マッチレビュー
ドイツの名門、ボルシア ドルトムントをMUFGスタジアム(国立競技場)に迎えての一戦。明治安田J1リーグの開幕を翌週に控えたFC東京にとっては、ファン・サポーターへのお披露目を兼ねた最終調整のゲームとなる。
ドルトムントは前日会見でニコ コヴァチ監督が示唆していたとおり、今夏のFIFAワールドカップ2026に出場した5選手がスタメン出場。ワールドカップの舞台2試合でピッチに立ったヴァルデマール アントン選手、4試合で1得点1アシストの成績を残したフェリックス ヌメチャ選手、室屋成選手とハノーファー96時代にチームメイトでもあったマクシミリアン バイヤー選手のドイツ代表トリオに加えて、オーストリア代表として3試合に出場したカーニー チュクエメカ選手、そしてスウェーデン代表として日本代表戦にも出場したダニエル スヴェンソン選手も起用し、プレシーズンの重要なゲームという位置づけを感じさせる構成となった。

迎え撃つ東京はゴールキーパーにキム スンギュ選手、最終ラインは右から室屋、アレクサンダー ショルツ、完全移籍で正式に青赤の一員となった稲村隼翔、橋本健人の各選手が4バックを編成。ボランチは高宇洋選手、橋本拳人選手がコンビを組み、アタッカーは右に背番号10を継承した佐藤恵允選手、左に新加入の本間至恩選手を配置。2トップにはマルセロ ヒアン選手と長倉幹樹選手をセレクトした。また、ベンチには育成型期限付き移籍から復帰した永野修都選手、浦和レッズから完全移籍した石原広教選手、同じく新加入の元デンマーク代表のニコライ ヴァリス選手がメンバー入り。新シーズン開幕に向けて各選手がどんなプレーを披露するのかが楽しみな一戦ともなった。
両チームとも『You’ll Never Walk Alone』をチャントに用いていることもあり、試合前には場内に同曲がフルコーラスで流された。また、この日は2026/27シーズンのユニフォームもお披露目。胸には日付と対戦カードが記され、パンツ背面には試合前に発表された新ユニフォームパートナー『Patties Food Group Pty Ltd.』の人気商品であるミートパイ『Four’N Twenty(フォーン トゥエンティー)』のロゴが“青赤デビュー”を果たした。
試合直前から突然の大雨に見舞われ、湿度が上がったなかで行われたゲームは、19:03にキックオフを迎えた。
1st―雷による試合中断も、集中を切らさず無失点で後半へ

立ち上がりからしっかりとつなぎながら運んでくるドルトムントが主導権を握る展開に。東京も両サイドバックを高く上げ、ボランチが最終ラインに落ちるビルドアップを見せていくが、序盤は押し込まれる時間帯が長くなる。
東京は前半12分にショートコーナーから中央へつないで室屋選手がミドルシュート。同19分にはカウンターに抜け出した佐藤選手が右サイドを抜け出し、軽快なステップのカットインから左足シュートを狙ったが、相手選手のブロックに阻まれてしまう。
前半23分、ドルトムントは負傷したチュクエメカ選手に代えて、ガンバ大阪から期限付き移籍中の山本天翔選手を投入していく。
ミドルブロックで構えて打破を狙う東京だが、ドルトムントもボールロストからのプレスバックが早く、奪ってから思うような攻撃の形を作ることができない。水はけに定評のあるスタジアムだが、強まり続ける大雨でボールの転がり方や足下の踏ん張りに影響が出始める。
まずはカウンターで活路を見出したい東京は前半31分、佐藤選手がロングボールから右サイドへ抜け出し、相手との競り合いでいったんはルーズボールになるも素早い反応でボールを再奪取。ここからヒアン選手がカットインして左足で狙ったが、惜しくも枠を捉えることはできなかった。
前半33分、大雨が降り続く状況下かつ雷が確認されたことを受け、約25分間に渡って試合が一時中断された。

再開直後からアグレッシブなサッカーを見せる東京。高い位置でのボール奪取から本間選手が右足で狙うなどチャンスを増やしていく。だが、ドルトムントも即時奪回への意識が強く、強度の高いプレスバックで東京に自由を与えてくれない。東京が攻め込んだあとのカウンターには鋭さに加えて、一枚剥がして持ち上がる巧さも。東京も素早い予測からのカットを見せるなど、最後の最後でやらせない守備を披露してタイムアップ。お互いにスコアを動かせないままハーフタイムを迎えた。
2nd―大幅にメンバーを入れ替えて押し込むもノーゴールに
親善試合のレギュレーションを利用し、ハーフタイムにボランチコンビ以外の9選手を入れ替えるという大幅な選手交代を敢行した力蔵トーキョー。後半はゴールキーパーに田中颯選手を送り込み、最終ラインは右から石原、大森理生、森重真人、バングーナガンデ佳史扶の4選手に総入れ替え。アタッカーは左に俵積田晃太選手、右に山田楓喜選手。そして2トップは仲川輝人選手、ニコライ ヴァリス選手の組み合わせに変更した。

注目のヴァリス選手がいきなりあいさつ代わりの左足シュートを見舞うなど意欲的な立ち上がりを見せたが、やはりドルトムントの切り替えが早く、徐々に押し込まれる展開になってしまう。後半9分にはクロスボールを供給され、ペナルティエリア内で跳ね返しながらルーズボールを拾われ、わずかに生まれた時間とスペースを突かれてファビオ シウバ選手に蹴り込まれて失点。先制点を許してしまった。
攻撃に変化を加えたい東京は後半19分、中央で角度をつけながらテンポ良く縦につないだボールに仲川選手がフリーで抜け出してシュート。だが、ゴールキーパーとの1対1を決め切ることができず、試合を振り出しに戻すことはできない。
後半20分には橋本拳選手に代えて永野選手を投入。FC東京U-18からトップチーム昇格後、ガイナーレ鳥取、藤枝MYFCと育成型期限付き移籍を続けてきた背番号20にとっては念願のトップチームデビューとなった。
佳史扶選手の力強いドリブル突破などで見せ場を作っていた東京は後半26分、縦パスを差し込まれたところに森重選手が出足の良いカットを見せると、そのままカウンターを発動。俵積田選手のラストパスに再び仲川選手が抜け出して右足で狙ったが、相手ゴールキーパーに阻まれて好機を活かすことができない。
カウンターから良い形を作り始めた東京は同32分、佳史扶選手のフィードから仲川選手が落とし、ヴァリス選手がワンタッチでゴール前に送ったところに山田選手が詰めてネットを揺らす。だが、途中でヴァリス選手がオフサイドポジションにあったとしてノーゴールに。得点は認められなかったが、鮮やかなダイレクトプレーに可能性を感じさせるプレーでもあった。


後半35分には高選手に代えて菅原悠太選手を投入してボランチに送り込む。
“俺たちの国立”で反撃を期す東京は後半40分、俵積田選手がペナルティエリア内で鋭くインターセプトを狙い、相手と交錯するもノーファウルの判定。ペナルティキックを得ることはできなかった。同44分には仲川選手が倒されて得た直接フリーキックのチャンスを山田選手が得意の左足で狙うも、ボールはバーの上へ外れてしまう。
2分間のアディショナルタイムにも同点ゴールを決めることはできず、試合は0-1の敗戦。ドイツの名門に対して大きく選手を入れ替えながら積み上げてきたものを見せることはできた。そしてドルトムントが見せた強度の高さや切り替えの速さなど参考になる部分も多いゲームとなった。この試合で見えたものを糧にしながら、リーグ開幕まで最終調整の一週間を経て、いよいよ青赤軍団が新シーズンの開幕戦に向かう。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK キム スンギュ(後半0分:田中颯)
DF 室屋成(後半0分:石原広教)/稲村隼翔(後半0分:森重真人)/アレクサンダー ショルツ(後半0分:大森理生)/橋本健人(後半0分:バングーナガンデ佳史扶)
MF 高宇洋(後半35分:菅原悠太)/佐藤恵允(後半0分:山田楓喜)/橋本拳人(後半20分:永野修都)/本間至恩(後半0分:俵積田晃太)
FW マルセロ ヒアン(後半0分:ニコライ ヴァリス)/長倉幹樹(後半0分:仲川輝人)
MANAGER
松橋力蔵
GOAL
―
<ボルシア ドルトムント>
STARTING Ⅺ
GK パトリック ドレヴェス
DF ヴァルデマール アントン(後半14分:ジョアン ガドゥ)/ダニエル スベンソン(後半14分:ミゲル アジェ)/ルカ レジアニ/ロメオ リッター(後半0分:ヤン ルカ リードル)
MF ジョーブ ベリンガム/フェリックス ヌメチャ(後半0分:エンツォ ドゥアルテ)(後半41分:ジャスティン レルマ)/マクシミリアン バイヤー(後半14分:ヤン コウト)/カーニー チュクエメカ(前半23分:山本天翔)(後半24分:アイマン アジル)/サムエレ イナシオ(後半14分:マシス アルバート)
FW ファビオ シウバ(後半14分:セール ギラシ)
SUBS
GK シラス オストルジンスキ/アレクサンダー マイヤー
DF アルムゲラ カバル
MF アルネ ヴェッセルス/トム ファウスト/マルワン ミルザ
MANAGER
ニコ コヴァチ
GOAL
後半9分:ファビオ シウバ
松橋力蔵監督インタビュー

Q、試合の振り返りをお願いします。
A、失点のシーンが非常に悔しいです。譲り合ってしまったことで、相手がボルシア ドルトムントでなくとも絶対に失点になりますし、あのような軽い失点があるうちは、チャンピオンには到底なることができないと思います。
Q、決定機も多かったと思います。
A、決定機が多くても勝てません。点を決めなければ勝てないので。点を決めて勝点3に繋げないと優勝はできません。そこはチーム全員に求めていかなければいけませんし、そこをもっともっと高めていくために日々を過ごさないといけないと思います。
Q、新戦力の評価をお願いします。
A、周囲のみなさんは親善試合という部分もありますし、ドルトムント相手ということで、おそらく色々なものを多く見積もって選手を見てくださっているとは思います。そういった意味では、ニコライ ヴァリス選手はチームに合流してからすぐにフィットしていました。さらに、どういう組み合わせがベストなのかはまだまだ探りつつも、シーズンを通していけば必ず中心的な選手になっていく可能性が高いと思っています。非常に良いプレーをしてくれたと思います。
Q、いよいよ開幕まで1週間となりました。コンディションを含めていかがですか。
A、本当に日々を大事にしなくてはいけないと思っています。見据える先は一つですし、目標はしっかり決まっているので、そこを見据えたなかでの厳しさもあるかもしれませんが、良い習慣を持って日々を過ごしていく必要があると思います。選手たちはそれをしっかりとやってきてくれています。そういう日々を過ごしてきたなかで、今日のあのような失点だったので、なおさら悔しいです。なぜここで出るのかなと。これまではなかったので、相手がJリーグのチームだから、あるいはドルトムントだから仕方ないではなく、そこをしっかり詰めなければいけないと思います。
Q、失点に関しては、連携のミスなのか、集中力を欠いてしまったのか、どのような問題点があったとお考えですか。
A、様々な問題点というか、選手同士では「譲り合ってしまった」というような話は出ていましたが、あそこは譲り合う場面ではないと思います。極論ですが、お互いがクラッシュする可能性や、スライディングして止める可能性、身体を張って相手のボールを奪おうとする可能性もありました。その上でもう1本パスを出された時に次の選手が反応して繋げれば、防げる可能性は高くなると思いますし、もう一歩頑張って不利な状況でもゴールマウスから遠いところにボールが行けば、失点の可能性も減っていくと思います。最後ゴール前では、いかにゴール方向へボールを蹴らせないかという、当たり前のことをしっかりやらなければいけないと思います。
Q、そういったアラートな状態にできているかどうかも含め、開幕1週間前というタイミングで、監督が求める基準はもうちょっと高いところにあったということでしょうか。
A、選手も十分集中してくれていたと思います。集中力がないということは絶対にありません。ですが、あのような間や隙というのはゲームで作ってはいけないですし、我々は逆にそこを突いていかないといけない。それを相手に渡してしまったら、ゲームも難しくなると思います。もっとアラートにというよりも、当たり前のことを当たり前にしっかりやらなければいけません。
選手インタビュー
ニコライ ヴァリス選手

Q、FC東京でのデビュー戦となりました。振り返りをお願いします。
A、本当に素晴らしい雰囲気のなか、チームメイトと一緒に試合ができたのは本当に良かったと思います。これをさらに良くしていきたいと思っています。ゴールを決めたかったですが、残念ながら決められませんでした。
Q、試合前にはファン・サポーターから“ニココール”もありました。
A、本当に素晴らしい歓迎をしていただきました。FC東京のファン・サポーターのみなさんが素晴らしいことはいろいろな方から聞いています。ファン・サポーターの方々に良いプレーを見せていきたいです。
Q、あらためて、日本サッカーの印象をどう感じていますか。
A、スピードがあったり、ファーストタッチが素晴らしかったり、技術力の高い選手がいるということは、以前デンマークに所属していたチームにも日本人選手が在籍していたので分かっていました。ただ、あらためて本当に素晴らしいサッカーをしている印象を受けました。早く慣れて、良いプレーをしていきたいです。
Q、日本の暑さには慣れましたか。
A、来日前から日本の暑さについては聞いていました。トレーニングを通してなるべく慣れようとしていました。「慣れたかな」とも思いましたが、やはり試合は別物だなと感じました。ただ、これを言い訳にはできません。なぜなら、他の選手たちも同じ条件でプレーしているからです。
Q、今日の試合ではチームメイトとの良いコンビネーションもありました。
A、チームメイトとの連携をもっと良くしていきたいです。選手の特長として、2タッチ以内でプレーすることが多いと感じました。もっと連携を高めていかなければいけません。残念ながら今日は得点できませんでしたが、これからさらにより良くなっていくと思うので、よりチームメイトとの連携を深めていきたいです。
本間至恩選手

Q、試合の振り返りをお願いします。
A、なかなか対戦できない相手と今日試合をやらせてもらって、本当に相手選手の質の高さを感じました。ボールをとれそうでとれない球際の部分など、日本ではあまり味わえない感覚で、すごく刺激になりました。シュートを1本決められればというところで、迷いが生じてあんな形になってしまいましたが、試合の中断明けから中央に入っていって何度かボールを受け、良い形で繋いでチャンスも作れたと思います。三人目の動きのところでも、左サイドで長倉幹樹選手と橋本拳人選手で三人の良い崩しもありましたし、徐々にそういう場面を増やしていければいいなと思います。ただ、あのシュートを決めるか決めないかがリーグ戦では大事になってくると思うので、そこは本当にこだわって練習していきたいです。
Q、中央の場面で、しっかりとコースを空けてボールを受けられたというのも、これまでやってきたことが表現できたのではないですか。
A、そうですね。橋本拳選手が連動した守備でしっかり相手を潰してくれたところで、ああいうチャンスは本当に決め切っていかないと勝てないと思います。ずっと自分自身の課題でもありますが、あそこを決め切れるような選手になっていければと思っています。
Q、最初に「相手との差を感じた」とおっしゃっていましたが、具体的にどのような部分で感じましたか。また、それを今後どのようにチームに活かしていきたいですか。
A、一番すごいと思ったのはボランチの選手ですね。ジョーブ ベリンガム選手とフェリックス ヌメチャ選手。本当にすごい選手でした。ボールが奪えない。高選手や橋本拳選手があれだけ激しくプレスにいっても懐が深いですし、「あれが世界なんだ」と感じました。彼らを圧倒するバイエルンミュンヘンなどは、一体どういう次元でやっているんだろうとも思いました。
Q、相手はプレスバックも含めてかなり強度が高く、意識高くプレーしていました。もう少し自分たちの形を作って攻めたかったのではないかと思いますが、プレーしている感覚としてはいかがでしたか。
A、雨で中断するまでの最初の30分間は、あまり自分たちの形は出せませんでした。ただ、やられた印象もないというか、しっかりブロックを引いて守ることはできていたので、そこは自信を持っていいんじゃないかと思います。中断が明けてから何度か良い形でボールを動かせていましたし、前半が終わるまでの15分間は相手を押し込めていたと思います。ああいうプレーが最初からできるチームになれれば、得点もたくさん入るはずです。そこはチームとして、もう少し詰めていければいいなと思います。
Q、開幕までの1週間は、コンディションを含めた最終調整になると思います。どのようなところを詰めていきたいですか。
A、チームとしての連携も大事ですが、やはり一人ひとりがコンディションを上げて、メンタル的にも“戦う姿勢”を持つことが重要です。毎試合それを続けていけば、良い結果は積み上がっていくと思うので、まずはみんなが自分自身にフォーカスしてやっていくこと。そうすればチームとしても徐々にうまくいくと思いますし、しっかりとコンディションを上げていきたいです。
俵積田晃太選手

Q、まずは率直な感想から聞かせてください。
A、失点のシーンはチームとして守り切らなければいけなかったシーンでしたし、自分自身も相手に重心をずらされてクロスボールを上げられてしまったので、もっとボールホルダーに対して強くいきたかった。決定機もたくさんあったので、決め切れていれば全然勝てた試合だったのではないかと思います。
Q、うまく中に入ってカットインしていく得意な形も何度か見せられたと思います。
A、手応えはすごく良かったと思いますし、チャンスも作れていたので、これを自信にしてシーズンの開幕に向けて頑張っていきたいです。
Q、ここからの1週間、どのような準備や気持ちの作り方をしていきたいですか。
A、ボルシア ドルトムントという素晴らしいチームと戦えたので、この経験を練習からチームで意識していくことが大切だと思います。


