REPORT 2026.9.29

9/29愛媛戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

マッチレビュー

アウェイのニンジニアスタジアムに乗り込んで迎えた今シーズンのJリーグ ヤマザキビスケット ルヴァンカップの1stラウンド2回戦。名称をリニューアルしたリーグカップ戦の初戦でFC東京が対戦するのは、明治安田J3リーグで現在2位につける愛媛FC。1stラウンドは延長戦、PK戦の結果で勝ち上がりが決まる一発勝負のトーナメントとなっており、VARは大会レギュレーションによってプライムラウンドからの導入となるためこの試合では採用されない。

長友佑都選手、橋本健人選手、本間至恩選手ら負傷者が増えてきた東京だが、こういう状況だからこそ総合力が問われる試合となる。加えて代表活動で複数選手が抜けるなか、松橋力蔵監督は愛媛戦に向けてフレッシュなメンバーも登録。一丸となって頂点をめざす覚悟を示す形となった。

ゴールキーパーは田中颯選手、最終ラインは右から室屋成、アレクサンダー ショルツ、稲村隼翔、石原広教の4選手が並び、ボランチは高宇洋選手と常盤亨太選手の組み合わせに。アタッカーは右に佐藤恵允選手、左にはリーグ戦前節の名古屋グランパス戦で豪快なドリブルシュートを決めた俵積田晃太選手が入り、2トップはマルセロ ヒアン選手と長倉幹樹選手がコンビを組んだ。

一方、ベンチには来年1月からのトップチーム昇格が決まっているFC東京U-18所属の田中遥大選手がトップチームの公式戦で初めてベンチ入りメンバーに名を連ねた。今月から青赤の一員となったダニ ゴメス選手、U-21 Jリーグで強烈なインパクトを残している田中希和選手も公式戦初のメンバー入り。また、愛媛戦当日に24歳の誕生日を迎えた安斎颯馬選手も“ゲームチェンジャー”として控えることになった。



ウォーミングアップ中にはゴール裏から『俺達は長友佑都を待っている』という手書きの横断幕が掲出された。石川直宏コミュニティジェネレーターが現役時代に前十字靭帯を断裂して長期離脱した際に復帰まで掲げられたメッセージが再び登場した。そして負傷離脱が発表された長友選手、橋本健選手、本間選手の早期復帰を願うコールが送られた。

1st―ケインの今季初弾で先制!

アウェイの肌寒いほどの気候のなか、スタジアムに鳴り響いたのは『カップを奪いとれ!掲げろ東京!』というチャント。“Jの聖杯”をめざして青赤の新たな戦いがキックオフした。

お互いにポゼッションを大切にするスタイルを掲げることもあり、立ち上がりからボールを握り合うような展開が続いた。東京は攻め込んだ後に即時奪回を狙ったプレスを仕掛け、セカンドボールを拾うことで押し込んでいこうとしていく。

だが、愛媛に中間ポジションでうまくボールを受けられ、うまくパスのルートを生み出されて主導権を握られてしまう。立て続けに危ないシーンを作られたが、田中選手のファインセーブなどでしのぎ切ると、一瞬のスキを突いて青赤が先制のゴールを沈める。

前半16分、左サイドでボールを持った高選手が空間を使った柔らかい浮き球パスを前線に供給。ここに走り込んだ佐藤選手がバウンドを合わせて左足で蹴り込みゴール! 押し込まれる時間帯が続いたなかでファーストシュートを得点に結びつけ、高い決定力で先手をとることに成功した。


リードを奪ったことで試合運びに余裕が出た東京。速攻と遅攻を織り交ぜながら相手陣内でのプレーを増やしていく。

だが、前半19分にアクシデント。キャプテンの室屋選手が左足を傷めて交代を余儀なくされ、右サイドバックに大森理生選手を投入することになった。

思わぬメンバー交代を強いられた東京だが、一度握った主導権は離さない。稲村選手が最終ラインから何度も鋭いスルーパスを送り込み、ヒアン選手、石原選手、俵積田選手の決定機を演出。センターバックの縦パスにサイドバックが抜け出すという印象的なアタックも含めて、鮮やかな攻撃を見せていった。

なかなか追加点が奪えない時間帯が続いたなか、守護神が立て続けのビッグセーブでチームを救う。前半40分にカットインからの鋭いシュートを左手一本で弾き出すと、直後の同41分には至近距離からの強烈な一撃を超反応でセーブ! 試合の流れを引き戻すようなプレーでゴールを守り切った。

前半はこのまま終了。高い決定力でゴールを奪い切った後はチャンスを決め切れない時間が続いたが、田中選手の連続セーブもあって1-0のスコアでハーフタイムを迎えることになった。

2nd―長倉の追加点で勝利を決めて3回戦へ

選手交代なく迎えた後半、いきなりビッグチャンスを作ったのは東京だった。

後半2分、ヒアン選手が右へ展開すると、佐藤選手が中央へ折り返したボールを長倉選手が左足で狙うも相手選手にブロックされてボールはクロスバーの上へ。続く同5分には右サイドに抜け出したヒアン選手のグラウンダーのクロスボールにゴール前で俵積田選手が詰めたが、わずかに届かずネットを揺らすことはできない。

その後も鋭いアタックで立て続けにチャンスを作っていく東京。後半9分にはカウンターからペナルティエリア内で長倉選手がシュート。これがブロックされてゴール前で浮いたところに石原選手が飛び込み、ヘディングで相手ゴールキーパーに競り勝ってゴールに流し込んだかと思われたが、これがファウルと判定されてノーゴールという悔しい結果となってしまう。

それでも気落ちせず攻め続けると、後半14分に待望の追加点を叩き込む。

石原選手のサイドチェンジを受けた大森選手がルックアップすると、狭いエリアに顔を出した長倉選手の足下へ正確なパスを供給。そのまま前方へ持ち上がった背番号26が右足のグラウンダーシュートで正確に逆サイドを射抜き、愛媛まで詰めかけた青赤ファミリーと歓喜を分かち合った。



 

後半29分には一気に3選手を交代。石原選手、長倉選手、俵積田選手に代えて安斎選手、仲川輝人選手、山田楓喜選手を送り込む。安斎選手は左サイドバックに、仲川選手は2トップの一角に、そして佐藤選手が左アタッカーに回り、山田選手が右サイドの攻撃的なポジションに入った。さらに後半42分にはヒアン選手を下げ、ゴメス選手を投入。期待のアタッカーが青赤での公式戦デビューを果たし、仲川選手と並んで最前線に入った。

終盤、チャンスをうかがいながら最終ラインでボールを回して時計の針を進めていく東京。後半45分には中盤で足を伸ばしたゴメス選手が相手のパスをカットすると、そのままスピードに乗って力強くドリブルで前進。フィニッシュまで持ち込むことはできなかったが、彼が持つ高い能力の片鱗を感じさせるプレーとなった。

2点のリードを保って迎えた5分間のアディショナルタイム、青赤ファミリーが『カップを奪いとれ!』のチャントから『眠らない街』の凱歌へ切り替えていくなかで、選手たちはボールをつないで時間を使いながら試合をクローズ。公式戦4試合連続となる無失点試合でしっかりと3回戦進出を勝ちとった。

松橋力蔵監督インタビュー

Q、愛媛FC戦の振り返りをお願いします。
A、(失点を)ゼロで抑えて勝ち進むことができて、今はホッとしています。また次に向けた準備をしていきたいと思います。

Q、今シーズン公式戦初ゴールを決めた佐藤恵允 選手のプレーの評価と、このゴールが持つ意味について教えてください。
A、正直に言って、まず彼はまだ本調子ではないと思っています。高い得点力を持っていますし、献身性はチームの中でも非常に素晴らしいものがあります。メンタルの部分でもチームをしっかりと引っ張ってくれる存在ですが、本来の姿はまだこんなものではないと個人的には思っています。ただ、こうした難しいゲームのなかでも得点をとって、自分たちをもう一回見つめ直す機会を作ってくれるところはさすがだなと思います。よくやってくれました。もちろんこれで波に乗ってほしいですが、本来の彼ではないということは彼自身が一番分かっていると思います。ゲームの中で自分のリズムや調子を早く掴みとってほしいと思っています。

Q、ビッグセーブを見せたゴールキーパーの田中颯選手のプレーについて教えてください。
A、ゲームの中で自分たちのすべてが良い状況ではなく相手のチャンスもあるなかで、彼は久しぶりの出場ではありましたが、日々のトレーニングでの姿勢がしっかりと発揮されていたと思います。あのような相手のビッグチャンスをしっかりとセーブすることで自分たちの流れに持っていきやすくなりますし、そういう雰囲気も生まれてくるので、今日の彼のプレーは非常に大きな意味を持っていると思っています。

Q、急遽右サイドで出場し、2点目の起点にもなった大森理生選手の評価について教えてください。
A、本来、彼にバックアップやゲームチェンジャーとして期待しているのは別のポジションですし、アクシデントがあった場合の右サイド起用の可能性についてはこれまでも彼に伝えていました。そこを想定したトレーニングがなかなかできていなかったことを考えれば、しっかりとこなしてくれたと思います。本来のポジションではないかもしれませんが、怪我人が出て難しい状況のなかでもこうした選手がゲームの中でしっかりと活躍し、役割を果たしてくれることは非常に心強いです。素晴らしいパフォーマンスをしてくれたと思っています。

Q、序盤は愛媛FCにボールを持たれる場面もありましたが、そこから背後を狙う動きで勢いを取り戻せた要因を教えてください。
A、今週の練習ではゴールキーパーと1対1の決定機を想定したトレーニングを行いました。この試合の想定はもちろんですが、多くのチャンスを作りながらも決め切れずにゲームが進んでしまう課題があったことと、ゴールを決めることで選手のメンタリティをポジティブで良い方向に運んでいける部分があったからです。そういうトレーニングをやってきたなかでの絵は、前半非常に多かったと思います。練習では結構決まっていましたが簡単には決め切れなかった。その点はまだ課題感がありますが、そういった狙いを出せました。愛媛にボールを持たれることも想定した守備について、トレーニングの中でしっかり目線を合わせる作業をしてきたなかで、途中から自分たちの中で改善できた部分があったのかなと思います。距離感も非常に近く密集して、出して入れてを繰り返す選択肢が常にあるのは愛媛の良さですし、90分間封じることは難しいです。我々が設定したとりどころを上回られる部分もありましたが、最後の最後で割らせなかったところは本当に評価できる部分です。ゴールキーパーも含めて最後のところをしっかりと抑えられたことが、このゲームの結果になったと思っています。

選手インタビュー

佐藤恵允選手

Q、ようやくゴールを決めました。ご自身で振り返ってもらえますか。
A、あの形はずっと高宇洋選手と練習でやっていた形だったので、やっと形になったなというのが感想です。

Q、高選手も「今日は佐藤恵允選手に決めてほしかった」という話をしていました。周囲からの期待も感じていましたか。
A、僕が全然決めていなかったので、みんなが「取らせてあげるよ」とか「そういうパスを出すよ」と、すごく気を遣ってくれていました。「さすがに決めないとな」という想いはありました。

Q、ルヴァンカップでの今シーズン初ゴールとなりました。ここから勢いに乗って、得点を量産していきたいですね。ゴールが決まった瞬間はどんな気持ちでしたか。
A、初ゴールが嬉しいというよりも、この試合の先制点を取れたことが素直に嬉しかったです。あまり流れが良くなかったので、そういう苦しいなかで点を取れたことの方が嬉しかったです。

Q、チームを救うゴールにもなったと思います。ご自身にとって、このゴールが持つ意味はいかがですか。
A、今シーズンは、ここからだなという感じです。ここで満足せずに、ここからもっと点を取っていかないといけないですし、それが10番の役割だと思います。また身を引き締めるゴールになりました。

Q、「まだまだ上げていかなければいけない」「まだまだできる」という言葉も受けていると思います。それについてはいかがですか。
A、期待してもらっているということだと思うので、しっかりとその期待に応えられるように、もっと成長してやっていかないといけないと思います。

田中颯選手

Q、試合の振り返りをお願いします。
A、勝てたことは良かったですが、前半も後半のように、もっと縦にも横にも相手を走らせてボールを保持したかったです。そこはもっと自分のところでうまくできたと思っています。

Q、相手に決定機をつくられた場面もありました。ディフェンスラインとの連携についてはいかがでしょうか。
A、説明することは難しいですが、変わらずに一日一日を過ごすだけだと思っています。ただ、あそこまで進入されて決定機を作られると、やられてもおかしくなかったですし、結果論だと思います。そういった意味では、前半からもっと僕のところで優位性を作って、後半のような試合展開に持っていきたかったです。稲村隼翔選手やアレクサンダー ショルツ選手という素晴らしい選手がいたので、もっとボールを動かして自分たちの時間を増やしたかったです。

Q、リーグ戦の名古屋グランパス戦の展開を踏まえ、どのような意識で試合に臨みましたか。
A、名古屋戦をベンチから見ていましたし、それに近い展開になるだろうと思っていました。相手がマンツーマン気味にきて自分のところに時間はあると思っていたので、自分が出たらうまくやりたいと思って臨みました。課題はありますが、少しそういうスタイルは見せられたのではないかと思っています。

Q、後半のチームの改善点と、ピッチ内でのコミュニケーションについて教えてください。
A、相手に関してはメンバー交代もあってギアが上がってきたと思います。稲村選手やボランチの選手と話して、もっとフリーの選手を作って優位性を持って前進していくようにコミュニケーションをとりました。もっとやらないといけないですし、松橋力蔵監督のサッカーをしっかりピッチで示すために、精度も上げないといけない。引き出しも増やす必要があると思っています。

Q、アクシデントにより大森理生選手が途中出場したなかで、最終ラインやビルドアップで意識したことはありましたか。
A、大森選手は、今日の試合を見て分かるように守備のところで貢献してくれましたし、ビルドアップのところでもコミュニケーションをとってうまくやれました。それが後半の得点にもつながりましたし、良いコミュニケーションがとれたと思っています。彼のところで時間があったので、後半は前向きの姿勢をうまく利用して、斜めのボールがいくつか入ったと思います。そこが得点につながったのは、彼にとってもチームにとってもすごくポジティブだと思っています。

Q、思い出のあるスタジアムでプレーした感想を教えてください。
A、本当に思い出のスタジアムなので楽しかったです。四国ダービーを何回も戦った場所なので、とても懐かしかったです。

Q、今後のルヴァンカップへの意気込みを教えてください。
A、ここからです。来週も試合がありますし、土肥洋一さんのように東京をルヴァンカップで優勝させられるように頑張ります。

Q、次の試合は天皇杯3回戦の湘南ベルマーレ戦となります。次の試合に向けての意気込みをお願いします。
A、今日は結果的に勝てたことは本当に良かったです。一喜一憂せずに良い過ごし方をして、すぐに湘南戦があるので、そこにフォーカスしてやっていきたいです。

大森理生選手

Q、イレギュラーな状況での途中出場だったと思いますが、そのなかでの手応えや課題を教えてください。
A、(試合への)入りのところは少し難しかったです。佐藤恵允選手だったり、アレクサンダー ショルツ選手だったり、中盤の選手も凄く献身的にプレーしてくれていましたし、僕のところでプレスに行った時も、佐藤選手や長倉幹樹選手がすごく反応してくれていたので、ショートカウンターの形にできた部分もありました。
ただ、攻めるところはチームとして課題がたくさん出ました。少しストレスというか、「全員でこうしよう」とか、戦い方も含めてこのままじゃいけないという話は、試合が終わってロッカーに入ってからすぐに出ていました。

Q、チーム全体としての受け止めも同じですか。
A、同じ感想です。サイドバックのところに怪我人が出てきているなかで、誰かがその穴を埋めなければいけない。本職ではないにしろ、そこで今日しっかりゼロに抑えたことは、一つの成果なのかなと思っています。こういうタイミングで出場することも、長いシーズンでは必要なことだと思います。

Q、本来はセンターバックですが、現在の役割についてどのように考えていますか。
A、今のこの状況で、優勝に向けて必要なピースになっていかなければいけないと思っています。ピッチに立つことが何より大事なので、チャンスがあればしっかりプレーできるようになっていきたいです。試合映像を見てもう一度整理して、どちらでもプレーできるようにしていきたいと思います。

Q、そのなかでアシストもありました。あの場面を振り返ってください。
A、突発的な出場だったので、自分としてはまずはシンプルにプレーしようと思っていました。そのなかで、前向きの状況でボールが自分のところに来て、状況的にフリーでした。サイドで1対1を作るというよりは、相手選手を引きつけられるような持ち方をしたかったので、少し内側を見ながらプレーしました。長倉選手が抜け切る前のところで、ゴール前の少し手前でタイミングを見ながら待っていてくれたので、「このタイミングかな」と思って出しました。あのスピードがなかったら、たぶんあんなに綺麗にはいかなかったと思いますし、結果的にゴールになって良かったです。

Q、苦しい時間帯もありましたが、最後までゴールを許さなかった守備面の手応えはいかがですか。
A、田中颯選手を中心に、最後の局面でしっかり身体を張ってブロックしたり、ゴール前で守ったりするところは東京のDNAだと思うので、そこはできていました。ただ、僕のなかではああいうシチュエーションが数多く発生するのは望ましいことではないですし、J1の試合でああいう場面を作られたらやられると、試合後もみんなで話していました。
もちろん、そのシチュエーションになった時に守りきる力も大事ですが、やっぱりそこまで持っていかれる回数を減らさないといけない。決定機を作られる回数を抑えきれなければ、いずれ決められてしまうと思います。

Q、すぐにまたカップ戦が続きます。次の試合に向けてはいかがですか。
A、 みんな分かっているように、こういうことは癖になってくると思うので、全員でやり切れるように準備していきたいと思います。