8/24 京都戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

INTERVIEW2025.8.24

8/24 京都戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

<マッチレビュー>  

あの悔しさを忘れず、あの期待に結果で応えるために──。

京都サンガF.C.を迎え撃つ明治安田J1リーグ第27節は、アウェイの地で喫した完敗の借りを返すためにも絶対に勝たなければならない一戦。昼間から過酷な暑さに見舞われ、キックオフ時も空気の薄さを感じるほどの厳しい環境下で試合開始のホイッスルが響いた。

一戦必勝を期したゲームで松橋力蔵監督がセレクトしたスターティングイレブンは、前節の湘南ベルマーレ戦から一人を変更したメンバー。ゴールキーパーにキム スンギュ選手を置き、最終ラインは右から長友佑都、アレクサンダー ショルツ、岡哲平、バングーナガンデ佳史扶の各選手が並ぶ4バック。橋本拳人選手と小泉慶選手が中盤の底でコンビを組み、アタッカーは右に野澤零温選手、左に俵積田晃太選手が入った。2トップは長倉幹樹選手と仲川輝人選手で編成。また、V・ファーレン長崎から期限付き移籍したマルコス ギリェルメ選手、そしてJFA・Jリーグ特別指定選手として登録され、来シーズンの青赤新加入が内定している小湊絆選手が公式戦初のベンチ入りを果たした。

青赤の選手たちが試合前から勝負のポイントに挙げていたのが、相手のプレッシャーをどう回避して攻撃につなげるかという部分。立ち上がりから予想どおりにハイプレスを仕掛けてきた京都に対して、東京がどう対応していくかが注目された。

1stHALF—序盤の失点が響き、東京は大きなビハインドで後半へ折り返し

相手の勢いに押される序盤、少しずつ攻め手を探っていたタイミングで思わぬ展開が東京を待ち受けていた。前半5分、京都の大きな左クロスに対して遅れて入った佳史扶選手が競り合いのなかでファウルをとられてペナルティキックを献上。これをラファエル エリアス選手に冷静に決められ、早い時間に先制を許してしまう。続く同11分には自陣でつなごうとしたゴールキックが乱れて相手のプレスを受けたところでキム スンギュ選手が相手を倒したとして、またもペナルティキックの判定。これを再びエリアス選手に左足で蹴り込まれ、リードを広げられてしまうこととなった。

2点を先行した京都のプレスが少し弱まったこともあり、前半20分頃から徐々に東京がボールを握って攻撃に転じる時間帯が増えていく。左右に振りながら前方のスペースに飛び出す連動性を見せるようになり、あと一歩のシーンを生み出すようになった。

しかし、相手の守備も固く、効果的な縦パスを差し込むことができない。前半34分には俵積田選手が左サイドを単独でドリブル突破し、ペナルティエリア内まで持ち込んで左足で強烈なシュート。これは相手ゴールキーパーに防がれてしまったが、一発で流れを変えたいという背番号33の想いが乗ったアタックだった。

その後もしっかりとブロックを作り、素早いスライドと中央を締める守備から機を見たハードプレスを見せてくる京都。東京も右サイドで野澤選手の右クロスから仲川選手がヘディングを狙うなどしていくが、堅守からリズムを作ろうとする相手を攻めあぐねて後手を踏むようなパスが増え、なかなか決定的なシーンを作り出せない時間が続く。

前半終了間際の45分には、ロングスローの流れからセカンドボールを拾われてクロスボールを入れられ、ゴール前で鈴木選手に鮮やかなダイビングヘッドを流し込まれて0-3。痛恨の失点で苦しいスコアに追い込まれてしまう。

前半はこのままタイムアップ。ゴール裏に詰めかけた青赤のファン・サポーターからは「意地見せろ」というコールが鳴り響いた。

2ndHALF—流れを掴めず、すべてで相手に上回られた一戦

劣勢に陥っても熱いサポートを続けてくれる青赤ファミリーのために、何とか結果とプレーで応えなければならない後半。松橋監督は交代カードを切らずに選手たちを送り出した。

後半開始早々の3分、キム スンギュ選手が決定的なシーンを防ぐファインセーブを見せると、そのこぼれ球を拾った小泉選手がロングレンジのドリブルで持ち上がって左サイドへパス。スピードに乗った状態でボールを受けた俵積田選手がそのまま加速してゴールライン際まで運んで折り返したが、これは相手選手がブロック。惜しくもシュートにはつながらなかったが、意地を見せてゴールに矢印を向けていく青赤戦士の気持ちが溢れ出たカウンターとなった。

後半17分には長友選手の右クロスから、中央に入り込んだ長倉選手がドンピシャのタイミングで強烈なヘッド。だが、これは相手ゴールキーパーのファインセーブに阻まれてネットを揺らすことができない。

攻勢を強めたい東京は同18分、仲川選手と野澤選手に代えてマルセロ ヒアン、マルコス というスピード自慢の両選手を投入。マルコス選手はセットプレーキッカーを託され、ヒアン選手はゴール前で強烈なシュートを放つなど、いきなりチャンスに絡んでいく。後半24分にはマルコス選手がミドルレンジから右足でコントロールショット。これも相手ゴールキーパーに横っ飛びで防がれてしまったが、今後の可能性を感じさせるシーンだった。

しかし、またしても痛恨の失点を喫してしまう。後半36分、自陣でゴールキーパーからつなごうとしたところで松田選手に猛プレスを受けてロスト。そのままフリーのエリアス選手に流し込まれてハットトリックを決められてしまった。

後半39分には俵積田選手、橋本選手を下げて、ボランチに常盤亨太選手、左アタッカーにトップチームデビュー戦となる小湊選手を投入。小湊選手は直後のプレーでカウンターに抜け出したヒアン選手の折り返しに詰めて初ゴールをマークしたかと思われたが、ヒアン選手にオフサイドがあったとしてノーゴールに。

小湊選手はその後もクロスボールに対してアグレッシブにヘディングを狙うなど短い時間で積極性を見せていく。チームは3分間のアディショナルタイムにヒアン選手が意地の一撃を見舞ったかと思われたが、これもVARのサポートでノーゴールの判定に。

試合はこのままタイムアップ。相手の出方を予測し、京都も想定どおりのサッカーを見せてきたが、立ち上がりから相手の勢いに呑まれるような形で失点を重ねて0-4の完敗。ここまで積み上げてきた東京らしさを披露できず、アウェイの悔しさをさらに上積みするような屈辱の結果となってしまった。

試合後、スタジアムを周回する選手にブーイングが飛ぶシーンも見られたが、そこで鳴り響いたのは「カップを奪いとれ」の大声援。中2日で臨む浦和レッズとの天皇杯準々決勝に気持ちを切り替えようとするファン・サポーターの力強い声に、またも背中を押される形でスタジアムをあとにした。


MATCH DETAILS

<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK キム スンギュ
DF 長友佑都/バングーナガンデ佳史扶/アレクサンダー ショルツ/岡哲平
MF 橋本拳人(後半39分:常盤亨太)/野澤零温(後半18分:マルコス ギリェルメ)/俵積田晃太(後半39分:小湊絆)/小泉慶(後半32分:東慶悟)
FW 長倉幹樹/仲川輝人(後半18分:マルセロ ヒアン)

SUBS
GK 波多野豪
DF 土肥幹太/エンリケ トレヴィザン
FW 山下敬大

MANAGER
松橋力蔵

GOAL


<京都サンガF.C.>
STARTING Ⅺ
GK 太田岳志
DF 福田心之助(後半26分:須貝英大)/宮本優太/鈴木義宜
MF 福岡慎平/武田将平(後半26分:中野瑠馬)/松田天馬(後半39分:長沢駿)/平戸太貴/佐藤響
FW ラファエル エリアス(後半39分:奥川雅也)/原大智(後半18分:山田楓喜)

SUBS
GK 圍謙太朗
DF 麻田将吾/アピアタウィア久
MF グスタボ バヘット

MANAGER
曺貴裁

GOAL
前半8分:ラファエル エリアス / 前半13分:ラファエル エリアス / 前半45分:鈴木義宜/ 後半36分:ラファエル エリアス


[松橋力蔵監督 インタビュー]


Q、試合の総括をお願いします。
A、前回、本当に悔しい負け方をして、今回こそはという想いでは臨みましたが、残念ながらそれを上回るスコアで敗れてしまいました。序盤のエラーで3失点、そのうちビルドアップであったり、つなぐところでのミスという部分で、やはりもう少し細部に対してのコーチングというか準備というものが必要だった、と。そこの落ち度はやはり私のミスですし、おそらくもう何度もトレーニングしているというところもあり、伝えていることもあったので、そこはもうできるものという油断がこの失点を生んでしまったと思っています。

ただ、ゲームのなかでは劣勢ではありながらも、自分たちが準備していたような形での攻撃はしっかりできた部分も当然ありました。ただ、そこでも相手のゴール前の硬さをこじ開けることができなかった。そして、また同じようにビルドアップのミスからの最後の4失点目になってしまったというところで、自分たちがやろうとしている形、スタイルというものを覆されてしまった。本当に悔しいですし、自分の不甲斐なさというものを感じるゲームでした。ただ、このまま終わるわけにはいきませんし、しっかりとまた次に準備をして、試合に挑まなくてはいけないと思っています。

Q、前半からクロスボールがよく入っていて、コーナーキックも多かったと思いますが、なかなか決定的な形に結びつきませんでした。そのあたりはどのように考えていましたか。
A、プランのなかでは、サイドで相手が前に出てくる分、出てきた後ろではなくて、横から入っていくこと、サイドの数的優位を作ることによって相手が下がっているのかどうかというところを見てゴールキーパーとディフェンスラインの間を狙ったり、マイナスも含めた狙いはありました。しかし、形はありつつも最終的にニアに入っていく選手だったり、クロスボールの質も当然あるとは思いますが、まだそこのクオリティは発揮できていない。質は高くないというところで、僕のトレーニングを考えても、クロスボールからのトレーニングというのは非常に少ないので、もっとやらなくてはいけないなと思っています。

Q、京都サンガF.C.の曺貴裁監督から、ゴールキックから繋いでいくスタイルが日本のなかでは評価されるような風潮があるが、相手のゴールキックこそがチャンスだと思っているというようなコメントがありました。
A、本当に、僕のなかではたった一つだけだと思っています。それは、ここで敢えて言うとすれば、距離感であったり、タイミングであったり、そこさえしっかりと僕が彼らに「こう来た時にはこういう立ち方」、「この距離感、こう来た時には……」というところをもっともっと伝えることができれば、僕は十分にプレスを剥がせると思います。もちろん、京都は全員の守備意識がとても高いチームですので、そこでもしっかり戻ってきますし、そこを受け入れながらプレスにきているということを僕らは十分に分かっています。ただ、同じようにビルドアップのところでは、相手のフォワードも人間ですので何回追い掛けられるんですか、と。必ず疲弊するところと必ずエラーを出すところがある。そのエラーをうまく突けば、自分たちが良いリズムで前進することができます。そういうシーンもいくつかあったと思っています。

ただ、失点の確率の高いボールの入れ方と距離感、それとそこに対する判断というものがすごく欠けていました。僕も見ていて、そこに立っていたら相手は直線的に最短距離でプレスに来るよね、と思いながらも、声は届かず、ボールを入れてしまった。しっかりコントロールしてアレクサンダー ショルツ選手に出せればプレスを回避できた部分はあると思うんですが、相手のプレッシャーによって自分の技術が不安定になってあのような状況になってしまった。本当にそこの細部をもっと詰めなくてはいけないと思っています。

Q、自陣でのゴールキックは、考え方としては相手を引き込んで疲弊させたり、そういうチャンスという捉え方ということでしょうか。
A、はい。相手をこさせて、背後のスペースをうまく使っていく。もちろん相手のゴールの近くではないので、そこからビッグチャンスになるということではありません。ただ、またそれを90分ずっと続けるわけではなく、相手も対応してきたなかで、戦い方や交代カードであったり、相手のカードの切り方だったり、そういうものを見ながら長いボールもうまく使い分けていく。その上で、ずっと同じことをやっていたら、それは相手も対応してくるので、揺さぶりをかけるという部分で使う手法の一つだとは思っています。

それが主になりながらも、長いボールであったり他の変化を加えていくことで、相手に対するダメージと迷いと、出てこられないような形を作ることができれば、さらに自分たちの流れは作れると思います。ただ、それができるから確実にゴールを揺らすことができるということではない。そこのスペースをどう作っていくかの前段階。そこで僕らが狙っているようなことをしっかり相手がアクションをとってきてくれた時には、そのスペースをしっかり攻略しましょうということです。

Q、前半に警告を受けた3選手ともに次節の名古屋グランパス戦が出場停止となりますが、ミッドウィークに戦う天皇杯の準々決勝も含めてどのような準備を進めていきますか。
A、それは勝つための準備です。選手もこの敗戦を受けて元気でいられるかと言ったらそうではないと思います。一回忘れようと言っても、一回冷静になろうと言っても無理だと思います。そのなかでも勝つための準備をしなくてはいけないと思っています。


[選手インタビュー]

<橋本拳人選手>


Q、試合の振り返りをお願いします。
A、言葉が出ません。本当に悔しいです。

Q、前から来る相手に対して特に難しく感じた部分を教えてください。
A、早い時間帯の失点が試合を難しくしてしまいました。ただ、前後半どちらも得点につながるチャンスは多くありました。決め切れなかったこと、チャンスの回数についても課題に感じています。結果が出ていない試合が続くなかで、今日のような早い時間帯の失点はチームとして改善すべき部分です。

Q、相手の特長を分かりつつも相手の試合運びになってしまいました。
A、うまく剥がすことができればチャンスにつながる、自陣の低い位置でロストをしてしまえば失点に直結することは分かっていながらも、今日のような試合になってしまっているのであれば、チームとしてしっかりと次の試合に向けて話し合わなければいけないと思います。

Q、試合後には「カップを奪いとれ」という後押しがファン・サポーターからありました。
A、切り替えるしかありません。中2日で迎える天皇杯にすべてをぶつけます。


<マルコス ギリェルメ選手>


Q、試合の振り返りをお願いします。
A、加入してすぐに試合に出場できたことが次への大きな一歩だと思っていますが、非常に悔しい結果に終わってしまいました。この結果を受け入れて、次の試合で挽回できるようにチームとして積み上げていくだけです。チームメイトの特長をすべて分かり切っている訳ではないなかでの出場でしたが、しっかりとコミュニケーションを深めて、次の試合に向けてやり続けるだけです。

Q、攻守においてスピードを活かした献身的なプレーがみられました。
A、素晴らしいファン・サポーターのみなさんが観に来てくださったこともあり、ピッチに入る時は鳥肌が立ちました。熱い応援を受けたなかで、すべてを出し切ってプレーすることを意識しましたが、試合を振り返ると足りないことばかりです。プレーの精度とフィジカル面をもっと高めていきたいと思います。

Q、次節は累積警告による出場停止選手が3名いるなかで、マルコス ギリェルメ選手への期待も高まります。
A、私も人生をかけて、東京に加入しました。攻撃的、守備的関係なく、どのポジションであれ、チームの勝利に貢献するだけです。松橋力蔵監督が私に対して求めるものをピッチ上で表現するだけだと思っています。次こそは本当に勝ちたいです。


<小湊絆選手>


Q、Jリーグ初出場となりました。試合を振り返ってみていかがですか。
A、交代のファーストチョイスに入れなかったことの方が悔しかったです。

Q、監督からはどのような指示がありましたか。
A、オフサイドで得点が取り消しとなったシーンのように、クロスに対して入っていくということと、負けているので思い切りやってこいと言われました。

Q、本職はフォワードだと思いますが、サイドで出場となりました。どのようなプレーを見せたいと思っていましたか。
A、やることは変わりますが、自分のなかでやれることはポジションによって変わるわけではないので、できることを最大限に表現しようと思ってプレーしました。

Q、この試合を今後にどうつなげていきたいですか。
A、まずは試合に出なければいけないと思っています。この0-4という結果をしっかりと受け止めたうえで、応援してくれているたくさんのファン・サポーターに、しっかりと結果で返していけるような選手になっていかなければいけないと思います。

Q、J1リーグの舞台で浴びたファン・サポーターの歓声をどのように感じましたか。
A、あれだけ大勢の人がツナコールもしてくれましたし、込み上げるものが多くありました。次は絶対に点をとってやろうと思っていますし、今日もそういう気持ちで入ったので、結果で応えられず悔しいです。