<マッチレビュー>
前節の鹿島アントラーズ戦で再び陥ってしまった決定力不足を打破し、勝負強く勝点3を手にしたいゲーム。アウェイのレモンガススタジアム平塚で行われる湘南ベルマーレ戦に臨んだ東京は、前節からスタメン5選手を変更した。
ゴールキーパーには東京デビューから6試合連続でスターティングメンバーに名を連ねるキム スンギュ選手、最終ラインは右から長友佑都、アレクサンダー ショルツ、エンリケ トレヴィザン、バングーナガンデ佳史扶の4選手が並んだ。ボランチは本日32歳の誕生日を迎えた橋本拳人選手がチームキャプテンの小泉慶選手とコンビを組み、アタッカーは右に野澤零温選手、左に俵積田晃太選手のアカデミー出身選手を起用。そして2トップに長倉幹樹選手と仲川輝人選手を置く4-4-2の布陣をセレクトした。
また、7月にプロ契約を締結した北原槙選手が初めて背番号77を着けてベンチ入り。波多野豪選手も約1か月半ぶりに控えメンバーに名を連ねた。
1stHALF—攻守に落ち着きを見せ後半に折り返す
試合はいきなり動く。前日に「ゴール前で怖さが必要。フィニッシュの質で結果を残したい」と話していた背番号26が豪快な右足シュートを湘南ゴールに突き刺した。
開始6分、右サイドで鋭く仕掛けた野澤選手が倒されてフリーキックのチャンスを得ると、これを俵積田選手が右足でゴール前へ。いったんは相手選手に弾かれたが、このこぼれ球を拾った佳史扶選手がふたたびゴール前へ送ると、エンリケ選手がヘディングで落としたところを狙ったのは長倉選手。右足で狙いすましたダイレクトシュートを叩き込み、東京が早い時間に先制点を奪うことに成功した。
その後もボールをつなぎながら主導権を握りながら試合を進める東京。最終ラインと中盤で崩しどころを定めようとする細かいパスの出し入れ、小泉選手からの大きなサイドチェンジ、右サイドの長友選手から前線に差し込む鋭いグラウンダーパスなど、選手たちがピッチ内の状況を見ながら攻撃に工夫を加えていく。
前半20分には鋭いカウンターが発動。ピッチ中央をドリブル突破した俵積田選手からのスルーパスを長倉選手がダイレクトで狙ったが、これは惜しくもゴール左上に。
守備陣も集中したプレーを見せる。松橋力蔵監督が攻守において「ゴール前でのプレーが勝負のキワ」と話していたように、選手たちはピンチになりそうなシーンでも素早い寄せとコースの限定で相手に自由を与えず。
その後も支配率を高めながら押し込む東京。左サイドに流れた仲川選手が俵積田選手、佳史扶選手との多彩なダイレクトプレーで何度も湘南守備陣を崩そうとしていくが、決定的なチャンスを生み出すには至らない。

速攻と遅攻を使い分けながら同サイドに人数をかけ、ボールを失っても高い位置での即時奪回で湘南陣内でのプレー時間を長くしていく。相手の攻撃に構えるときはしっかりとブロックを作り、そこからカウンターを狙う柔軟な戦い方も披露。試合を優位に進めながら締めるところを締め、巧みなゲーム運びで前半をクローズ。追加点を狙いながらもしっかりとリスクを管理し、1点のリードで前半を折り返した。
2ndHALF—2点リードを守り切れず、終了間際に痛恨の失点
前半は攻守にわたってほぼゲームを支配した東京。だからこそ早い時間に追加点を奪って余裕のある試合展開に持ち込みたいところ。
そんな後半に向けて、ハーフタイムに松橋監督が動く。俵積田選手に代えて右のアタッカーにエヴェルトン ガウディーノ選手を投入し、野澤選手が左サイドへ。ロッカーから出てきた背番号98を、ゴール裏のファン・サポーターが「エヴェ」の大声援で迎え入れた。
後半立ち上がりこそ反撃に出てくる湘南の勢いを受ける形になったが、左サイドで厚みのある攻撃を見せた東京が次の1点を奪う。
後半7分、佳史扶選手が差し込んだパスをエリア内で受けた野澤選手が鋭くターンすると、前を向いた瞬間に倒されてペナルティキックを獲得。これをショルツ選手が右足できっちりと沈め、東京がスコアを2-0とした。ショルツ選手にとっては横浜FC戦で外したペナルティキックの借りを返したゴールとなった。
リードを広げた松橋監督がさらに動く。後半12分、仲川選手を下げてヒアン選手をピッチへ。2点のビハインドで前掛かりになるであろう湘南の出方を予測し、裏のスペースを狙えるヒアン選手を送り込んだ。
しかし、反撃に出る湘南の勢いにゴールを破られてしまう。後半22分、松本選手のミドルシュートをスンギュ選手がセーブするも、こぼれ球を鈴木選手に蹴り込まれて1点差とされてしまった。
リスクを管理しながら相手の裏を狙っていきたい東京。後半27分にはカウンターにヒアン選手が抜け出して独走し、カットインで相手選手をかわしながら右足を振り抜いたが、惜しくもゴール右に外れてしまう。さらに同29分には佳史扶選手の鋭いグラウンダークロスからファーサイドにヒアン選手が突っ込むもわずかに届かず。いずれもゴールとはならなかったが、狙いどおりの形で立て続けに攻撃で“怖さ”を出していった。
その後、選手交代と反撃ムードで勢いづく湘南。だが、東京はスンギュ選手が右腕一本でファインセーブを見せるなど、危ないシーンを作られながらも耐えていく。
後半42分には野澤選手に代えて岡哲平選手がイン。湘南の猛攻に対応するためにショルツ選手、エンリケ選手と並ぶ3バックにシステムを変更した。
その後も猛攻に出てくる湘南。後半アディショナルタイムは表示された7分間が過ぎようとしていたところでコーナーキックから痛恨の失点。最後の最後で耐えきることができず、目前のところで勝利を逃して引き分けという結果に終わってしまった。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK キム スンギュ
DF 長友佑都/バングーナガンデ佳史扶/アレクサンダー ショルツ/エンリケ トレヴィザン MF 橋本拳人/野澤零温(後半42分:岡哲平)/俵積田晃太(後半0分:エヴェルトン ガウディーノ)/小泉慶
FW 長倉幹樹/仲川輝人(後半12分:マルセロ ヒアン)
SUBS
GK 波多野豪
DF 土肥幹太
MF 東慶悟/常盤亨太/北原槙
FW 山下敬大
MANAGER
松橋力蔵
GOAL
前半6分:長倉幹樹 / 後半7分:アレクサンダー ショルツ
<湘南ベルマーレ>
STARTING Ⅺ
GK ポープ ウィリアム
DF 舘幸希(後半40分:大岩一貴)/大野和成
MF 鈴木雄斗/茨田陽生(後半0分:小野瀬康介)/奥野耕平/平岡大陽(後半31分:石井久継)/松本大弥
FW 鈴木章斗/小田裕太郎(後半31分:二田理央)/太田修介(後半19分:石橋瀬凪)
SUBS
GK 吉田舜
MF 藤井智也/ゼ ヒカルド
FW ルイス フェリッピ
MANAGER
山口智
GOAL
後半21分:鈴木雄斗/後半45+7分:鈴木章斗
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、本日の試合の振り返りをお願いします。
A、本当に悔しい戦いになってしまいましたが、勝点が0ではなく、1をとれたことをまた次につなげていきたいと思います。
Q、ハーフタイムの交代の意図と、前後半では大きく展開が変わってしまった要因を教えてください。
A、ハーフタイムの交代は体調面を考慮したものでした。後半に関してもそうですが、前半から我々がボールを動かす時に、相手をおびき出すぐらいの気持ちが感じられず、簡単に相手に付けさせてしまうような動かし方が試合展開を難しくしていました。
準備のところでも、そこはポイントにあげていましたが、相手の圧力であったり、その場に立っている選手たちの判断を上回るプレスの連動性がうまくいかなかった要因だと思っています。
Q、足が止まる時間帯に交代に悩まれて、最終的にセンターバックを3枚にされました。
A、最終ラインを5枚にしたのは、最終的に長いボールが増えてくるなかで、そこをどう潰していくかというところが理由の一つです。4枚の時にも、ボランチが相手のサイドからランニングしていく選手をセンターバックと連携しながら、しっかり押さえていた部分はありました。
ただ、最後の時間帯で放り込んでくることを想定していました。最後の局面で返し切れなかったことが、終了間際の失点につながりました。
[選手インタビュー]
<アレクサンダー ショルツ選手>

Q、試合の最後で非常に悔しい展開となってしまいました。
A、自分たちのせいです。相手チームの方が我々より良いチームだったと感じていますし、自分たちも、さらに良くなっていかなければいけません。特にコーナーキックの守備はもっと対応できたはずですし、そもそもコーナーキックを与えてしまったシーンでも、ディフェンスラインが下がりすぎてしまった点などを改善していかなければいけないと思います。
相手に多くの決定的なチャンスを作られたわけではありませんが、結果的に失点に繋がりかねない状況を自分たちで招いてしまいました。
Q、ご自身のプレーを振り返ってください。
A、私自身のパフォーマンスは決してよいものではなかったと感じています。2-0というスコアは十分な結果だったはずですが、試合内容やパフォーマンスについては、これまでの試合の方が良かったと思います。今日は自分たちが主導権を握ることができず、むしろ相手に試合をコントロールされてしまいました。
Q、後半の試合展開が難しくなった要因としては、どのような点が考えられますか。
A、低い位置で相手からのプレスをうまく回避できず、ボールを失う場面が多かったことが原因だと思います。カウンターからチャンスを作る場面もありましたが、そうした決定機を確実にものにし、試合を決定づけるような、攻撃が求められると思います。
Q、前回はペナルティキックを外してしまっていますが、今回は決め切れました。東京に来て初得点となった、ペナルティキックを振り返ってください。
A、前回のペナルティキックの失敗があったので、今回外したら、もうペナルティキックは蹴れないと考えていました。今回は少し蹴り方を変え、蹴る瞬間にゴールキーパーが逆方向へ飛んだのを確認してから蹴り込みました。決めることができて良かったです。
東京で初得点を決めることが出来たことは良かったですが、勝利することができなくて残念です。
<長友佑都選手>

Q、個人のパフォーマンスは良かったと思いますが、チームとしてこの結果をどう受け止めていますか。
A、個人のパフォーマンスが良かったとしても、それがチームの勝利に結びつけられていません。難しいところではありますが、やっぱり勝利に結びつけたいです。ただ、個人としてはこのパフォーマンスを続けていくしかないと思います。
最後の局面で攻撃も守備も緩さはあると感じました。攻撃は、最後のクオリティをもっと上げなければいけないですし、守備も最後に身体を張らなければいけないところで、ひとつ寄せきれていない局面など、単純なところかもしれませんが、それが原因で今日も2失点してしまっています。当たり前のことができなければ、上に行くことは難しいと感じています。
Q、終盤は押し込まれる展開が増え難しい時間が多くなってしまいました。どんなことが必要だったと感じていますか。
A、強度は意識で変わると思いますし、それを身体のせいや暑さのせいや環境のせいにするのであれば試合に出る意味が無いと思います。強い意志があるかどうかだと思いますし、球際のところもそうですし、プレスバックもそうです。ひとつの意志の連続で強度は変わってくるので、その高い意識がひとり一人に必要でした。
Q、個人のパフォーマンスに目を移すと直近の2試合では、素晴らしいクオリティだと感じます。
A、自分は全盛期のインテル ミラノ(セリエA)時代のプレー強度に戻していきます。まだまだ満足できないですし、インテル ミラノ時代の自分のプレー集を見返した時に、まだまだスピードも強度も足りないなと感じました。確実にここから上げていきます。
Q、この勝点1をどう次に繋げていきたいですか。
A、今日は勝点3をとれた試合でした。何も繋げられないと思っています。本当に危機感を持って、ひとり一人が強い意志と高い意識を持ってやり続けるしかありません。それを自分はプレーで示し続けていきたいです。まだまだ示さなければいけません。
<橋本拳人選手>

Q、2-0でリードするまでは、良いゲームができていたと思いますが、振り返ってみていかがでしょうか。
A、今日の試合に関しては自分たちが意図したように90分をとおしてゲームを進めることができませんでした。そのなかでも、ボールを奪ってからのカウンターで、いくつかの良いシーンがありましたし、先に2点をとれたことは非常に良かったのですが、その後は押し込まれる展開が続いてしまいました。失点以外にも、ピンチはたくさんあったので、反省材料の多い試合でした。
Q、特に後半は前線からの守備の強度が落ちてしまったことが、このような結果に繋がったように見えました。どのようなことが必要でしたか。
A、「しっかり耐えよう」という話はできていましたが、自分自身を含め、様々な場面で隙が生まれてしまいました。どこかで「このまま守っていれば勝てるだろう」と思ってしまった部分もあったので、この順位にいる以上は、全員が勝点3をめざして全力でプレーしなければならないと、改めて痛感させられました。
Q、勝点をすべて失ったわけではなく、勝点1を持ち帰ることができました。これを次に繋げるために、どのように取り組んでいきますか。
A、自分たちが優位な状況で戦える試合ばかりではありません。苦しい状況でいかに守りきるか、その点をもう一度チーム全員で見つめ直して、改善していかなければならないと考えています。


