から激しく攻守が入れ替わる展開に。サイドを起点に攻め込んでくる名古屋に対して、東京は前半5分、カウンターのこぼれ球を常盤選手がミドルシュート。これはしっかりと枠を捉えながらも相手ゴールキーパーに阻まれたが、「数字に残る結果を出したい」と話していたリーグ戦初スタメンの背番号27が積極性を見せていく。

前半12分にはゴール正面で直接フリーキックを与えたが、森島選手の右足キックはバーを叩いて難を逃れた。

オープンな展開が続いた序盤から、東京が最終ラインからつないで攻め手を探る展開に移行。ポゼッションしながら持ち運んで決定的なチャンスを狙っていく時間が続き、ボールを失ってもセカンドボールを拾って相手陣内に押し込む。東京としては攻守に集中したプレーができているだけに、アタッキングサードでフィニッシュを生み出す工夫を入れていくことでビッグチャンスを生み出していきたいところだ。

前半18分にはゴール前の混戦からピンチを迎えたが、選手たちが身体を張ったディフェンスで自由を許さず。最後は山岸選手のシュートがバーに弾かれて何とかしのぎ切ることに成功する。


うまく決定機を作り出したい東京は前半42分、高い位置でのプレスからカウンターを発動させ、長倉選手が敵陣を切り裂くようなスルーパスを出すが、俵積田選手が良いタイミングで抜け出しながらトラップできずにシュートまでつなげることができない。

アディショナルタイムに入った直後には、中盤でボールを受けた長倉選手がドリブルで持ち上がって絶妙のタイミングで斜め左方向へスルーパス。これに山下選手が抜けて左足で狙うと、このシュートがゴールキーパーに阻まれたこぼれ球を長倉選手が押し込もうとしたが、これもキャッチされてしまい、惜しくもネットを揺らすことができない。

結局、前半はスコアレスのまま終了。ボールを保持しながら攻め込み、何度かビッグチャンスも作り出しながらゴールは奪えず。アタッキングサードの攻略に課題を残しながらハーフタイムを迎えた。

2ndHALF—終盤に遠藤選手が意地の同点ゴール

攻撃に怖さと再現性を出していきたい後半。松橋監督は前半同様のメンバーをピッチに送り出した。

後半最初のビッグチャンスは名古屋。後半5分にコーナーキックの流れからクロスを入れられてヘディングシュートを打たれるが、ここはキム スンギュ選手が横っ飛びから右腕一本でファインセーブ!まさに守護神というべき活躍でゴールを守り抜いた。

同10分には俵積田、山下の両選手に代えてマルコス ギリェルメ選手、マルセロ ヒアン選手の快足コンビを投入。3日前の天皇杯浦和戦で逆転劇の立役者となった両選手に再び攻撃陣のアクセントとなる活躍を期待してピッチへ送り込んだ。


そのマルコス選手がいきなり見せ場を作る。ゴール正面やや右で得た直接フリーキックのチャンス。東選手、佳史扶選手が視野を遮って入念に準備を施すと、東選手がスポットを離れたタイミングで相手の意表を突いて右足で柔らかいキック。これはわずかにゴール右に外れてしまったが、定評どおり、プレースキックの精度を披露する形となった。

しかし、後半20分、相手の右コーナーキックからゴール前の混戦で押し込まれて失点。前半よりも前線からの圧力を強めてきた名古屋にセットプレーを与える機会が増えていたなかで先制点を許す結果となってしまった。

後半29分には野澤選手、長倉選手に代えて、ともに復帰戦となる佐藤選手、遠藤選手がピッチへ。遠藤選手が右アタッカーに入り、佐藤選手を2トップの一角に置く布陣に変更した。すると、試合前日に「チームに前を向かせるようなプレーをしたい」と話していた佐藤選手がいきなり鋭いターンからペナルティエリア内で縦へ突破を図り、攻撃陣を活性化させるような仕掛けを見せていく。

後半32分には東選手から土肥幹太選手へスイッチ。土肥選手は東選手に代わってそのままボランチに入った。

そして後半37分、東京の意地と集中力が同点ゴールを生む。狙っていたのは投入されたばかりの背番号22だった。

左サイドの高い位置でボールを持った佳史扶選手が切り返しから右足クロス。これが相手選手の頭に当たってゴール前へ流れると、ここで相手ゴールキーパーがキャッチミス。遠藤選手がその瞬間を見逃さず、素早く右足を伸ばしてゴールに押し込んで同点ゴール。いかなるときも集中を切らさずにプレーし続ける遠藤選手の姿勢が実り、東京が試合を1-1のタイスコアに戻した。

6分間と表示された後半アディショナルタイムに、東京がビッグチャンスを作り出す。マルコス選手が縦へのドリブルから敵陣を切り裂くようなスルーパスを供給すると、これを遠藤選手がワントラップからシュートを打つと見せかけて中央へ折り返し。だが、このラストパスがわずかにマイナス方向にズレてしまったこともあって佐藤選手のシュートはしっかりミートできず。このビッグチャンスを逃してタイムアップ。試合は1-1のドロー決着となった。

試合後、勝ちきれずに顔を落とす選手たちを青赤のファン・サポーターが「ヴェルディだけには負けられない」の横断幕と大声援で鼓舞。中断明けに迎える一戦に向けて共闘を呼びかけた。


MATCH DETAILS

<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK キム スンギュ
DF 森重真人/バングーナガンデ佳史扶/安斎颯馬/アレクサンダー ショルツ
MF 東慶悟(後半32分:土肥幹太)/常盤亨太/野澤零温(後半28分:遠藤渓太)/俵積田晃太(後半11分:マルコス ギリェルメ)
FW 山下敬大(後半11分:マルセロ ヒアン)/長倉幹樹(後半28分:佐藤恵允)

SUBS
GK 波多野豪
DF 岡哲平/エンリケ トレヴィザン
MF 北原槙

MANAGER
松橋力蔵

GOAL
後半37分:遠藤渓太

<名古屋グランパス>
STARTING Ⅺ
GK ピサノ アレックス幸冬堀尾
DF 佐藤瑶大/藤井陽也/内田宅哉
MF 中山克広/森島司/稲垣祥/和泉竜司(後半19分:浅野雄也)/森壮一朗(後半28分:野上結貴)
FW 永井謙佑(後半28分:木村勇大)/山岸祐也

SUBS
GK 武田洋平
DF 三國 ケネディエブス
MF 加藤玄/鈴木陽人/小野雅史
FW杉浦駿吾

MANAGER
長谷川健太

GOAL
後半20分:佐藤瑶大


[松橋力蔵監督 インタビュー]


Q、本日の試合を振り返ってください。
A、中2日、中3日と短い期間での連戦の3試合を選手が本当によく頑張ってくれたなと思います。連戦で出ている選手もそうですし、そうではない選手、久々に試合に出る選手、スターティングメンバーで出る選手、交代で出た選手、と今いる選手のなかで自分たちのストロングポイントはしっかりと発揮することができたのではないかなと思います。試合の内容に関しては、堅い守備をどうこじ開けていくかという課題は、たくさんありました。ただ、終盤にかけては、意図していることが少し出せる部分もありましたし、前半では作りのところできちんと目線が揃ったなかで良い前進が見られました。あとはファイナルサードにどう入っていくか、そこをどう仕留めていくかの質はまだ上げなければいけないと思います。ただ、最後まで諦めずに、ファン・サポーターのみなさんの後押しもあり、ゴールが生まれたなと思っています。そこはしっかりポジティブに捉えていきたいです。

Q、交代した選手が得点に絡む活躍を見せましたが、そこをどう捉えていますか。
A、どうやってギアを変えていくか。それぞれの良さがありますので、違いを持っている選手が多くいるので、相手の堅い守備を組織としても個人としても崩すために、その違いを出せることは当然ゲームに入る前から想定していました。もちろん最初から出ている選手も十分に力を持っている選手ですが、連戦ということと、先ほども申し上げた通り、なかなか試合に出ていない選手がいきなりスタメンで出場することもありましたが、そういうなかでもすごくしっかりとやってくれたと思っています。

Q、相手の守備が堅いという話がありましたが、前半が顕著でしたが、相手がコンパクトに守備陣形を整えてくるなかで、密度が高いところに入れるしかないというのは想定通りではありましたか。
A、もう少し(前に)出てくるかなという気はしてはいましたが、押し込んだ際にはやはり非常に堅くて、ボールサイドにしっかり人数をかけるのが名古屋の守備でもあります。そこがある程度見えている部分で、どこを狙っていくのかというところでした。そこに吸収されているような状態ではなく、やはりその一つ手前で少し数的優位を作りながら相手がどう出てくるかを見る。その上で、そこの背後を誰がとっていくかが狙いでした。まったくダメだったかというとそういうわけではないですし、今おっしゃっていただいたように、状況を踏まえて選手のジャッジもありますので、そこは非常に良い部分ではあったかなと思います。

Q、右サイドバックで久しぶりに出場した安斎颯馬選手の評価と、土肥幹太選手は普段はセンターバックで起用していますが、今日はボランチで出場した彼にどういったことを期待したのかを教えてください。また、遠藤選手の得点について、あのような場面を見逃さずに集中して、仕留める集中力みたいなものをどのように感じていますか。
A、最初の質問ですが、その両名に関しては、もう本当に素晴らしいの一言です。久々のゲームでしたし、時間は違えど、彼らの良さというものをしっかり出してくれました。もちろん、まだしっかり上げていかなければいけない部分は当然ありますが、十分やってくれたと思っています。遠藤選手のゴールに関しては、そういう嗅覚というか、勘ではないですが「ここで」という相手の隙を見逃さなかったところがゴールという結果になりました。相手を見てプレーすることができる選手ではあるので、ゴールをとってくれたことは非常に素晴らしいことだと思います。

Q、J1リーグ戦では初スタメン出場だった常盤亨太選手について、開幕から含めて成長をどのようにご覧になっていますか。
A、浮き沈みはありながらも、しっかりとここまでの2試合、しっかりとパフォーマンスや自分の良さというものを発揮したのではないかなと思います。1戦目の前半は、本当に緊張感があって、なかなか本領発揮というか、彼の本来の姿ではなかったように思います。そこで彼だけに限らずチーム全体に発破をかけたところで、もうやるしかないと何かこう吹っ切れたように感じました。すごく冷静なプレーと彼の持っているストロングポイントの一つでもある対人守備能力と予測力が、ゲームのなかで見えたことは非常に素晴らしいな、と。次にどんどんつなげていってほしいなと思っています。


[選手インタビュー]

<遠藤渓太選手>


Q、チームに勝点1をもたらした同点ゴールの振り返りをお願いします。
A、クロスボールに対して“何かが起これば”と相手ゴールキーパーの方向に突っ込むような形でした。しっかりと準備する余裕がないままボールがこぼれてきたので、反応するのは難しかったですが、最終的にゴールに押し込むことができて良かったと思います。

Q、負けている状況でピッチに入りました。どのような意識で臨みましたか。
A、選手それぞれのコンフォートゾーンでのプレーが多く、パスのタイミングが早かったり、それに対して受け手とうまく合わないシーンが目立っていました。窮屈そうにプレーしているように見えていたので、だからこそ、僕らが先手をとってシュート、パス、ドリブルの選択ができるようにと思っていました。同サイドの安斎颯馬選手にはプレーに絡んできてほしいと伝えました。夏場の試合期間で自分が出場できない試合も多く、味方には迷惑をかけてしまいました。その分をここから取り戻していきたいです。

Q、得点後を含めて、試合終盤には遠藤選手がチームを鼓舞する姿が特に印象的でした。
A、同点に追いついた後に失点をしてしまうケースが往々にしてあると思っていましたし、アウェイゲームで勝点1か勝点0かでは、雲泥の差があります。あの状況で最低限1-1、次のチャンスで決めて2-1にできたらと思っていたので、同点後には守備でしっかりと戻ることをマルセロ ヒアン選手や佐藤恵允選手ら攻撃の選手たちにも伝えました。

Q、約2週間の中断後は東京ヴェルディとの一戦になります。
A、愛知まで応援に駆けつけてくれたファン・サポーターのみなさんがいるなかで最低限の結果でしか応えることができませんでした。次の試合は勝利のみが求められると思います。怪我から戻ってくる選手も多くいると思いますし、より強くなったチームを見せたいと思います。


<常盤亨太選手>


Q、J1リーグの試合で初スタメンとなりました。
A、何より勝ちたかったですし、自分がスタメンで出場してチームを勝たせたかった想いが強いです。勝点3が奪えなかったことが何より悔しいです。チームとして引き分けには終わってしまいましたが、個人に目を向ければ、一つひとつできることは確実に増えている手応えがありますし、先日の天皇杯からプレーの幅も広がっていると思っています。もっと勝利を決定づけるようなプレーを見せたかったです。

Q、枠を捉えたミドルシュートやボール奪取など、攻守においてハードワークした90分だったと思います。
A、積極的にプレーすることを一番に考えていましたし、ゴールが見えたら足を振る意識を常に持っていました。守備面では、球際やセカンドボールの回収など、局面のバトルで勝つことができれば、優位に試合を進められると思っていましたし、僕自身の特長でもあります。少しは貢献できたと思っています。

Q、今日の試合では東慶悟選手とのダブルボランチでした。
A、僕が少し降りてボールを引き出しながら、東選手が攻撃的なプレーを見せてくれました。良いバランスで中盤の位置でプレーできたと思いますし、非常にやりやすかったです。

Q、試合終盤にはキャプテンマークを巻いてプレーする時間帯もありました。
A、ピッチに立てば、年齢やプレー年数は何も関係ないと思っています。チームのために、勝利のために全員がピッチ上で示さなければいけません。キャプテンだったから、という特別なことはありませんでしたが、監督から指示を受けた時に感じた想いに結果で応えたかった悔しさがあります。

Q、次節は東京ヴェルディとの一戦になります。
A、リーグ前半戦ではベンチから試合を観ることしかできなかったですし、今の順位や置かれている状況を考えても、特別な試合です。結果以外求められない試合になります。何が何でも勝ちにいきます。


<安斎颯馬選手>


Q、久しぶりの90分の試合を終えて、どうでしたか。
A、全力でやるだけだったので、今できる最大限のプレーを出そうと頑張りました。

Q、相手が裏に抜け出すシーンで、安斎選手が必死にプレスバックしている姿も見られました。
A、なかなか試合に絡めない時期が長く続いていたので、自分自身も苦しい想いをしながらずっと試合を観ていました。その間にSNSなどでいろいろなことを言われる時期もありましたが、それでも選手はピッチでプレーをして認めさせることしかできません。ピッチに立ってこそ存在意義を示せると思いますし、次の試合はもちろんですが、負けられない試合が続くので、またピッチに立って頑張りたいと思います。

Q、今日の試合を迎えるにあたって、監督からどのような声を掛けられましたか。
A、「行けるか」というくらいの話だけでした。限られた時間でできる準備はしてきたつもりなので、ここからまたコンディションを上げてやっていきたいと思います。

Q、最低限の勝点1をとりましたが、これをどのように次につなげていきますか。
A、試合内容としては難しい展開でしたが、この勝点1は相手に勝点を積ませないという面でも大きかったと思いますし、この勝点1を意味のあるものにしていくのも、これからの試合の結果次第だと思うので、決して無駄にしないようにしていきたいと思います。

Q、次は東京ヴェルディ戦です。
A、ずっと決着がついていないので、次は自分たちのホームですし、しっかり準備して臨みたいと思います。