<マッチレビュー>
味の素スタジアムでアルビレックス新潟を迎え撃つ2025シーズンのリーグ最終戦。この試合は『Big Thank You Day』と銘打たれ、クラブ、チームから各所に一年間の感謝を込めて戦うことになるゲーム。胸に秘めた熱量と覚悟をピッチで示し、しっかりと勝利という結果で応えなければならない試合となる。
また、この試合を控えた12月4日には松橋力蔵監督の契約延長を発表。今節はキャンプから積み上げてきた取り組みの集大成をしっかりと披露しつつ、2026シーズンの明治安田J1百年構想リーグへの希望をつないでいくことも求められることになった。
シーズン最後の試合でピッチに立つ青赤のスターティングメンバーは、ゴールキーパーが波多野豪選手。最終ラインには右から長友佑都、アレクサンダー ショルツ、森重真人、室屋成の4選手が公式戦6試合連続で並んだ。ボランチは高宇洋選手と小泉慶選手が同5試合連続でコンビを組み、右アタッカーには安斎颯馬選手、左アタッカーには遠藤渓太選手が入った。そして2トップを組むのは佐藤恵允選手とマルセロ ヒアン選手。また、9月から負傷離脱していた長倉幹樹選手がベンチ入り。シーズンの集大成を見せるべき試合で、後半戦の巻き返しを支えた男がピッチに戻ってきた点は心強い限りだ
1stHALF—先制を許すも、前半終了間際に遠藤のゴールで追いつく
指揮官が試合前に警戒していたとおり、序盤は新潟がアグレッシブな入りを見せてゲームを優勢に進めた。だが、東京は直近のリーグ戦5試合で2失点という堅守を誇るなど、この試合でも集中した守備で相手の攻撃を押さえていく。
青赤が徐々に流れを引き寄せてスピード感ある攻撃でチャンスを作り始めていた前半9分、一瞬のスキを突かれてモラエス選手にペナルティエリアの外から豪快なロングシュートを決められてしまい、思わぬ形で先制点を許してしまった。
早い時間に追いつきたい東京は前半13分、長友選手、高選手、佐藤選手の好連係で右サイド深くまで入り込み、高選手が右足で前方へ。これを受けた安斎選手が冷静に右足で流し込もうとしたが、しっかりとコースを狙ったボールは左ポストに弾かれてしまい、惜しくも同点には至らなかった。
その後も新潟が主導権を握る。東京は波多野選手の好セーブ、森重選手の巧みなボール奪取などで対応するが、奪ったボールをうまくつなぐことができず、次々に選手が飛び出して厚みのある攻撃を仕掛けてくる新潟に苦しめられる時間が続いた。
素早く攻守を入れ替えて高い位置でボールを再奪取した前半33分、佐藤選手のつなぎに後方から猛ダッシュで前方へ抜け出そうとした高選手が倒されたが、これはわずかにペナルティエリアの外。良い位置で直接フリーキックのチャンスを得るも決定機は作れず、ここもゴールネットを揺らすことができない。
前半44分には攻撃参加していたショルツ選手がクロスボールを供給。ファーサイドの遠藤選手がヘディングで折り返したところをゴール前のヒアン選手が狙ったが、至近距離のシュートはバーの上を越えてしまう。
3分と表示された前半アディショナルタイム、相手陣内に押し込んだ状態から中央の小泉選手が縦にボールをつけると、このパスを受けた遠藤選手がうまく体勢を入れ替えて前を向いて左足シュート。これがブロックにきた相手ディフェンダーに当たってコースが変わり、ゴールキーパーの頭を越えてゴールに吸い込まれて同点。前半終了間際の良い時間帯で東京が試合を振り出しに戻し、1-1のタイスコアでハーフタイムを迎えることになった。
2ndHALF—攻め続けるも、届かなかった勝利
何としても勝利でシーズンを終えたい東京は、後半開始早々からアグレッシブな姿勢でゴールに迫っていく。後半開始20秒、ヒアン選手の縦パスに佐藤選手が抜け出し、力強いドリブルでゴールに迫って左足シュート。これは枠を捉えることができなかったが、熱いプレーでチームを引っ張ってきた背番号16には開始前、ハーフタイムとゴールの青赤ファミリーから熱いコールが飛んでおり、それに応えようとする気迫が垣間見えた突破でもあった。
続く後半5分には自陣で新潟のコーナーキックを跳ね返したところから高速カウンターを発動。遠藤選手が鋭く持ち上がって前方にスルーパスを出すと、これに並走していたヒアン選手が右足で狙いすましたワンタッチシュート。完璧に崩したと思われたシーンだったが、わずかにゴール右に外れてしまい決定機を決め切ることはできなかった。
一進一退の攻防が続くなか、先に動いたのは青赤だった。ヒアン選手、安斎選手に代えて最前線に仲川輝人選手、右アタッカーに野澤零温選手を投入。より連携と組織力を高めてゴールを狙っていこうとする攻撃を選択した。
チームの潤滑油になれる仲川選手の起用で攻撃の流動性がアップする。後半30分には小泉選手の縦パスがスイッチとなり、仲川選手からつないだボールに佐藤選手が抜けてシュート。これはミートすることができず相手ゴールキーパーにキャッチされてしまうが、高い攻撃意識を感じさせるアタックとなった。
後半36分には中盤でのロストからカウンターを受けそうになった瞬間にショルツ選手が抜群の危機察知能力を見せて鋭くカット。ここから仲川選手、野澤選手とつないでペナルティエリア内でシュートを狙ったが、この好機も相手ゴールキーパーの好セーブに防がれてしまう。
試合終盤の後半44分には今シーズン最後の選手交代で一挙3選手がピッチへ。佐藤選手、遠藤選手、長友選手に代わって、マルコス ギリェルメ選手、白井康介選手、そして約2か月ぶりの復帰戦となる長倉選手が送り出された。
後半のアディショナルタイムは3分の表示。シーズン最終戦の勝利に向けてゴール裏から一段と大きなボリュームのチャントが鳴り響き、それに呼応するように選手たちも積極的な縦パスや球際のバトルを見せていく。だが、その想いは実らず、1-1のまま試合終了のホイッスル。2025シーズンの明治安田J1リーグは終盤の6戦を無敗でフィニッシュし、13勝11分14敗の11位で終える結果となった。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK 波多野豪
DF 室屋成/森重真人/長友佑都(後半44分:白井康介)/アレクサンダー ショルツ
MF 安斎颯馬(後半27分:野澤零温)/高宇洋/遠藤渓太(後半44分:マルコス ギリェルメ)/小泉慶
FW 佐藤恵允(後半44分:長倉幹樹)/マルセロ ヒアン(後半27分:仲川輝人)
SUBS
GK 小林将天
DF 岡哲平/土肥幹太
MF 常盤亨太
MANAGER
松橋力蔵
GOAL
前半45+2分:遠藤渓太
<アルビレックス新潟>
STARTING Ⅺ
GK 藤田和輝
DF 藤原奏哉/舞行龍ジェームズ(後半40分:千葉和彦)/早川史哉/堀米悠斗
MF 白井永地/長谷川元希/笠井佳祐(後半27分:新井泰貴)/小原基樹
FW マテウス モラエス(後半27分:奥村仁)/ブーダ
SUBS
GK 田代琉我
DF 岡本將成/橋本健人
MF 高木善朗/大竹優心
MF 植村洋斗
MANAGER
入江徹
GOAL
前半9分:マテウス モラエス
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、本日の試合の総括をお願いします。
A、最終戦ということもあり、本当に多くの方に味の素スタジアムへ足を運んでいただきましたが、勝利を届けることができず、非常に申し訳ない気持ちでいっぱいです。ゲームに関しては、前半の序盤に相手にペースを握らせてしまったなかで、先制点を奪われてしまいました。前半のうちに修正することができた部分は良かったと思いますし、そこで追いついたことも後半の弾みになったと思います。後半も、序盤はペースを握ることができず、また終盤にかけては圧力をかけることはできましたが、最後までゴールをこじ開けることができませんでした。一つひとつのプレーのクオリティもそうですし、我々のプランやリハーサルをしてきた形はしっかりと意識することができたなかでも、クオリティをまだまだ上げていかなくてはいけない。そういうゲームだったと思います。
Q、決め切れなかった要因は何でしょうか。
A、ボールを奪い返してからの攻撃は、自分たちがすごく意識をしていた部分だったのですが、そこで少しスピードアップし過ぎて、技術的な部分や判断のエラーがありました。また、後半は相手を揺さぶるところで相手の深い位置よりも、中央の関係性だけに終始してしまった感じもありました。サイドからのクロスボールもありましたが、なかなかそれがゴールまで到達しなかったということもありました。でも、本当にあと一歩というところの圧力をかけることはできていたので、あとはクオリティの部分だと思います。
Q、本日の選手交代の意図を教えてください。
A、迷いがあったことも事実ですし、最後の交代カードの切り方は自分自身で振り返ってもやはり遅いなと思います。どのタイミングで交代するかというところは、コーチングスタッフとも相談しながらではありましたが、さらにギアを上げていくところや、フレッシュな選手を入れて新たな圧力をかけていくという時間としては短くなってしまったと思っています。そこはやはり、自分がもっと思い切れるようなタイミングをしっかりと身につけなくてはいけないと思います。
Q、監督が就任前に思い描いていたサッカーが、シーズンを終えてどのくらいまで到達している感覚でしょうか。
A、それは数字で表すのは難しいですが、まだまだ、です。表現できていた時期もありますが、それが年間をとおしてできていたかと問われると、やはりまだまだだと思います。シーズン後半戦の序盤は、ものすごく意識してできていた部分がありますが、それに対して相手がどう対応してくるかという部分での柔軟性であったりやり方というところで、数多く落とし込んでいくなかでは、多少の手応えもありますがやはりまだまだという感覚です。もっと良い形の基準点を作り、どのようにフレキシブルに流動性を持って攻撃していくか、もっともっと突き詰めていかなければいけないと思います。
Q、今シーズンの最終戦、一年間支えてくれたファン・サポーターのみなさんに一言お願いします。
A、ホームでの最終戦で勝ちという結果を持ってこられなかったのは、本当に申し訳なく思います。今日の最後の熱いブーイングと熱い声援を受け止めていますし、それは当然のことだと思います。これを自分自身も次へのエネルギーにしたいと思いますし、みなさんには引き続きこの熱い気持ちを東京に向けていただきたいと思っています。
[選手インタビュー]
<小泉慶選手>

Q、2025シーズンの最終戦でした。試合を振り返っていかがでしたか。
A、最後、もちろんホームで勝ち切って終わりたかったですが、この結果はシンプルに力不足だと思いますし、だからこの順位になってしまったのだと思います。カップ戦のタイトルも獲れず、足りないところは細かく言えばたくさんあると思います。東京のエンブレムを着けて戦う選手は、全員もう一度、東京のエンブレムを着ける自覚や責任をしっかりと持たなければいけません。全員が悔しいシーズンだったと思うので、それをバネにして来シーズンにつなげていきたいです。
Q、立ち上がりは相手の圧力に押され気味なところがありましたが、徐々に押し返して、後半は東京のテンポで動かせる時間があったと思います。
A、試合の入りは悪かったですが、焦れずにやっていけば点が入る感覚はありましたし、前半の最後に遠藤渓太選手が決めてくれました。後半はチャンスもありましたが、誰がどうとかではなく、チームとして追加点がとれなかった、勝ち切れなかったという点が今シーズンを物語っていたと思います。もっと相手が嫌がることをしないといけませんでした。個人としても、もっともっと相手が嫌がるようなプレーをしないといけないと感じました。
Q、試合では小泉選手自身のコンディションの良さが見えました。パフォーマンスは手応えがあったのではないでしょうか。
A、ミスもありましたが、横につなぐのではなく前に刺す意識を持ちながらやりました。それを意識し過ぎたのか、もう少し相手を横にズラしても良かったシーンもありましたし、チームが勝てなかったというのは、個人でも足りない部分があったからだと思います。ただ、自分だけではないと思いますが、シーズン最後の試合なので力を残すことなく出し切るということを意識してプレーしていたので、そこは悔いなく終われました。
この世界は結果がすべてだと思うので、もちろん反省の方が多いですが、今シーズンは個人としてはキャプテンとしてもそうですし、一選手としても力不足だったと感じています。2026シーズンに向けてオフの期間でしっかりと考えていかないといけないと思います。
<長友佑都選手>

Q、シーズン最後の試合で、立ち上がりは苦しい時間が続きました。相手も降格が決まっていて失うものがない状況で、難しい状況だったのではないですか。
A、試合の入りはかなり悪かったです。それは、別に戦術や技術の話ではなくて、意欲や熱意だと思います。難しい状況はあったのかもしれないけど、それが足りなかった。プロとして東京のエンブレムを背負って戦っている以上、状況などの言い訳は許されません。自分も含めて、しっかりと向き合わなければいけません。相手が熱意や意欲で上回っていたということではなく、単純に自分たち自身の問題です。
Q、後半に入り、チームとして盛り返しました。その要因はなんですか。
A、チームで準備していた部分をしっかりと発揮できたというところです。相手がどういうシステムで、それがはまらなかった時にこういう風にしようとか、ボランチが落ちて相手がどう出てくるかとか、しっかりと準備をしてきたことへと変えられた。それがチームとしての積み上げだと思います。最初は相手にはまっていたのに、はまらなくなったことで相手に混乱を生み出した。修正しながらそういう状況にできたということは非常にポジティブに感じています。
Q、その修正力が積み上げてきた成果ということですね。
A、チームの成長を感じた部分でもあります。シーズン当初であれば、あのまま変えられずにズルズルいっていたと思います。それを変えられるようになってきた。そのバリエーションの数も含めて示すことができたかなと思います。
Q、前半の終盤から後半にかけて、流れが変わってくる局面で、長友佑都選手が右サイドでスペースに抜け出すシーンが増えてきました。
A、足元だけのパスが続いていたとか、相手が一番怖がる部分を狙えていないとか、チーム全体としてそういう傾向がありました。スペースを使うからこそ足元へのパスも生きてくるし、さらにスペースが空いてくる。自分はそういう特長を持っているし、率先してチームに良い流れを持ってこようという意識でプレーしていました。
Q、気持ちの部分がスタートから備わっていけば、戦術や技術の部分では来シーズンにもっとチームが良くなるという手応えを得ているということでしょうか。
A、チームとしての積み重ねはできているので、来シーズンはさらにもう一段積み重ねて、チームとして方向性をしっかりと共有しながら同じ方向に進んでいければ、もっと良い結果を残していけると思っています。
<遠藤渓太選手>

Q、ご自身のゴールシーンを振り返っていかがですか。
A、中央でボールを受けて、ターンして足を振るだけでした。足を振れば点につながる自信があったので、本当に足を振ることだけを考えていました。サイドで優位な状況でボールを受けてもあまりチャンスを作れていない感覚がありましたが、シュートには自信があったので、内側に入って崩して、足を振ったら入ってくれました。
Q、複数人の良い連携で崩すシーンもありましたが、選手間での連携についての手応えはいかがでしたか。
A、室屋成選手もサイドでやり辛そうでしたし、自分も久しぶりに左サイドでプレーして、なかなか前線の選手と目が合わなかったり、パスコースを見つけられない場面も多かっです。シーズン終盤に向けてチームができ上がっていくとか、攻撃の形ができ上がっていくとか、組織としてでき上がっていくのではなく、それはキャンプで終わらせるべきことだと思うので、来シーズンはそうならないように、キャンプから守備も攻撃も組織として良いものを作れるようにしていきたいと思います。
Q、来シーズンに向けて、何を取り組まないといけないと思いますか。
A、ボールを奪ったあとにすぐに前に向っていくところが東京の良さだと思うので、そこの意識を変えられると思います。勝点を失ってから、クロスボールへの対応の意識を変えて失点も減りましたが、それでは遅いと思うので、一人ひとりが高い意識をもって臨めれば、上をめざせると思います。東京に加入してからここ2シーズン、タイトルも結果も何も残せていないので、自分自信の力不足を感じますし、2026シーズンはタイトルが獲れるように全てを懸けて臨みたいと思います。




