2025シーズン前半戦総括&後半戦プレビュー<br />
求められる継続と行動変容

COLUMN2025.6.11

2025シーズン前半戦総括&後半戦プレビュー
求められる継続と行動変容

今シーズンは松橋力蔵監督を新たに迎え、青赤らしい個性を追い求めてきた。実直な新指揮官がこれまでのキャリアで歩んできたスタイルと、在籍している選手たちを融合していく。そうした取り組みが始まり、シーズンの折り返し地点を迎えようとしている。

2025明治安田J1リーグは開幕から18試合を終え、東京は5勝4分9敗で18位に位置している。得点数は17で、1試合平均は0.94ゴール。逆に失点数は26で、1試合平均は1.44失点。厳しい戦いを強いられている現状が数字からも見てとれる。この18試合を振り返れば、序盤はどちらに転んでもおかしくないゲームが多かった。


そのなかで積み重ねてきたことが、突然ピッチに姿を見せることもあった。その好例が3-2で勝利した5月3日の第14節アルビレックス新潟戦にあった。この日、右ウイングバックで起用されたミッドフィルダーの小泉慶選手は大胆に中央へとポジションを移し、それに呼応するように複数の選手が絡む美しいゴールを奪った。松橋監督はこう言葉にしている。

「原理原則はすごく大事だと思うが、それに縛られて結局良い状況を見つけ出せない。こうやらなきゃいけない、ここでは絶対これだ、これは絶対ダメだと縛られるのはおかしい。そこを破ってもいい。その代わり、成功させろというだけの話であって、そこに頭がいけばいくほど攻撃も遅くなるし、守備もいけるのにいかないで下がって相手を勢いづかせてしまう」

ただし、殻を打ち破りそうで破れない。そうしたもどかしさはいつも隣り合わせだった。決定機を作りながらも決め切れず、勝点を落としたゲームも少なくない。また、普段起こらないようなミスから失点を重ね、自分たちの手で苦しくした試合も存在した。失点を機に、ゲームの表情が一変することさえあった。

そうした時に何が起きたのか──。指揮官は「行動が変わってしまう」と表現する。試合後の会見で、開口一番に「蹴り過ぎです」と振り返った試合も一度ではなかった。指揮官は「ロングボールが悪でもなく、ショートパスを何本もつなぐことが正義でもない」と言う。相手の出方や点差、状況に応じて正しい判断ができるかが重要だと何度も口にしてきた。


直近で行われた5月31日の第19節京都サンガF.C.戦は、まさにそうした判断が正しくできなかった試合の典型だったのかもしれない。苛烈なプレスを生命線とする京都だが、その日は負傷者や出場停止で前線が駒不足に陥っていた。実際、相手は試合終盤にディフェンスが本職の選手を最前線に起用しなければいけない台所事情でもあった。それにも関わらず、相手が嫌がる体力を削るようなボールの動かし方を序盤からできず、結果的に1トップで先発した京都のフォワード長沢駿は後半40分までピッチに立ち続けた。

試合序盤こそ、相手のプレスを逆手にとった背後を狙うボールが有効な時間帯もあった。だが、徐々にゲームが落ち着くなかで、相手が構えるようになってからも長いボールを蹴り続けてしまった。自ずとセカンドボールを拾われるようになり、相手の土俵に引きずり込まれて先制点を献上。その後は焦りの色が濃くなる終盤に失点を重ねて0-3で敗れている。

苦しい現状を受け入れたうえで、覚悟が問われている。うまくいかない時ほど、あれもこれもと目移りしてしまいがちで正しい判断を見失ってしまう。松橋監督は肝を据え、こう言葉にする。

「あれもこれもとなると、自分たちの良さはなかなか出ない。うまくいかなければ、この方法じゃダメだというのは簡単だと思う。すごく簡単な発想で、僕は思慮の浅い言葉だと思っている。そこで折り曲げることが、勝つためだというのも分からなくもない。でも、自分が信じた道にみんながここまでついてきてくれた。僕は曲げるつもりはない。ただ、勝つために何ができるかを考えていかなきゃいけない。それは自分のやってきたことを否定することではない。それしかないと、追い求めていくしかないと思います」


ここまで積み重ねてきたトレーニングや、個を浮かび上がらせることで、より強固なチームを作る方針を曲げるつもりはない。後半戦の巻き返しに向け、指揮官は何度も「勝つために」と言ってこう選手たちに呼びかけた。

「勝つためにみんなの行動を何か一つでも二つでも変えてほしい。あれこれすべてを追い求めるのではない。この先の未来を変えていくために、個人個人の欲望や覚悟は絶対に必要になる。良い習慣がなければ花は開かない。一人の人間としてしっかりと向き合えるか。保身に走っていては無理だと思う。一個人でどうなりたいのかという強い想いは、行動や発言に必ず現れる。そういうところさえしっかりしていれば、必ず僕は良いチームになれると思っている」

リーグ中断明けとなる6月14日のセレッソ大阪戦で、その指揮官と選手たちの“覚悟“がピッチに描かれるはずだ。


そして、行動が変われば、自ずとやるべきこともきっとクリアになる。ふとした瞬間、松橋監督はいつもボールに触れている。「足癖が悪いので」と笑うが、それがフットボーラーの真理でもある。

ボールにもっと触れたいと思えば、立たなければいけない場所のイメージが自然と湧き上がってくるようにトレーニングも続けてきた。それが折り重なって、ゴールへとつながる道はできるはずだ。

ここ数試合、失点の原因となっているクロスボールへの対応も同じことが言える。ボールホルダーの持ち方や状況で、自分のマークに対する駆け引きやどのスペースを埋めるかも決まってくる。正しい判断は、いつだって転がるボールが教えてくれる。

力蔵トーキョーの巻き返しはここからだ。


(文中敬称略)

Text by 馬場康平(フリーライター)