<天皇杯ラウンド16・セレッソ大阪戦のレビュー>
2回戦でツエーゲン金沢、3回戦で大分トリニータを破った東京は、ラウンド16でセレッソ大阪と対戦。6月の中断明けから4勝1敗という好成績で勢いに乗ってヨドコウ桜スタジアムに乗り込んだ。
序盤から相手にボールを保持される時間帯が続き、なかなか攻撃の形を作り出せない東京。飲水タイムで修正を施したが、直後に白井康介選手が負傷交代を余儀なくされ、急きょ室屋成選手を右サイドバックに送り出すアクシデントにも見舞われた。
前半終了間際から徐々に相手の良さを封じて持ち味を発揮し始めると、後半はまさしく一進一退の攻防に。相手のカウンターをバングーナガンデ佳史扶選手が果敢なプレスバックでカットすれば、佐藤恵允選手のドリブル突破からのラストパスは相手に阻まれてしまう。

そんな展開から先手を奪ったのは東京だった。ポイントになったのは長倉幹樹選手のポストプレーだ。後半10分、自陣からポゼッションしたボールを最前線から落ちてきた背番号26が受けると、素早いターンから前線へスルーパスを供給。これに抜け出した仲川輝人選手が巧みに流し込み、東京はリードを奪うことに成功する。
5分後に同点とされてしまった東京だが、高宇洋、俵積田晃太の両選手を投入して攻撃を活性化させると、キム スンギュ選手もファインセーブでゴールを守る。

そして後半35分、長倉選手のカットから俵積田選手が左サイドからピッチを横断するようなドリブルを見せて右サイドへ展開。ここで佐藤選手がファーサイドへ浮き球のパスを送ると、ここに顔を出したのは攻撃の起点となった長倉選手。ワントラップからゴールへ流し込んで勝ち越しに成功する。
その後も守護神が立て続けにファインセーブを見せてピンチを切り抜けてタイムアップ。東京が2016シーズン以来となる天皇杯ベスト8進出を果たした。
<天皇杯 準々決勝のプレビュー>
京都サンガF.C.に喫した悔しい大敗から中2日。天皇杯優勝をめざして浦和レッズとの準々決勝に臨む。
準決勝への切符を懸けた埼玉スタジアム2002での一発勝負。浦和は金曜日に試合を消化して中4日の状態で試合に臨んでくるだけに、東京としては何よりフィジカルとメンタルの回復がポイントになる。そのなかでもメンタルをどれだけ切り替えてキックオフを迎えられるかが重要だろう。
前節は松橋力蔵監督の下、ポゼッションにチャレンジしてきたなかで、対照的なプレッシングスタイルを持つ京都に完敗。前から果敢に圧力を掛けてくる相手に圧倒され、チームとして状況判断と臨機応変な戦い方の重要さを痛感する結果となってしまった。相手の狙いと試合展開を読んで柔軟に対応を変化させることの重要性を改めて感じさせられた試合となった。

とはいえ、そこを引きずっても先に進むことはできない。リーグ戦から天皇杯に切り替わることを一つのきっかけに、気持ちを入れ替えてポジティブに転換していかなければならない。
キャプテンの小泉慶選手は「もちろん京都戦のことは忘れてはダメですが、天皇杯はここまで勝ち上がってきたし、ここで勝つことで可能性を広げることができる。あまり背負い込み過ぎて、結果ばかりを気にして、自分たちのプレーを見失うことだけはしたくない。みんなが自信を持ってやれれば、自然と良い結果がついてくると思うので、しっかりそこにフォーカスして取り組んでいきたい」と前を向く。
浦和とは約1か月前に対戦したばかり。今シーズンはアウェイゲームで悔しい逆転負けを喫しながら、ホームで悔しさを晴らす形で鮮やかな逆転勝利を飾ったのは記憶に新しい。今回も浦和から期限付き移籍している長倉幹樹選手は契約の関係で出場することができない。
浦和は東京戦に敗れてから3勝1分と復調していたが、先週末に行われた柏レイソル戦で前半に2点を先行しながら後半の4失点で逆転負け。相手もメンタルを立て直し、気持ちを引き締めて臨んでくることが予想される。

東京は現在、公式戦5試合連続で失点を喫し、3試合続けて先制を許していることもあり、試合の入り方に気を付けなければならない。一発勝負、しかも埼スタでのゲーム。試合を優位に運び、自分たちの持ち味を発揮していくためにも試合運びの甘さや一瞬の隙も見せない戦い方が必要となる。
橋本拳人選手が「先制点がカギになると思う。失点が続いているので、まずはしっかりとした良い守備から良い攻撃を意識して、試合の入りから勢いのある守備、そして勢いのある攻撃に移れるようにやっていきたい」と語れば、かつてのホームスタジアムに戻るアレクサンダー ショルツ選手は「浦和とは対戦したばかりだけど、前回とは違った展開になると思う」と、撃ち合いになった1か月前の対戦を思い起こしながら翌日の試合をイメージする。
サッカーの悔しさは、サッカーでしか晴らせない。東慶悟選手は前節の悔しさをにじませながら、天皇杯に向けて「自分たちの意地と、やれるんだという姿を見せなければならない。それはサッカーでしか、試合でしか取り返せない。意地を見せるしかないし、試合で証明するしかない」と覚悟を固めた。
両チームとも前節で悔しい敗戦を喫しているだけに、熱いファン・サポーターの前で是が非でも勝利を手にしなければならない重要なゲームとなる。まさに意地のぶつかり合いだ。
前節の京都戦、0-4という悔しい結果に終わったにもかかわらず、味の素スタジアムの青赤ファミリーは「カップを奪い獲れ」の大声援で送り出してくれた。その想いに何としても応えなければならない。意地を胸に秘め、大きな責任を背負って、青赤戦士たちが埼スタのピッチに立つ。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、京都サンガF.C.戦の2失点目と4失点目はチーム内のエラーが失点につながったシーンに見えました。
A、その通りだと思います。あの時になぜいつもやっているシンプルなことができなかったのか、と思う部分もあります。そのシンプルなところが失点につながってしまいました。昨日のトレーニングは、そういうエッセンスを入れながら実施をしました。ゴールキーパーや、ボールホルダーに選択肢を多く持たせるための準備が必要です。確実なパスコースを作ることはもちろんですが、そのうえでジャッジをするのはボールホルダーですし、仮に正しいジャッジができなかった場合でも、誰かがピッチ上でリーダーシップをとらなければいけません。選手たちには、シンプルなことをもう一回意識してトレーニングから取り組んでもらいました。
Q、明日は浦和レッズ戦となります。リーグ戦では3-2でお互いホームチームが勝っています。
A、自分たちのやっていることを貫くだけですし、そこに迷いが出ないようにやっていきたいです。勝たなくてはいけない試合です。当然、どの試合も一緒ですが、トーナメントなので次に進むという意味でも、いつも以上に細かく考えていく必要があると思っています。
Q、勝つ=失点しないことも重要になると思います。ここ数試合の失点数が増えてきている状況をどのように改善しますか。
A、そこはしっかりと抑えなくてはいけませんが、失点をしても、それを上回る得点を奪っていく姿勢も大事にしていきたいです。もちろん、しっかりと準備をして試合に臨んでいますが、そのなかで強度が保てないシーン、切り替えの遅さというものが表れてしまっています。まずはそこをしっかりと修正して、攻守の切り替えについて、もっと強調しないといけないと思っています。
Q、一方で得点という部分では、自分たちが表現したい形は具体的にどのようなところでしょうか。
A、やはり相手にダメージを与えるような攻撃をしなくてはいけません。一番得点が生まれるところに何回ボールを届けられるか、そこに入っていけるかが大事です。その手前のところは、自分たちのなかでもやれている部分が多くあるので、ゴール前に送り届けるところの選択肢に改善が必要です。ゴール前での大きなチャンスの時にもう一つ別の選択肢があるのに、そこが見えず、相手が対応できてしまう場所にボールを入れてしまうシーンが京都戦をはじめ多々ありました。クオリティ次第では崩せる部分が大いにあったと思います。より精度を高めていき、選択肢をどう活かしていくかというところに注力していきたいと思います。
[選手インタビュー]
<アレクサンダー ショルツ選手>

Q、京都サンガF.C.戦の敗戦をどのように受け止めていますか。
A、おそらくファン・サポーターのみなさんは、チームがどうやってこの敗戦から立ち直り、どのようなリアクションをとって試合に臨むのかを期待していると思います。その姿勢をファン・サポーターのみなさんに見せなければいけません。
Q、今回は埼玉スタジアム2002で浦和レッズとの試合になります。前回対戦からあまり期間が空かずに試合を迎えました。
A、(浦和との対戦を再び迎えるまで)少し早過ぎるなと思います。ですが、それはもうどうしようもないことですし、今はただ試合が楽しみです。浦和とは2回目の対戦になるので、試合に向けてどんな気持ちが湧いてくるのかは自分自身で分かっています。1回目の対戦時と比べると、試合を迎える楽しみの方が強いです。
Q、天皇杯は負けたら終わりのトーナメント形式です。どのようなところがポイントになると思いますか。
A、実際どうなるかは分かりませんが、これまでの浦和との試合よりも、もっと拮抗した試合になると思っています。ディフェンスの選手として相手のチャンスを最小限にとどめたいです。また、セットプレーが勝敗を分ける、重要なポイントだと考えています。すべてにおいて、しっかりと準備をして臨みたいです。
<マルセロ ヒアン選手>

Q、天皇杯準々決勝の浦和レッズ戦を迎えるにあたり、今の心境を教えてください。
A、負けたら終わってしまうトーナメント方式の試合なので、チームの勝利を最優先にプレーで貢献したいです。先日の京都サンガF.C.戦から中2日しかありませんでしたが、短い期間のなかでしっかりと準備を進めてきました。コーチングスタッフから試合のフィードバックや対戦相手の特長など、多くの情報を共有してもらっているので、万全の体制で試合に臨めると思っています。
Q、リーグ戦の浦和との対戦では、2試合で2ゴール。良いイメージもあるのではないですか。
A、2試合ともゴールを決めているので、モチベーションも非常に高いです。3試合連続で決められる自信もありますし、積極的に狙っていきます。そして、勝ちます。
Q、京都戦では、途中出場ながら得点こそありませんでしたが、相手ゴールに迫るシーンを何度も見せてくれました。
A、得点でチームを助けることができなかったことが何より悔しいですが、浦和戦ではゴールを決めて、勝利に貢献することだけをこの2日間では注力してきましたし、ゴール前で結果を残すことに集中しています。この一戦の勝利に私が持っているすべての力を出し切りたいです。
Q、短い期間で特に集中して取り組んだことがあれば、教えてください。
A、中2日というタイトなスケジュールで浦和戦を迎えるので、ベストコンディションで試合に入ることができるように準備を進めてきました。このような難しいスケジュールで試合を迎えることは初めての経験ではないので、いつも以上に集中力を研ぎ澄ましていきたいと思います。

