雪が舞う味の素スタジアムで行われた明治安田J1百年構想リーグ第1節。東京は昨シーズンの明治安田J1リーグ優勝チームの鹿島アントラーズを相手に、ペナルティキック戦の末に開幕戦勝利を収めた。
この一戦、チームの先頭に立ってピッチに現れたのは、新キャプテンに就任した室屋成だった。
キャプテンとしての第一歩
「シーズンの開幕戦ということで、試合の入りが難しい時間帯もありましたが、全員が戦う意識を持っていました」
対戦相手は昨シーズンの優勝チーム。試合前からチーム内では「バトルの部分で鹿島を上回らないと勝てない」という共通認識があった。それをピッチで体現し、退場者を出した鹿島の粘り強い守備に苦しみながらも、最後は守護神キム スンギュのシュートストップもあり、ペナルティキック戦の末、勝利を掴み獲った。

今大会のレギュレーションにより、ペナルティキック戦での勝利は『勝点2』となる。「勝点3をとりたかったが、この2は大きな2だった」と振り返る室屋にとって、特別な一日だった。プロ生活で初めて、公式戦のピッチにキャプテンとして立ったからだ。
「やはりいつもとは少し違う感覚でしたね。試合前に花束を受け取ったりとか(笑)」と冗談交じりに初陣を振り返ったが、いざ試合が始まると、その前面に溢れ出る闘志と熱き魂に何の変りもなかった。
あえて多くを語らなかったという室屋は、「シンプルなことだけを、短い言葉だけで。それが自分らしいと思う」と試合中の自身を振り返る。プレーで、背中で、そして誰よりも走るその姿で、唯一無二の“キャプテン像”をピッチで体現した。
最高の後押し
試合は前半41分、鹿島の三竿が決定機会の阻止で退場となり、東京が数的優位に立つ。そのフリーキックを遠藤渓太が見事に決めて先制した。しかし、喜びも束の間、直後にセットプレーから同点に追いつかれる展開となった。
10人になった鹿島がブロックを固めるなか、右サイドバックの室屋はリスク管理と鹿島の勝負強さを警戒していた。「鹿島は10人でも1点をとる力がある。カウンターを警戒しながらも、なんとかもう1点とりたい。そのバランスを常に考えていました」

しかし、試合は1-1のままタイムアップを迎え、決着はペナルティキック戦へと委ねられた。コイントスの結果、頼もしい青赤の仲間たちを味方につけることになった。
「ホーム側で蹴りたかったので、自陣になったのは本当に大きかった。ファン・サポーターのみなさんが相手のキッカーにはプレッシャーをかけ、俺たちのキック時には静かにしてくれた。あのような雰囲気を作ってくれたことは本当に助かりましたし、感謝しています」
まさに、ファン・サポーターとチームが一体となって掴んだ勝利だった。
ペナルティキック戦後の喜び具合については「どれくらい喜んでいいか、まだ掴めていないです(笑)。きっとファン・サポーターのみなさんも同じなんじゃないですかね」と、新レギュレーションならではの戸惑いも口にしつつ、この勝利の余韻に浸ることは一切なかった。
「僕たちはチャレンジャー」次節に向けて
開幕戦で苦しみながらも勝利したチームだが、浮かれた様子は微塵もない。彼の視線は次節の浦和レッズ戦へと向かっていた。
「鹿島に勝ったからといって、喜んでいる選手なんて誰もいない。僕たちは鹿島ではない。僕たちは一戦一戦を落とせないチャレンジャー。危機感は、チームとしても個人としても強く持っています」
次節で対戦する浦和は、開幕戦でジェフユナイテッド市原・千葉を相手に、危なげない試合運びを見せている。浦和は開始早々に松尾のゴールで先制すると、大卒ルーキーでFC東京U-15深川出身の肥田野のゴールもあり、2-0で勝利を収めた。6シーズンぶりの開幕戦勝利を挙げ、勢いに乗る手強い相手だ。

浦和の印象について室屋は「良い選手が多くいて、勢いに乗ったら止めることが難しいチーム」と語りつつ、昨シーズン、ホームで浦和を3-2で破った際のイメージは今も鮮明だ。「前回の対戦で勝ったことで、相手には若干の苦手意識があると思う。そこを突いていきたいし、ゴールに向かうプレーをどんどん見せたい」とホーム連勝に向けて強く意気込んだ。
新キャプテンとして、そして一人のサイドバックとして。室屋成の2026シーズンは、まだ始まったばかりだ。
「まだ1試合終わっただけ。ここから自分のコンディションも上がってくるし、パフォーマンスのキレもさらに出てくると思います」
雪が舞うホーム開幕戦で掴んだ勝点2を、真の強さに変えるため、室屋は誰よりも熱く戦う。
(文中敬称略)


