<前節・京都サンガF.C.戦のレビュー>
前回対戦のアウェイで喫した0-3という屈辱の敗戦の借りを返すべく、そして試合後に支えられたファン・サポーターの熱い応援に応えるべく臨んだホームでの一戦。だが、青赤に待ち受けていたのは思わぬ展開だった。
キックオフ直後から激しくプレスを仕掛けてくる京都。東京の選手たちは「相手の出方は分かっている」と口々に話していたが、それを上回る圧力で猛然と東京陣内へと襲いかかってくる。
開始5分でペナルティキックを与えて前半8分に先制を許すと、わずか3分後の同11分にはゴールキーパーを使ったビルドアップにズレが生じたところにプレスを浴びて再びペナルティキックを献上。早い段階で2点を先行されてしまう。

東京がなかなか攻撃の形を作れないなか、前半45分にはセットプレーの流れからクロスを入れられると、中央で鈴木選手に頭で流し込まれて0-3に。
後半、新加入のマルコス ギリェルメ選手を投入して流れを引き寄せようとしたが、またもビルドアップの乱れを突かれて後半36分に痛恨の4失点目。その後、JFA・Jリーグ特別指定選手の小湊絆選手を投入するなど反撃に出たが、小湊選手とマルセロ ヒアン選手のゴールがVARのサポートでノーゴールと判定されて万事休す。
前回対戦を上回る0-4の大敗に終わったが、中2日で臨む天皇杯準々決勝に向け、青赤イレブンは「カップを奪い獲れ」の大声援に背中を押されてスタジアムをあとにした。
<今節のプレビュー>
京都サンガF.C.戦から中2日、埼玉スタジアム2002で行われた浦和レッズとの天皇杯準々決勝は、前半に相手の攻撃を受ける形になって思うように持ち味を発揮できず。前半42分にビルドアップのズレを突かれて先制点を奪われたが、京都戦と違ったのは、ここで崩れずに2点目を許さなかったことだった。
後半開始から交代カードを切ってアグレッシブな姿勢を取り戻し、マルセロ ヒアン選手の2ゴールで逆転。最後は東京側に足が攣る選手が続出する満身創痍の状態に陥ったが、全員で耐え抜いて見事に準決勝進出を決めた。試合前に「結果で応えるしかない」と話していた東慶悟選手は、「(京都戦の)0-4からの試合だったし、すごくタフな試合だったけど、何とかみんなで勝てたのはメンタル的にもポジティブ」と前を向いた。

決めるべきところで決め、耐えるべきところで耐えての勝利。直近の課題をクリアして準決勝に勝ち上がった。とはいえ、特に簡単なミスから失点するシーンが続いているのは気がかりなところ。東京にとって難しい時間帯があることについて、松橋力蔵監督は「うまくいかない時は、選手個々の出来ではなくて、連携面に問題があることが多い。そこがうまくいけば、個が光ってくる。浦和戦は良い時間帯も悪い時間帯もありましたが、(後半は)それぞれの選手が持っている強みをしっかり出してくれたと思っています」と捉え、チームとしての継続性と積み上げ、そして選手たちが伸び伸びプレーすることの重要さを説く。
東京が今節対戦するのは、勝点28で16位の名古屋グランパス。15位の東京と勝点2差にある名古屋は、現在リーグ戦4連敗中と苦しんでおり、天皇杯でもサンフレッチェ広島に敗れて準々決勝で敗退しているだけに、巻き返しに向けてホームで気迫の戦いを見せてくることが予想される。しかも今節は豊田スタジアムが4万人近くの大観衆で埋まる見込み。前節の川崎フロンターレ戦、ホームで試合終了間際に失点を喫して3-4と撃ち負けてしまった彼らにとっても、絶対に負けられない戦いとなるはずだ。

また、名古屋には長谷川健太監督、永井選手、内田選手、徳元選手、児玉選手ら、かつて青赤でともに戦ったメンバーが多く在籍する。東京在籍13シーズン目となる東選手は「相手も近い順位だし、すごく重要な試合になる。(長谷川監督は)個人的にはお世話になった監督なので、まだまだ頑張っているという姿を見せたい」とチームとしての重要性と同時に恩返しの活躍を誓う。
東京としては今節、長友佑都、橋本拳人、小泉慶という経験豊富な3選手が出場停止という苦しい台所事情。だが、そんな状況でも松橋監督は「全員で勝点3をとりにいくという姿勢を見せなければいけない。“代わり”ではなく、チャンスを得るわけですから。しっかり自分を表現してもらえれば」と選手に期待を寄せてピッチへ送り出す。
中2日の浦和戦に続いて、名古屋戦は中3日で迎えることになる。浦和戦で疲弊した選手が多いなかでのアウェイ連戦、そして厳しい暑さと過密日程という過酷な条件下での戦いを強いられることになるが、出場停止や負傷者の回復状況を考えれば、まさにここが踏ん張りどころ。全員でしっかりと乗り切って勝利を手にすることで、シーズン終盤戦の巻き返しへの足がかりとしたい。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、天皇杯の浦和レッズ戦から中3日で試合を迎えます。
A、コンディションを重視するために、試合後はしっかりと選手を休ませました。今日も戦術的な確認のみを行う予定したが、一回試してみたいところがあったり、選手から声もあったので、暑さもあるので頭の整理のところを行う予定でしたが、少し強度を上げて身体を動かしました。
Q、逆転勝利の浦和戦を受けて、名古屋グランパス戦に臨みます。どのような意識を持って臨みますか。
A、多くの選手がこの連戦に出場すると思います。そのなかで、浦和戦では良い時間帯もあれば、悪い時間帯もありましたが、僕はそれぞれの選手が持っている強みというものをしっかりと出してくれたことが勝利に繋がったと思っています。今節も同じように「誰がいない」とか、「どこがこうで」とかではなく、自分の目の前の勝負のところでしっかりとやってもらいたいと思っています。
Q、浦和戦の前半は難しい展開でしたが、後半は個がしっかり噛み合い、東京らしさが出ていたと思います。
A、問題の多くは個人個人の出来ではなく連携です。その連携がうまくいくと、やはり個は光ります。良い時と悪い時の状況というのは、そういうような状態が大きく関係していると思います。
Q、順位的にも絶対負けられない、勝たなければいけない試合です。名古屋グランパスの印象はいかがでしょうか。
A、どの試合とも変わりません。もちろんどの試合も重要な一戦なので、順位は別として、やはり目の前の相手に勝たないと自分たちは上にはいけません。しっかりと勝点3をとらなくてはいけないと思います。名古屋は非常にタイトで、前線にはアクセントを加えられるような選手がいるので、しっかりと警戒しなくてはいけません。守備に関しては、人をつかみにいく意識が非常に高いチームなので、そこの個の局面で負けないことにプラスして、自分たちの攻撃の意図、目線をしっかり合わせて、その圧力をひっくり返していきたいです。
[選手インタビュー]
<常盤亨太選手>

Q、今節の名古屋グランパス戦は、一つでも上の順位で争っていくためにも重要な一戦です。
A、先日の天皇杯以上に大切な試合になると考えています。ここ数試合、軽率な失点をしてしまっているため、次の試合では安易な失点をなくし、無失点にこだわって勝利したいです。内容も大事ですが、より結果が重要です。無失点勝利で結果に繋げたいです。
Q、選手間の距離がプレーを円滑に進めるために重要だと思います。
A、天皇杯の浦和レッズ戦の前半は、その距離感が少し遠過ぎたという印象がありました。具体的には、チーム全体として受け身になってしまった部分があり、ボールを受けにいく動きも直線的で、相手のプレッシャーをまともに食らってしまいました。次の対戦相手である名古屋はマンツーマンでくることが予想されるので、一人を剥がすことができれば相手の守備組織全体を崩せると考えています。相手を剥がす意識や、選手の間でボールを受ける動き、そして前を向くプレーをより一層増やしていきたいです。
Q、決定的なシュートシーンも浦和戦ではありました。
A、ゴール前に入っていくプレーも僕自身の強みです。前半に1本シュートを打ちましたが、後半にチームメイトからのクロスに合わせた場面のように、ゴール前の深くまで進入してチャンスを作り出せることが特長です。今後はその回数をさらに増やしていきたいです。
(後半のシュートシーンは)絶対に決めなければならない場面でした。サッカー選手は結果がすべてであり、自身のゴールはもちろんですが、クロスボールを上げてくれたチームメイトのアシストにも繋がったはずです。ゴールやアシストといった数字に残る部分、そして勝負の分かれ目となる場面には、もっとこだわらなければならないと痛感しました。チームを勝たせるという意味でも、得点をとれれば試合展開が楽になるはずなので、そこもさらに追求していきたいです。
Q、会場の豊田スタジアムには4万人を超える来場が見込まれています。
A、その情報はまだ耳にしていませんでしたが、4万人もの観客が入るスタジアムでプレーできることはとても楽しみです。その大観衆のなかで自分のプレーを発揮することはもちろん、得点を決めることができれば、スタジアムは盛り上がると思いますし、とてもワクワクします。ただ、当日は気温が39度にもなる予報なので、コンディション面も最大限の準備をして試合に臨みたいと思います。
<俵積田晃太選手>

Q、天皇杯の浦和レッズ戦では、俵積田晃太選手が入ってから試合の流れが良くなった印象を受けました。
A、チームとして前半は全体的にうまく機能していませんでしたし、攻撃についてはサイドから崩すシーンも多くありませんでした。後半開始からピッチに入って、まずは自分のサイドで攻撃のリズムを作ることと、攻守においてサイドを活性化することを意識しました。結果として、後半に2点決まり、勝てたことは良かったと思います。
Q、得点をとらなければいけない状況でピッチに入るうえで、特に意識したことはありますか。
A、前半は、ボールをうまく繋いで前進するようなプレー、ゴールに向かうプレーが特に少なかったと思います。ビルドアップにうまく加わりながら、前線の二枚の位置を見つつ、相手陣地で積極的に仕掛けることを意識しました。
Q、前節の京都サンガF.C.戦、水曜日の浦和戦は相手のプレスに手を焼くシーンが多くありました。攻撃面の課題を今節の名古屋グランパス戦ではどのように改善していきたいですか。
A、個人としては、高い位置でのプレスは、その局面で剥がすことでチャンスに直結すると思っています。仕掛ける、というプレーについては僕自身の特長でもあるので、ゴールにつながる仕掛けで攻撃を引っ張っていきたいです。
Q、サイドハーフのポジションでは守備面で求められるプレーも多いと思います。
A、サイドバックの選手の声を聞きながら、相手のサイドの選手を視野に入れてプレーしています。自分の立ち位置や、逆サイドのクロスに対してファーサイドでしっかりとカバーに入ることを意識しています。
Q、リーグ戦では3試合未勝利です。天皇杯浦和戦の勝利をどのように繋げていきたいですか。
A、ここまでの試合結果は受け止めつつ、良い意味でクリアにして試合に臨みたいですし、良かった時のプレーをチームとして表現できれば、前回対戦のように名古屋を相手に勝利できると思っています。全員で勝ちにいきます。


