積み上げた自信を確信に

COLUMN2025.9.21

積み上げた自信を確信に

東京は、この2試合で確かな手応えをつかんだ。

東京ヴェルディとの第29節の試合では、相手が重心を前にかけてきた局面を冷静に見極め、背後を突くロングボールで長倉幹樹選手が得点。序盤から主導権を握ったわけではないが、機を見た一撃で流れを引き寄せ、最後まで勝利への道筋を手放さなかった。


続く川崎フロンターレ戦では、ブロックを敷く守備陣形の相手に対し、東京は焦れずにボールを動かし、相手を揺さぶりながらスペースを見出して攻撃を組み立てた。相手の強みを消しつつ、自分たちの狙いを徹底する。

遠藤渓太選手の先制点やVARのサポートで取り消しにはなったが、マルコス ギリェルメ選手の得点に至るまでの一連の流れは、“自分たちの良さだけで戦う”という試合運びではなく、川崎の特長や戦術スタイルを把握し、逆手にとったものとも言えるだろう。

この2試合を通して共通しているのは、相手の戦い方を受け止めたうえで、自分たちの形に引き寄せていったことだ。加えて、ピッチ上で起こる現象に対して冷静なアクションとリアクションで、自信を持ってプレーできている。連勝は偶然ではなく、苦しみながらも積み上げてきたものが表われた必然の結果と言えるのではないだろうか。

連勝がもたらす自信と必然

選手個々の特長を活かした縦に速い攻撃、サイド攻撃は東京の伝統的な武器だが、そこに“つなぐ”意識を融合させることで、状況に応じた多彩な表現が可能になっている。

東京V戦では、前から圧力をかけてくる相手に対し、機を見てロングボールを使い、相手陣地の深いエリアにボールを送ることで、相手の矢印を折って自分たちの矢印に追従させて体力を消耗させた。


一方で川崎戦では、ゴールキーパーとボランチも含めたディフェンスラインでのビルドアップに相手を食いつかせ、空いたスペースに人とボールがうまく関わりながら相手のプレスラインを一列ごとに越えていく展開。どちらの試合も、攻撃の形は違うが“状況を見て的確に攻撃の組み立て方を選択できる”という点では共通していた。

松橋力蔵監督が試合後の監督記者会見で語った「良い攻撃が良い守備につながる」という言葉は、チームとしての進歩をより加速させていきたい証。相手を見てプレーする戦術眼と経験値が備わることで、攻撃と守備の好循環が必然的に生まれるはずだ。

好循環の根底にあるのは、個人の役割の徹底と組織としてのリンクだ。攻守において、ピッチ上の11人がそれぞれの役割を果たすことでチーム全体のバランスがとれるようになった。誰かに依存するのではなく、全員が己の役割を理解して走り続ける。そんな一体感がピッチに表れている。 

今シーズン初の3連勝に向けて

今節、味の素スタジアムに迎えるのはアビスパ福岡。勝点37で並ぶ相手との直接対決は、上位を狙ううえで重要な一戦だ。

リーグ前半戦の対戦では、福岡の堅い守備と鋭いカウンターに苦しみ、アディショナルタイムにコーナーキックの流れから失点。チームとしての良さを引き出せず、0-1の敗戦を喫した。


福岡は現在リーグ戦3連敗中。前節の横浜F・マリノス戦では今シーズンの基本陣形である3バックではなく4バックを採用したが、ロングボールから思うようにフィニッシュまでつなげられず、守備でも隙を突かれて2失点。試合終盤にはサイド攻撃から何度かチャンスを作ったものの、得点には至らなかった。システム変更で活路を探ったが、狙いとした試合運びにはつなげられなかった。

しかし、決して侮れない相手だ。手堅い守備をベースに、ワンチャンスを仕留める力は健在。名古選手の精度の高いプレースキックを起点としたセットプレー、チームトップの5得点を挙げる見木選手の攻撃センスには細心の注意を払わなければならない。

この福岡戦を皮切りに、東京は横浜FM、清水エスパルスと順位が近い相手との連戦に臨む。ここで勝点を確実に積み上げることができれば、単なる連勝ではなく、上位進出への足掛かりを作ることができる。


川崎戦終了後、松橋監督は選手に対して「(後半の戦い次第では)もっと良いスコアにできた」と伝えた。満足することなく、さらに成長し続ける姿勢がいまの東京にはある。だからこそ、このタイミングで、今シーズン一度も届かずにいる“3連戦”は非常に重要だ。勝点3を積み重ねれば、自信は確信へと変わる。

この連勝が偶然ではなく、必然であることを証明するためにも、中2日の福岡戦は東京の総合力と進化を示す戦いとなりそうだ。