6/14 C大阪戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

INTERVIEW2025.6.14

6/14 C大阪戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

<マッチレビュー>

2週間ぶりのリーグ戦再開。前節の京都サンガF.C.戦で味わった悔しさと、敗戦後の選手たちが全身で浴びたファン・サポーターからの熱いメッセージ。彼らの想いを胸に刻み込んで過ごした中断期間を経て、青赤軍団が一戦必勝の構えで味の素スタジアムにセレッソ大阪を迎え撃つ。

絶対に勝たなければならないゲームに向け、松橋力蔵監督は新たなチャレンジに取り組んできた。開幕から継続してきた3バックに一区切りをつけ、この期間に4バックを導入。今節は最後方に波多野豪選手を置き、センターバックは今節でJ1リーグ戦通算500試合出場という偉業を達成した森重真人選手と木本恭生選手のコンビ。そして東京復帰初戦となる室屋成選手を右サイドバック、白井康介選手を左サイドバックに配して最終ラインを編成した。

ボランチには橋本拳人、高宇洋の両選手が並び、左ミッドフィルダーに遠藤渓太選手、右ミッドフィルダーに安斎颯馬選手、そして最前線にはマルセロ ヒアン選手がスタメンに復帰し、東慶悟選手と2トップでコンビを組んだ。

6月の特別登録期間の直前に加入が発表された室屋選手がスターティングメンバーに名を連ね、同じく青赤の一員となった長倉幹樹選手はミッドウイークの天皇杯、リーグ戦では次節から出場可能となる見込みとなった。また、元韓国代表のゴールキーパー、キム スンギュ選手と元デンマーク代表のディフェンダー、アレクサンダー ショルツ選手も青赤の一員となり、パワーアップしたメンバーで後半戦の巻き返しを誓う。

そのスタートとなる今節、新しいフォーメーションで是が非でも勝利を手にして、6月反攻に勢いをつけたいゲームとなる。今後に向けた重要な一戦が、約1か月ぶりとなるホーム味の素スタジアムでキックオフを迎えた。

1stHALF—電光石火のヒアンゴールも追い付かれ後半へ

雨中ながら試合前から大声援を送るファン・サポーターの期待に応えるべく、開始直後から青赤の戦士たちがピッチで輝く。

連動したプレスで左サイドに追い込み、挟み込んだ状態から高選手がボールを奪取。そのままゴール前へラストパスを送ると、後方から走り込んだヒアン選手が正確なトラップから右足で流し込み、いきなり東京が先制点を奪う。開始からわずか3分で演じてみせた気迫のゴールショーに味の素スタジアムが沸き立った。


その後も4バックの利点を繰り出していく東京。前半9分には森重選手の角度をつけた縦パスに右サイドから安斎選手が内側に動き出して受け、そのまま素早く前を向いて前方のスペースにスルーパス。ここでヒアン選手が鋭く抜け出して持ち上がり、相手ゴールキーパーのポジションを見ながら右足で巧みなループシュート。これは惜しくもクロスバーを叩いて追加点には至らなかったが、立ち上がりから立て続けに決定機を作り出していく。

前半10分過ぎからはC大阪がボールを保持して押し込む時間帯が続く。東京はディフェンスラインと中盤で4枚と4枚の2ラインを作りながらゴール前でしっかりとはね返し、決定機を作らせない守備を見せる。

相手を引き込んだ状態からヒアン選手のスピードを活かした鋭いカウンターが威力を発揮していく東京。前半24分にヒアン選手がロングループシュートを狙い、同26分にはまたもヒアン選手の抜け出しからラストパスを受けた安斎選手がシュートを放つなど、機を見た一発で裏返すアタックで追加点を狙っていった。

機を見た動きは守備でも効果を生み出していく。2トップの一角に入った東選手が中盤から最終ラインまで戻って守備に奔走し、自陣で数的優位を作り出してボール奪取に貢献。ベテランらしいサポートでチームを支える。

試合前日、高選手が「切り替えの部分をもう一度フォーカスしたい」と話していたとおり、全員が球際の強さや早い予測を見せ、攻守に集中したプレーを見せる。だが、前半42分、攻め込んだ状態からロングカウンターをくらい、こぼれ球を拾った香川選手のロングフィードに抜け出したラファエル ハットン選手に流し込まれ、前半終了間際に同点とされてしまう。

前半のうちに勝ち越したい東京。同45分には右サイドを抜け出した室屋選手がしっかりと腰をひねったクロスボールを供給し、中央のヒアン選手に合わせる。これは惜しくも左に外れてしまったが、リーグ前半戦でクロスからのチャンスが少なかった東京に新しい武器が加わったことを予感させる攻撃となった。

前半はこのまま1-1のスコアで終了。試合の行方は後半に委ねられることになった。

2ndHALF—ヒアンがこの日2点目も勝点1にとどまる

強い雨が降りしきるなかでも熱く応援を続けてくれるゴール裏スタンドに向かって攻める後半。何としてもゴールと勝利を捧げたいチームは、開始直後から果敢に攻め立てる。まずはヒアン選手が力強く持ち上がり、ペナルティエリア内で右足シュート。これは相手に寄せられて強く撃ち抜くことができなかったが、いきなりゴールへの強い意欲を感じさせるプレーとなった。

東京の素早い切り替えは後半も変わらない。後半10分にC大阪が左サイドから崩しにかかり、中央で決定機を作られそうになったところで猛然とプレスバックした遠藤選手がクリア。気迫の守備で危ないシーンを防いだ。

後半15分には前線で奮闘した東選手、安斎選手に代わって佐藤恵允選手、代表帰りの俵積田晃太選手を投入。相手ゴールへ向ける矢印を強めていく選手交代で次の1点を奪いにかかる。

左ミッドフィルダーのポジションに入った俵積田選手は後半19分、サイドに開いた位置でボールを受けると一気に加速。マークについた相手選手を引き剥がしてペナルティエリア内へと入り込み、マイナス方向へ折り返していきなり見せ場を作った。

しかし、次の1点を奪ったのはC大阪だった。後半26分、長い距離を走り込んできた田中選手にスルーパスを通され、一瞬の隙を突かれるような形で失点。勝ち越しゴールを許してしまう。

これを受けてすぐさま東京ベンチが動く。遠藤選手に代えて右ミッドフィルダーに野澤零温選手を投入。運動量のある背番号28にピッチの活性化を託した。

後半32分には左サイドで縦に仕掛けた俵積田選手がそのまま左足でニアを狙うシュート。これは惜しくも左ポストに弾かれてしまう。

そして後半36分、またもヒアン選手のスピードと決定力がチームを救う。右サイドで起点となった野澤選手が裏のスペースへ柔らかいパス。ここに後方から走り込んだヒアン選手が抜け出し、相手ゴールキーパーの足元を抜く技ありのゴールで同点。オフサイドの可能性があるとしてVARのサポートが入ったが、ゴールが認められ、試合を振り出しに戻すことに成功した。

続く同39分には2ゴールのヒアン選手に代えて第8節以来の出場となったエヴェルトン ガウディーノ選手、センターバックの木本選手に代えて岡哲平選手を投入する。

強烈な一発を持つエヴェルトン選手に勝ち越しゴールを期待した指揮官。すると後半43分、その背番号98が見せ場を作る。中央から左に流れながら左足を振り抜くと、強烈な弾道がゴールを襲う。これは相手ゴールキーパーに防がれてしまったが、目の覚めるような一撃にスタジアムがどよめいた。

5分間の後半アディショナルタイムも東京の猛攻は続く。後方からのフィードに野澤選手が右サイドで抜け出して折り返し、中央の高選手がシュート。これがブロックされたこぼれ球をエヴェルトン選手が押し込もうとするがミートできず、ボールは左へ外れてしまう。


青赤ファミリーの想いを背負って気迫の戦いを見せた東京だったが、勝ち越しゴールを奪うことはできずタイムアップ。絶対に勝ちたかった試合で引き分けという結果に終わってしまったが、4バックという新しい形と素早い攻守の切り替え、そしてゴールに襲いかかる意識を披露したゲームとなった。


MATCH DETAILS

<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK 波多野豪
DF 室屋成/森重真人/木本恭生(後半39分:岡哲平)/白井康介
MF 安斎颯馬(後半15分:俵積田晃太)/高宇洋/東慶悟(後半15分:佐藤恵允)/橋本拳人/遠藤渓太(後半30分:野澤零温)
FW マルセロ ヒアン(後半39分:エヴェルトン ガウディーノ)

SUBS
GK 野澤大志ブランドン
DF 土肥幹太/長友佑都
MF 小泉慶

MANAGER
松橋力蔵

GOAL
前半3分:マルセロ ヒアン / 後半36分:マルセロ ヒアン

<セレッソ大阪>
STARTING Ⅺ
GK 福井光輝
DF 登里享平(後半0分:髙橋仁胡)/奥田勇斗/西尾隆矢/畠中槙之輔
MF 喜田陽/香川真司(後半21分:田中駿汰)/ヴィトール ブエノ(後半11分:中島元彦)
FW ラファエル ハットン(後半40分:柴山昌也)/チアゴ アンドラーデ(後半21分:本間至恩)/ルーカス フェルナンデス 

SUBS
GK キム ジンヒョン
DF 舩木翔/進藤亮佑
MF吉野恭平

MANAGER
アーサー パパス

GOAL 前半42分:ラファエル ハットン / 後半26分:田中駿汰


[松橋力蔵監督インタビュー]


Q、本日の試合の振り返りをお願いします。
A、最後まで選手は諦めずに勝点3をめざして戦ってくれたことに感謝しています。それと、なかなか良い景色を見せられないことがずっと続くなかでも、我々を見捨てずに熱い声援を送ってくださったファン・サポーターのみなさんにも感謝しています。内容的には、序盤に良い入りから複数の得点を狙える部分でとり切れず、もったいない失点をしてしまいました。後半は相手に少し流れをもっていかれたなかでも、時間があったということもあり、最後まで諦めずにドローで終えたのはポジティブに捉えて良いと思っています。

Q、選手の配置が変わりましたが、変更した意図とその評価を教えてください。
A、なかなか勝ちに結びつかないゲームが続き、勝点がとれないなかでどうしていくかというところでフォーメーションを変えることはずっと頭にはありました。ただ、結果が出ていないなかでも積み上げている部分や見えていた部分もあったので、なかなかそこでフォーメーションを切り替えるところはトレーニングのなかでの積み上げが少なかった部分なので、変えるタイミングが難しかったところがありました。この2週間でそのあたりを整理して、今日トライしたというところです。選手の配置も、これまで多くの試合をこのような形で経験している部分もあるので、そういう選手の良さをさらに良い方向に進められればという意味でフォーメーションを変えたということです。

評価としては、リハーサルで準備していることがすんなりと出たかというと、全部がまったく出なかったわけではないです。序盤の守備の部分などは非常に良さが出ましたし、そこでリードを奪うこともできたし、追加点も奪えるような、2点目、3点目というところまではいきつつも得点をとり切れない状況でした。途中でトーンダウンしてからは、ボールを握る時間というのがこのゲームではほぼほぼなかったという部分では、本来めざそうとしている部分の表現はできなかったかな、と。ただ、我々の持っている良さでもある、奪って早く仕掛ける攻撃だとか、そういう部分はしっかり出せたところもあったので、そこはしっかり評価して、失わずにさらに厚みを持った攻撃ができるようにまた準備していきたいと思っています。

Q、最初の失点シーンでは東京が攻めている場面からひっくり返ってしまった、そのあたりのリスク管理はどのように考えていますか。
A、もちろんその状況は当然想定している部分もありました。ただ、その局面だけを見れば守備的なプレーの選択、判断がどうだったのかということはありました。そこのプレスが良いように働いている部分もありました。反対側も常に準備しておかないといけないこと、あとはバランスです。そういうところでしっかりボールを奪い切ればというところもあります。あとは攻撃も、サイドを起点にというところがありながらも、なかなかそこがうまくできなかったところが、あのようなカウンターにつながったのかなと思っています。また映像を見ながら振り返りたいと思っています。

Q、終盤の選手交代のあと、どのような攻撃をすることを想定していたのでしょうか。
A、想定というか、それぞれの選手が良さをしっかり出してくれました。エヴェルトン選手に関しては、本来はサイドを主戦場として戦ってきた部分もあるのですが、左利きで技術的にも非常に高いものを持っていて、やはり一振りがあるので、真ん中から相手をはがしてシュートを打つというところで相手の脅威になると思いますし、十分得点になる可能性の高いプレーを真ん中でもできるので、そういう意図での起用でした。野澤零温選手に関しても、スピードであったり背後をとるタイミングであったり、そういうところからの冷静な判断は彼の良さです。トレーニングからそういう部分が多く見えていたので、僕が思っていたとおりのことをやってくれたというよりも、彼らの良さを十分に出せたのではないかと思います。もう少しそれを数多く相手にダメージを与えられるような攻撃につながれば良かったのですが、十分に出してくれたなと思っています。


[選手インタビュー]

<マルセロ ヒアン選手>


Q、久しぶりのスタメンでチームを救う同点ゴールもありました。前後半それぞれの手応えと振り返りをお願いします。
A、前半は試合開始からゲーム全体をコントロールできていました。3分という早い時間に得点を決めることができましたし、その後チャンスもありました。私自身決め切ることができず、2点目、3点目と速やかに突き放すことができませんでした。結果として、前半終盤に追いつかれてしまったことが反省です。後半については、五分五分だったと思います。相手に逆転ゴールを与えてしまい苦しい展開になりましたが、チームを救いたい一心でプレーしていましたし、その想いが同点ゴールにつながったと思います。試合終盤にかけて優勢に進めることがチームとしてできていましたが、逆転できず非常に悔しいです。

Q、開始早々の得点がそのあとのプレーに自信をつけたような印象を受けました。
A、早い時間帯の得点が、私だけではなくチーム全体に勢いと勇気を与えてくれたと思います。セカンドボールもしっかり回収できていましたし、チャンスもありましたが、良い流れのなかで失点してしまったことが残念です。次の試合は何としても勝利を掴みとりたいです。

Q、今日のシステムでは、東慶悟選手や佐藤恵允選手が常に近い位置でプレーしていました。攻撃を仕掛ける上で、プラスに働いたところはありましたか。
A、確かに今日はツートップに近い形で、配置や立ち位置が変わりましたが、ここからさらに仕掛けのコンビネーションを深めて良い形にしていきたいです。

Q、シーズン序盤は悩んだ時期もあったなかで、コツコツと積み重ねてきている印象です。ここからあらためてどのように高めていきたいですか。
A、勝利に繋がる結果を残していきたいです。もちろん、私自身の得点だけにこだわるのではなく、チームとして複数得点を奪っていきたいです。そして、一つひとつ順位をあげていきたいと思います。


<室屋成選手>


Q、久しぶりに味の素スタジアムのピッチに立ちましたが、いかがでしたか。
A、試合前から僕の名前を呼んでくれたりチャントを歌ってくれて、とても嬉しかったですし、感極まりました。ありがとうございます。

Q、チームに合流して2週間ほどが経ち、今日が最初の試合でした。試合を振り返ってください。
A、この2週間は、チーム内でのバトルという部分で練習からみんなしっかりと取り組んでいましたし、試合の立ち上がりからそういう意思を持ってプレーができていました。少し残念な2失点でしたが、90分間をとおして自分たちはインテンシティが高く、相手を上回るサッカーができていました。もっともっと自分たちがボールを握れる時間帯が持てれば、もっと良くなると思います。この現状を踏まえて自分たちができることというのは、この試合はできたのではないかと思います。

Q、先制したものの追いつかれてしまいました。勝ち切れなかった要因は何でしょうか。
A、1失点目は、相手の素晴らしいパスから失点してしまいました。1-1になった後、今日に関しては2失点目は少しアンラッキーな部分があったと思います。 勝てていないと、こういう展開のなかでなぜか失点してしまうみたいなことが起こるので、そういうところだと思います。ただ、こういう試合を続けていければ、おのずと勝点は増えていくと思います。

Q、ここからツエーゲン金沢との天皇杯、ガンバ大阪とのリーグ戦と試合が続きます。そこに向けてどのような準備をしていきますか。
A、連戦で天皇杯もありますが、自分たちの今日のインテンシティを基準として試合をやっていかなければいけないです。しっかりまずは次の天皇杯で勝利し、次のステージに進み、アウェイのガンバ大阪戦でも勝点3をとれるように準備していきたいと思います。