7/12 ヴェルディ戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

INTERVIEW2023.7.12

7/12 ヴェルディ戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

<マッチレビュー>

6月7日の天皇杯2回戦で福島ユナイテッドFCを下してから、7月12日は“特別な日”となった。そこから1か月、ようやく決着を付ける時がやってきた。

その間、東京は監督が代わり、いまは守備の整備からはじまり、新たなスタイルを構築している最中にある。チームに新しく加わった者もいれば、去った者もいる。怪我人が多いのは少し気がかりだが、ヴェルディ戦となれば、チームの状況は関係ない。大事なのは目の前の一戦。勝つために、ヴェルディを叩くために、東京のクラブは青赤だと示すために、全力を尽くすのみ。

ピーター クラモフスキー監督は言った。

「私自身、何回かダービーを経験してきたけど、このヴェルディ戦が特別な試合だということは分かっている。ファン・サポーターにとってはこの試合がすべてと思っている人もいるでしょう。言葉で説明できない感情がフットボールのなかにはあり、それもフットボールの大事な一部。その情熱を彼らのためにしっかりとゲームで出せるようにしていきたい」

12シーズンぶりのヴェルディ戦が味の素スタジアムで幕を開けた。

1stHALF—塚川の豪快なミドルシュートで先制

『ヴェルディだけには負けられない』というチャントが歌い続けられるなか、相手のキックオフではじまったゲームは立ち上がりこそ押し込まるが、前半8分に安部柊斗選手がチームのファーストシュートを打ち、流れを引き寄せる。前半15分にはアルハン選手のロングスローからポスト直撃のヘディングシュートを打たれるが、唯一のピンチを凌ぐとゲームの主導権を掌握した。

その流れのまま前半20分には先制に成功する。中盤で受けたディエゴ オリヴェイラ選手が運び、並走する塚川孝輝選手にラストパス。トップ下に入っている背番号35が迷いなく右足を振り抜くと、相手ゴールキーパーの手前でバウンドしたシュートがゴールネットを揺らした。

リードを得てからはさらに余裕をもってゲームを進めていく。最終ラインは集中した守備をみせ、松木玖生選手と安部選手のダブルボランチがセカンドボールの回収で優位に立ち、支配率を高めた。そして、奪ったボールを塚川がスペースで引き出したり、ディエゴ選手が体を張って収めたりと攻撃の起点を作り、前半26分には3列目から飛び込んできた安部選手が追加点の決定機を迎えた。

守ってもエンリケ トレヴィザン選手が相手フォワードをつぶし続け、流れのなかからはチャンスを作らせず、最大の脅威であるロングスローに対してもヤクブ スウォビィク選手が2本目以降は軌道を読み、しっかりとキャッチ。相手の攻撃の芽を摘み、危なげなく1点をリードして前半を折り返した。

2ndHALF—ディエゴの惜しい一撃も追い付かれ延長へ

後半の立ち上がり、ハーフタイムに2選手を交代したヴェルディに押し込まれるが、すぐにゲームを落ち着かせると、後半10分にはコーナーキックを獲得する。キッカーを務める松木選手がゴール裏を煽り、その二次攻撃から最後はディエゴ選手がクロスバー直撃のシュートを放った。さらに塚川選手が抜け出してゴールに流し込んだが、オフサイドの判定で追加点とはならなかった。

すると、次第にゲームの流れがヴェルディへと傾いていく。交代カードを早めに切り、フレッシュな選手を前線に送り込んで来た相手に押し込まれてしまう。そして後半25分には、コーナーキックから同点ゴールを許してしまった。

スコアが振り出しに戻ってからは意地と意地のぶつかり合い。東京が押し込む時間は長くなるが、ゴールが遠く勝ち越し点が生まれない状況が続いた。結局、そのまま1-1で90分間が終了。12シーズンぶりのダービーは120分間の戦いへと突入した。

EXTRA TIME—立ち上がりのチャンスを決め切れず

延長戦に突入すると、開始から38秒で東京がビッグチャンスを作る。右サイドで崩し、塚川選手がクロスボールを入れる。ニアに走り込んだ東慶悟選手が相手の選手よりも手前で頭で合わせるも、シュートは枠から逸れた。

両チームともに次の1点の価値を理解しており、攻撃姿勢を出しながらもバランスを崩さずにゲームを進めていく。そのなかで延長前半11分にはまたしてもロングスローからシュートに持ち込まれ、延長前半15分には自陣でのクリアミスからあわやというシーンを迎えたが、相手のシュートミスに助けられた。

延長後半に入ってもゲームの均衡は崩れない。このタイミングで熊田直紀選手が最前線に投入されるが、チーム全体の疲労の色は強く、なかなか前線までボールを運べない。気が付けば時計の針は120分を指していた。そのまま延長では決着がつかず、白熱した試合はPK戦に突入した。

PENALTY SHOOTOUT—9本目をクバがストップ! 死闘を制す

先攻の東京は一人目の松木選手が冷静に右に決めると、二人目の木本恭生選手も成功。さらに三人目の塚川選手は左下に、四人目の熊田選手は右下に決める。そして五人目の長友佑都選手が決めるも、ヴェルディも5人全員が成功してPK戦も延長に突入した。

六人目の安部選手のキックは、一度は相手ゴールキーパーに触られたが、タイミングがズレたことが奏功してゴールへと転がり込んだ。七人目の寺山翼選手はど真ん中へ。続く八人目の小泉慶選手も成功し、九人目の東選手が左上に蹴り込んで東京は9人目まで全員が成功した。

そして、相手の九人目のキッカーを迎える。何度かコースを読みながらも止めきれないでいたスウォビィク選手だったが、この九人目のキッカーをストップ。死闘となったヴェルディ戦を制し、天皇杯4回戦へと駒を進めた。

MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GKヤクブ スウォビィク
DF小泉慶/木村誠二/エンリケ トレヴィザン(延長後半13分:木本恭生)/長友佑都
MF松木玖生/安部柊斗/塚川孝輝
FW渡邊凌磨(後半31分:寺山翼)/ディエゴオリヴェイラ(延長後半0分:熊田直紀)/俵積田晃太(後半16分:東慶悟)

SUBS
GK野澤大志ブランドン
DF徳元悠平
FW野澤零温

GOAL
前半20分:塚川孝輝

<ヴェルディ>
STARTING Ⅺ
GKマテウス
DF奈良輪雄太/綱島悠斗/平智広(後半0分:千田海人)/アルハン(延長後半5分:小池純輝)
MF楠大樹(後半23分:白井亮丞)/阪野豊史(後半29分:佐川洸介)/加藤弘堅(後半0分:山越康平)/西谷亮/杉本竜士(後半18分:北島祐二)
FW河村慶人

SUBS
GK長沢祐弥

GOAL
後半25分:白井亮丞

PENALTY SHOOTOUT



[ピーター クラモフスキー監督記者会見コメント]


Q、試合を振り返ってください。
A、カップ戦であり、そして熱のこもったヴェルディ戦ということで、ゲームでは色々なことが起こると思っていました。経験上、カップ戦では何が起こるか分からないものですから、すべてに対して準備しなければいけませんでした。それは今日の試合でも同じことです。本当に重要な、大事なところというのは、自分たちの感情を抑えながら、しっかりと出し切っていくことが大事でした。

自分たちの考え方をしっかりとやり切ってくれたと思いますし、非常に良いフットボールを出してくれたと思っています。もう少し多く点を取れたような場面もあったと思いますし、そのチャンスを決められず、自分たちが苦しんでしまいました。そして相手にセットプレーの隙を突かれてしまいました。そこは残念なところだと思っています。ただ、そのなかで選手たちが勇敢に、そして献身的にこのクラブに対する信念を持って戦ってくれました。クラブにいるすべての人々の努力だと思っています。そして、ファン・サポーターにとって、今日の勝利が特別なものになったと思っています。

東京は、青と赤です。

Q、リーグの浦和レッズ戦とほぼ変わらない顔ぶれでした。
A、フレッシュさと安全性のバランスを考えて、このメンバー選考となりました。まず、安定して戦うことが大事であり、チームの連携をしっかりと取れるようにしていくことが大事です。今後も練習のなかでしっかりとやりながら、一歩一歩、前に進んでいきたいと思っています。

Q、延長、そしてPK戦までもつれ込みました。
A、最後までしっかり出せたというのは素晴らしいものです。彼らはしっかりと勇敢に、そして心を持って戦いました。ガソリンタンクがもう燃料がなくなるぐらいまで出し切っていました。 そのなかで120分間、あのような形で走り切ったことを本当に誇りに思っています。

Q、12シーズンぶりのヴェルディ戦で歴史に名前を加えたと思います。
A、クラブの過去の誇りを非常にリスペクトしていますし、東京の人々が誇りに思えるような、そして記憶に残るような戦いになりました。自分のことではなくて、グループと選手たちと、こうしたことを分かち合えたことを誇りに思います。また大事だったのは、トロフィーに向けてもう1歩進めたことです。クラブに関わるすべての人を誇りに思いますし、ファン・サポーターのためにも勝てて良かったと思います。

Q、PK戦までもつれ込むことを想定していましたか。
A、準備がすべてだと思いますし、そのなかで、自分たちが良い練習をしていくこともできました。練習のなかでPKにも取り組めました。この1週間、すごく良い準備ができ、120分間戦う準備をしてきました。また、本当にファン・サポーターに感謝したいと思います。ウォームアップの時から試合終了まで止むことなく声援をかけ続けてくれた仲間たちを、笑顔で帰すことができて嬉しく思っています。

Q、監督就任以来、公式戦を4試合戦って負けがありません。
A、これは、選手たち、そしてコーチングスタッフ、メディカルスタッフを含めたクラブに関わるすべての人たちがやってきたことに対する結果だと思っています。団結して、一日一日しっかりと準備してきたことによって、パフォーマンスがしっかり出せています。すごく良いスタートですが、まだまだやれることは多くあります。まだポテンシャルや可能性が多くありますし、それを引き出すために一歩一歩取り組んでいくこと、そして油断せずに行っていくこと。そうすることによって、自分たちが夢のチームに近付けると思っております。


[選手インタビュー]
<長友佑都選手>


Q、ヴェルディとの対戦はPK戦までもつれる激闘となりました。
A、本当であれば、90分で試合に決着をつけたかったところでしたが、ヴェルディもフレッシュな選手が多く、両チームともにこの暑さのなかで必死に戦った試合になりました。自分たちのサッカーを表現し、120分走り切り、最終的にはPK戦となりました。PKには多少の運もあると思いますが、“ヴェルディだけには負けたくない”“青赤の俺たちこそが東京”という強い気持ちを全員が持てたことが勝利に繋がったと思います。

Q、120分間、無尽蔵に左サイドを上下動する姿がチームを救っていました。
A、コンディションはとても上がってきている実感があります。120分プレーしましたが、身体的な問題は一切ありませんでした。37歳になりますが、まだまだプレーできるな、と思いましたし、自分自身の体力的な部分にあらためて自信を持つことができました。

Q、PK戦では落ち着いてコースを狙ったシュートでした。蹴る前にコースを決めていましたか。
A、シュートコースは相手ゴールキーパーの動きをみて冷静に判断しました。インテル ミラノに所属していた際も、ミラノダービーなどでPK戦のキッカーを務め、決めてきた経験があります。自信を持って臨むことができましたし、何より強い気持ちで勝負できました。


<塚川孝輝選手>


Q、本日の試合を振り返ってください。
A、90分で勝負をつけなければいけない試合でしたが、やはり天皇杯ということもあり、1点が大事になってくるなかで、追加点をとる重要性を身に染みて感じたので、次はもっと貪欲にいきたいと思います。また、平日の夜にもかかわらず、多くのファン・サポーターが来てくれていて、選手だけでは作り上げることのできない雰囲気を作ってくれていたのが印象的でした。

Q、右足を思い切り振り抜いた見事な得点でした。
A、得点シーンは、ディエゴ オリヴェイラ選手からパスを受けた時にも、再度ディエゴ選手が動き直してくれていて、渡邊凌磨選手も前にいたので最初はパスの選択肢を探していましたが、ゴールが見えたので振り抜いたら、うまく足に乗ってくれてブレ球のような軌道になり、それがゴールに入ってくれました。得点を取ることが僕の持ち味でもあるので、練習中のシュート練習やミニゲームなどでも決める時は決めることをしっかりと意識していきたいと思います。

Q、120分の試合を終えた後のPK戦でしたが、落ち着いて決めていました。
A、もう足に力が入らなかったのですが、気合でゴールに押し込みました。

Q、中3日で次はリーグの鹿島アントラーズ戦があります。意気込みをお願いします。
A、天皇杯とリーグ戦は別物なので、練習からしっかりと積み上げていけるようにやっていきたいと思います。(隣に座る小泉慶選手を見ながら)次節は小泉選手が古巣との試合なので、得点を決めてくれると信じて、僕は思い切ってプレーをして勝利に貢献できればと思います(笑)。


<寺山翼選手>


Q、クラモフスキー監督よりどのような指示を受けてピッチに入りましたか。
A、まず、この熱い一戦に上手く入れるかどうかに集中していました。僕自身が持っているもの、特長をしっかりと表現してこいとクラモフスキー監督から伝えられました。同点に追いつかれてしまい、2点目を獲りにいかなければならない状況で、チームとしてベクトルを前に向けること、ボランチの位置でボールを回収して攻撃に繋げることを意識しました。

Q、守備に追われる時間が長かったと思います。ピッチ内でどのようなバランスを取りましたか。
A、2点目を獲りに行くことと、相手に追加点を与えないことを意識しました。ダブルボランチを組んだ松木玖生選手とコミュニケーションを取りながら、攻守のバランス、セカンドボールの回収、攻撃時の繋ぎ役を状況に応じて、どちらかの役割を担うことを意識しました。特に追加点を奪うチャンスを狙いながらプレーしていました。

Q、浦和レッズ戦、今節のヴェルディ戦と、難しいゲーム展開で途中出場する機会が増えてきているなかで、スムーズに試合へ入ることができていたように見えました。
A、途中から出場することが多いなか、拮抗したゲームで途中からピッチに入る難しさは感じていますが、ファーストプレーを意識すること、僕自身の特長を出し切ることでプレーのリズムを作ることをここ数試合は意識しています。良いプレーを試合で表現できる回数も増えてきていますが、ポジショニングやミスも目立っています。更に突き詰めて、途中からではなく、先発出場ができるように成長していきたいと思います。

Q、PK戦でゴールを決めた後のパフォーマンスと熱量がとても印象に残りました。
A、ファン・サポーターのみなさんにゴールと勝利を届けることを意識しました。若干緊張はしましたが、ど真ん中に蹴り込むことは決めていました。しっかりと決めきり、東京のファン・サポーターのボルテージを最高潮にして、スウォビィク選手がPKストップできるように後押したいという想いが特に強かったです。


<木村誠二選手>


Q、試合の振り返りをお願いします。
A、前半は自分の持ち味を出して、相手をうまく抑えることができていました。良いプレーができていた手応えがありました。後半に入ってからはパスミスが目立ってしまい、相手フォワードに対して出遅れてしまい強くいけず、タメを作らせてしまったシーンもありました。少しのミスや細かい部分をクリアにしていかなければ勝ちは逃げていくと思っています。センターバックの選手として相手の攻撃に自由を与えないこと、ピンチの芽を摘むことが求められているので、練習から一つひとつ修正していきたいと思います。

Q、試合開始から集中した入りをしていて、時には攻撃の起点となるようなプレーも見られました。
A、延長戦に入り、最後の時間帯はピッチにいた多くの選手が疲労していましたし、無理にボールを繋ぐのではなく、時には簡単なプレーも大事になると思っていました。自陣後方からのロングフィードを上手く活用し、ディフェンスラインを押し上げることを試合終盤は特に意識していました。試合が進むにつれて、ヴェルディの前線の選手も交代し、フレッシュな選手たちを中心に得点を狙ってきていましたが、スピードで負けない、予測をしてチャンスの芽を摘むことを大事にしていました。

Q、スタジアムは独特な雰囲気に終始包まれていました。ピッチ上ではどのように感じていましたか。
A、平日の夜の試合にも関わらず、多くの方が会場に足を運んでくださいました。ヴェルディよりも東京のファン・サポーターの数が圧倒的に多かったこともあり、盛り上がりをピッチで感じていました。勝利の後押しを感じましたし、ファン・サポーターのみなさんと喜びを分かち合えたことは、率直に嬉しさを感じました。