COLUMN 2026.3.06

“新国立男”はオレだ|佐藤恵允選手

“俺たちの国立”で行われる今節の横浜F・マリノス戦。開幕ダッシュに成功して3連勝を収めながら前節で初めての敗戦を喫した青赤にとって、優勝をめざすために是が非でも勝利が必要な試合となる。

躍進の原動力となりながら無得点に終わっている佐藤恵允にとって、今節は心に引っかかっている“棘”を抜き、ここまで溜め込んだものを一気に晴らしたいゲームとなる。あの悔しさを乗り越えて、青赤に歓喜を呼び込みたい──そう強く誓う背番号16の想いとは。

あの悔しさを越えていけ

ふとしたときに、今でも思い出す。あの悔しさだけは絶対に忘れることはできない──。

国立競技場で行われた昨シーズンの天皇杯準決勝、FC町田ゼルビアとの激戦は延長戦にもつれ込む展開の末に東京が苦汁をなめることになった。ドイツ帰りの青赤1年目、タイトル獲得を一番の目標としてきた佐藤恵允にとっては、悔やんでも悔み切れない結果となってしまった。試合後、彼の目に光るものがあったのは記憶に新しい。

「唯一残されたタイトル、みんなで狙っていたタイトルだったので、今でも悔しさは残っています。誰かに言われなくても自然と思い出すくらいに。俺はタイトルを獲るために東京に来たし、あの悔しさを味わって、このチームで優勝したいという気持ちがあらためて強くなった」

屈辱の敗戦から顔を上げ、本当の意味で“優勝にふさわしいチーム”をめざして一歩ずつ前へ進んできた。理想に掲げたのは、激しく戦う姿勢をベースにしながら、形にとらわれない臨機応変な判断ができる攻撃的なサッカー。

チームが開幕からPK戦での勝利を含む3連勝を記録するなか、佐藤恵允は右のアタッカーとして圧倒的な献身性を見せてチームに貢献してきた。昨シーズンのメインポジションだったフォワードから主戦場を変えながら、右サイドで室屋成と見事なローテーションを披露。入魂のプレーでチームの開幕ダッシュを支えてきた。数字の部分では多摩川クラシコでの1アシストにとどまっているが、その貢献度たるや、青赤ウォッチャーの誰もが全員一致で認めるところだろう。

「僕が2ケタゴールを決めたらチームは優勝できるはず」と考えて個人目標を10ゴールに設定した佐藤恵允だが、何より大事にしているのはチームの勝利だ。「ここからどんどんゴールを決めて、アシストも量産していきたい」と話すなかでも、「極端に言えば、もし自分より得点の可能性が高い選手がいたら、迷わずにパスを出しますよ。もちろん自分もゴールを決めたいし、2ケタゴールという目標は全くブレていない。ただ、一番大切なのは東京が勝つこと。まだノーゴールだけど、そこは割り切って、チームとして確実にゴールを決めて勝つほうを選ぶ。そうしていくことでチームとしても自信が生まれるし、自分のプレーにも余裕が出てゴールも決められるようになっていく」と冷静に状況を見極める。

副キャプテンを務めることになった今シーズン、背中で引っ張るキャプテン室屋を支えながら、「どんな時でも盛り上げて、ひたすら雰囲気を上げていく」と持ち前のポジティブさと戦う姿勢で優勝をめざすチームをけん引する。そして松橋力蔵監督が攻撃陣に求めた「足を振っていけ」という言葉を、彼なりにこう噛み砕いている。

「リキさん(松橋監督)の『足を振ってくれ』という言葉は、『点を決めてくれ』という意味だと捉えています。その裏側には『攻撃陣が決めたら勝てる』という想いがあるはず。しっかり振るだけじゃなく、振って決める。自分が決める。優勝にふさわしいチームをめざすなら、優勝にふさわしい選手にならなければならない。選手もスタッフも全員が本当に優勝したいと思って試合に臨んでいるし、優勝にふさわしいチームになろうと考えて日々の練習に取り組んでいる。自分は副キャプテンでもあるし、チームを束ねて、背中で見せて、点を決める選手になりたい。 苦しい状況でも試合を勝たせることのできる選手が、優勝にふさわしいチームの選手だと思うから」

今週末、あの日以来となる国立競技場での試合がやってくる。スタジアムに足を踏み入れた瞬間、いろいろな記憶が蘇ってくることだろう。そして、その記憶が彼の心に火を点ける。

「国立に入った瞬間、あの悔しさを思い出して絶対に燃える気持ちが沸き上がってくると思います。柏レイソルに敗れたあとだからこそ、この試合に勝たなければいけないという部分もある。優勝するチームは絶対に連敗してはいけないし、まずは天皇杯の悔しさを乗り越えていきたい。ファン・サポーターのみなさんも同じ気持ちだと思うから、国立でガンガン盛り上げてもらいたいし、あの悔しさをみんなで晴らして先に進みたい。本当にゴールに飢えている。自分が点をとって勝ちます」

大きな目標を手にするために、“For the team”に徹しながらも怖さを出していく覚悟を胸に秘める。

狙うは勝利、そして自らの得点でチームを勝たせる選手になることだ。ゴールに飢えた“金狼”が、未来を切り拓くため、“新国立男”として名乗りを上げる。

(文中敬称略)

Text by 青山知雄