コンマ数秒の決断、交錯する幾何学──。その一瞬に宿る物語に迫る『THE MOMENT』。今回解き明かすのは、ジェフユナイテッド千葉戦で張り巡らせた伏線と戦術的駆け引きについて。
緻密に配置された伏線が、ラストシーンに向けて一気に繋がっていく──。まるで伏線回収の妙を描くミステリーのように、高宇洋がピッチ上に描いた戦術的企みは、美しく、そして鮮やかに結実した。
「全部がスーパーでした(笑)。特にゲームメイクに関しては良かったと思います。プレーしていても楽しかった」
今シーズン初勝利を飾ったピッチの上で、高宇洋は充実の笑みを浮かべていた。背番号8がタクトを揮い、中盤を支配するまさに独壇場だった。勝利だけが求められた一戦で、その頭脳は実に明晰に回っていた。
「まずはエリソン選手を守備に走らせたかった。相手の2トップを走らせながらどこかで隙間ができるな、と。前にスペースがあれば自ら運んでスルーパスを狙うことも意識していました」
相手2トップの死角──その“嫌がるエリア”にスッと姿を消し、静かに立ち位置をとる。ボールを引き出しては左右へと揺さぶり、相手の視線を釘付けにしていく。

この緻密な配役の裏には、最終ラインの稲村隼翔との戦術的駆け引きがあった。
「ヤン君(高宇洋)と遊び球をもう少し増やしたいと話していた。ただ、ヤン君が最終ラインに落ち過ぎると効果的ではない。そこを我慢して相手フォワードの背中にいさせて、自分とショルツがその脇をとりながら、ヤン君がいかにフリーでボールを渡せるかを意識していた」
後ろが我慢してパスコースを作り出し、高が相手の背後で“浮く”。その丁寧なセットアップ(伏線)が効いたからこそ、前半終了間際に象徴的なシーンが生まれた。
中盤でルックアップした高は、相棒の橋本拳人と絶妙な段差を形成して相手2トップの隙間を縫う。高が素早く顔を上げて前を向くと、相手守備陣がたまらずラインを下げるやいなや、鋭く切り裂く縦パスをドンピシャで差し込んだ。「スコンスコン空いていた」と振り返るその一閃は、相手の守備組織を瞬時に機能不全へと陥れた。
だが、この日はこうしたゲームメイクだけにとどまらなかった。クライマックスは、自らの足で手繰り寄せた。
「マジで決めました(笑)」
チームとして長らくの課題であったセットプレーから泥臭く、しかし必然のように叩き込んだ先制弾。ボランチの積極的なゴール前への進入が、喉から手が出るほど欲しかった今シーズン初勝利を引き寄せる貴重な決勝点となった。
「明治安田J1百年構想リーグの時は怪我も多かったので、オフから自分に何が足りないかを考えてきた。コアや筋トレ、練習量を意図的に増やして、試合でも少し張っているくらい追い込んでいます」
愚直に追い込み、原点回帰を果たした背番号8。ピッチの死角にたたずみ、戦術的な伏線を張り巡らせ、最後は自ら勝負を決定付けた。その巧みな筆致には脱帽するしかなかった。
(文中敬称略)


