8/27 浦和戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

INTERVIEW2025.8.27

8/27 浦和戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

<マッチレビュー>  

リーグ戦で味わった悔しさから頭を切り替え、天皇杯をめざす戦いに挑む東京。埼玉スタジアム2002に乗り込み、浦和レッズとの準々決勝は、開始前からゴール裏に詰めかけた青赤ファン・サポーターの「カップを奪い獲れ」という熱いチャントがチームを後押しする。

頂点まであと三つ。日曜日の京都サンガF.C.戦から中2日というスケジュールを受け、さらに契約上の関係で長倉幹樹選手が出場できないこともあって、松橋力蔵監督はスターティングメンバーを5名入れ替える選択を下した。

ゴールキーパーは月曜に韓国代表復帰が発表されたキム スンギュ選手、最終ラインは右から長友佑都、アレクサンダー ショルツ、エンリケ トレヴィザン、岡哲平の4選手が並び、ボランチは橋本拳人選手と常盤亨太選手がコンビを組んだ。アタッカーは右に野澤零温選手が入り、左にマルコス ギリェルメ選手が青赤初スタメン。2トップには東慶悟選手とマルセロ ヒアン選手を起用した。また、ベンチには森重真人選手が7月19日に行われた前回の浦和戦以来、約1か月ぶりにメンバー入りを果たした。

なお、天皇杯はこのラウンドからVARを採用。準決勝行きの切符を懸けた試合は、開始直前に降り出した雨のなかでキックオフを迎えた。

1stHALF—主導権を握られ、攻守において噛み合わず

立ち上がりから浦和がボールを握る時間帯が長く、東京は思うようにボールをつなぐことができない。サイドを起点に中央へボールを差し込まれ、何度も危ないシーンを作り出されてしまう。

前半17分には左サイドのマルコス選手が中央へ横パスを送り、ヒアン選手が受けてトラップから左足で狙ったが、これはゴールキーパーの正面。その後、東京が徐々に相手陣内でのプレーを増やし、長友選手のクロスや東選手のボレーなどで流れを引き寄せていく。

ただし、相手のカウンターに対して身体を張って止めるケースも散見され、前半25分までに橋本、常盤の両ボランチがイエローカードをもらってしまった点はどう響くのか。思うように前へ運べない状況が目立つだけに、ボールの出し手にパスコースを作る動きを増やすことで攻撃の糸口を見いだしていきたいところだ。


その後も浦和にポゼッション率を高められ、セカンドボールを拾われる時間が続くなかで、東京は攻撃面で選手同士の意図が合わないシーンが多く、なかなか決定的なチャンスを生み出すことができない。せっかく奪ったボールを単純なミスで失うことも多く、もったいないプレーが目立ってしまう。最終ラインからつなごうとしてもパスコースがなく、前半42分には左サイドから中央に入れたボールが相手に渡ってしまい、そのまま流れるようなカウンターから金子選手に左足で決められて失点。もったいない形で先手を奪われてしまう。

選手それぞれの持ち味を組み合わせることも、チームとして攻撃の形を見せることもできなかった前半は、1点のビハインドで折り返すことになった。

2ndHALF—ヒアンの2ゴールで逆転。準決勝進出を決める

何とかして流れを変え、勝利をつかみたい東京。松橋監督はハーフタイムに野澤選手、岡選手を下げて俵積田晃太選手とバングーナガンデ佳史扶選手を投入。マルコス選手を右のアタッカーに回し、両サイドの攻撃力を高めることを期待した選手交代を行った。

開始直後の後半1分にはマルコス選手が中央をドリブル突破して前方のヒアン選手につなぎ、背番号19が左足でシュート。これはゴール左に外れたが、いきなりビッグチャンスを生み出した。

そしてこの選手交代が青赤に同点弾をもたらす。後半7分、俵積田選手が左サイドのタッチライン際で縦に仕掛け、そのまま前方へスルーパス。ここに流れたマルコス選手が自慢のスピードを活かしてドリブルで運ぶと、この折り返しを東選手がつなぎ、ヒアン選手が相手選手をクルリと回り込むようなターンから難しい体制で右足シュートを流し込んでゴール。個の力を融合させた攻撃で東京が試合を振り出しに戻すことに成功した。

後半17分には東選手に代えて仲川輝人選手を2トップの一角に。流動的な攻撃を見せられるようになってきたチームの連動性をさらに円滑にさせるという役割を託して背番号39をピッチに送り出した。

勢いに乗る東京は続く同20分、ショルツ選手のロングフィードにマルコス選手が抜け出し、巧みなトラップで相手ディフェンダーをかわして持ち直し、中央へラストパス。ここに走り込んだヒアン選手が右足のワンタッチシュートをゴールに突き刺し、試合をひっくり返す一撃を見舞う。


殊勲の2ゴールを決めたヒアン選手だったが、後半25分に左足をつってしまい、代わって最前線に山下敬大選手がイン。同時に常盤選手から小泉慶選手への選手交代も行われ、先手を打つ形で90分間の交代枠を使い切った。

前線からの圧力を強め、球際を制しながら積極的な姿勢を見せる東京。後半35分には前半から献身的に走り続けたマルコス選手が足をつってしまうシーンもあったが、交代枠が残っていないこともあり、何とか回復してプレーを続行。ゴール前で浦和の猛攻に耐えていたエンリケ選手も疲労が足に溜まって倒れ込むなど、チーム全員が勝ち上がりに向けて懸命の戦いを見せていく。

後半終了間際にはダッシュができないマルコス選手を中央に配し、フレッシュな仲川選手や山下選手が右サイドをフォロー。仲川選手は試合展開やチームメイトの状況を見ながら無理に走らせることなく、自分で狭いスペースに仕掛けてファウルをもらうなど、的確な判断力を見せながらチームに勝利を引き寄せようと努める。


後半アディショナルタイムは10分の表示。パワープレーでサイドから何度もクロスを放り込んでくる浦和に対して、青赤イレブンは最後の力を振り絞って全員で相手の攻撃を跳ね返していく。

攻める浦和。耐える東京という構図が続いた長いアディショナルタイムをしのぎ切ってタイムアップ。「ファン・サポーターの想いに結果で応えなければならない」という強烈な覚悟を持って臨んだ天皇杯準々決勝、気力と体力を出し切って中2日という過密スケジュールを乗り越え、青赤の戦士たちが再び浦和相手の見事な逆転勝利でセミファイナル行きのチケットをつかんだ。


MATCH DETAILS

<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK キム スンギュ
DF 長友佑都/アレクサンダー ショルツ/岡哲平(後半0分:バングーナガンデ佳史扶)/エンリケ トレヴィザン
MF 東慶悟(後半17分:仲川輝人)/橋本拳人/常盤亨太(後半28分:小泉慶)/野澤零温(後半0分:俵積田晃太)/マルコス ギリェルメ
FW マルセロ ヒアン(後半28分:山下敬大)

SUBS
GK 波多野豪
DF 森重真人/土肥幹太
MF 北原槙

MANAGER
松橋力蔵

GOAL
後半7分:マルセロ ヒアン / 後半20分:マルセロ ヒアン

<浦和レッズ>
STARTING Ⅺ
GK 西川周作
DF 石原広教(後半42分:荻原拓也)/ダニーロ ボザ/マリウス ホイブラーテン/長沼洋一
MF 安居海渡(後半32分:松本泰志)/サミュエル グスタフソン(後半42分:原口元気)/金子拓郎(後半32分:チアゴ サンタナ)/マテウス サヴィオ/松尾佑介
FW 小森飛絢(後半17分:関根貴大)

SUBS
GK 牲川歩見
DF 根本健太
MF 大久保智明/柴戸海

MANAGER
マチェイ スコルジャ

GOAL
前半42分:金子拓郎


[松橋力蔵監督 インタビュー]


Q、本日の試合の振り返りをお願いします。
A、本当にコンディションが難しいなかでのゲームではありましたけれども、最後まで諦めずに戦ってくれた選手を誇りに思いますし、それを後押ししてくださったファン・サポーターのみなさんにも本当に感謝申し上げます。今日の勝利は素晴らしい勝利だと思います。

Q、この試合展開は思い描いていたシナリオ通りだったのでしょうか。1点取られたことやハーフタイムの交替も含めてご説明いただけますか。
A、思い描いていたような内容では正直なかったです。相手は前半からしっかりとハイプレスでくるチームですし、そこをしっかりと外していくというところをめざしながらやったものの、リーグの京都戦と同様に自分たちのエラーから相手にボールを渡して失点してしまいました。そこの安定感を欠いているということは変わらない状態ではありましたけれども、少しずつ改善傾向でもあり、良くなっている部分もあったので、攻められながらもそこで多少リズムを作ることができていました。

ただ、戦術云々ではなく、自分たちがボールを奪って次の攻撃につなげる部分でのエラーが非常に多かった前半だったので、必然的に守る時間が多くなってしまいました。ああいう形で一点をとられてしまったなかで、もう戦術的なことは一つぐらいで、相手が前からプレスにきているところの出口がここにできるから、このポジションの選手はもうちょっとここに入ってほしいなどを伝えました。あとはもちろんトーナメント戦で勝たなければ次にいけないので、もう戦術云々は関係なく、もうやるしかない。もう失うものなど何もない。そんなにビビってサッカーをやるなという話をしました。ここまで少しネガティブな感じでやっている部分があったので、今日の試合前のミーティングでも自分の強みを出してくれ、と。その強みでしか勝負はできないと伝えていました。弱みは誰にでもあると思いますし、チームには必ず存在するものですが、それはみんなで補っていくなかで、個人としてもチームとしてもしっかりと自分のストロングを出していくというところを強調しました。そういう意味では後半、そういう部分をしっかり出してくれたことが逆転につながったと思っています。

Q、相手は中4日、東京は中2日。契約上、出場できない選手もいるなどの状況でさまざまな不安要素もあったにもかかわらず、采配はかなり強気だったと思いますが、そのあたりの要素を教えてください。
A、出場できない選手がいることは不安にはなってはいないです。一番の不安はやはり選手のコンディションでした。この2日間はトレーニングがほぼできていない状態で、戦術的な確認も今日の試合前のミーティングですべてやりました。ただ、そこでも特別なことは一つもなくて、我々がこれまでずっとやってきていることです。今日出場した選手にも、ここまでの試合やトレーニングのなかで求めているものがあったので、そこでの不安は特にありませんでした。本当にコンディションのところだけが不安でした。ただ、その不安は全く真逆になったと言いますか、前の試合に出場していない選手が足を攣り始めて、連戦で出ている選手が最後までやり切ってくれている。なので彼らに、足を攣った選手に対してどうやったら足を攣らないか教えてやってくれと、ベンチのなかでそう話しました。

Q、ここまで決定力を欠いていることが課題だったと思いますが、今日は決め切って、最後は全員で耐えての勝利でした。この戦いを今後にどのようにつなげていこうと考えていますか。
A、苦しい状況を乗り越えていくということはチームの力に必ずなると思いますし、成長する上ではすごく大事なポイントだと思います。いつも安定的に、リラックスして、平常心で試合に臨めるというわけには僕はいかないと思っています。その上で考えれば、やはり今日は様々な困難というか不安な材料で、選手もナーバスになるようなところもありましたが、試合を90分通してやるなかではエラーも受け入れながら、しっかりと次につなげていく。そういう表情というものを、しっかりと見れた選手もいます。そこを出し切れずに終わってしまった選手も多分いると思いますが、こういう困難のなかで、乗り越えたこの結果を大きな自信に絶対に繋げなくてはいけないと思いますし、必然的に個人のなかで大きな自信になるものだと僕は思っています。



[選手インタビュー]

<マルセロ ヒアン選手>


Q、前半は思うように攻撃ができず、なかなかボールが回ってきませんでしたが、試合展開をどのように見ていましたか。
A、前半はプレスがはまらなかったというところがあって、なかなかチームとしてうまくいかなかったと思います。ただ、後半はプレスも機能して、さまざまな面で良い形をつくることができました。その結果、なんとか逆転して次の試合に進むことができました。

Q、1点目の得点シーンは難しいシュートに見えましたが、どのようにゴールを狙って足を振りましたか。
A、反転してのシュートでしたので、反転した時にゴールは見えていなかったので、ゴールの位置を正確に捉えるのは難しい状況でしたが、自分の感覚を信じてシュートを打った結果、ゴールにつながりました。

Q、2点目はマルコス ギリェルメ選手からラストパスがきて決め切りました。
A、あのシーンではカウンターのロングパスからマルコス選手が抜け出してドリブルで持ち上がり、私自身はゴール前でパスを待っていました。マルコス選手から素晴らしいパスがきたので、あとは決めるだけでした。マルコス選手に感謝しています。

Q、今シーズンは浦和を相手に3試合で4ゴールと結果を残しています。
A、それは私も素晴らしいことだと思っています。ですが、もちろん他の試合でもチームを助けるゴールを決めたいと思っています。

Q、天皇杯は次の試合が準決勝ですが、その前に中3日でリーグ戦が控えています。どのように準備していきますか。
A、まずはしっかりと休養をとりたいと思います。そして、また次の試合に向けて相手チームの分析をしながら、次の試合に向けた準備を進めていきたいと考えています。



<長友佑都選手>


Q、立ち上がりから苦しい展開で先制を許し、後半に入って流れを変えました。90分フル出場したなかで、試合の流れをどう感じていましたか。
A、前半の入りが悪過ぎました。あの時間帯で試合が決まらなかったのが幸運だったと思わないといけません。試合の入りの悪さだったり、浦和レッズが中4日でウチが中2日での試合という影響はあるかもしれないけど、それは言い訳になりません。本当に入りが悪過ぎて前半で試合が決まっていてもおかしくなかった。そこは反省しなければいけません。ですが、90分を通して見れば、後半に盛り返して、途中で出場した選手も流れを変えたり勢いをもたらしてくれて、チームに勢いが出たところでしっかりと逆転して勝てたことは、チームの底力や意地を見せられたと思っています。

Q、耐える時間帯が長いなかで、長友選手自身は焦れずに守備の対応をし続けた印象です。
A、あれだけ押し込まれると、「いつかやられてしまう」流れになってしまいます。最後のところでやられなかったとしても、勝利の確率論としてはあれだけ押し込まれると難しくなります。自分自身は、自分のところでは絶対にやられないという強い気持ちを持ってやっていましたが、チームの入りの悪さだけでなくて、自分自身も前半からチームに勢いをもたらすプレーができなかったことは反省しなければいけません。

Q、一方で試合終盤、リードを守り切る流れでは長友選手がプレーでチームを牽引していたと感じています。
A、状態も良いですし、自分のサイドからやられる気はしませんでしたし、そこはしっかり固く締めつつ、いけるところは前に出ていって攻撃にも勢いをもたらすところは考えながらやっていました。90分を通じて足も攣らず、フィジカルコンディションも問題なく戦えました。「みんな足攣り過ぎだろ、俺は張っているところすらないぞ」と思いながらやっていました(笑)。

Q、後半の途中からはキャプテンマークも巻きました。
A、キャプテンマークを巻いても巻かなくても、プレーで見せることがすべてです。プレーで見せられずに鼓舞しているだけではチームメイトにも響きません。僕自身はプレーで見せて、みんなの見本にちゃんとなれるように、今後もそういう気持ちでやっていきたいと思います。

Q、天皇杯はタイトルまであと二つと迫りました。
A、ここまできたら優勝しかないですよ。相手がどこだろうが、自分たちがカップを獲ることしか考えていません。ここまできたら、もうやるしかないです。



<マルコス ギリェルメ選手>


Q、試合終盤には足が攣っている状態でも、最後まで献身的なプレーでチームの勝利に大きく貢献したと思います。
A、約2か月試合に出場していなかったこともあり、コンディションや試合感覚が足りなかったことが反省点です。足を攣ってしまいチームに迷惑をかけてしまいましたが、最後の最後まで諦めずにプレーすることを意識しました。試合終盤はチームメイトが走って、身体を張ってプレーする姿もあり、なおさら頑張ることができました。全員で掴みとった勝利だと思います。

Q、浦和レッズのサイド攻撃を抑える守備の貢献度も非常に高かったと思います。
A、私のプレースタイルは攻守においてチームを支えることです。前半は守備で後半は攻撃で前に顔を出すプレーが表現できました。しかし、まだまだ足りていません。ここからさらにコンディションを高めていきたいです。

Q、チームの1点目はマルコス選手が左に流れ、ゴール前に送ったクロスボールが同点に繋がり、2点目はスピードに乗ったプレーからマルセロ ヒアン選手の得点をアシストしました。
A、1点目は、スペースを見つけて左に流れ、ゴール前に入れたボールが相手ディフェンダーに当たり、ヒアン選手につながりました。2点目については、アレクサンダー ショルツ選手が素晴らしいボールを前線に送ってくれて、自分の得意とする形に持ち込むことができました。クロスボールに対してヒアン選手が冷静に決めてくれたことに感謝しています。私自身のプレースタイルや特長が活きるように、味方との連携をさらに深めていきたいです。

Q、試合後の挨拶時には、熱いものが込み上げてくる様子も窺えました。
A、約2か月、本当に苦しい想いをしてきました。そのような状況でも家族は親身になってサポートをしてくれましたし、心の支えになってくれていました。ここまで本当に苦しかったですが、いつかくるチャンスを掴むために積み上げてきました。良い形で今日の試合を終えられたことを嬉しく思いますし、ファン・サポーターのみなさんの前に挨拶しにいった時には込み上げるものがありました。熱い応援を届けてくれたみなさんの前で勝利できたことを嬉しく思います。