教訓と覚悟

INTERVIEW2025.6.13

教訓と覚悟

Q、約2週間のインターバルが明けてリーグ後半戦が始まります。まずはリーグ前半戦を振り返っていただけますか。
A、情けない、の一言です。自分が東京に加入してから、リーグ前半戦を終えてこの順位にいるという経験はあまりなかったので、強い危機感を持っています。


Q、今シーズン前半戦の最後は京都サンガF.C.戦でした。東京としての大きなターニングポイントにもなった2010シーズン最終戦も同じく京都戦でした。当時も悔しい思いをしたその試合をきっかけとして、そこからの天皇杯優勝、ACL初出場まで上昇していった経験を持っているのは、今のチームでは森重選手だけとなりました。ここからチームが浮上するために、当時と重ねて思うところはありますか。
A、自分のなかであの時の経験は大きいです。まさか降格するようなメンバーではないと周りも自分たちも思っていましたし、優勝を狙おうと臨んだシーズンでした。チームには日本代表選手も何人もいて、「まあ大丈夫だろう」という雰囲気もあるなかで、ああいった状況になってしまった。心のどこかに油断、慢心のようなものがあったのだと思います。それを自分のなかでもう一度しっかりと考え直そうという強い気持ちで、次のシーズンから取り組み直しましたが、それでも最初はJ2リーグでもなかなか勝てませんでした。 自分たちのなかに甘えがあると勝てない。それを2010シーズンに思い知ったはずなのに、2011シーズンもほとんどの選手が残り、さらに補強もして、このメンバーなら大丈夫だろうという雰囲気になってしまっていた。

そういう気持ちが少しでもあるとサッカーは勝てない。技術的なところや戦術的なところだけではなく、サッカーではそういうものが勝敗を分けると身をもって感じました。だからこそ、戦術だとかやり方だとかの前に、戦う気持ちやサッカーの本質的なところを大事にしようと常に思っています。

Q、当時のご自身の経験から、今チームに求めたいこと、求められていることをどのように感じますか。
A、今シーズンから新しく松橋力蔵監督になって、これまでの実績からどうしても戦術の話が先行して、周りからもそのように期待して見られていたと思います。ですが、本来それは自分たちの土台の上に積み上げるものであって、その土台となる本質的なところ、情熱だったり強いメンタリティだったり、その基本的なところをここまでの自分たちが出し切れていなかった。それはバランスが難しいところもあって、松橋監督が来たからには戦術的な部分で良いサッカーをしようということが頭のなかにはありますし、もちろんチームとしてうまくそれを表現したいと思っています。でもそれだけでは勝てないと、この半年間やってきてみんなが感じたと思います。そこを伝えていくのも、ピッチや日々のトレーニングで表現するのも自分の役割だと思っています。それはこの後の残り半分のシーズンをどうやって戦っていくのかというところで、自分自身にもチームにも求めていきたい部分です。


Q、京都戦の試合後、ゴール裏のスタンドから鳴り止まない応援を受けて、森重選手はどのようなことを感じましたか。
A、チームが勝てずにブーイングされても仕方のない状況のなかで、ゴール裏からのあの応援は本当に力になりましたし、勇気をもらえました。自分としても復帰して最初のスタメン出場だったので何とか勝利を届けたいと思っていたなかでああいう悔しい結果になってしまい、チーム全体としてもずっと悔しい状況が続いている。それでもあれだけ力強くファン・サポーターのみなさんが応援してくれていることが唯一の救いだと、自分のなかではそう思いました。自分たちの不甲斐なさを痛感しましたし、同時にこの人たちのためにももう一度立ち上がって戦わなければいけないと強く思いました。試合が終わった直後でしたが、すぐにそういう気持ちになれたのは、ファン・サポーターのみなさんのあの応援、あの行動がそう思わせてくれた。非常に頼もしい存在だと感じました。

Q、ここから後半戦に向けて、あらためてどのように戦っていきますか。
A、個人個人のサッカーのレベルを上げていくことはもちろん、それ以上にチームとしてどう戦うか、何にこだわるのか。ここから勝点をどれだけ積み上げられるかが大事なので、全員が必死になって守らなければいけないし、全員が必死になって点をとりにいかなければならない。その姿勢を観ている人たちが感じられるようになってくれば、自ずと結果もついてくると思います。まずはサッカーの本質的なところを突き詰めないといけないと思っています。

それはリーグ後半戦だけを考えてもそうですが、今後の東京が優勝という目標に真剣に向き合って進んでいくためにも忘れてはいけないことですし、サッカーというスポーツの本質の部分は会社全体としても忘れてはいけないことだと思います。それはみんなが頭のなかに入れて、社長もGMもビジネススタッフも現場スタッフも選手も、そしてファン・サポーターも、全員がそこだけは譲らないようにしなければならないと思います。


Q、リーグ後半戦に向けて、ファン・サポーターに向けてメッセージをお願いします。
A、チームが勝てないなかでもみなさんの声援は本当に力になりますし、チームがどんな状況であれ、ともに戦ってくれているのが東京のファン・サポーターだと思っています。時にはブーイングも必要なのかもしれませんし、時には京都戦の後のような選手に勇気を与えてくれるやり方もあるかもしれません。それに選手たちは応えなければならない。プロである以上はピッチで表現しなければならないし、結果を残さなければならない。その責任を選手たちは持って、どれだけそれを伝えることができるか、勝点につなげることができるか。それをファン・サポーターのみなさんに見せていきたいと思います。