韓国で開催された東アジアE-1サッカー選手権決勝大会2025のSAMURAI BLUE(日本代表)に、FC東京から選出された長友佑都。今大会でチームキャプテンを託され、中国との第2戦で2022年のFIFAワールドカップ カタール大会以来となる代表戦の出場を果たした。
来年6月のワールドカップ出場に向けて、自身の持ち味をアピールした今大会について、韓国で現地取材した青山知雄氏が戦いを総括する。
苦しい時間を乗り越え、長友佑都が950日ぶりに日本代表のピッチに立った。
昨年3月、AFCアジアカップで準々決勝敗退を喫した森保ジャパンに喝を入れる形で代表復帰。少し歯車の狂ったチームを持ち前のキャラクターで盛り上げ、日本を代表して世界と戦うことの意義や想いを言葉と背中で伝えてきた。その甲斐もあってチームはFIFAワールドカップ26 アジア最終予選(3次予選)で破竹の6連勝を記録。選手たちの意識も高まり、世界最速で本大会出場を決めた。
だが、その一方で長友自身は12試合連続で試合登録メンバーから外れるという悔しさを味わう。これまでも言葉では「チームのためにできることを」と話してきたが、日本代表の力になれるならどんな役割でもと考えながら、5度目のワールドカップ出場は彼にとって自らのサッカー人生を懸けた戦い。チームに必要な人材とされながら、選手としてピッチで貢献できていないことに葛藤を抱えていた。

今大会、森保一監督からチームキャプテンに任命され、経験と言葉、そしてプレーで引っ張ることを期待された。初戦をベンチで過ごし、迎えた中国戦では3バックの左ストッパーとしてフル出場。その試合後、2年以上に渡る難しい時間を過ごし、ようやく訪れたチャンスに本音が漏れる。
「苦しすぎましたね。『苦しい』の一言です。ただ、僕はその逆境とか苦しみからこれまでも何度もはい上がってきた。みなさんは『もう長友は終わりだ』と思ったかもしれないですけど、僕はひたすら自分のことを信じてやってきた。(選手として戦力になれていないという)危機感はずっとありましたよ。僕もバカじゃないので、客観視して、把握しているし、もしかしたらメンバーとして考えられていないかもしれないと感じていた部分もあった。そこは悔しさと、自分の不甲斐なさも含めて足りないことは分かっていた。だからこそ中国戦は気持ちが入っていたところがありました。ワールドカップで優勝するメンバーの一員としてのプレーは、まだまだ自分としてはほど遠いなと思うし、課題もたくさんありますけど、間違いなくその第一歩を踏み出すことができた。
個人的には(中国戦に向けて)『今日ダメなら終わりだな』というくらいの気持ちで臨んでいたし、それくらい自分は懸けていた。日の丸を背負って戦うことは誇りだし、名誉。試合に出られなくて悔しい思いをしてきましたけど、出たらとにかく魂を込めて戦うことだけは決めていた。やっぱり自分は高いところをめざしているので、まだまだやらなければならないことが多い。例えばエムバペとか、ヴィニシウスとか、そのレベルと対戦した時に、今の自分のスプリント能力でいけるのかという部分で冷静に見ている自分もいる。そこに年齢は関係ないと思っていて、質を高めれば伸ばせると思っている」

中国戦では慣れない3バックの一角を託された。それすらもポジティブに捉える38歳がいる。選手としての可能性を広げ、自らの存在価値を高めるチャンスだと考えたからだ。また、かつてともに戦った長谷部誠コーチの存在も、彼にとって大きなものとなっている。代表ではボランチとして活躍していたが、所属のアイントラハト フランクフルトでは晩年になってからディフェンスラインを託され、クラブ史に残るレジェンドとなった。
「ドイツで“皇帝”と言われた選手ですからね。賢さ、危機察知能力、カバーリング能力とか、経験をしていないと出せないポジショニングが確実にある。(長谷部さんは)試合を読む能力に長けていたと思うので、そこは自分も学びながらですね。ここで自分がセンターバックをできるようになれば、ワールドカップのメンバーに入っていける確率が高くなる。右も左もウイングバックもサイドバックも、センターバックの左右もできることを示すことができて、夢に近付いていくと思う」
今大会、日本代表は見事に連覇を達成し、長友はチームキャプテンとして人生初のカップリフトを経験した。ここからは選手として、守備のマルチプレーヤーという確固たる戦力として、5度目の本大会をめざすことになる。

ただし、青赤での活躍がなければ、日本代表にはワールドカップの舞台には届かない。それは彼自身もしっかりと分かっている。
「ガツガツやっていくしかないでしょ。もう一段、二段上げていかないと。東京に貢献しなければワールドカップにはつながらないし、今はそこに燃えています」と成長への意欲は増すばかり。そこに年齢は関係なく、自らを信じて突き進むだけだ。
悔しさと手応え、そして未来への想い──。背番号5にとって韓国で過ごした10日間は、本大会に向けた道のりをクリアにし、あらためてその覚悟を固める大切な時間となった。
(文中敬称略)
Text by 青山知雄
Photos by 新井賢一


