<マッチレビュー>
今シーズン初のリーグ戦3連勝を狙う一戦。直近の2戦では球際激しく気持ちのこもったプレーをベースにチーム全体が連動し、各選手の特長をうまく絡めて個と組織が融合したサッカーで連勝を収めてきた。今節は強烈なポゼッションサッカーで好調をキープし、勝点で首位に並ぶ柏レイソルとのアウェイゲームに臨む。難敵を撃破し、勢いをつけた状態で中断期間に入りたいところだ。
そんな重要なゲームでゴールマウスに立つのが、6月に東京へ移籍加入したキム スンギュ選手。彼にとっては2020シーズンから2シーズン半にわたってプレーした古巣との対戦でもあり、慣れ親しんだかつてのホームスタジアムで青赤デビュー戦を迎えることになった。
最終ラインは室屋成、森重真人、アレクサンダー ショルツ、バングーナガンデ佳史扶の各選手が4バックを編成。高宇洋選手と橋本拳人選手がボランチでコンビを組み、中盤の右に野澤零温選手、左に遠藤渓太選手。そして最前線はビルドアップや裏への抜け出しに好連携を見せてきた長倉幹樹選手と仲川輝人選手のコンビを据えた。また、小林将天選手がプロ入り初のベンチ入り。佐藤恵允、マルセロ ヒアン、俵積田晃太といった攻撃的な選手が控えに構えるだけに、選手交代のタイミングや勝負どころの見極めも試合結果を左右するポイントとなることが予想される。
また、この試合は東京から俵積田選手と長友佑都選手が、柏は古賀選手、久保選手、垣田選手、細谷選手が東アジアE-1サッカー選手権2025を戦う日本代表に選出されており、そちらにも注目が集まるゲームとなった。
1stHALF—インテンシティの高い前半、手堅く試合を運び後半へ
立ち上がりは柏がボールを握って押し込んだが、東京が最終ラインからのビルドアップでつなぐ意識を見せて流れを引き寄せると、最後方に入ったキム スンギュ選手のキックを起点にチャンスを作り出す。

前半7分、ロングボールを長倉選手が中央で収めて右へ持ち運びながら展開すると、これを受けた野澤選手が縦への突破から右足シュート。1分後には右サイドの野澤選手が中央につないだボールを仲川選手が狙うなど、東京が積極的に柏陣内へ攻め込んでいく。
お互いにボールを握り合うような展開。東京は矢印を相手ゴールに向けながら鋭いアタックとポゼッションを織り交ぜた攻撃を見せていく。柏のポゼッションサッカーに対しても受けすぎることなく的確なプレスとミドルブロック、さらには前線からのプレスバックで自由を許さない。
柏も大きなサイドチェンジを使いながら東京ゴールに迫ってくるが、青赤の守備陣が集中した守備でゴール前を固めて耐えていく。しっかりと中央を締めることで“持たれる”のではなく、“持たせる”外回りの形にさせて試合を進めていった。

自陣に構えながら一瞬のスキを狙う東京。前半34分には仲川選手のプレスバックから一気にカウンターを発動させると、前向きにボールを受け直した仲川選手が前方へスルーパス。これに長倉選手がペナルティエリア内へ飛び出して相手ゴールキーパーと交錯するもファウルはなし。さらにこぼれ球を拾った遠藤選手から、再び長倉選手がフィニッシュを狙うが、これも寸前のところでゴールキーパーに阻まれてゴールを陥れることはできない。
ボールポゼッションでは柏に譲る形となったが、東京も速攻とパスワークを織り交ぜたサッカーで対応。お互いに球際で激しく戦いながらゴールを奪うことはできず、試合はスコアレスでハーフタイムを迎えた。
2ndHALF—一瞬のスキを突かれ失点。攻勢を強めるも3連勝ならず
後半に入っても気迫の戦いが続く。支配率を高めようとする柏に対し、東京も奪ったボールを大切にしながら長短のパスで攻撃を仕掛ける。
後半5分には中盤でボールをカットした仲川選手が粘り強くドリブルで持ち運んでペナルティアーク付近から右足でシュートを放つもネットを揺らすことはできず。しかし、積極的な姿勢で主導権を握って柏陣内へと攻め込んでいく。
後半14分には最初の選手交代。仲川、野澤の両選手に代えて2トップの一角にヒアン選手、右アタッカーに佐藤選手を投入して攻撃のパワーアップを図る。すると直後の同16分、佳史扶選手の右コーナーキックをファーサイドでヒアン選手がヘディング。これは相手にブロックされたが、いきなり好機を演出した。
相手陣内での時間が長く、セットプレーのチャンスも増えてきた東京。後半24分には佳史扶選手の右コーナーキックが相手ゴールキーパーに弾かれたこぼれ球を遠藤選手がダイレクトボレー。しっかりとインパクトしたボールだったが、わずかにバーを越えてしまう。

2回目の選手交代は左アタッカー。後半26分、遠藤選手から俵積田選手にスイッチして攻撃の圧力を強めていく。
しかし、直後の後半28分だった。右サイドを破られてクロスを上げられると、これを中央で久保選手に頭で合わされて失点。課題にしていたクロス対応からまたしてもゴールを許してしまう。攻め込んでいたなかでの悔しい失点。ここからどう巻き返していくかに真価が問われることになった。
後半37分、東京が最後の交代カードを切る。室屋選手に代えて右サイドバックに長友選手を、高選手に代えてボランチに小泉慶選手を投入。経験豊富な二人に試合の行方を託した。
後半39分にはペナルティエリア内でボールを受けた長倉選手がワンフェイントから素早く左足を振り抜いたが、これは相手ゴールキーパーに阻まれた。
さらに同42分には、長友選手の折り返しにヒアン選手がニアで合わせたが、これはわずかにゴール外側。攻勢を強めながらもゴールには至らない。
後半アディショナルタイムは5分。森重選手を最前線に上げるスクランブル体制で懸命に同点ゴールを狙いに行く。長友選手の果敢な仕掛けで得た右コーナーキック、佳史扶選手のキックからゴール前で混戦となり、ヒアン選手が振り向きざまに右足で狙うが、これは惜しくもゴールキーパーの正面を突いてしまう。

その後もショルツ選手の右クロス、長友選手のロングフィードから長倉選手がヘディングを狙うなどしたが、ネットは揺らせず。最後まで入魂の戦いを見せた青赤だったが、好ゲームを展開しながら勝点を手にすることができないという悔しい結果に終わってしまった。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK キム スンギュ
DF 室屋成(後半36分:長友佑都)/森重真人/バングーナガンデ佳史扶/アレクサンダー ショルツ
MF 高宇洋(後半36分:小泉慶)/橋本拳人
FW 遠藤渓太(後半26分:俵積田晃太)/長倉幹樹/野澤零温(後半14分:佐藤恵允)/仲川輝人(後半14分:マルセロ ヒアン)
SUBS
GK 小林将天
DF 岡哲平/土肥幹太
MF 安斎颯馬
MANAGER
松橋力蔵
GOAL
―
<柏レイソル>
STARTING Ⅺ
GK 小島亨介
DF 原田亘/古賀太陽/三丸拡/小屋松知哉(後半41分:ジエゴ)
MF 山田雄士/中川敦瑛/小泉佳穂(後半44分:仲間隼斗)/久保藤次郎
FW 渡井理己(後半22分:小見洋太)/垣田裕暉(後半41分:細谷真大)
SUBS
GK 松本健太
DF 犬飼智也/田中隼人
MF 瀬川祐輔/戸嶋祥郎
MANAGER
リカルド ロドリゲス
GOAL
後半28分:久保藤次郎
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、本日の試合の振り返りをお願いします。
A、非常に悔しいゲームになってしまいました。我々の時間もありながら、そこで決め切ることができなかったということが大きな部分であり、これまでも同様のことがあったので、失点も含めてそこはまだまだ詰めなくてはいけないところがあります。この突き詰めていくことは尽きません。続けていくしかないと思いますし、これをいつか乗り越えて、今日のようなゲーム内容でしっかり勝点3をとれるようにまた準備していきたいと思います。
Q、後半開始から東京のギアが上がったように見えましたが、ハーフタイムにはどのような指示をしたのでしょうか。
A、攻撃のところでの時間の作り方や、我々の良さのショートカウンターの部分の話をしました。相手もすごく前がかりに出てくるチームではあるので、スペースさえしっかりと自分たちで攻略できれば、ショートカウンターで攻められるということはもちろん狙いとしてはありましたけれども、それ一辺倒になってしまい、一つの攻撃が一回で終わってしまいました。あとはやはり守備の時間が長くなってしまうところもあり、相手にボールを渡すとなかなか渡してくれないので、そこを自分たちでイニシアチブをとっていくためには、押し込んだ時の攻撃の判断をもう少し綿密にやっていこうという話をしました。そういう部分で流れというものは、うまく後半は出せたのではないかと思っています。
Q、東京での初出場となったキム スンギュ選手の起用の意図と評価を教えてください。
A、トレーニングも十分に積み上げる時間もありましたし、そこでのパフォーマンスも非常に良いものがありました。今日見ていただいたとおり、非常に良い状態であるということが起用のポイントでした。僕は非常に素晴らしいパフォーマンスを出してくれたと思っています。
Q、ここから中断期間に入りますが、その期間中にどのような方向性のトレーニングを考えているのでしょうか。
A、この期間は、もちろん時間もありますし気候の問題もありますが、休みとトレーニングをしっかりと良い状態で行えるように、時間の設定などをコントロールしながらやっていきたいと思います。主にチームとして積み上げることも一つですが、個人のところであったりポジションであったり、もう一度自分たちがやろうとしていることに対して、僕からの要求などの積み上げは全体としてやっていきたいと今は思っています。
[選手インタビュー]
<キム スンギュ選手>

Q、東京加入後、初のリーグ戦出場になりました。
A、まず、勝利に貢献できなかったことが何より悔しいです。勝利のために、今日の試合に向けて準備を進めてきていただけに本当に悔しいです。
Q、最後尾からのパスがビルドアップの起点になっていました。
A、私自身、久しぶりの公式戦出場でしたので、試合前は安全にプレーすることも考えていました。ですが、最初のプレーで思い切りプレーできたこと、前線へのフィードが狙いどおりにつながったことが、その後のプレーに自信を持たせてくれました。
Q、ビルドアップ以外の守備面についても、安定したプレーが随所にありました。
A、シュートストップのシーンについては、これまでの経験や感覚が良い方向にはたらいてくれたところもありましたが、一番ケアしていたところはディフェンスラインの背後に生まれるスペースをしっかりとカバーすることでした。飛び出すタイミングやスピード感については難しいところもあるので、特に慎重に意識してプレーしました。この良い感覚を次につなげたいです。
Q、東京での初めての試合が、古巣の柏レイソルとの対戦でした。個人的に何か意識したことはありましたか。
A、過去に在籍していたクラブだったので、慣れたスタジアムでプレーできたという感覚もありました。まったく知らないチームやスタジアムでプレーするより、気持ちの面で少し楽な部分もありました。次はホームの味の素スタジアムで浦和レッズとの対戦が控えていますし、その試合に出場してホーム戦デビューは勝利で終えたいと思っています。
Q、味方との連携や、キムスンギュ選手自身のコンディションもここから高まってくることを期待しています。
A、今日が移籍してきて初めての公式戦でしたし、ここから試合をとおしてチームメイトの特長をしっかりと把握していきたいです。今日の試合で足りなかった部分については、しっかりと練習からコミュニケーションをとって、次の試合までに高めていきたいです。
<橋本拳人選手>

Q、内容は良かったですが、結果を手にできなかった印象です。やっていてどのように感じましたか。
A、前半は非常に苦しい展開でしたが、試合を通してチャンスもあったなかで、ワンチャンスをものにされてしまったという印象です。相手の勝負強さにやられてしまった、非常に悔しい敗戦です。
Q、東京としてやりたいことはある程度できていたように見えました。
A、うまくやれている時間帯もあれば、なかなか難しい時間帯もありました。そのなかでも前半はしっかり耐えて後半につなげられていましたし、そこで勝ちを持ってくるチャンスもあったと思うので、しっかり積み上げられている部分も多くあると思います。ただ今は結果が一番大事なので、責任を感じています。
Q、相手の勝負強さということばがありましたが、勝敗を分けたその紙一重の部分はどこにあると思いますか。
A、相手はやっぱり結果が出ているので自信を持ってプレーしていると思いますし、僕らは失点してしまうとなかなかそこから盛り返せないという部分があると思います。それでも粘り強く戦うしかないし、苦しいときほど全員で声を掛けあって戦うとか、そういった細かいところだと思っています。
Q、良さはだいぶ出せるようになってきていると思いますが、いかがでしょうか。
A、選手の個々の特長は少しずつ出てきていると思いますし、コンビネーションのところも質は上がってきていると思いますが、今日は得点がゼロだったので、毎試合得点がとれるようにしたいです。攻撃的なチームをめざしているので、しっかり得点はとっていかなければいけないと思います。
Q、連勝が止まり中断期間に入ります。この期間にどのような部分にフォーカスして取り組んでいきますか。
A、連携を高めるところもそうですし、個人的には夏場にしっかりと戦えるように、コンディションのところもしっかりと取り組んでいきたいと思っています。



