9/15 東京V戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

INTERVIEW2025.9.15

9/15 東京V戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

<マッチレビュー>  

東京は青赤だ。味の素スタジアムは俺たちのホームだ。

それを見せつけるかのようにペデストリアンデッキからスタジアムへの道は青赤で敷き詰められ、スタンドはウォーミングアップから青赤模様のコレオグラフィで彩られた。そしてホーム側のゴール裏からは大声援のチャントが鳴り響く。

「戦え、俺の東京。今日も勝利を信じて。弾けよう飛田給。負けるわけはないさ」

サポート体制は万端。スタジアムに熱量が溢れる。ならば、あとはチームが結果を出すだけだ。青赤ファミリーのエネルギーを取り込み、プラスの力に変えて一戦必勝の覚悟で臨むゲーム。東京は離脱していたメンバーや前節で出場停止だった選手たちが戻り、分厚い選手層で勝点3をめざすことになった。

意地でも勝たなければならない重要なゲーム。ゴールキーパーには韓国代表から戻ったキム スンギュ選手を配置。最終ラインは右に日本代表帰りの長友佑都選手、センターバックは森重真人選手とアレクサンダー ショルツ選手が並び、左サイドバックには約1か月ぶりに室屋成選手が戦列復帰を果たした。ボランチはこちらも復帰組の高宇洋選手が橋本拳人選手とコンビを組み、アタッカーは右にマルコス ギリェルメ、左に遠藤渓太の両選手が入った。そして長倉幹樹選手と髪を金色に染めたマルセロ ヒアン選手が2トップに入った。また、長期離脱していた小柏剛選手が約5か月半ぶりにベンチ入りを果たした。


1stHALF—序盤の圧力に耐え、攻め込むも無得点。勝負は後半へ

コイントスでエンド変更を選択され、前半から青赤ゴール裏に向かって攻めることになった東京。立ち上がりは東京ヴェルディに立て続けのセットプレーで押し込まれる時間帯が続くと、その後も相手の鋭い出足に押されて、なかなか自陣を出ることができない。

地上戦で形を作れない状況を受け、前方へアバウトなボールを供給しながら押し上げを図ると、前半14分に長倉選手がキープから前を向いて左へパス。ここで遠藤選手がカットインから右足でシュートを狙う形につなげる。同16分には右サイドでボールを受けたマルコス選手が持ち上がって横パスを送ると、これを再び遠藤選手が右足シュート。立て続けにチャンスを作り、少しずつ流れを引き寄せていく。

だが、前線から積極的なプレスを仕掛けてくる相手に手を焼き、前半17分にはロングシュートがクロスバーを弾いて救われるシーンも見られた。

東京がロングボールとショートパスを使い分けながら少しずつボールを持ち始めたことで東京Vがハイプレスを控え、前半25分頃からミドルブロックを敷く戦い方に変更。これでさらに東京がポゼッション率を高め、左右のスピードと突破力を活かしながら厚みのある攻撃を見せていくことになる。

だが、相手も中央を固めて自由を許さず、ペナルティエリアまで進入しながらも決定的なシーンを作り出すには至らない。前半37分には外回りしながら攻め手を探ると、森重選手が右斜め前方へ鋭いパス。これをオーバーラップしていた長友選手が受けてクロス。だが、これは相手に弾かれてしまい、決定機につなげることはできなかった。

前半は2分間のアディショナルタイムでもスコアが動かず。決着は後半の45分間に委ねられることになった。

2ndHALF—モトキのゴールでリーグ戦ホームでは21年ぶりの勝利

後半立ち上がり、お互いにスピードある攻撃を出し合う展開に。東京は後半3分、カウンターからマルコス選手が右サイドを力強く持ち上がって敵陣へ入り込むと、長倉選手とのコンビで押し込みながらシュートには持ち込めず。その後も右サイドを中心にボールをつなぎ、ショルツ選手のオーバーラップなど厚みのある攻撃を見せていくが、相手が構築する5バックを破ることができず決定機にはつながらない。

そして後半15分、ついにスコアが動く。起点となったのは前半から何度もチャンスを生み出しかけていたスンギュ選手のロングキックからだった。最後方からのボールをヒアン選手がヘディングで競って前方へ流すと、相手センターバックの間を割って抜け出した長倉選手がミドルレンジから左足アウトサイドで相手ゴールキーパーのポジションを確認しながら頭を越える技ありシュートを流し込んで先制。味の素スタジアムは大歓声に包まれ、東京のスコアボードに『1』の数字が記された。

されに攻撃にテコ入れを図りたい東京は直後の後半16分、ヒアン選手と遠藤選手に代えて左アタッカーに佐藤恵允選手、2トップの一角に小柏剛選手を投入。松橋力蔵監督が先手をとってチームを勢いづかせるべく動いていく。

敵陣で試合を進める東京は後半27分、左サイドでキープしたマルコス選手から室屋選手へつなぐと、左からペナルティエリア内へ入り込んだ橋本選手へ鋭く差し込むパス。これを背番号18が落としたところを小柏選手と長倉選手が狙う。これはタイミングが重なって決定的なシュートを打つことはできなかったが、ボランチの攻め上がりを含めた迫力ある良い攻撃を見せる形となった。

少ないチャンスを決め切ってリードを奪い、残り10分の戦い方が問われる時間帯に。ここで東京にアクシデントが発生。途中出場していた小柏選手が相手との接触で右肩を負傷。長期離脱していた際に傷めた左肩とは逆側だったが、大事をとってインアウトの形で野澤零温選手と入れ替わることとなった。同時に左サイドバックに安斎颯馬選手を投入。激しいファイトを続けてきた室屋選手からスイッチし、試合をクローズする役割を託された。

気迫のプレーで勝利をもぎとりたい東京。長倉選手が身体を張ってキープすれば、佐藤選手は猛ダッシュでプレスを仕掛けてチームを救う。後半アディショナルタイムの6分間も気迫のプレーが続く。相手のセットプレーを立て続けにニアサイドで跳ね返し続けると、後半45+7分には高選手から小泉慶選手にスイッチ。最後の選手交代で時間を使いながらピッチを引き締めにかかる。

ゴール裏から響き渡るのは、「ヴェルディだけには負けられない」のチャント。その気持ちに応えるかのように長倉選手が最後の最後まで相手ディフェンダーに激しくチェイスしてスライディングでカットすると、大歓声のなかで試合終了のホイッスル。青赤一丸となったホーム味の素スタジアムで、東京が2008年4月12日以来となる同カードの勝利を手にした。


MATCH DETAILS

<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK キム スンギュ
DF 室屋成(後半39分:安斎颯馬)/森重真人/長友佑都/アレクサンダー ショルツ
MF 高宇洋(後半45+7分:小泉慶)/橋本拳人/遠藤渓太(後半16分:佐藤恵允)/マルコス ギリェルメ
FW マルセロ ヒアン(後半16分:小柏剛)(後半39分:野澤零温)/長倉幹樹

SUBS
GK 波多野豪
DF 岡哲平/土肥幹太 FW エヴェルトン ガウディーノ

MANAGER
松橋力蔵

GOAL
後半15分:長倉幹樹

<東京ヴェルディ>
STARTING Ⅺ
GK マテウス
DF 宮原和也/深澤大輝/谷口栄斗
MF 稲見哲行(後半19分:熊取谷一星)/平川怜(後半45分:食野壮磨)/森田晃樹/新井悠太
FW 齋藤功佑(後半19分:福田湧矢)/染野唯月(後半30分:寺沼星文)/唐山翔自(後半30分:内田陽介)

SUBS
GK 長沢祐弥
DF 鈴木海音/林尚輝 FW 平尾勇人

MANAGER
城福浩

GOAL



[松橋力蔵監督 インタビュー]


Q、試合の総括をお願いします。
A、本当に、勝利をめざすという部分で、良い時間帯も悪い時間帯も選手は必死になって頑張ってくれた結果が、勝利というものにつながったことを非常に嬉しく思うのと同時に、やはりこの勝利を後押しし、バックアップしてくれた、普段から我々をサポートしてくれているファン・サポーターのみなさんの力あっての勝利だと思っています。本当にありがとうございます。

Q、東京ヴェルディ戦ということで非常に両チームともに気合いが入った試合でしたが、東京が相手の闘志を上回るものを見せたと思います。そのあたりが今日の一番の勝因だとも思うのですが、監督はどのようにお考えでしょうか。
A、おっしゃっていただいたとおり、やはり東京V戦ならではの熱さであったり、気持ちの部分を持って彼らはしっかり臨んでくれたと思いますし、当然相手もそこに負けじとしっかり出してきました。ただ、最後は一つのゴールというもので上回って、そこで結果を得ることができたということは非常に価値のあることです。戦い方という部分ではすべてが思い通りというわけではありませんが、ここもやはりこの試合ならではの熱とか、冷静であればもう少し力を発揮できるようなところでなかなか出し切れなかったというところはまだまだ課題でもあります。ただ、相手の状況を見ながら、長短のパスをうまく使ってとか、間のスペースを使いながら、もしくは相手の背後を使いながら、というところはみんな狙いを持ってやってくれたなかでの得点だったと思っています。

Q、序盤に相手が前に出てきたところでキム スンギュ選手がボールを長く持ったり、後ろでボールを回したりと意図的にスローダウンさせたように見えたのですが、そのあたりは何か狙いがあったのでしょうか。
A、いえ、そういう指示は出してはいないのですが、相手がどう出てくるかというところをしっかり見ながら、どこを使っていくかというところは話しているので、そこは彼らの判断のなかでしっかりできたと思います。ただ、少しそちら一辺倒になり過ぎている部分もあったかなという感じはありました。試合の流れというものは良い時間帯もあれば、ボールの失い方や攻撃のやり方が雑で相手にすぐボールを渡してしまうようなところで相手に押し込まれるようなシーンもあったので、またそこは修正していく必要があります。ゲームの流れをどう作っていくかというところでの課題です。

Q、ゴールシーンは、長倉幹樹選手の左足のアウトサイドに乗せたきれいでテクニカルなループシュートでした。監督はずっと彼を見てきて、ああいう技術を持ち合わせていることはよく理解されていることだと思うのですが、彼の評価をお願いします。
A、まずは本当にこの大きなゲームのなかでしっかり点をとって、チームを勝たせたということは非常に素晴らしいと思います。その前のシーンでその判断をしたキム スンギュ選手、それとそこに絡んだマルセロ ヒアン選手との関係性のなかから生まれたゴールなので、相手を崩すとかライン間をうまく攻略してということだけではなくて、相手が少し間延びしているような状況や、そういう間をうまく使っていくということができた得点だったと思います。なので、非常に素晴らしい得点だと僕は思っています。

Q、得点の直後に二人同時に交代カードを切りましたが、本来は0-0の状況で準備していた交代だったと思います。結果として1点を先行してからの交代になりましたが、そこでまた何かやり方を変えたことがあるのでしょうか。
A、ゲームプランの一つではありましたが、得点が入って、このまま代えるかどうかということはコーチと少し話しました。それでも追加点、もう一点をとりにいくという意味では、小柏剛選手にボールが入ったり、そこの関係性というものをうまく使うことができればと思って投入しました。ライン間でドリブルをうまく使ったり、二人の関係で突破をしていったり、そういうものが得意な選手なので。少し相手のボランチの選手に疲れが見えて動きが悪くなってきている、疲弊しているようにも見えたので、そこで先手をとれればまた追加点のチャンスもある、と。ですので、2点目をどうとりにいくか、というところでの交代でした。

Q、東京Vとの試合ということで、選手たちが熱くなり過ぎないように主審がある程度の接触プレーでファウルをとるようなシーンもあり、その分試合が寸断される場面もあったように思います。こういう流れは監督にとって難しい部分などがあるのでしょうか。
A、ジャッジに関してはレフェリーを尊重しますし、すべてに納得するわけではありませんが、そこは尊重しながらと思っています。僕が思うのは、アディショナルタイムがどんどん長くなることは避けたいということです。そこがあまりにも長過ぎることによって、相手にも時間を与えることになりますし、自分たちも疲れているなかでさらに長い時間を戦わなくてはいけなくなります。良いペースであっても、最後のワンチャンスで相手に流れていく可能性もあるので、できるだけそこが少なく、インプレーの時間が常に長くとれるということをめざしてやらなければいけないと思っています。

Q、今日の試合も暑いなかで後押ししてくれたファン・サポーターのみなさんへのメッセージをお願いします。
A、もう本当に、彼らなくして今日の勝利はなかったと思っていますし、僕らが“東京”なんだというところを彼らが常にバックアップしてくれていると思います。僕自身も今日選手に伝えたのは、これは歴史やプライドの戦いだけでなく、未来に向けた戦いだと。どちらに東京の未来を託せるのか、託していくのかと考えていた時に、それは我々だと。東京の未来というものを作り上げていくその意志や覚悟を、今日は応援してくださるみなさんに示すことができたと思いますし、選手も応えてくれたと思います。そして、そのチカラを選手たちに与えてバックアップしてくれた方々を含めて、全員の勝利だと思っています。


[選手インタビュー]

<長倉幹樹選手>


Q、試合を終えて、率直な感想を教えてください。
A、最高です。

Q、東京の選手として初めての東京ヴェルディとの一戦を終えて、味の素スタジアムの雰囲気はどうでしたか。
A、いつもの試合とは違った雰囲気がありました。自分たちもそうですが、ファン・サポーターからの『ヴェルディだけには負けられない』という気持ちが届きましたし、いつも以上に湧きました。

Q、見事なゴールでした。振り返ってみていかがですか。
A、ゴールキーパーが前に出ているのが見えたので、咄嗟の判断で上を通そうと思いました。ボールの位置と走っているポジショニングから、左足で狙いました。

Q、ハーフタイムにどのような修正指示がありましたか。
A、前半は相手の守備が堅かったので、裏のスペースをもっと使っていこうという話がありました。後半は裏抜けの回数を増やして、空いているスペースを狙っていきました。

Q、ゴールの瞬間、とてつもない歓声が沸きました。
A、嬉しかったです。ただ、相手がコートチェンジしていたので、(ファン・サポーターの目の前ではなくて)悔しいなと思いました。逆に、相手のファン・サポーターの前で点をとれたというのも、それはそれで良いかなと思っています。流れがどちらにいくか分からないなかでのゴールだったので、嬉しかったです。

Q、試合に勝利した率直な気持ちを教えてください。
A、ずっと引き分けだったのは知っていましたし、責任感を持って戦えたと思っています。このような一戦は楽しいですし、勝てて嬉しいですし、もっとやりたいです。次の『多摩川クラシコ』でも良い雰囲気を作ってくれると思うので、勝ちたいと思います。



<キム スンギュ選手>


Q、加入後初のクリーンシートです。試合を振り返っていかがですか。
A、もちろん、すべての試合でクリーンシートをめざしていて、ここまではそれができず残念でしたが、今日の東京ヴェルディ戦でクリーンシートを達成できてとても良かったです。

Q、今日はスンギュ選手からのロングボールが有効だった印象ですが、どのようなことを考えてプレーしましたか。
A、相手の前線の選手たちが前からプレスに来たことや、後ろの選手たちには高さがあったので、試合前から長友佑都選手とも話をして、空いているところがあれば相手の背後を有効に使っていこうと決めていました。松橋監督も、ボールを回しながら常に背後のところを狙おうと話していたので、しっかりそれを頭に入れながらプレーしました。

Q、ファン・サポーターの声援はどのように聞こえましたか。
A、ウォーミングアップの時から大きな声援を送ってくれました。試合中も常に後ろからファン・サポーターのみなさんの力強い応援が聞こえて、とても力になりました。感謝しています。

Q、ここから連戦となります。どのように準備をしていきますか。
A、連戦なのはどのチーム一緒なので、戦う状況は一緒です。より良い準備ができたチームが勝てると思うので、しっかりと勝点を積み上げるために、良い準備、良い試合を続けていきたいです。


<高宇洋選手>


Q、独特な緊張感のあった今日の試合の振り返りをお願いします。
A、ファン・サポーターのみなさんの熱い想いがスタジアム内に最高な雰囲気と空気をもたらしてくれました。選手もいつもとはひと味違う緊張感を感じていました。まずは、何より勝ち切れたことが本当に良かったです。良いゲームになったと思います。

Q、守備ブロックをしっかりと敷く相手に対して、焦れずにボールを回すこと、コントロールすることを徹底していたように見えました。
A、立ち上がりは相手に立て続けにフリーキックを与えてしまうなど、マイナスな形からのスタートでしたが、試合が進むなかで押し込むプレーが徐々に増えていきました。ですが、押し込むなかで、相手の背後を狙うプレーや逆サイドを意識したプレーがもう少しチームとして表現できれば良かったとは思っています。得点についてはシンプルな形から生まれたゴールでしたが、相手は5枚で固めてきていましたし、全体的にミドルシュートや3人目や4人目が関わるような連動したプレーが足りなかったと個人としては感じています。

Q、チームとして矢印が前に前にという状況の中でも、高選手のリスク管理を意識した立ち位置がバランスをとっていたと思います。
A、相手のカウンターや、相手フォワードの位置に対して、ショルツ選手と森重選手とは常にコミュニケーションをとっていました。ほぼ、相手が好きなようにプレーができない状況を作ることができたと思っています。ディフェンスからの声と僕ら中盤からの声で、相手に一発のカウンターから得点を奪わせない連携が図れたと思いますし、攻め込むシーンでも、リスク管理という面ではしっかりケアできたと感じています。

Q、リーグ戦での勝利は約6,300日ぶりの勝利でした。この勝利を残りの9試合にどのようにつなげていきたいですか。
A、僕自身コンディション不良もあって、早く試合に出たい、早くプレーがしたいという一心でした。残りの試合すべて勝つことだけしか考えていません。今日の東京ヴェルディとの対戦は、ファン・サポーターのみなさんの想いに勝利で応えられたことが何よりうれしいですし、今の順位を考えると少しでも上をめざすことしか考えていません。この一勝を意味あるものにするために、次節の川崎フロンターレ戦に向けて良い準備をするだけです。