マッチレビュー
人事を尽くして天命を待つために──。ついにラスト2試合になった。今節の浦和レッズ戦で勝利することが、最終節での逆転優勝に夢をつなぐ。翌日に試合を控える首位の鹿島アントラーズとの勝点差は4。先手を打って差を詰め、少しでもプレッシャーを掛けていきたいゲームとなる。
そのために求められるものは、目の前の強敵を打ち破ること。田中暫定監督の就任から4連勝を収めている浦和を乗り越えていくことが必要だ。その一戦に松橋力蔵監督が選んだスターティングイレブンは、ゴールキーパーにはキックオフの直前に韓国代表として4大会連続のFIFAワールドカップ出場が発表されたキム スンギュ選手。最終ラインは右から室屋成、アレクサンダー ショルツ、稲村隼翔、橋本健人の4選手が並んだ。ボランチは橋本拳人選手と常盤亨太選手がコンビを組み、アタッカーは右に佐藤恵允、左に遠藤渓太の両選手を起用。最前線はマルセロ ヒアン選手と佐藤龍之介選手が2トップを組んだ。また、試合前日にFIFAワールドカップの日本代表メンバー入りが発表された長友佑都選手がベンチに入り、俵積田晃太選手が昨年末の受傷から約半年ぶりとなるメンバー入りを果たした。
ぎっしりと埋まったアウェイ側のゴール裏スタンドはウォーミングアップから各選手のチャントを響き渡らせ、選手入場では大声援と無数の青赤フラッグでチームを鼓舞。こちらも素晴らしい雰囲気で選手たちと一戦必勝の姿勢を打ち出してキックオフを迎えた。
1st―焦れずに仕掛け続け、勝負の後半戦へ
序盤はボールをつなぎながらチャンスを狙っていく東京。最終ラインからビルドアップしたボールを左右に散らしてサイドバックがスピードアップを図り、そこからクロスボールを上げたりこぼれ球を拾って二次攻撃を仕掛ける。
対する浦和は4バックを基軸にしながら、攻撃時に左サイドバックの長沼選手をインサイドハーフやウイングに近い位置へ押し上げる可変システムを採用。東京のストロングポイントでもある右サイドの縦関係も含めて、ここを使わせないようにしながら、どうやって主導権を引き寄せていくかが問われるゲームとなった。
お互いに最終ラインからつなぐ形をベースにしながら、ロングボールを織り交ぜていく序盤。東京としてはなかなか攻撃をスピードアップさせられない展開が続くなかで時間が経過していった。
それでも東京が見せる全員攻撃・全員守備の意識は高く、厚みのある攻撃で押し込んだあとにカウンターを浴びそうになったシーンでも稲村選手が浦和の攻撃を遅らせ、そこに橋本健選手が全力でプレスバックしてボールを奪い返すなど奮闘。チーム一丸となって焦れずにチャンスメイクを続けていく。

前半35分には右サイドで得たコーナーキックからビッグチャンスを生み出す。橋本健選手がショートコーナーのリターンを受けて左足で鋭いクロスボール。ここに稲村選手が飛び込んで頭で合わせたが、しっかりとニアからコースを変えてファーに流したボールは左ポストを直撃。決定的なシーンとなったが、惜しくも先制のネットを揺らすことはできなかった。
さらに前半44分には中盤で巧みに身体を入れ替えてインターセプトした常盤選手がヒアン選手とのパス交換でゴール前へ侵入して左足シュート。しかしこれはゴールの上へ。良い守備から良い攻撃を具現化したが、これもネットを揺らすまでには至らず。前半はスコアレスのまま終了し、勝負は後半に委ねられることになった。

2nd―白熱のPK戦を制し、EASTグループ首位争いに望みをつなぐ
東京はハーフタイムの交代はなく、一方の浦和は先手を打って2選手を交代。前線の選手を入れ替えて攻撃にテコ入れを図ってきた。
逆転優勝への可能性をつなぐためにも、まずは先制のゴールを奪いたい東京。後半5分には左サイドでスピードアップした遠藤選手、ドリブル突破から狙ったヒアン選手、そして同51分にはゴール前でのこぼれ球に橋本健選手が強烈な右足シュートを放つなど、ゴールへの意欲を前面に押し出し、立て続けにチャンスを作り出して迫力ある攻撃を見せていく。
さらに同14分にはビルドアップから縦パスを差し込んでヒアン選手が前向きに持ち上がると、そこからのラストパスに抜け出したのは遠藤選手。しかし、ファーストタッチがわずかに長くなってしまいシュートを打てず。こぼれ球を折り返した橋本健選手のクロスボールも相手に阻まれてしまう。

浦和は後半18分にふたたび攻撃の選手を交代し、圧力を強めようと先手を打ってくる。一方、じっくりと戦況を見極めてきた松橋監督が動いたのは同25分。ヒアン選手に代えて仲川輝人選手、そして遠藤選手に代えて俵積田選手をイン。俵積田選手は昨年11月9日のFC町田ゼルビア戦以来となる公式戦のピッチとなった。

その俵積田選手がいきなり魅せる。投入直後のプレー、左サイドで吸い付くようなボールタッチから自慢の高速ドリブルを見せてコーナーキックを獲得。このこぼれ球を橋本健選手が鋭く狙ったが、これは惜しくも相手ゴールキーパー西川選手のファインセーブに阻まれてしまう。
何としても90分間での勝利を手にしたい東京。ゴール裏からは「情熱をぶつけろ! 優勝掴みとれ!」の大チャントが鳴り響き、残り15分に青赤一丸となって勝点3をもぎとりにいく。
その想いに呼応するかのように東京が攻勢を強める。後半35分には俵積田選手が左サイドからカットインして右足シュート。同38分には高い位置からの連動したプレスでショートカウンターを仕掛ける。さらに同41分には左サイドでインターセプトして俵積田選手がそのまま持ち上がり、ピッチを横断するようなドリブルで右前方へ展開してコーナーキックを獲得する。
東京の猛攻は続く。さらに後半43分には室屋選手が斜め方向に差し込んだパスから橋本拳選手が仲川選手とのパス交換でゴール前へ抜け出してシュート。さらに90分には途中出場したばかりの山田楓喜選手が強烈に左足を振っていくが、これは西川選手が横っ飛びでセーブ。3分間の後半アディショナルタイムにも佐藤恵選手が力強く縦への突破を図るなど果敢に攻め続けたが、それでもネットを揺らすことができずにホイッスル。激戦の決着はPK戦へともつれ込むことになった。
アウェイ側のゴールを使って行われることになったPK戦。まずキム スンギュ選手が浦和の一人目、松尾選手のキックを横っ飛びでセーブ。だが、東京も一人目の佐藤恵選手が西川選手に止められてしまう。ともに二人目が決めたあと、浦和は三人目の根本選手が左ポストに当てて外すと、東京は山田選手が強烈な左足キックを突き刺してリードを奪う。しかし、東京五人目のキッカーとなった室屋選手が放ったシュートはバーを越えて決着をつけることができない。
その後、三人ずつが決め合った九人目、スンギュ選手が根本選手のキックをファインセーブ! しかし、東京はショルツ選手が西川選手に止められ、ここでも勝利を決められない。

十一人目で両ゴールキーパーがともに決め、PK戦は2巡目へ突入する。迎えた十三人目、浦和は渡邊選手のキックがクロスバーをかすめて外れると、東京は橋本健選手が決めて勝利。両チーム合わせて26選手が蹴る大熱戦のPK戦を制し、アウェイで勝点2を獲得した。
これで1位の鹿島アントラーズとの勝点差を2に縮め、最終節にEASTグループ首位に立つ望みをつなげるかどうかは、明日の日曜日に控える鹿島アントラーズの結果待ちとなった。試合後、ロッカーへ引き上げる選手たちの背中には、逆転劇を信じるゴール裏の青赤ファミリーから「情熱をぶつけろ!優勝掴みとれ!」のチャントが送られ続けた。

松橋力蔵監督インタビュー

Q、試合を振り返ってください。
A、本来欲しかった勝点に対しては、一つ足りないゲームになってしまいましたが、本当に選手は良い準備をしてくれましたし、その準備のなかでの表現としても、もちろん完璧とはいかないまでも、しっかりと目線を合わせたなかで、攻守においてしっかりやってくれたゲームになったと思います。
PKも2度、早めに決められるところはありつつも、やはりああいう展開でも折れずに、最後に勝ちを手繰り寄せたということは非常に価値のあるものだと思っています。本当に素晴らしいゲームをしてくれたと思っています。
Q、最後に攻撃をさらに強化する部分が少し足りなかったようにも見えました。どのように考えていましたか。
A、前線の選手がほとんど変わるなかで、まず左に入った俵積田晃太選手には、やはり個人の力で崩すというよりも、一人、二人と彼に寄せ付けることによって、そのスペースをどのようにうまく使っていくか、という狙いがありました。相手の最終ラインの守備について、我々がリハーサルしてきた形というものはしっかり出ていたので、最後にそこを仕留めるところが後半になって少しずつ出てきた部分はあったのですが、仕留め切れなかったことで、少し難しくなってしまいました。
トップに入った選手に関しては、攻撃というよりも、やはり守備のところのタスクを重視しました。もう少しプレスの強度を高めること、そこでの迷いから相手のロストを誘発して、我々の得意なショートカウンターにどう持っていけるかというところです。なので、高さはそれほど必要としてはおらず、機動力を要する選手を選びました。決して身体は大きくない仲川輝人選手ですけれども、しっかりとそういうところでボールを握るとか、相手の背後でボールを受けるとか、そういうところを彼のタスクとして与えたなかで非常に表現してくれたと思っています。もちろん、もう1枚、2枚、3枚と、後ろの選手の交代も含めて、もう少し圧力をかけるということも考えつつも、時間帯やプランというところの難しさがありました。
普段は右サイドを主戦場としている山田楓喜選手に関しては、非常にアイディア豊富で技術の高い選手ですので、今週は相手の状況も踏まえたなかで、真ん中のところで、フリーマンではないですけども、いろいろなところに動きながら起点になっていくという役割を与えていました。そこも、オープンなゲーム展開になった後で、しっかりと表現してくれたと思っています。また、カウンターを受けやすくなる傾向も高かったので、そこをしっかりと潰して、もう一回自分たちにテンポを握り返すという意味でゲームに入ってもらいました。
Q、日本代表に選出された長友佑都選手が今日は出場しませんでしたが、理由を教えてください。
A、戦術的な部分です。もちろん、我々がリードしたなかでどうゲームをクローズさせるかというところでの交代は頭にはありました。ただ、今日は必ずしもそうする必要がある状況ではなかったので、そこまで大きく変える必要はないと考えていました。そういう意味では、戦術的な理由として今回はスタメンではなく、ゲームチェンジャーとして入ってもらった、というのが理由です。
Q、PK戦も含めて、ゴールキーパーのキム スンギュ選手も素晴らしい活躍だったと思いますが、監督から見て今日の彼のプレーはいかがでしたでしょうか。
A、もう、本当に素晴らしいです。「素晴らしい」の一言です。
選手インタビュー
キム スンギュ選手

Q、PK戦を振り返ってください。
A、こんなに長いPK戦は初めてでしたし、自分たちにとって本当に勝点が必要な状況だったので、勝つことができてまずは嬉しく思っています。今シーズンはPK戦が多かったので、相手も自分を分析していましたし、自分も相手を分析していました。心理戦の部分で負けないように考えていましたし、相手も自分のテンポを分かっているので、少しずつテンポを変えながらプレーしました。
Q、ご自身がキッカーをつとめる場面もありました。緊張はありましたか。
A、蹴るのは初めてだったので少し緊張しました。ですが、緊張していないように見せようと思いながら蹴りました。
Q、試合全体についてはどのように振り返りますか。
A、浦和レッズは監督が代わってプレーの仕方も変化していましたし、良くなっている部分もあったので、相手がやりたいプレーに対して、自分たちは守備の部分でしっかりと準備してきました。無失点で試合を進めながら、攻撃の部分でもチャンスはあったと思っています。ただ、そういうチャンスを生かして決め切れなかったところで、結果的に90分での勝利を持ってくることができなかったと思います。
Q、リーグ終盤戦、鹿島アントラーズを追いかける状況についてはいかがですか。
A、鹿島アントラーズの試合が明日(5/17)ですので結果はまだ分からないのですが、僕たちは勝点を積み上げながら追いかける立場なので、最後まで勝つために努力するしかないと思っています。
橋本健人選手

Q、本日の試合の振り返りをお願いします。
A、90分で勝利したかった、というのが本音ですが、最低限の結果を得られたと思っています。今日のミッションとしては勝点3を持って帰ることではありましたが、自分たちにできることはできたと思っています。
Q、非常に引き締まったゲームだったと思います。ピッチ上ではどのように感じていましたか。
A、チャンスは多かったと思っていますが、仕留め切る“質”の部分で足りないところが多くありました。次への課題として捉えています。
Q、勝たなければいけない一戦にむけて、チームとしてどのような準備をしてきましたか。
A、松橋力蔵監督から「サッカー人生を懸けろ」という言葉ももらいました。勝たなければEASTグループ首位の可能性が無くなることは理解していましたし、この一戦に向けた熱量が勝敗に影響したと思っています。チームとしてやるべきことを表現できたと思っています。
Q、橋本健人選手自身も惜しいシーンがありました。
A、もっとそのようなシーンを作りたいですし、もっとできると思っています。自分自身の課題として向き合っていきたいです。
Q、白熱のPK戦でした。こちらの振り返りもお願いします。
A、とても長かったですね。個人としてもPK戦で二度蹴ることは初めてでしたし、いつもとは違った駆け引きがありました。“ここで決めれば勝負が決まる”というシーンで、相手ゴールキーパーも真ん中には蹴らないだろうと動く想定で助走に入ったのですが、西川選手もギリギリまで動かなかったので、蹴る寸前で少しだけ右にズラしました。キーパーの足の動きを見て、反射的に蹴ることができたと思います。
Q、次節、鹿島アントラーズ戦への意気込みをお願いします。
A、明日の鹿島の結果は僕らにはコントロールできませんし、その結果どうこうは関係なく、今シーズンの東京の強さを証明するために鹿島相手に90分で勝利する姿をファン・サポーターのみなさんにお見せしたいです。
俵積田晃太選手

Q、今シーズン初出場でしたが、どのような気持ちで試合に入りましたか。
A、おそらく半年ぶりの試合だったので、とにかくガムシャラに、初心に戻って、とにかくゴールに向かっていこうというふうに考えていました。
Q、監督からはどんな言葉をかけられましたか。
A、もう「楽しんでこい」と言われました。
Q、今日の試合で復帰するというのは、いつ頃から見えていたのでしょうか。
A、キャンプが終わって、第2節くらいから復帰する予定だったのですが、回復が長引いたり他の部分をやってしまったり、いろいろあってこの時期になりました。
Q、過去にはなかなか勝つことができなかった埼玉スタジアム2002で、近年は勝利することができています。
A、このスタジアムだから勝てない、というようなジンクスがあるチームでは優勝することができないと思っています。どんなスタジアムでも勝てるようなチームにならなければいけないと思っています。
Q、試合に入った瞬間からかなり仕掛けていました。どのような意識でプレーしていましたか。
A、もう、ゴールに向かおうとだけ思っていました。
Q、久々の公式戦でしたが、瞬発的なプレーを最初から出す難しさはありませんでしたか。
A、自分はそこまで考えていなかったです。監督からも「楽しんでこい」と言われていましたし、自分の特長をチームメイトが分かってくれているので、どんどん積極的に行こうという考えでした。最初のプレーも、体が勝手に、瞬発的に動いたという感じでした。シュートも脚を振って狙っていったんですけれど、本当はああいうところを決めていかなければいけないので、どんどん改善していきたいと思います。
Q、俵積田選手が離脱している間にチームが結果を出してきたなかで、この試合ではどう貢献したいと考えていましたか。
A、昨年は苦しみましたし、その状況のなかでいろいろな選手が入ってきて、今年はここまで勝てているのは非常に素晴らしいことだと思っています。だからこそ、自分が入った時にどういうふうにプレーしようかなというのはずっと考えていました。
この期間、筋トレにはすごく目を向けてやっていました。食事から全部、本当に自分の身体をイチから作り直してこの半年間やってきたので、もっと進化した姿を見せたいと思っています。
Q、PK戦のキッカーとしては、かなり緊張しているようにも見えました。
A、はい。ちょっと緊張し過ぎて、めちゃくちゃ息切れしている状態みたいな感じだったんですけど、とりあえず決められて良かったなと思います。
Q、今日の試合で勝点を積み上げたことで、鹿島アントラーズにもプレッシャーをかけられたのではないでしょうか。
A、そうですね。そのプレッシャーを感じさせながら、他力にはなりますけど最後まで自分たちが勝っていきたいと思います。





