PLAYERS FILE 2024<br />
NOZAWA LEON

COLUMN2024.2.19

PLAYERS FILE 2024
NOZAWA LEON

青赤の誇りと感謝を胸に
“一番下”から世界一のストライカーを目指す
FW 28 野澤零温



2024シーズンに挑む全青赤戦士を紹介していくスペシャルコンテンツ。果たして開幕を控えた選手たちは何を考え、どんな覚悟で一年に臨もうとしているのだろうか。クラブ愛、タイトルへの渇望、活躍への想い、そして果たすべき役割を胸に秘めた選手たちのストーリーとは──。昨シーズン、J1デビューと武者修行を経験した野澤零温。「一番下からのスタート」と語る彼がめざすは“世界一のストライカー”。感謝と誇りを忘れず、努力を続けて高みへ辿り着く。




涙を拭い、歓喜の瞬間を追い求める。昨シーズンは紅白戦にすら混じれない立場からのスタートだった。それでも拳を握って這い上がり、2024 Jリーグ YBCルヴァンカップ グループステージ初戦のセレッソ大阪で途中出場から復帰後初出場にこぎ着けた。

しかし、その試合で決定機をものにできず、直後に自然と溢れ出るものがあった。

「あの試合が最後のつもりでプレーしていた。それだけの覚悟があったから結果が残せず、悔しくて涙が出てしまった」

そういった悔しさも糧に、地道な日々を積み重ねた。不断の努力は実り、2023 明治安田生命J1リーグ第18節名古屋グランパス戦でJ1デビューも飾った。8月にJ3リーグの松本山雅FCに育成型期限付き移籍するまで公式戦8試合に出場。武者修行先でもコンスタントに試合に出続け、15試合2得点を挙げた。少しだけ大人になり、また愛するクラブのユニホームに袖を通すことになった。

「チームを代表してエンブレムを背負って戦う意味を感じられた。試合に出る責任や、試合に懸ける覚悟を1試合1試合噛み締めてきた。一つひとつのプレーに責任があるから軽いプレーはできない。このエンブレムを胸に戦う限りは不甲斐ないことはできない」

だが、戻ってきても立場が大きく変わったわけではない。「また一番下からのスタートだし、やることは変わらない。自分ができることを精いっぱいやって、目の前のチャンスを掴み取っていくことが近道。何も変わらないし、ここでプレーできる喜びを表現していきたい」

また一歩ずつの再スタートだ。これまで多くの人に支えられてきたという。いつだって「自分の力でここまで来たわけじゃない。感謝の気持ちを忘れてはいけない」と繰り返してきた。よく口にする「想いを背負う」や、「どんな環境も楽しむ」は多感な十代で学んだ彼の人生訓なのだ。だから、何度転んだとしても起き上がってくる。周りには体を軽くしてくれる出会いや、言葉が溢れているからだ。

「幸せなことに応援してくれる人たちが僕にはたくさんいる。少しは成長できたと思うので、プレーや姿勢はもちろん結果で、胸を張って『ただいま』と言えるようにしたい」

プロ3シーズン目。まだまだ実績は乏しいかもしれない。でも、目標は変わらず「世界一のストライカー」だ。みんなが背中を押す人柄がボールを引き寄せ、託したくなるのだ。それこそ彼の一番の才能だと、僕は思う。



text by 馬場康平(フリーライター)