マッチレビュー
まさに真価が問われるゲームとなった。柏レイソル戦のキックオフ前に首位を走る鹿島アントラーズの敗戦の報が届く。試合前時点での勝点差は6。このゲームで勝利すれば、一気に3差まで詰め寄ることができる。アウェイで柏を破ることが、自らの手で大きな可能性を切り拓くことになる。
本当の意味で優勝争いに名乗りを上げられるかどうかの重要な一戦。青赤イレブンはゴールキーパーにキム スンギュ選手を置き、最終ラインは右から室屋成、大森理生、稲村隼翔、橋本健人の4選手が並んだ。大森選手と稲村選手のセンターバックコンビがスターティングメンバーでコンビを組むのは初。大森選手は「チームとして決定力が上がってきたし、守れることができれば勝てる自信はある。センターバックとしてしっかりゼロで抑えたい」と第8節の東京ヴェルディ戦以来となるスタメン起用に意気込んでのゲームとなった。
ボランチから前は3試合連続で同じメンバーに。中盤の底には橋本拳人選手と常盤亨太選手、アタッカーは右に佐藤恵允、左に遠藤渓太の両選手が入り、2トップはマルセロ ヒアン選手と佐藤龍之介選手がコンビを組んだ。また、アカデミー昇格組の鈴木楓選手がプロ初のベンチ入り。最終ラインの全ポジションに加えてボランチでもプレーできる万能型が、アウェイの地でプロデビューを狙うことになった。
アウェイの三協フロンテア柏スタジアムに詰めかけた青赤ファミリーはウォーミングアップ中から「情熱をぶつけろ!優勝掴みとれ!」という熱いメッセージをピッチの選手たちに送る。一丸となって勝点3をもぎとりに行く一戦は、16:03にキックオフを迎えた。

1st―多彩な攻撃を繰り広げ渓太ゾーンからの一撃でリード
立ち上がりから双方ともにボールを握って戦おうとする姿勢を見せていくなか、最初にビッグチャンスを作ったのは東京だった。前半5分、橋本拳選手が鋭い出足でプレスを仕掛けると、こぼれ球を拾ったヒアン選手が右サイドへ展開。これを佐藤恵選手が折り返すと、佐藤龍選手がペナルティエリア内で細かなタッチからターンして左足シュート。これはわずかにゴール左へ外れたが、東京らしい積極的な守備と素早い攻守の切り替えが生んだチャンスとなった。
守備から攻撃へのトランジション意識が再び東京にチャンスをもたらす。前半18分、自陣に押し込まれたところからボールをつなぐと、常盤選手の縦パスをヒアン選手が落として佐藤龍選手が縦へ抜け、リターンを受けたヒアン選手が一気に独走してゴール前へ。だが、このフィニッシュを相手ゴールキーパーにセーブされてしまい、先制のネットを揺らすことはできなかった。

ポゼッションスタイルの激突から、東京は引き込んでのカウンターも織り交ぜながら崩しどころを模索。縦横斜めとさまざまな方向にボールを動かし、前を向けるタイミングを探りながら攻撃のスイッチを入れようとしていく。前半34分には最終ラインから出し入れを繰り返し、佐藤恵選手、ヒアン選手とつないだところで大森選手が右サイドをオーバーラップし、ゴールライン際まで攻め上がってコーナーキックを獲得。後方から次々に選手が飛び出していく厚みのある攻撃を披露した。
守備陣も身体を張ったプレーでゴールを守っていく。柏のダイレクトプレーに対してセンターバックが奮闘。スライディングでラストパスをカットし、中央を締めて先制を許さない。

ボールをつなぐだけではない東京攻撃陣の怖さが、ついに本領を発揮する。前半43分、自陣から押し返したボールを受けたヒアン選手がピッチ中央をドリブルで独走。追いすがる相手選手のスライディングにも倒れずに力強く持ち運んでゴール前まで進入したところで左サイドにラストパスを送ると、遠藤選手がトラップからボールを持ち直して得意のゴール左斜め45度の位置から右足を一閃! 狙い澄ましたシュートを逆サイドネットに突き刺し、東京が待望の先制点を奪うことに成功した。


前半は3分間のアディショナルタイムを経て1-0で終了。スタイルとスタイルが激突する好ゲームは、青赤が1点をリードして後半に折り返した。
2nd―龍之介の2ゴールで3連勝
交代なく後半に臨む東京に対し、柏はハーフタイムに小西選手、細谷選手を下げて原川選手、垣田選手を投入。中盤の構成力を高め、前線からのチェイシングを強めようとする狙いの感じられるスイッチとなった。
後半も先にチャンスを作ったのは東京だった。開始3分、左サイドから中央へ向かって佐藤龍選手、ヒアン選手、常盤選手がつなぐと、ダイナミックに攻め上がってきた室屋選手にラストパス。だが、ここで思い切りの良いシュートではなく切り返しを選択し、相手選手に寄せられたことで自由を奪われてしまう。

前線からの圧力を強めてきた柏は後半13分、素早い切り替えから左サイドに展開し、中央で受けた垣田選手が強烈な右足ミドルシュート。だが、これをスンギュ選手がファインセーブでしっかりと弾き出し、同点ゴールは許さない。
そしてふたたび試合が動く。その立役者となったのは佐藤龍選手だった。後半15分、後方からのロングフィードに対して相手選手をしっかりとブロックすることでヒアン選手にボールを届けると、すぐさま左前方のスペースを狙って走り出す。うまく身体を入れ替えたヒアン選手が前を向いて佐藤龍選手へ渡すと、ここで背番号23が狙いすました左足シュートで追加点。雨足が強くなってスリッピーになったピッチを利用するかのようにワンバウンドさせた一撃が相手ゴールキーパーを打ち破り、東京がリードを2点に広げた。


その後も鋭い攻撃を仕掛ける東京。前に出てくる柏の攻撃を逆手にとるようにカウンターを仕掛け、複数選手が絡んで厚みと迫力のあるアタックを見せていく。
後半27分にセットプレーのこぼれ球からミドルシュートを決められて1点差とされると、東京は直後の同28分に初の選手交代。遠藤選手、ヒアン選手に代えて左アタッカーに野澤零温選手、2トップの一角に尾谷ディヴァインチネドゥ選手を投入する。
激しく降りしきる雨中のゲームとなった後半、絶対に勝点3を持ち帰りたい青赤ファミリーは悪天候を弾き飛ばすような熱量の大声援でピッチの選手たちを後押ししていく。
そして後半40分にはボランチを常盤選手から高宇洋選手にスイッチ。すると直後の42分、左サイドで高選手の縦パスを受けた野澤選手がドリブルで仕掛けたところで倒されてペナルティキックを獲得。これを佐藤龍選手が右足でゴール右上に力強く蹴り込み、スコアを3-1としてリードをふたたび2点に広げた。


後半アディショナルタイムには2得点の佐藤龍選手、攻守に戦い続けた佐藤恵選手に代わって山田楓喜選手、仲川輝人選手がイン。最後の選手交代で試合をクローズにかかる。
終盤、柏が反撃を強めてくるなかでも、守備陣の身体を張ったプレーとスンギュ選手のファインセーブで逃げ切って勝利。一戦必勝が求められた重要なゲームでしっかりと90分間で勝利を手にして3連勝。首位鹿島との勝点差を3に詰め、本当の意味で優勝争いに名乗りを上げることに成功した。

松橋力蔵監督インタビュー

Q、本日の試合の総括をお願いします。
A、素晴らしいゲームをしてくれたと思います。一度は1点差という展開にもなりましたが、またもう一つそこから引き離すこともできて、非常に素晴らしいゲームをしてくれました。
Q、前回の対戦で、今シーズン唯一90分で敗れた相手ですが、この試合に向けてとくに意識したことはありますか。
A、そういう感情的なものが大前提にあったわけではありませんが、このゲームの重要さも我々は分かっていましたし、このゲームを制する上でしっかりとリハーサルを積む時間もありました。それが今日はしっかり表現できた、と。もちろんエラーもありましたが、しっかりとハーフタイムを使いながら修正を加えたことを踏まえても、非常に素晴らしいパフォーマンスをしてくれました。それが結果につながったのがまた一つ良かった点だと思います。
Q、鹿島アントラーズとの勝点差を縮めるチャンスという意味もあった試合でした。その点についてはいかがでしょうか。
A、試合前におそらくみんなも分かっていました。ですが、これまでも差を縮めるチャンスというか、何度かそういう機会があったなかで取りこぼしていたので、特にそういう会話をしている選手は僕には見受けられなかった。でも、やはり彼らはその重要さというものを戦う前に分かっていましたし、エネルギーのようなものはすごくピッチで表現してくれて、しっかりと掴み取ったというところも、次への自信になると思います。ただ、我々はまだまだ追う立場でもありますし、まだまだ先もあるので、次節に向けて地に足をつけて、しっかりとやっていくことが大事だと思います。
Q、2ゴールを生んだ前線のコンビネーションの評価について教えてください。
A、得点もそうですが、マルセロ ヒアン選手と佐藤龍之介選手、とくにツートップに入る選手の守備のスタートとしての意識と精度が、いろいろなものを、ゲームを、良い方向に動かしてくれている要因の一つだと考えています。得点をとっていることはもちろん素晴らしいですし、彼らはストライカーというポジションでプレーしているという意味では、その結果がついてきていることは自信になると思いますし、評価できるポイントだとは思います。ただ、すべてがそこにあるわけではなく、やはりチームにおいて、という点で非常に素晴らしいパフォーマンスをしてくれていることが、この結果につながっていると捉えています。
Q、相手ボランチへの制限から攻撃に転じる点については狙いの一つでしたか。
A、はい。守備のセッションでは相手の攻撃の仕方の確認、それと攻撃のところではつながりのなかでどういうところに相手のウィークが生まれるかというところは、しっかりと前半から、特にボランチの選手が表現してくれました。攻守におけるバランスをしっかりとりながら、リハーサルをしたなかで高い意識を持ってやってくれたことが相手のウィークをしっかりと突いて、そこに対して人数もしっかりかけた攻撃ができた。それが得点につながったと思っています。
Q、若い二人のセンターバック、稲村隼翔選手と大森理生選手の評価を教えてください。
A、非常に素晴らしいパフォーマンスをしてくれたと思っています。微調整はまだありますが、いつか二人で出たいねという話を、僕の目の前で彼ら自身がしていたことがあったので、ならばやってみろ、という部分でもありました。しっかりと評価できるゲームだったと僕は思います。
選手インタビュー
佐藤龍之介選手

Q、優勝に向けて負けられない一戦での勝利となりました。
A、試合前に鹿島アントラーズが負けた情報は入っていましたが、そこでどうこうということは選手たちにはありませんでしたし、柏レイソル相手に90分で勝ち切ることしか考えていませんでした。その意味では大きい1勝だったと思います。
Q、内容的にも充実した試合だったと思います。
A、前回の柏との対戦では内容でも上回られてしまったので、今日は多くチャンスも作れていたし、得点もとることができたので、そこは評価できるかなと思います。
Q、その重要な一戦で得点をとることができた自身への評価はどうですか。
A、ここからはすべてが重要な試合なので、全部の試合で決めるつもりでいますし、チームのために戦うというところをベースにしています。今日はPKもあったので、まだ満足できません。
Q、自身の1点目の場面を振り返ってください。
A,自分がしっかり潰れて、マルセロ ヒアン選手に入った時にスピードを上げて走ることによって、ヒアン選手に選択肢を与えることができたと思います。そこから自分のところにボールが入ればゴールまで持っていく絵が見えていましたし、スリッピーな状態だったので打って良かったと思います。
Q、あえてグラウンダーのシュートを狙いましたか。
A、そうですね。枠にしっかり強いシュートを打つイメージでした。
Q、2点目は、PKになった瞬間からボールをずっと持っていました。
A、野澤零温選手はたぶん蹴らないと思ったので(笑)。佐藤恵允選手も以前に試合中のPKを蹴っていましたが、蹴らせて欲しいと話しました。
Q、ヒアン選手との関係もすごく良かったように感じます。
A、多く試合を重ねるなかで関係性も良くなってきたと感じていますし、今のポジションでプレーすることに対して自分も周りの選手も分かってきたので、良い関係で良さを出せたと思います。
Q,首位の背中が見えてきました。
A、自分たちがここから全勝でいければ、最後は自分たちの力で手繰り寄せることができると思うので、今の状況を続けていきたいです。
Q、ここで活躍するために帰ってきたと話していたことが現実になりつつあります。
A、優勝するために帰ってきたので、掴みたいと思います。
遠藤渓太選手

Q、絶対に勝たなければいけない状況のなか、しっかりと勝点3を積み上げました。
A、タフな試合でしたし、相手もクオリティが高くて難しい試合ですが、自分たちが良いチームよりもさらに良いサッカーができたからこそついてきた結果だと思うので、チームを誇らしく思います。
Q、鹿島アントラーズが今日の試合で負けていたという情報はチームに入っていましたか。
A、もちろん入っていましたが、松橋力蔵監督がどうこう言ったことはないですし、選手各々がその結果を踏まえた上でどうリアクションするかという状況でした。
Q、大事な1点目を決めました。ゴールシーンを振り返ってください。
A、ここ最近は自分以外のアタッカーの選手が活躍していて、ジェラシーを少し覚えたというか。久しぶりに味方の若い選手に支えられていることも悔しいなと思っていたので、ここで結果を出さないと自分も試合に出続けられないと思っていたので、自分も彼らに負けじと結果を出せたことは良かったです。
Q、マルセロ ヒアン選手からボールがきた時に持ち直してからシュートを打つまで、イメージ通りでしたか。
A、スペースがあまりなかったので、シュートコースを作ってから打つことを意識していました。ドリブルというよりはシュートまでの流れを逆算してプレーできたかなと思います。
Q、モヤモヤした気持ちが晴れた瞬間だったのではないですか。
A、チームの助けになるのがアタッカーの選手の役目である以上、他にも良いアタッカーの選手がたくさんいますが、彼らに負けずに自分のチームを引っ張っていけるようにプレーしたいと思っています。そういう意味では、今日ゴールを決められたことは素直に嬉しいです。
Q、ここから優勝争いが本格化していきます。今後の連戦に向けて意気込みをお願いします。
A、まだ自分たちは2位の立場ですし、すべての試合に勝ち続けないと上は見えてこないと思うので、あまり先を見過ぎずに目の前の試合に全力をぶつけていきたいです。ただ試合をこなしているだけだと勝つことは難しいので、今試合に出ている選手も出ていない選手もチーム全員の力が必要になると思います。
Q、勝点差を詰めるチャンスとファン・サポーターも分かっていて、普段ではないようなウォーミングアップ中からの大声援があり、試合中もチームを盛り上げるような気持ちが伝わる応援でした。
A、ここ最近、応援の力強さや変化に選手も気付いていますし、それが原動力になっているのも確かで、これから全部の試合がすべて大事になります。自分たちも後悔なく戦いたいですし、それはファン・サポーターのみなさんも一緒だと思います。勝った時は一緒に喜びたいですし、負けた時は全力を尽くしたうえで一緒に悲しみを分かち合えればいいと思います。今、ファン・サポーターのみなさんと一体になって試合に臨めていると思います。
キム スンギュ選手

Q、他会場の試合結果は知っていましたか。
A、チームとしては特別に話題にすることはありませんでしたが、個人的に結果をチェックしている選手もいたと思います。自分も知ってはいましたが、自分たちはあくまで目の前の試合に集中することが大事だと考えていました。試合前は他会場の結果のことももちろん頭にはありましたが、それ以上に『1試合1試合を確実に勝っていく』という意識を強く持っていました。
Q、稲村隼翔選手と大森理生選手は今日初めてセンターバックとしてコンビで出場しました。若い2選手に対して声掛けや意識したことはありましたか。
A、トレーニングの段階から常にしっかりとコミュニケーションをとれていたので、試合でもまったく問題は感じませんでした。彼らは若い選手ではありますが、それぞれが今のチームでの試合出場経験もあり、それぞれが特長を出して勝利に貢献していて自信を持ってプレーできているので、安心して任せられる存在だと思っています。自分としては後ろからカバーしつつ、全体のバランスを見ながらプレーすることだけを意識していました。
Q、攻撃陣の好調さについては後ろからどのように見ていますか。
A、攻撃の選手たちが非常に良い状態にあるので、後ろの選手としては『失点しなければ必ず点をとってくれる』という安心感があります。その分、自分としてはまず失点しないことに集中すればチームは絶対に負けないですし、その部分でチームに貢献したいという気持ちでプレーしています。
Q、雨が強くなった後半はプレーの判断に変化はありましたか。
A、ゴールキーパーにとっては難しいコンディションに思われたかもしれませんが、スタジアムの芝の状態が良かったこともあり、特にプレーの判断を変えることはありませんでした。ただ、選手交代や時間帯によって試合の流れが変わる部分はあるので、その点については状況に応じて対応していました。
Q、鹿島アントラーズと勝点差が3となり、ここからが本当に優勝を争う戦いとなりますが、意識することはありますか。
A、東京は追う立場なので、1試合1試合で勝点3を積み上げていくことだけが重要だと考えています。プレッシャーがかかるのはむしろ相手だと思うので、自分たちはチャレンジャーとして、目の前の試合を全力で戦い続けたいと思っています。連戦のなかですが、今のチームは誰が出ても高いパフォーマンスを発揮できる状態にあります。それぞれがしっかりと準備をしているので、チーム全体としての力を維持しながら、勝ち続けていきたいと思います。
大森理生選手

Q、初めて同い年の稲村隼翔選手とセンターバックのコンビを組みました。
A、練習やキャンプでもやっていました。アカデミーの時はあまり一緒にプレーすることはなかったですが、お互いの特長は分かっていました。1失点はもったいなかったですが、それ以外は稲村選手も相手の収まるポイントを潰しにいってくれていましたし、配給も素晴らしかったです。とりあえず勝つことができて良かったと思います。
Q、久々の出場となりましたが、準備してきたことが出せたのではないですか。
A、そうですね。ただ、色々と細かいところを見ると改善点はたくさんありました。今日は大事な試合だったので、しっかり攻撃陣も得点をとってくれて勝ち切れたことは自分のなかでも良かったなと思います。
Q、試合前に首位の鹿島アントラーズの結果が分かっている状態での試合でした。
A、みんなこの試合に集中できていたと思います。僕たちが見ているところは優勝なので、少しでも近付くためには勝たなければいけなかったですし、ホームで負けている借りを返すという部分も含めて良いメンタル状態で臨めていました。それが今日のような迫力のある試合に繋がったと思うので、すごく良かったと思います。



