<前節・柏レイソル戦のレビュー>
今シーズン初の3連勝をめざしてアウェイに乗り込んだ柏レイソル戦。6月に東京の一員となったキム スンギュ選手にとっては、古巣相手の青赤デビュー戦となった。
横浜F・マリノス、横浜FCとの2連戦に連勝して得た手応えをピッチで表現していく。立ち上がりからワンタッチで相手のプレスを回避するパスワークを見せれば、室屋成選手からフォワードに当てる長い縦パスやバングーナガンデ佳史扶選手の攻撃参加、野澤零温選手のクロスボールから仲川輝人選手がピンポイントヘッドで狙うなど、積極的なサッカーを披露。守っては前線からのプレスと中央を固めるブロックを使い分けて柏に自由を許さず、キム スンギュ選手のファインセーブもあり、しっかりとゴールを守った。

後半に入っても一進一退の熱戦が続く。佳史扶選手の左足がセットプレーや流れのなかで威力を発揮して好機を演出。だが、惜しくもあと一歩のところでネットを揺らすことができない。すると後半28分、攻め込んだ状態からボールをロストしてサイドチェンジで崩され、相手の自陣右サイドからのクロスボールを中央で合わされて失点。一瞬のスキを突かれて先制点を奪われてしまう。
その後も前掛かりの姿勢を強め、前半から攻撃の起点として機能していた長倉幹樹選手のシュートなどで反撃を試みるが、試合はこのまま0-1で終了。首位争いを繰り広げる柏を追い詰めながら敗戦を喫し、互角以上のゲームを展開しながら紙一重のところで勝点を逃す結果となってしまった。
<今節のプレビュー>
あの悔しさは、今でも忘れられない。
2連勝で乗り込んだ埼玉スタジアム2002でのアウェイゲーム。二度リードを奪うも追いつかれ、相手の勢いに呑まれるような形で最後の最後に決勝ゴールを許し逆転負けを喫した試合だ。東京はこの黒星をきっかけに5戦未勝利というトンネルに入ってしまった。“たられば”になってしまうが、あの試合で3連勝していたら違った景色を見ながら戦えた可能性は十分にある。
だが、過去にとらわれていても仕方がない。悔しさを胸に前進するしかないからだ。何より現在の青赤軍団が当時と違う姿を見せられるチームに進化していることは間違いのない事実でもある。前回のリベンジを果たすことを目的にするのではなく、新しく手にした力を味の素スタジアムで披露し、ホームの青赤ファミリーを熱狂させて歓喜を分かち合いたい。

浦和レッズ戦を翌日に控えた松橋力蔵監督は「良い攻撃が増えてきている。リスク管理は大事ですが、点を奪うためにはリスクをかけなければならない。浦和の守備は非常に固いので、サイド攻撃が大きなポイントになってくる。その伏線上に我々の良さを出せるスペースが生み出されるので、左右でバランスをとりながら相手の強みを少しずつ失わせることもできると思う」とサイドの攻守を勝負のポイントに挙げる。
チームは水曜日にアウェイで行われた第105回 天皇杯 JFA 全日本サッカー選手権大会3回戦の大分トリニータ戦から中2日で浦和戦に臨む。移動とリカバリーを挟むため戦術的には確認作業が中心になってしまったが、それでも長短のパスを織り交ぜながら状況に応じて速攻と遅攻を使い分け、球際を激しく戦うサッカーはベースとして確立できている。あとは状況を見ながら、どんな選手を起用し、どんな手を繰り出していくかだ。

今節は浦和から期限付き移籍中の長倉幹樹選手が契約の関係で出場できないが、戦う姿勢を前面に打ち出しながら全体が連動するスタイルは変わらない。松橋監督も「今までやってきたなかでも、良いパフォーマンスを出している選手がいる。それぞれの良さを活かせるような選手を起用しているので、そこにしっかり期待したい」と話す。
6月に加入したアレクサンダー ショルツ選手にとっては、3シーズン半に渡って在籍した古巣との対戦。クロスボールからの失点が増えている現状で新しい“青赤の壁”となり、浦和の攻撃を跳ね返すだけでなく、セットプレーからの得点も期待される。
この試合は『FIREWORKS NIGHT supported by Paidy』として、18:50頃の選手紹介から選手入場までの時間にバックスタンド側ピッチレベルで炎による演出が行われ、ハーフタイムには屋根上からの特殊効果花火とムービングライトによる演出を実施する。
青赤の誇りと情熱をぶつける大一番。夏場の反攻に向けて、絶対に勝利をもぎ獲りたい重要なゲームとなる。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、中2日で迎える浦和レッズ戦になりますが、人選を含めて難しい部分もあると思います。
A、昨日今日の話ではなく、色々と試合が行われるなかで、やはり中長期的なプランや状況に応じて、その時のベストなものを見せたいという想いを常に持っています。
Q、久しぶりの公式戦となる浦和に対して、どのようなところが試合のポイントになりますか。
A、前回のアウェイでの一戦では、本当に悔しい負け方をしました。言葉でよく言う“リベンジ”だとかそういうことではなく、やはり自分たちの今持っている力を、あの悔しさをホームでしっかりとぶつけたいです。
Q、その時とはメンバーも多少異なりますが、浦和の印象を教えてください。
A、コンパクトでタイトな守備をするなか、奪ったボールをできるだけ速い攻撃、前のタレントに預けたカウンターから得点を狙ってくる印象で、明確に見える戦い方の部分も当然ありますが、とはいえ、それだけではありません。(浦和の)選手一人ひとりを見れば、非常に個の力が高いチームですし、しっかり警戒しなくてはいけません。チームとしてやろうとしている部分も当然ありますが、やはり個々の戦いでしっかりと勝っていく意識が重要だと思います。
Q、短い間に選手たちに強調したことはありますか。
A、攻守両面で、自分たちのインサイドワーク的なことを少しやりつつ、試合を重ねるなかで、良い場面が徐々に増えてきています。多少のリスクをかけても攻撃をするという視点でも良い部分が出てきていますし、そのバランスがあるからこそ、即時奪回という部分も表現できます。サイド攻撃というのは一つのポイントになりますし、その伏線上に我々の良さを出せるスペースというのが生み出されると思っています。
Q、前回の対戦時にはクロスボールへの対応のズレから失点が重なりました。
A、ポイントとして、しっかり目線を合わせるようなトレーニングを重ねてきました。サイドを起点に攻撃を仕掛けてくる相手ですし、ある程度チームの絵としては分かりやすい部分もあります。左右どちらからきても、しっかりとバランスを保つこと、サイドチェンジされた時には同様に反対サイドがバランスを意識すること。とてもシンプルなことですが、しっかりと90分間意識することで、相手の強みを少しずつ失わせるということはできると思っています。
[選手インタビュー]
<アレクサンダーショルツ選手>

Q、古巣チームとの対戦になります。どのような気持ちでしょうか。
A、浦和レッズというクラブだけではなく、所属している選手やスタッフともいろいろな思い出があります。古巣を相手にするのは日本では初めてですが、デンマークやベルギーでも経験があります。普通の試合だと考えています。
Q、浦和レッズの印象を教えてください。
A、自分が知っているチームから変わっていない印象です。監督のスタイルも変わらずとてもコンパクトな陣形を組んできて、個人の能力が高い選手が多くいるので、どんなゲームになるかは自分のなかである程度想像はできています。
Q、試合に勝利するためのポイントはどこだと思いますか。
A、先制点を奪うことが重要だと思います。得点が多く動く試合にはならないと予想していますし、ディフェンスの選手として、そのようなゲームになることを望んでいます。セットプレーや細かいディテールが勝敗を分けると思います。今シーズンの1回目の対戦時には負けてしまっていますが、自分の経験から東京と浦和の試合はいつも熱い試合になるので、思い出に残っている試合も多くあります。
<マルセロ ヒアン選手>

Q、自身の調子をどう感じていますか。
A、水曜日に天皇杯3回戦の大分トリニータとの試合もあり、短い期間ですぐに浦和レッズ戦を迎えますが、タイトなスケジュールのなかでも、非常に良い雰囲気でトレーニングに臨むことができましたし、コンディションもうまく調整できています。もちろん、浦和戦に向けた対策などもしっかりと共有していますし、勝つための高いモチベーションと良い準備ができています。
Q、長倉幹樹選手はじめ、他のアタッカー陣が活躍するなか、あらためて得点やゴールに向かう意欲はいかがでしょうか。
A、私だけに限らず、選手であればスタメンで出場し、試合で活躍したいという想いを誰しもが持っていると思います。直近の試合では、ベンチスタートが続いていましたが、チームの勝利に貢献したいという強い意志を持ってプレーできています。自分のプレーや得点が勝利につながることを意識して、試合に臨むだけです。
Q、浦和レッズはFIFAクラブワールドカップ2025にも出場し、帰国後最初の試合がこの一戦になります。
A、アジアを代表してクラブワールドカップに出場するくらい実力のあるチームですし、個々の能力やチームとしての総合力の高さに間違いはありません。そのなかで、この試合もとても難しい試合になると思っていますが、貪欲に勝利を狙っていきたいです。
Q、前回の対戦ではマルセロ ヒアン選手の得点もありましたが、悔しい逆転負けを喫しました。
A、前回のアウェイゲームは残念ながら負けてしまいましたが、試合を通して良い部分も多くありました。先制し、追いつかれながらも、勝ち越しした部分は良かったと思いますし、すべてを悲観する内容ではなかったと思います。あの悔しさを今節の対戦ではしっかりと勝って晴らしたいです。



