マッチレビュー
“Big Thank You Day”と銘打たれた今シーズン最終戦。クラブ、チームからファン・サポーターのみなさんに感謝を伝える試合になると同時に、この試合が2013シーズンから在籍してきた東慶悟選手の青赤最終戦となり、すべての青赤ファミリーから彼にこれまでの貢献に際して大きな感謝を伝える日にもなった。

明治安田J1百年構想リーグプレーオフラウンド3位4位決定戦の第2戦で迎えるのは、WESTで2位に入ったセレッソ大阪。東京はアウェイでの第1戦を2-2で引き分け、この試合にシーズン3位の座を懸けることになった。
絶対に負けられない功労者を送り出す試合で松橋力蔵監督がセレクトしたのは、先週末の第1戦と同じスターティングイレブン。ゴールキーパーに田中颯選手、最終ラインは右から室屋成、アレクサンダー ショルツ、稲村隼翔、橋本健人の4選手が並び、ボランチは常盤亨太選手と小泉慶選手のコンビ。アタッカーは右に佐藤恵允、左に遠藤渓太の両選手を置き、マルセロ ヒアン選手と佐藤龍之介選手が2トップを組んだ。また、後藤亘選手がJリーグの公式戦では初めてのベンチ入り。小柏剛選手は負傷交代を強いられた昨シーズン9月15日の明治安田J1リーグ第29節の東京ヴェルディ戦以来となるメンバー入りを果たし、東慶悟選手も“ゲームチェンジャー”としてメンバーに名を連ねた。
1st―序盤に攻勢を仕掛けるも3点を失い折り返す
『今日は負けられない日だ』のチャントとともにキックオフを迎えた前半、東京は佐藤龍選手のパスを起点に立ち上がりからチャンスを作ると、相手陣内に押し込んだ状態で試合が進む。開始5分には佐藤龍選手の左コーナーキックからゴール前の混戦を佐藤恵選手が左足で蹴り込んだが、直前のプレーでヒアン選手にハンドの可能性があったとしてVARのサポートが入り、オンフィールドレビューの末にノーゴールの判定となってしまう。
気落ちすることなく攻め手を強めたい東京だったが、ビルドアップの縦パスが跳ね返されたところからカウンターを食らってしまい、前半10分に本間選手に決められて失点。2戦合計スコアを2-3とされてしまう。
ここから一気に攻勢を強めてきた相手に決定機を作られながらギリギリのところでしのぐと、前半15分に佐藤龍選手が相手ゴールライン際で激しいチェイシングからボールを奪取。ここから中央へ折り返してビッグチャンスを迎えたが、またもゴール前の混戦を押し込むことができずゴールネットは揺らせない。

ここで東京にアクシデントが発生。前半26分に佐藤恵選手が左足を傷めてピッチの外へ。同29分に野澤零温選手が投入され、そのまま右アタッカーに入った。
東京は佐藤龍選手が積極的にボールに絡みながら攻撃の形を作っていくが、相手ゴールキーパーがファインセーブを連発してゴールを奪うことができない。逆に前半33分、エリア内に抜け出した相手を倒してペナルティキックを献上。これを櫻川選手に沈められ、リードを2点に広げられてしまった。続く同43分にはショートコーナーから失点。2戦合計2-5とされてしまう。
思わぬ展開となってしまった選手たちは、リスタート前に集まってピッチ内でここからの戦い方を再確認。3点を追いかける状況に気持ちを入れ直した。
前半は9分間のアディショナルタイムを経てタイムアップ。良い時間帯に奪ったかと思われた先制点が幻となり、直後に喫した失点をきっかけにリズムを崩してしまった。全員でもう一度奮起し、青赤の意地を見せつけなければならない。このハーフタイムにしっかりと立て直しを図ることができるか。
2nd―ケイゴが青赤としての最後のピッチへ
3点を追うことになった後半、ハーフタイムのメンバー交代はなし。ゴール裏のファン・サポーターがボルテージを上げて大音量のチャントを送る。ここまでともに戦ってきてくれた青赤ファミリーの熱い声援に、何としても応えなければならない。
まずは早い時間に1点を返したい東京。ブロックを作って守る相手に対して、最終ラインがハーフウェイラインを越える位置まで高くキープし、カウンターをケアしながら攻め手を探っていく。押し込んだあとのセカンドボールへの反応も早めてしっかりと回収。なかなかスペースがない状況でどう打開していくかが問われる展開となった。
東京ベンチは後半16分、次なる手を打っていく。遠藤選手、ヒアン選手に代えて左アタッカーに俵積田晃太選手、2トップの一角に山田楓喜選手を投入。この交代が一気に流れを変える。
直後のプレーで俵積田選手が左サイドから仕掛けて長いパスを差し込むと、これを山田選手がシュート。さらに続く同17分、ショートカウンターから野澤選手がラストパスを送ると、佐藤龍選手がワントラップから豪快に右足を振り抜いて反撃弾を叩き込む。


2点差に追い上げた東京は攻勢を強めていく。左サイドで俵積田選手の突破力を引き出しながら、後ろから湧き出るように選手たちが飛び出してくる攻撃を取り戻し、守備では即時奪回で相手を圧倒。チーム全体で躍動感溢れるサッカーを展開していく。
後半27分には俵積田選手の仕掛けから佐藤龍選手がつなぎ、山田選手が左足で強烈なシュート。この一撃がクロスバーを叩いたところを常盤選手がヘディングで押し込もうと試みたが、これは惜しくも枠を捉え切れず。あと一歩のところまで迫っているだけに、何とか早く決め切って逆転劇を視野に入れたいところだ。
ここで松橋監督が最後のカードを切る。後半32分、常盤選手、小泉選手から小柏選手、東慶選手にスイッチ。小柏選手を最前線に配し、東慶選手はボランチで佐藤龍選手と横並びに。この日が青赤ラストマッチになる背番号10に攻撃のタクトと逆転勝利を託す形となった。


東京は最終ラインの四人も積極的に攻撃参加して押し上げ、圧力を強めていく。そして6分間と表示された後半アディショナルタイム、室屋選手とのワンツーでペナルティエリアに侵入した山田選手が倒され、主審がホイッスルとともにペナルティスポットを指す。しかし、これは惜しくもVARのサポートでオフサイドと判定されてしまった。
それでも変わらず攻め続ける東京。盛り上がるスタジアムの雰囲気にも後押しされて果敢に襲いかかっていくが、猛攻及ばずタイムアップ。C大阪との3位4位決定戦に2戦合計3-5で敗れ、ハーフシーズンの特別大会は総合4位という成績で幕を下ろす結果となった。
試合後にはシーズンエンドのホーム最終戦セレモニーが行われ、松橋監督とキャプテンの室屋選手が挨拶。ゴール裏スタンドからは『愛してるぞ! KEIGO 10 また会おう。』の横断幕が掲出され、ファン・サポーターのチャントに促されるように背番号10がマイクの前に立ち、涙ながらに14年間の感謝を伝えた。
「お別れですね。本当にこの大好きなチームで14年間プレーできたことは、自分にとってすごく誇りです。でも、最後に勝てないか……って、自分が持ってないなとちょっと思いつつ、サッカーはそんなに甘くないんだって実感しました。2週間くらいずっと泣くのを我慢していたんですけど、試合前に泣いてしまって、選手に堅さを生んでしまったかなと思うと、ちょっと申し訳ない気持ちです。本当にこのチームが大好きだし、またいつか戻ってきたいと思います。本当に14年間ありがとうございました!」

松橋力蔵監督インタビュー

Q、今日の試合の総括をお願いします。
A、前半のスタートは決して悪くないように映っていましたが、徐々に相手の色を出され、我々がそれに対応できずに失点が続いて、ゲームを難しくしてしまいました。ハーフタイムに目線を合わせ、自分たちの流れに持っていくことはできたものの、最終的にはセレッソ大阪のゴール数が上回りました。我々にもチャンスはありましたが決め切ることができなかった。それが敗戦につながったと思います。スタートの部分が結果につながってしまい、非常に残念なゲームになりました。
Q、明治安田J1百年構想リーグを終えて地域リーグラウンド2位、総合4位という成績となりましたが、どのように受け止めていますか。
A、ここまで本当に良いゲームが多く、結果も伴った試合が多かったことが今の順位につながっていると思います。シーズンが終わった今は、その成果についてはある程度は満足するべきだと感じています。ただ、そこに満足して次を迎えるつもりはまったくありません。4位であってもたとえ10位や18位であっても、何も得ていないという事実は変わりません。そのことをしっかり受け止め、来シーズンもチャレンジしていく覚悟を持たなければならないと思っています。
Q、この試合を迎えるまでの間に、2026/27シーズンに向けた松橋監督の契約更新がクラブから発表されました。今シーズンの内容や結果をどのように来シーズンにつなげていきたいと考えていますか。
A、このままではいけないという強い想いがあります。さらにチームとしてのクオリティを上げていかなければなりません。手法は柔軟に、多彩にしていく必要がありますが、本質の部分をもっと高めていかなければ、我々の目標には到達できないと思っています。一段階、二段階、三段階とレベルを上げていく必要があります。
Q、長くFC東京でプレーしてきた東慶悟選手の契約満了が発表され、今日は東京での最後のプレーとなりました。彼にどのような言葉を掛けたのか教えてください。
A、最後まで彼らしいプレーを存分に見せてくれたと思います。長い間クラブに大きく貢献し、多くのファン・サポーター、周りのたくさんの方に愛された選手です。私自身、彼と出会えたことを本当に幸運だったと感じています。彼は先ほどお話しした、プレーにおいて何を大事にするべきかという本質を大切にする選手でした。私が就任して最初のキャンプでもその姿勢に感銘を受けましたし、それは今日まで一切変わりませんでした。出場機会は限られてしまいましたが、出場した際には必ず自分の持てる力をすべて発揮してくれました。それは日々の努力の賜物であり、彼の大きな才能でもあります。チームメイトへの影響力も非常に大きな選手でした。今後も現役を続ける意向だと聞いていますので、これからの活躍を楽しみにしていますし、またどこかで再会できれば嬉しく思います。あらためて、彼には感謝を伝えたいと思います。
選手インタビュー
東慶悟選手

Q、FC東京でのラストゲームとなりました。試合を終えた今の気持ちを教えてください。
A、楽しかったです。試合は簡単ではありませんでしたし、勝つことの難しさを改めて感じました。それでも、松橋力蔵監督が最後にピッチへ送り出してくれて、国立競技場でプレーできたことは本当に良かったと思っています。
Q、試合後には多くのファン・サポーターが東選手を送り出してくれました。どのように感じましたか。
A、たくさんのユニフォームを掲げてもらい、応援歌も歌っていただきました。こうして見送ってもらえるのはサッカー選手として本当に幸せなことだと思います。14年間、このクラブで苦しい時期もありましたし、嫌いになりそうな時もありましたが、終わってみれば自分は愛されていたんだなと感じています。本当にありがたい気持ちでいっぱいです。
Q、ファン・サポーターへの挨拶ではどのような思いを伝えましたか。
A、正直、あの場で挨拶することは想定していませんでした。ファン・サポーターの皆さんがその場を作ってくれたと思っています。本音で感謝を伝えましたし、この景色を最後に見せてもらえたことへの感謝を話しました。また、森重真人選手がまだチームにいますので、その時はよろしくお願いしますという話もしました。
Q、森重真人選手や長友佑都選手への想いを聞かせてください。
A、森重選手がいたからこそ今の自分があると思っています。本当に感謝しかありません。長友選手にもプロフェッショナルとしての姿勢を見せてもらいました。お二人には感謝していますし、またいつか一緒に仕事ができたらうれしいですね。
Q、将来的にFC東京へ戻りたいという思いもあるのでしょうか。
A、あの雰囲気を経験して戻りたくないと思う選手はいないと思います。このクラブには本当に感謝しているので、いつか恩返しがしたいです。一番の理想は監督として戻ってきてチャンピオンになることです。ただ、勝つことは本当に難しいので、そのためには多くのことを突き詰めていかなければならないと思っています。
Q、現役続行への思いについて教えてください。
A、まだ現役を続けたい気持ちはあります。ぜひ記事にしてもらって、オファーを待っています(笑)。オファーがないと7月から仕事がないので、ぜひお願いします。
Q、FC東京での14年間を振り返っていかがですか。
A、本当に個性の強い素晴らしい選手たちとプレーすることができました。海外へ羽ばたいていく選手もたくさんいましたし、サッカー選手として多くのことを学び、得ることができました。自分自身も若い頃は天狗になっていた時期がありましたが、サッカーに真剣に向き合うことで成長できたと思います。
Q、他クラブからのオファーもあったなかで、FC東京に長く在籍した理由は何でしょうか。
A、このクラブでリーグ優勝をしたかったからです。タイトルを獲ったことがないクラブだからこそ魅力を感じていましたし、そこから逃げたくありませんでした。2019シーズンにはあと一歩のところまでいきましたし、『次こそは』と思い続けてここまでやってきました。
Q、FC東京での時間を振り返って、特に印象に残っている出来事はありますか。
A、長友佑都選手が戻ってきた時は本当に衝撃的でした。一緒にプレーできて良かったですし、プロフェッショナルとは何かを学ばせてもらいました。
Q、加入当初と現在で、FC東京というクラブはどのように変わったと感じますか。
A、エンブレムが変わったことも象徴的ですが、クラブは常に変わろうとしてきました。もちろん変わってはいけない部分もありますが、タイトル獲得に向かう思いは以前よりも強くなっていると感じています。
俵積田晃太選手

Q、途中出場から流れを変えた印象がありました。試合を振り返ってください。
A、流れは変えることができたと思いますが、あの時間帯で引き分け、もしくは勝ち切るところまで持っていくことが、優勝するためには必要なことだと思います。
Q、出場にあたって監督からはどのようなことを求められていましたか。
A、とにかく仕掛けよう、ゲームを変えようということを意識してプレーしました。
Q、俵積田晃太選手と山田楓喜選手がピッチに入ってから流れが変わった感覚はありましたか。
A、流れが変わった感覚はありましたが、チームとして良い時間帯に決め切りたかったという気持ちの方が強いです。
Q、周囲との連係についてはいかがでしたか。
A、自分からパスコースを作りにいくこともありますし、山田選手など周りの選手も積極的にもらいにきてくれたので、いろいろな選択肢があってやりやすかったです。
Q、負傷で離脱していた期間には、復帰後についてどのようなイメージを持って取り組んでいましたか。
A、ゴールに直結するプレーや、今日のように流れを変えるドリブルをしようとずっと思っていました。試合を見ながら『こういうプレーをしようかな』と考えることもありました。
Q、コンディションやボールタッチの感覚はいかがですか。
A、悪くはないと思います。
Q、今シーズンはケガで出遅れる形となりましたが、次のシーズンに向けてどのように過ごしたいですか。
A、出遅れた分、このオフシーズンの過ごし方や身体作りについて、自分なりにしっかり考えて取り組んでいきたいと思います。
小柏剛選手

Q、久しぶりの出場となりました。試合を振り返ってください。
A、本当に久しぶりの試合でしたが、やはり難しさを感じましたし、まだまだコンディションを上げていかなければいけないと思いました。ただ、今日はケガなく1試合を終えられたことが一番の収穫です。こうした試合にコンスタントに出場できるように続けていきたいと思います。
Q、久しぶりにファン・サポーターの歓声を浴びてプレーした感想を教えてください。
A、自分が入った時はチームが1点を返した流れのなかで、非常に盛り上がった雰囲気がありました。その雰囲気を感じながらプレーできたのは良かったですが、結果で応えることができなかったので残念な気持ちもあります。
Q、怪我もあり、しばらく試合から遠ざかっていましたが、どのような思いで過ごしていましたか。
A、かなり不安はありました。練習試合にも出場できていなかったので、自分が試合から遠ざかっていく感覚もありましたし、本当にコンディションが戻るのかという不安もありました。それを乗り越えて今日1試合に出場できたことは収穫ですが、もっと試合を重ねていきたいと思っています。
Q、狭いエリアで受けて周囲と連係するなど、小柏選手らしいプレーも見られました。
A、ただ、まだ周囲と合わない部分も多かったので、そこは改善していかなければいけません。味方としっかり合わせながら、自分の動き出しの部分でもボールを出してもらえるように、さらにすり合わせていきたいと思います。
Q、新シーズンに向けての意気込みを聞かせてください。
A、オフに入りますが、そこまで疲労もないので、しっかり身体を作ってキャンプから良い状態で入っていきたいと思います。そして開幕から試合に出場できるよう、しっかり準備していきたいです。



