5/10 神戸戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

INTERVIEW2025.5.10

5/10 神戸戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

<マッチレビュー>

午前中まで降っていた雨があがった味の素スタジアム。明治安田J1リーグで今シーズン初の連勝をめざし、リーグ連覇中の王者ヴィッセル神戸を迎え撃った。

今節は開幕からリーグ戦全試合でゴールを守ってきた野澤大志ブランドン選手から波多野豪選手にゴールキーパーをスイッチ。最終ラインは前節と同じ土肥幹太、木村誠二、エンリケ トレヴィザンの3選手が並んだ。また、前節のアルビレックス新潟戦で激しい接触プレーにより負傷交代を余儀なくされた高宇洋選手がベンチ外となり、ボランチは橋本拳人選手と小泉慶選手のコンビに。ウイングは右に白井康介選手、左に遠藤渓太選手が入った。そして前線は前節と同じく佐藤恵允、俵積田晃太の両選手をインサイドハーフに、マルセロ ヒアン選手を1トップに置いた3-4-2-1システムを採用した。

注目は大きな声でチームを盛り立てながら、的確な指示と鋭い反応を見せていきたい波多野選手。JリーグYBCルヴァンカップではファインセーブで勝ち上がりに貢献してきたこともあり、この試合でも存在感を出して勝利に貢献したい。また、ベンチには負傷の癒えた長友佑都選手が復帰。勝負どころでチームを引き締めるプレーが期待される。

1stHALF—チャンスを作りながらもネットを揺らせず

試合は予想どおり神戸が序盤からロングボールとハイプレスで押し込んでくる展開に。東京は球際激しく対応しながらセカンドボールを拾い、ボールをつないで攻め手を探っていく。低い位置でのポゼッションが神戸のプレスを受けるシーンもありながら、アタッキングサードで保持率を高める攻撃も見られるなど、一進一退の時間帯が続いた。

最初のビッグチャンスは前半27分。最終ラインでつないだボールを木村選手が一気に右前方へロングフィード。これに抜群のタイミングで抜け出した白井選手がボールを受け、そのまま力強くドリブルで持ち上がって右足で狙ったが、惜しくも相手のファインセーブもあって先制点には至らない。


前半39分にはカウンターからヒアン選手がピッチ中央をドリブル突破して右サイドへパス。これを佐藤選手が折り返したがヒアン選手にはわずかに合わず。続く同40分には再びカウンターからヒアン選手が抜けてゴール前まで運び、右に流れながらシュートを狙ったが、強いインパクトのシュートを打つことはできなかった。

パワー系のサッカーを見せてくる神戸に対して、鋭い攻撃でチャンスをうかがう東京。前節で課題とされたセットプレーの守備もしっかりと全員で撥ね返し続けていく。試合はお互いにチャンスを作りながらネットを揺らすことができず、3分間のアディショナルタイムを経てスコアレスのまま前半を折り返した。

2ndHALF—ヒアンの2試合連続ゴールで今シーズン初の連勝

ともに選手交代なくスタートした後半、先にチャンスを作ったのは東京だった。後半3分、自陣左サイドでボールを受けた俵積田選手が前方へ持ち上がりながら斜めに方向を変えてドリブルを仕掛けたところで縦へスルーパス。そのスペースにヒアン選手が抜け、切り返しで相手選手を交わした瞬間に素早く右足で狙ったが、これは枠を捉えきれずゴール右へ。

その後も切れ味鋭い攻撃で神戸陣内へ襲いかかる青赤。右から白井選手、左から俵積田選手がクロスを供給すれば、後半18分にはヒアン選手が自陣右サイドからロングレンジをドリブルで持ち運び、優しく折り返したラストパスを佐藤選手が狙ったが至近距離からのシュートはゴールキーパーに阻まれてしまう。さらに同20分にはヒアン選手が右サイドから放った強烈なシュートはクロスバーを直撃。東京が幾度となく迫力ある攻撃を仕掛けていく。


後半25分までに3選手を交代した神戸がフレッシュなメンバーで盛り返してきたことを受け、東京ベンチが動く。後半32分、遠藤選手に代えて安斎颯馬選手を左ウイングバックに投入。すると直後の同33分、ヒアン選手が佐藤選手とのワンツーでペナルティエリア内に抜け出したところで倒されたが、ペナルティキックは獲得できず。さらに同36分にはカウンターから安斎選手が切り返してシュート。これがゴールキーパーに阻まれたこぼれ球も押し込めず。

後半38分には一気に3選手を交代。小泉、佐藤、白井の各選手に代えてボランチに常盤亨太選手、インサイドハーフに仲川輝人選手、そして右ウイングバックに長友佑都選手を送り込む。さらに同45分、俵積田選手を下げて北原槙選手をインサイドハーフに配置。交代枠を使い切ってピッチの選手たちに状況打破を託した。

7分間と表示された後半アディショナルタイム、ペナルティエリア内で右足を振り抜いたヒアン選手が豪快にネットを揺らしたが、直前のプレーで仲川選手にハンドがあったとして惜しくも得点は認められず。

そして終了間際の後半45+13分、ついに試合が動く。

波多野選手の超ロングフィードに仲川選手が抜け出してシュート。さらに安斎選手がこぼれ球を押し込もうとしたところで相手のスライディングブロックにハンドの可能性があるとしてVARのサポートが入り、オンフィールドレビューの末に土壇場でペナルティキックを獲得する。


固唾をのんで見守る味の素スタジアム。ゾーンに入ったかのような集中した面持ちでペナルティスポットに立つ背番号19。思い切りよく振り抜かれた右足キックがネットを突き刺すと、場内総立ちで歓喜が溢れかえった。そして直後から響き渡る勝利の凱歌『眠らない街』。何度もチャンスに絡んだエースが最後の最後で大きな仕事を果たし、リーグ戦2試合連続ゴールで勝利に導いた。これで東京は第3節名古屋グランパス戦以来となる味の素スタジアムでの勝利、そして今シーズン初となる連勝を飾った。



MATCH DETAILS

<FC東京>
STARTING Ⅺ

GK 波多野豪
DF 土肥幹太/エンリケ トレヴィザン/木村誠二/白井康介(後半38分:長友佑都)
MF 橋本拳人/遠藤渓太(後半32分:安斎颯馬)/俵積田晃太(後半45分:北原槙)/小泉慶(後半38分:常盤亨太)
FW 佐藤恵允(後半38分:仲川輝人)/マルセロ ヒアン

SUBS
GK 野澤大志ブランドン
DF 岡哲平/木本恭生
FW 野澤零温

MANAGER
松橋力蔵

GOAL
後半45+13分:マルセロ ヒアン

<ヴィッセル神戸>
STARTING Ⅺ

GK 前川黛也
DF 酒井高徳/山川哲史/本多勇喜/広瀬陸斗(後半25分:マテウス トゥーレル)
MF 扇原貴宏/エリキ(後半25分:ジェアン パトリッキ)/井手口陽介/汰木康也(後半14分:大迫勇也)
FW 宮代大聖/佐々木大樹(後半40分:グスタボ クリスマン)

SUBS
GK 新井章太
DF 岩波拓也
MF 井出遥也/飯野七聖/山内翔

MANAGER
吉田孝行

GOAL



[松橋力蔵監督インタビュー]


Q、本日の試合を振り返ってください。
A、まずは内容云々ではなく、しっかり連勝できたこと、最後の最後まで諦めずに選手が頑張ってくれたこと、会場に足を運んでくださったみなさんの熱い熱い声援のなかで連勝することができたことを非常にうれしく思っています。これをどうつなげていくかというところは、ゲームの内容にもたくさんワードがあるので、そこにしっかりトライできるようにいい準備をしていきたいと思っています。

Q、対ヴィッセル神戸という面で非常にはまった人選だったと思いますが、本日のメンバー選考の意図を教えてください。
A、全部が全部ではないですけれども、相手の大きな特長をどう潰すかをしっかりと考えた人選ですし、今試合を重ねるなかで結果を出している選手でもあり、そういうなかでの選考でした。もちろん相手の色をどう出させないか、プラス自分たちの色をどう出せるかということを含めて考えていましたが、そこは、前半はほぼ皆無に近かったと思っています。やはり、そこのトライをどうしていくか。我々が得点を奪った後半の攻撃というのは、ある意味、我々の色でもあるとも思うので、その色をしっかりと後ろ盾にしてチャレンジできることはもっともっとチャレンジしなければいけないと思っています。

できなくとも、あれは我々の色で、そこは一発持っているぞというところをもう少し頼りにしても良いのかなと。その上で、いまチャレンジしていることの精度をどんどん上げていかなくてはいけない。後半は方法論よりも、リスタートの早さ、クイックでどんどんやっていこうというところで先手をとれる場面がいくつか増えたと思います。

Q、ハーフタイムに具体的にはどのように修正をしましたか。
A、まずは方法論に着手して彼らの理解や安心感を得るということではなく、選手には何を修正したら良いのだろうかという話をしました。みんなの頭の中が方法に向いている割には、シンプルに入れる選択肢を持っていたので、僕も何をやったら変わるかなというところを考えて、さきほどお話ししたクイックスタートだ、と。相手が準備して自分たちも準備してスタートではなくて、もうフリーな選手がいたらどんどん(パスを)出していこう、と伝えました。そこで少し困る場面も出てくるかなと思いつつ、ただ相手もそこにどう対応するかという部分でエラーを出せないとなってくると、我々の強みであるショートカウンターや縦に早い攻撃を受けないために、なかなか前に出てくることはできなくなるだろうと思っていました。

そこで、僕の中ではクイックにスタートしよう、リスタートはすべてゴールキーパーが持ったらすぐに良い状態の選手をどんどん使っていこう、と。そういうなかでゴールキーパーを使ったビルドアップという表現を少し軽くしたと言いますか、相手はハイプレスが大きな特長のチームでもあるので、そこをしっかり剥がすことによって中盤のスペースであったり相手のディフェンスラインが前に出てくることで、深いところにスペースが生まれれば、我々のスピードとタレントで攻略できると。なかなかそこが出なかったので、今言ったようなことを、ハーフタイムに修正というよりは、ちょっとそういうことをやってみようという形で伝えました。

Q、リーグ戦では初のスターティングメンバーとなった波多野豪選手の評価を教えてください。
A、カップ戦での出場がメインになっているなかで、本当に日々のトレーニングから良いパフォーマンスを維持してくれています。もちろんゴールキーパーコーチの考えも加味しながらの選出でしたが、彼自身の良さをしっかりとパフォーマンスとしても出せました。彼の特長をしっかり出して、ゲームを決める引き金となるようなプレーは非常に素晴らしかったと思います。僕もゴールキーパーの選手たちには常にアシストを狙えと言っているので、今日はアシストにはならなかったですけれども、アシストのアシスト、アシストの一歩手前というところでした。また、その精度が非常に素晴らしかったと思っています。

Q、久しぶりの味の素スタジアムでの勝利となりました。
A、自分の経験から言うと、なかなか勝てないというのは単なる思い込みだとも思いますし、人間というものは思い込んでしまうとそっちに流れが向いてしまうような部分もあるのかもしれません。常に、次こそ、次こそという強い気持ちを持つことが大切だと思いますし、いつもファン・サポーターのみなさんが大きな声援を与えてくれていることが、この連勝につながったと思っています。


[選手インタビュー]

<マルセロ ヒアン選手>


Q、チームを勝利に導くゴールでした。プレッシャーのかかるペナルティキックだったと思いますが、どのような心境でしたか。
A、もちろん、あのような状況だったので緊張していました。この試合に勝って勝点3を得るための良い練習をしてきたので、自信を持って、落ち着いてボールを蹴ることができました。

Q、何度か裏へ抜け出して佐藤恵允選手へパスを出したり、良い連携がとれた90分間だったと思いますが、どうでしたか。
A、そうですね、前線の連携は深まってきたと思います。フォワードの私たちが決めないといけないチャンスもあったなかで、残念ながら決められないシーンもありました。ですが、良いチャンスが増えてきているので、これからの試合ではもっと勝てるようになると思っています。

Q、アルビレックス新潟戦でゴールを決めた勢いが、今日のゴールにも繋がったと思います。
A、新潟戦のゴールの影響もなくはないですが、そこまでではありません。日々、勝点3をとるために、目の前の試合に勝つために、良い練習を積んでいるので、それがプレーに繋がっています。

Q、今シーズン初の連勝となりました。次節はアウェイゲームで浦和レッズと対戦します。
A、連勝して自信をつけているので、アウェイではありますが、次の試合も浦和に勝ってさらに自信を深めていき、上位を狙っていきたいです。

Q、ゴール後のセレブレーションで敬礼のポーズをしますが、理由を教えてください。
A、親族に警察関係の仕事をしている人が多く、「ゴールを決めたらやってほしい」と言われているからです。家族への愛を込めてやっています。


<波多野豪選手>


Q、カップ戦には出場してきましたが、リーグ戦初出場となりました。
A、今シーズン、今日まで正直とても苦しい日々を過ごしてきました。今日は絶対勝ってやろうという気持ちでいました。試合前は本当に緊張していましたが、アップが終わってピッチに入ったらいつもどおり入れたので、難なくできて良かったと思います。

Q、ゴール裏の声援もいつも以上に大きく聞こえました。
A、久しぶりに味の素スタジアムで波多野コールを聞けてうれしかったです。ファン・サポーターのみなさんと勝利を分かち合いたいと思っていたので、今日勝てて、人生で初めて味の素スタジアムで『シャー』ができたので、良かったなと思っています。

Q、ペナルティキックが入った時に、野澤大志ブランドン選手のところまで走っていく姿が見えました。
A、自然と身体が動きました。黄色いユニフォームが見えたので、磁石のようにいってしまいました。お互いに苦しい時期を過ごしたこともありますし、分かり合っているので、もっともっと良い競争をして、明日からまた一緒に練習に取り組みたいと思います。

Q、山下渉太ゴールキーパーコーチから試合前にどんな声を掛けられましたか。
A、「お前ならできるぞ」と言ってくれていたので、信じて良かったと思います。証明することができました。