多摩川クラシコ特別対談
FC東京:石川直宏コミュニティジェネレーター
川崎フロンターレ:稲本潤一Frontale Relations Organizer
司会:日々野真理さん

日々野:お二人、お互いの選手時代の印象というのをお聞きしたいです。
石川:稲本さんは僕の2つ年上で、当時は僕の存在を知らなかったと思います。稲本さんは中学1年生でガンバ大阪のジュニアユース、僕は横浜マリノス(当時)のジュニアユース追浜に所属していました。なので、稲本ってすごい選手だというのはずっと知っていました。
稲本:東のほうにも伝わっていたの(笑)?
石川:誰だ稲本って言っていました。その後にJリーグに出て、三ツ沢球技場などでエムボマたちとプレーしているのを見ていました。
稲本:1997年ですね。
石川:そうやって上に上がっていく先輩の背中を見ていました。でも、一緒にプレーしたのは、2003年の日本代表で、ジーコさんが監督の時でした。そこで初めて一緒にプレーしました。
日々野:代表での印象はどうでしたか。
石川:もう海外でバリバリやっていて、恐れ多くてなかなか話ができませんでした。ちょうど自分の世代だと松井大輔などがいて、僕らの世代は谷間の世代と呼ばれていたので、追い付き追い越せという思いもありながら、頼れるお兄さん的な存在でした。
日々野:逆に、稲本さんから見た石川さんはどうですか。
稲本:マリノスのイメージはほぼなく、やはりFC東京の印象です。代表で初めて絡んだのが最初なので、右サイドでのスピードや突破力、クロスの質がすごく良かったというのは、かろうじて覚えています(笑)。
日々野:世代的には2歳しか違わないという意味では、稲本さんが憧れの存在であったような時代ですか。
石川:そうですね。どうしたら追い付けるのかと考えていました。ちょうどFC東京に移籍したのは2002シーズンで、この時にワールドカップで大活躍しているシーンを、同じプロ選手ですが僕はスタンドで見ていました。あの舞台で、同じプロの選手だけどすごい差を感じました。そこからどうやって自分はその差を埋めていけるのかというところをずっと考えて戦っていました。
日々野:稲本さん、いかがですか。
稲本:当時は活躍していましたね(笑)。

日々野:今回の多摩川クラシコ、大事な一戦になってくると思いますが、両チームについて分析というか、クラブの現在の調子や様子をどのようにご覧になっているかお話しいただけますか。
石川:一言で言うなら、選手たちがストレスなくプレーできているという印象です。試行錯誤しながらビルドアップと、持ち味である縦に早いサッカーとの融合が今シーズンは特にできているのかと思います。各選手たちのポジションと、前後左右にいる選手たちとの全体感のバランスや関係性が攻守において非常に円滑にとれている印象があります。
日々野:色々な選手が日替わりで活躍しながら、競争力がすごく出ているような気がします。
石川:そうですね。各ポジションに必ずライバルがいるなかで、自分の色を出すこともそうですが、お互いがプレーしやすい環境をどう作るかという連携が昨シーズンに比べてスムーズです。最初にお伝えしたように、ストレスなく湧き出るような攻守の動きがある印象です。
日々野:稲本さんから見たFC東京について、最近のところで何か印象はありますか。
稲本:得点がとれている印象がすごくあります。総得点では今J1で1位か2位ぐらいで、かつ失点も少ないという非常に良いバランスでやっている印象があります。負けてもいませんし、1敗しかしていないと思うので、すごく上り調子なのかなと思います。色々な選手が出ても同じ結果が出て、同じサッカーができるというのは、松橋監督がやり続けてきたことが実り、この半年間で出てきていると思います。
日々野:川崎フロンターレは最近どうでしょうか。
稲本:怪我人が多少出てきたなかで、2連勝(横浜F・マリノス、ジェフユナイテッド市原・千葉)しているというところはすごく大きいです。チームとしての勢いが出つつあるなかで、アウェー2連戦になるので、そこでしっかり勝利できればまだ上は掴めるのかなと思います。
日々野:石川さんから見た川崎の現状はどうですか。
石川:やはり破壊力というか個の能力も高いですし、これまで長い間できている部分もあります。今までの川崎の良さと、長谷部監督のサッカーを構築するところでの融合を図っているところだと思うので、これが噛み合ってきた時の怖さは非常に感じますし、注意しなくてはいけないと思っています。
日々野:そういったなかで迎える多摩川クラシコですが、前回の対戦、2月21日に行った多摩川クラシコについても振り返りたいと思います。その時は川崎がホームで、1対2でFC東京が勝ったということですが。
石川:ビルドアップするところと、前に早く進められるのであれば長いボールを入れて、長倉幹樹選手からマルセロ ヒアン選手という形で点をとれましたし、その後川崎の山原選手の素晴らしいゴールもありましたが、その後も連動性で言うと、最近も活躍していますが、室屋成と佐藤恵允の両選手の関係性でゴールが奪えたことと、とられてもすぐにまた点をとれたところが非常に大きかったかと思います。
日々野:稲本さんいかがですか。
稲本:ホームでやったのですが、ほぼFC東京のペースでやられたという印象です。山原選手の素晴らしいゴラッソのシュートが入りましたが、すぐにFC東京に返されて、そこからあまりいいところなく終わった90分でした。すごく消化不良で、ホームでやった割にはあまり良い内容ではなかったという印象です。あの試合で個人的に注目していたのは長友佑都選手と家長がマッチアップしたところで、あそこは少し違う視点で見てしまいました。
日々野:実際に見てどうでしたか。 一緒にずっとやってきた仲間ですが。
稲本:元気でしたね、二人とも。自分が40歳の頃はJ1にいたかいないかぐらいの年齢なので、J1というトップで二人がやっている姿を見ると、まだサッカーをやりたいなと少しだけ思いました。
日々野:何分ぐらいサッカーやりたいなって思ってました。
稲本:そうですね、1、2分ですね(笑)。
日々野:今回の多摩川クラシコの見どころを聞いていきたいのですが、どんなところが見どころか、石川さん、注目する選手などを教えてもらえますか。
石川:ホームですし、ゴールデンウィークということで、やはり点のとり合いや、自分たちのスタイルをどう出すかというところは、自分が現役の時から常にこだわっていました。どれだけ点をとられようが点をとりにいくというところで、それでやられたシーンも思い返せばたくさんありましたが、やはりそれだけ点が入る、水戸戦もそうでしたが、点をとるみなさんと喜びを分かち合う試合や機会をいかに作るかです。『+1Goal(ワンモアゴール)』という自分たちのテーマもありますし、とにかく点をとって、とられたらとり返して、また点を積み重ねていくような攻撃的なサッカーの展開を期待しています。

日々野:稲本さんいかがですか。
稲本:今、ナオが言ったように、クラシコは2対1や1対0で終わってほしくないです。やはりとり合いで、どっちがどうなるかというのをずっとやってきたと思います。そういう試合ですし、せっかくのゴールデンウィークなので、家族が今回のテーマだと思います。もう一度見に行きたいと思えるような、点をとり合って面白い試合をしてほしいと思います。
日々野:お二人から共通してお話が出ましたが、なぜ多摩川クラシコは点をとり合ったり、熱く思い出に残るような試合になるのだと思いますか。
石川:意地と意地のぶつかり合いというのはあるかもしれません。自分たちのスタイルが明確ですし、どちらがそのスタイルで結果を残すかというところです。それだけ注目度も高いですし、正直2007シーズンの最初は「多摩川クラシコって何?」というところからスタートしました。稲本さんは海外でのクラシコやダービーを経験されていますが、また少し違うと思います。
稲本:川崎に加入して多摩川クラシコと聞いた時は「うん、そうか」という感じでした(笑)。しかし、みんなで作り上げていくものだと思いますし、今回で何回目かというぐらい回数を重ねています。2007シーズンから紡いできた歴史がクラシコを作っていくと思うので、月日が経てば経つほどプライドのぶつかり合いになっていくと思います。だからたくさん点をとって、もっとクラシコを文化にしてほしいと思います。
日々野:石川さんは最初の多摩川クラシコから経験されていますが、何か思い出はありますか。
石川:色々あります。点をとっても勝てないというのが結構印象的でした。
日々野:めちゃくちゃとられるということもありましたね。
石川:7点とられたこともありますし、サッカーをやっていて初めて「もうやめてくれ」と思った試合でした。その前のシーズンは大逆転で勝利をした試合(2006シーズンの4-3の逆転劇)だったのですが、最後に今野泰幸が決めて勝ちました。本当に派手な試合が多いです。前回は2対1だったので、東京としては失点したくないところもありますが、それ以上に点をとるところを見せたいです。
稲本:そうですね。僕は2010シーズンに移籍してきて、その年の等々力競技場でやった試合が人生のなかで一番ドリブルの切れ味が良くて、すごく印象に残っています。結果も3対1か3対2で勝ったのですが、その印象がすごく強いです。逆にアウェーであまり勝った記憶がないので、アウェーでどうなるか今回は楽しみですね。
日々野:そんななか、お二人の注目選手を挙げていただきたいと思います。
石川:色々出てくるのですが、常盤亨太選手です。攻撃陣も多かったですが、攻守の連動であったり、今シーズンからしっかりとポジションを奪って存在感を示している常盤が、これからクラブやクラシコの歴史とともに、自身のキャリアも積み重ねていくきっかけにしてくれる試合を期待しています。彼の存在感をぜひ川崎のファン・サポーターにも知ってほしいです。
日々野:非常に熱いものを持った選手ですよね。
石川:熱いですし、大卒で2年目になります。元々うちの育成出身で、明治大学に行って経験を積んできました。当時からFC東京U-23でJ3の試合に出たりしていたので、いい意味での荒々しさもありながら、今は洗練されてチームのことも考えてプレーできています。そこのリーダーシップを非常に期待しています。
稲本:前の選手もそうですが、やはり後ろの丸山選手です。ベテランですが、川崎は前に比重がかかりやすいので、後ろでどれだけ踏ん張れるかとリーダーシップが重要になります。チーム的に少し静かな感じがするので、一番喋れる丸山がしっかりリーダーシップを取れれば、勝機はあるのかなと思います。
日々野:彼にとってFC東京は古巣でもありますしね。
稲本:そうですね。モチベーションも高いと思いますし、連戦なのでどうなるか分かりませんが、期待はしたいです。後ろがだいぶ引き締まる感じというのは練習を見ていても違いましたし、実際の試合でも安定したパフォーマンスを出しています。そこはやはりベテランがなす技なのかなと思います。
日々野:今回のテーマが家族ということで、お二人ともお子さんがいらっしゃると思いますが、お子さんを連れてこの試合を観戦するならば、サッカーのどんなところを楽しんでほしいと思われますか。
石川:やはりスタジアムでの雰囲気です。青赤に染まるでしょうし、川崎の声援も聞こえてくるなかで、試合の展開によって声が大きくなる時や、チャントがこのタイミングで出るなど、試合の中でのリズムや変化、盛り上がるところや少し落ち着くところといった展開をぜひご家族で体感してほしいです。あんまり考えるというよりは、その雰囲気や声、試合の流れといった空気感をぜひ感じてほしいと思っています。
稲本:すごい数のお客さんが入ると思うので、その雰囲気や非日常をスタジアムで体験できるのがサッカーの醍醐味だと思います。お互いのチャントや声援、そのタイミングなどを家族で楽しんでもらえたらと思いますし、試合展開でゴールがたくさん入ることを期待しているので、そういうところもしっかり目に焼き付けて帰ってほしいと思います。
記者:家族の話がありましたが、子供たちに一度見てほしい選手を紹介するならば、どの選手になりますか。
石川:僕は佐藤恵選手ですね。どこに注目してほしいかというと、やはり献身性です。守備での強度や切り替えで、水戸ホーリーホック戦ではそこから得点も生まれました。細部にこだわって、特にボールを持っていない状況のなかでプレッシングをかけにいくところやその強度を積み重ねていくとチャンスが回ってくるということを、地道に表現できる選手です。もちろん点をとるところやアシストするところも見てほしいですが、彼が全力でボールに対してアグレッシブに戦っている姿をぜひ見てもらいたいです。
稲本:脇坂選手ですね。フロンターレが掲げているものに一番近い選手だと思いますし、技術やボールを運ぶことなど、やはり川崎らしいプレーヤーだと思います。アカデミー出身ですし、彼のプレーを真似ることは育成として非常に役に立つ選手なのかなと思います。
日々野:色々とお話を伺ってまいりましたが、ここでお二人に今回の多摩川クラシコの対戦スコアを予想していただきたいと思います。 では、お二人一斉にお願いします。稲本さんが4対3、石川さんが4対1。説明をもらっていいですか?
石川:そうですね。点のとり合いというところと、とはいえ点はとられたくないので1失点にしておきました。あとは味スタが4回沸くということです。前回のホーム水戸戦で5点とっていて、もっと得点をとってほしい気持ちはありますが、川崎との過去の戦いなどを考えるとそう簡単にはいかないだろうと思いつつ、希望を含めて4対1にしました。

日々野:稲本さんは4対3ですね。

稲本:このスコアが見ていて一番面白いのかなと。とってとられてどういう展開になるか分かりませんが、合計7点入る試合というのは家族観戦の思い出になる試合だと思います。
日々野:展開はどうですか。
稲本:展開は前半2対2です。そこからの逆転のほうが面白いですかね。そういう展開にしてもらえると非常に盛り上がるのかなと思います。
日々野:石川さんは展開はどうですか。
石川:展開は少し先に点をとられ、最近は点をとられても慌てないので、まず前半のうちに1点返して1対1にします。そこから交代選手も含めて加速していき、3点取って4対1です。
(文中敬称略)

