<マッチレビュー>
3月下旬から続いた過密日程のラストマッチは、アウェイでのアルビレックス新潟戦。松橋力蔵監督にとっては昨シーズンまで率いた古巣との対戦となる。
東京はここまで3勝4分6敗と黒星先行の成績。リーグ戦のアウェイゲームは5試合未勝利と苦手にしているが、ここから浮上していくためには是が非でも勝利が求められるゲーム。国立競技場で手にした喜びと勝点3に必要な"もの"をもう一度思い出し、臨機応変な判断でゴールと勝利を手繰り寄せたいところだ。
青赤のスターティングイレブンは日程も考慮して5人を変更。3バックの中央に木村誠二選手、左ストッパーにはエンリケ トレヴィザン選手が入り、土肥幹太選手と最終ラインを編成。ボランチは橋本拳人選手と高宇洋選手のコンビ、ウイングバックは右に小泉慶、左に遠藤渓太の両選手を起用し、インサイドハーフは佐藤恵允選手と俵積田晃太選手が並んだ。そして最前線にはリーグ戦初ゴールが期待されるマルセロ ヒアン選手。ともに古巣対決となる高選手と小泉選手に加えて、初めて同時にスタメン出場することになった左サイドの遠藤選手と俵積田選手のコンビネーションにも注目が集まる。
試合前のメンバー紹介で松橋監督に大きな拍手と少しのブーイングが送られたゲームは、快晴のデンカビッグスワンスタジアムで14:03に東京ボールでキックオフを迎えた。
1stHALF—ヒアンのリーグ戦初ゴールで先制
立ち上がりから攻め手を探る東京。なかなかボールを持てない時間が続いた前半6分、前線からのプレスと鋭い出足のインターセプトで縦へつなぐと、ヒアン選手のくさびから右サイドへ展開し、小泉選手がワンタッチで折り返したところを佐藤選手が狙ってチャンスを作り出す。
これで動きが軽くなった青赤。直後の前半8分、エースに待ちに待ったリーグ戦初ゴールが生まれる。ピッチ中央やや右サイドでこぼれ球を拾ったヒアン選手がそのまま持ち上がると、相手のマークが遅くなった瞬間を見逃さずに左足を一閃。インフロントにかけた強烈なコントロールショットをゴール左上に突き刺し、早い時間で先制点を奪うことに成功する。
前節の清水エスパルス戦で「ちぐはぐだった」というピッチ内の目線をしっかり整理できた印象の強い前半。前線からプレスを仕掛け、パスを出させたところで出足良くカットする守備が機能し、攻守に渡って予測のアンテナを高くしながら素早いトランジションからゴールに襲いかかる。選手の立ち位置や距離感も良く、多くの三角形を作って複数のパスコースを開通。ある程度は相手にボールを持たせながら、"良い守備から良い攻撃"を体現するサッカーで東京が試合のペースをつかんでいった。
その後もヒアン選手の抜け出し、中盤で作りながら逆サイドへの大きな展開、後ろからどんどん選手が出てくる厚みのある攻撃など多彩なバリエーションの仕掛けを披露。追加点こそ奪えなかったものの、ピッチ上の選手たちが攻守に連動しながらチームとしてやるべきサッカーを見せて前半を折り返した。
2ndHALF—ヒアンとアニキの追加点で逃げ切り今シーズンアウェイ2勝目
メンバー交代なく後半を迎えた両チーム。東京としては前半に見せたような的確な予測とアグレッシブなスタイルで主導権を握り続けたい。
後半立ち上がり、矢印をゴールに向けてペースをつかんだのは東京だった。多くの選手が積極的にボールに絡み、相手陣内に押し込んでいく。そして後半7分、素晴らしい形から追加点が生まれる。
右サイドでボールを持った小泉選手が内側へ持ち運びながら攻め上がってきた土肥選手へパス。そのまま中央から前線への飛び出しを狙うと、佐藤選手とのワンツーでさらに攻め上がってきた土肥選手からのラストパスをペナルティエリア内で小泉選手が受け、一気にスピードアップして最終ラインを切り裂くような縦突破から右足で流し込む流麗なゴール。 頼りになる“アニキ”がプロデビューした想い出の古巣相手に大仕事を果たし、東京がリードを2点に広げた。
その後も予測が冴えわたる東京。こぼれ球に素早く反応するだけでなく、全員が的確に動き直してパスコースを作り、積極的にボールに絡んでいく姿を見せる。各選手がピッチの至るところで輝きを放ち、躍動する時間が続いていく。
だが後半21分、一瞬のスキを突かれて右サイドを突破され、一旦は野澤大志ブランドン選手がセーブするも、ゴール前でこぼれ球を連携ミスからロストし、笠井選手に蹴り込まれて失点。1点差とされてしまう。
直後の後半24分には高選手が中盤の競り合いで激しく接触し、交代を余儀なくされる。ここで代わって入った白井康介選手を右ウイングに配し、小泉選手をボランチにコンバートする形に移行。ここまで高選手が的確な声とパス、そして機を見たポジショニングで中盤の底から全体をコントロールしていただけに、残りの約20分間、その穴をチームとしてどう埋め、勝利に繋げていくかが問われることになった。
思わぬメンバー交代で新潟に押し込まれる時間帯が続いていた後半37分、またしてもしっかりとゴールに矢印を向けたスーパーゴールが生まれる。
自陣ペナルティエリア内でこぼれ球を拾った白井選手がそのままドリブルで持ち上がると、ピッチ中央をグングン加速して縦方向に絶妙なラストパス。並走していたヒアン選手がこれに抜け出すと、右足で力強く撃ち抜いて追加点をゲット。苦しい展開を救う背番号19の2点目で、東京が再びリードを2点に広げることに成功した。
後半40分にはエンリケ選手、橋本選手、俵積田選手に代えて岡哲平、常盤亨太、野澤零温の3選手を投入。それぞれ同ポジションに入り、試合のクローズに向けてベンチが動く。
後半アディショナルタイムは、高選手への対応もあって11分間の表示。後半45+9分にはセットプレーから押し込まれて1点差とされるが、交代選手も含めてアグレッシブな姿勢を見せ、最後まで集中したプレーと予測で相手を上回って3-2で逃げ切りに成功。ヒアン選手が2ゴールを決める活躍もあり、横浜FCとの開幕戦以来となるアウェイでのリーグ戦白星を手にした。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK 野澤大志ブランドン
DF 土肥幹太/小泉慶/エンリケ トレヴィザン(後半40分:岡哲平)/木村誠二
MF 高宇洋(後半28分:白井康介)/橋本拳人(後半40分:常盤亨太)/遠藤渓太(後半13分:安斎颯馬)/俵積田晃太(後半40分:野澤零温)
FW 佐藤恵允(後半30分:仲川輝人)/マルセロ ヒアン
SUBS
GK 波多野豪
DF 木本恭生
MF北原槙
MANAGER
松橋力蔵
GOAL
前半8分:マルセロ ヒアン / 後半7分:小泉慶 / 後半37分:マルセロ ヒアン
<アルビレックス新潟>
STARTING Ⅺ
GK 吉満大介
DF 藤原奏哉/ジェイソン ゲリア/稲村隼翔/堀米悠斗(後半22分:橋本健人)
MF 新井泰貴(後半40分:星雄次)/秋山裕紀(後半22分:高木善朗)/小見洋太(後半13分:ダニーロ ゴメス)/長谷川元希/奥村仁(後半40分:ミゲル シルヴェイラ)
FW 小野裕二(後半13分:笠井佳祐)
SUBS
GK 藤田和輝
DF 早川史哉/舞行龍ジェームズ
MANAGER
樹森大介
GOAL
後半21分: 笠井佳祐 / 後半45+9分: ダニーロ ゴメス
[松橋力蔵監督インタビュー]

Q、本日の試合を振り返ってください。
A、最後までどうなるか分からない難しい展開でしたが、自分たちで苦しんでしまった部分はありながらもしっかりと勝利できたことは嬉しく思っています。
Q、4シーズンを過ごした新潟の地で対戦相手の監督として試合をしてみて、あらためてどのように思いましたか。
A、長い期間ともに戦ってくれた選手、スタッフ、関係者がいるなかに戻ってくる不思議な感じはすごくしました。そうはいっても、勝負の世界では戦う相手をどう倒していくか、我々が進んでいることをどう示していくか、ということもある意味大事な部分ではありました。
Q、高宇洋選手の負傷による交代までは良いゲームでしたが、狙いどおりという展開でしたか。
A、得点になったカウンターというのは我々が持っている良い部分が出せました。特に2点目はすばらしいゴールだったと思っています。ただ、2失点については自分たちでペースを乱している部分がありました。2失点にフォーカスするのではなく、それまでの戦い方が非常に保守的でした。そこは3点目をとった時点でチーム全体に(指示を)流して、そこからトライしはじめたなかで良い形ができていました。フィニッシュからゴールまで結びついてはいないまでも、勇気を持ってほしいなと思います。
あのままでやっていたら「もしかすると…」という嫌な予感がありました。そこはしっかりとトライさせて、前のスペースを生み出すためにボールを動かすというところは、彼らに話したことをうまくやってくれたと評価できると思います。そのなかでのエラーをどう修正していくか。修正したことを最後に得点までどう結び付けていくかというところは、まだこれからも続けていかないといけません。
Q、試合前には「点がとれないとダメだ」と仰っていました。結果として3得点できたことをどう振り返りますか。
A、点が入らないことで我々がやっていることが何かネガティブに映ってしまったり、薄まってしまうのは非常に悔しいです。ただ、サッカーは点をとらないと勝てません。僕も甘く見積もっていたということはありませんが、そこを突き詰めていかないと、我々がめざしている方向に進むことはできないな、と。絶対に見逃していけないところだと思うので、この先も強調していきたいです。
Q、選手の矢印がゴールに向いていて、目線が揃っているように見えました。
A、最初、守備はあまりうまくいっていませんでした。相手は迷いを生み出すポジションをとるのがうまいので、そこの迷いのせいでフィットすることができませんでした。後半はそこを少し固めるための配置を選手たちにタスクとして与えて、落ち着いた部分もありながらも、2失点した部分は形も含めてもったいなかったです。
攻撃については、序盤はまだ慌ただしさがあるなかで、なぜ後ろからボールをつなぐのか、ということを選手たちにハッキリと伝えているつもりながら、まだまだ薄いな、と感じながら見ていました。そこのトライでできたスペースをうまく使っていくことで、良い形で攻撃ができていました。そこをどう捉えるか。勝てていない分、選手たちにも勇気が湧いていかないなかでも、どこかで僕がハッキリと示していかないといけません。示したなかで、彼らはこなしてくれている部分もあります。
[選手インタビュー]
<マルセロ ヒアン選手>

Q、今日は2ゴールの活躍でした。
A、ゴールを決めるために毎日練習をしてきたので、ようやくゴールを決められて、なおかつ2点もとれてチームも勝てたということを非常に嬉しく思います。また次の試合に向けてしっかりと休養をとって、準備していきたいです。
Q、それぞれゴールシーンを振り返ってください。
A、1点目は佐藤恵允選手からパスがきて、自分でドリブルで運んでいきました。両サイドにオプションがありましたが、スペースがうまくあったので左足でうまく流し込むことができました。2点目は白井康介選手がボールを運んで、自分が左に寄る動きをしてから斜めに走りました。ボールがきてから一度はトラップミスのようになってしまいましたが、その後にボールをうまくコントロールして決めることができました。
Q、この2ゴールをきっかけに、今後さらにゴールを量産できそうですか。
A、私も東京に加入して、東京の選手として初めてリーグ戦でゴールを決めることができて、チームの勝利に貢献できていることがあらためて嬉しいです。自分も自信がつくので、この先、さらにゴールを積み重ねていきたいです。
Q、アマラオさんやルーカスさんのチャントとして使われた歌がマルセロ ヒアン選手のチャントになりました。どう思われますか。
A、もちろんまだまだ二人には届きようがありませんが、そういうふうにファン・サポーターが後押しして認めてくれることは嬉しいです。東京のために、彼らに追い付けるようにプレーしていきたいです。
Q、これまでゴールから遠ざかり、苦しかったですか。
A、加入した一日目から、ゴールを決めてチームを勝たせることを目的に練習を積んできて、なかなかゴールを決められないことで非常に悔しい思いをしてきました。ただ、自分はいつかゴールを決められると信じてやってきましたし、今日ゴールを決められてチームが勝てて何よりです。
<小泉慶選手>

Q、試合の入り方はどうでしたか。
A、マルセロ ヒアン選手が良い時間で点をとってくれました。先制点が大事だと思っていたので、そういった意味で先制できたのは大きかったですし、チームとしてもボールを持つというところは、色々チャレンジできている部分もありました。良い入りだったと思います。
Q、ウイングバックでの出場でした。自身のポジションはどうでしたか。
A、中に入ってボランチの手助けができれば良いなと思って、ウイングバックというポジションにこだわらず自由にやらせてもらいました。自分が張るところはしっかりとサイドに張ったり、そこは相手を見ながらもう少しうまくやれればいいなと思います。
Q、ゴールシーンを振り返ってください。
A、土肥幹太選手が最後にパスを出してくれて、あれはもう、あそこの位置まで自分がいけたというのが大きかったと思っています。
Q、3-2という結果でした。課題も見えた試合でしたか。
A、難しい試合でしたが、最後の終わり方、勝ち方というものにもっとこだわっていかないといけないな、と。正直、あと15分あったらやられていたかもしれないですし、そこはしっかりやっていきたいです。
Q、次節、ホームでのヴィッセル神戸戦に向けて意気込みをお願いします。
A、清水エスパルス戦と同じで、連勝をしないと何も意味がないので、連勝するためにしっかりやっていきたいと思います。
<白井康介選手>

Q、アシストの場面を振り返ってください。
A、ボールを奪った後にスペースが見えていました。相手選手を剥がして高い位置までボールを運ぶイメージはできていましたし、マルセロ ヒアン選手が良いタイミングで動き直してくれていたので、ボールを預けるだけでした。得点までイメージ通りだったと思います。
Q、難しい時間帯、タイミングの途中出場だったと思います。
A.リードしていましたし、失点をしないことと、右ウイングのポジションで小泉慶選手が良い活躍と得点を記録していたので、僕自身も何かしらの結果を残したいと思っていました。守備で簡単にやられないことに重点を置きつつ、少ないチャンスをしっかりとモノにしたい意識でした。
Q、3点目がなければ、2-2の引き分けで終了した可能性もありました。
A、3点目を奪えたこと、得点を奪いに行く前向きな姿勢も示せたと思います。2点目、3点目を狙う攻撃的な意識は今後も継続したいと思いますが、2失点ともにもったいなかったと思います。修正していきたいです。
Q、ワイドの選手が内側にポジションをとってプレーする回数が多かった印象です。
A、内側に入ってプレーすることも状況に応じて良いと思いますし、小泉選手が決めた2点目のように外のエリアからパスで崩しながら侵入していくプレーは僕自身も常に意識しています。自分の良さを出しつつ、良い位置でプレーすることを今後も意識していきたいです。


