マッチレビュー
味の素スタジアムでFC町田ゼルビアを迎え撃つ秋春制の“新開幕”。2026/27シーズンの明治安田J1リーグがここからスタートする。
試合前には長友佑都選手が記者会見に臨み、青赤との契約延長を発表。FIFAワールドカップ2026™を終えて去就が注目されていたが、「FC東京は“家”みたいな大好きなクラブ。タイトルを獲るために戻ってきたのに、何一つもたらすことができていない。ここでシャーレを掲げるために戦いたい」と話し、背番号5が再びチームの一員として合流することが決まった。
また、キックオフ直前にはピッチサイドに立ち、自らの言葉でファン・サポーターにも現役続行と優勝への決意を表明した。ゴール裏に『長友佑都、優勝するまで引退させないよ』という横断幕が掲げられ、長友は挨拶のあとにコールリーダーに立候補して「東京こそすべて」と絶叫。スタジアム中に「情熱をぶつけろ!優勝つかみとれ!」というチャントが響き渡り、重要な開幕戦に向かう青赤イレブンを熱く盛り上げた。
その開幕戦に臨むチームは、前週行われたボルシア ドルトムントとの国際親善試合から一人を入れ替え。ゴールキーパーはキム スンギュ選手、最終ラインは右から室屋成、アレクサンダー ショルツ、稲村隼翔、橋本健人の4選手で編成。ボランチは橋本拳人選手と高宇洋選手が並び、アタッカーは右に佐藤恵允選手、左に俵積田晃太選手を起用。2トップはマルセロ ヒアン、長倉幹樹の両選手がコンビを組んだ。また、育成型期限付き移籍から戻ってきた永野修都選手、移籍加入組の石原広教、本間至恩の両選手もベンチメンバーに名を連ねた。
ハーフシーズンに続いて“優勝”を目標に掲げて臨む新シーズン。まずはホームでしっかりと町田から勝点3を奪い、スタートダッシュにつなげたいところだ。真夏の開幕戦は高温多湿の味スタに36,336人の大観衆を集めて19:05にキックオフを迎えた。
1st―早々に先制も数的不利になり逆転を許す

お互いに優勝を目標に掲げるチームということもあり、開始直後から意欲的な姿勢を見せる展開が繰り広げられていく。激しく攻守が入れ替わるなか、早々に試合を動かしたのは青赤だった。
開始5分、キム選手のゴールキックからヒアン選手がうまく身体を入れ替えて前を向くと、佐藤選手が頭で前方へつないだところをヒアン選手が相手ゴールキーパーの股下を撃ち抜いて先制! 背番号9が電光石火の一撃で2026/27シーズンの青赤ファーストゴールを叩き込み、幸先良くリードを奪うことに成功した。


その後も主導権を握って試合を進める東京。前半14分には室屋選手の長いスルーパスにヒアン選手が抜け出してワンタッチで冷静に浮かせてゴールに流し込んだが、これはオフサイドと判定されてノーゴールに。VARのサポートでもジャッジは変わらず、追加点は認められなかった。
最終ラインからのビルドアップを攻撃のベースにしながら、うまく引き込んで前線のスペースへロングボールを供給して攻撃陣の効果的な抜け出しを狙っていく東京。押し込んでペナルティエリア付近で細かくボールをつなぐシーンも増え、町田の自由を奪いながら相手陣内でのプレー時間を長くしていく。
前半22分には左サイドでのパス交換から中央でヒアン選手が受けて右へ。ここでまたも室屋選手が中央へ縦パスを差し込み、ヒアン選手が抜け出してシュートを放ったが、決定的なシュートが相手のファインセーブに阻まれて追加点とはならなかった。

良い時間帯が続いているだけに早く追加点を奪いたい東京。だが前半27分、最終ラインからオーバーラップしてきた中山選手をマークし切れず、ニアゾーンに抜け出された折り返しをデューク選手に頭で押し込まれて失点。試合を振り出しに戻されてしまう。ここまで相手のクロスボールにしっかりと対応できていただけに悔やまれる瞬間となった。

一進一退の攻防が続いた前半38分、スライディングでルーズボールを奪いにいった橋本健選手が一発退場に。数的不利を強いられることになった東京は前半42分、長倉選手に代えて左サイドバックに石原選手を投入。高選手をアンカーに置き、インサイドハーフに橋本拳選手と俵積田選手、そして佐藤選手を最前線に押し上げた4-3-2のシステムで勝利をめざすことになった。
7分間と表示された前半アディショナルタイム、相手のロングボールで自陣に押し込まれ、ペナルティエリア内で入れ替わられるような形で生まれたスキを明本選手に蹴り込まれて失点。逆転を許してしまった。
前半は1-2のスコアでタイムアップ。一人少ない状況でいかに反撃を仕掛けて同点、そして逆転に持ち込んでいくか。後半は諦めずに戦うメンタルと少ないチャンスを決め切る決定力が求められることになる。
2nd―前には出るも追加点を許して敗れる
何とか流れを変えて開幕戦の勝利を引き寄せたい東京。松橋力蔵監督は後半開始から俵積田選手を大森理生選手にスイッチし、3-4-2のスクランブルシステムを採用。大森、ショルツ、稲村の3選手が最終ラインに並び、ボランチは橋本拳選手と高選手、ウイングバックは右に室屋選手、左に石原選手が入り、ヒアン選手と佐藤選手が2トップを組む形に変更した。

急造システムながら両ストッパーがサイドバックのようにオーバーラップを試み、厚みのある攻撃を仕掛けようとする東京。セットプレーの守備では全員が自陣に戻り、これ以上の失点は許さないという意識を押し出していく。しかし後半6分、相馬選手に直接フリーキックを決められて痛恨の追加点を奪われて1-3に。
数的不利に加えて2点のビハインドを背負う厳しい状況になったが、熱く歌い続けてくれるファン・サポーターの想いにしっかりと応えなければならない。そんな気持ちがピッチに表れていく。ショルツ選手が果敢にドリブルで持ち上がってシュートを放てば、石原選手は左サイドを力強く駆け上がって鋭い左足クロスを共有。高選手は高い位置でのインターセプトから切り返しで相手をかわしてシュートを放っていく。
さらなる選手交代で反撃の糸口をつかもうとした東京だったが、2枚替えを準備していた後半20分に町田のイェンギ選手に抜け出されて4失点目。リードを3点に広げられてしまう。そしてヒアン選手、橋本拳選手に代えて山田楓喜選手と本間選手がピッチへ。
後半35分にもコーナーキックから失点を喫してスコアは1-5に。何とかして意地を見せていきたい東京は石原選手の折り返しを山田選手が左足で狙ったが、これは惜しくも左ポストを叩いてしまう。
最後の選手交代は後半40分、稲村選手に代えて仲川輝人選手を投入し、アタッカーを増やして意地を見せるべくトライしていく。だが、5分間のアディショナルタイムでも反撃弾を決めることはできず、悔しさが募るなかで試合終了のホイッスルを聞くことになった。
立ち上がりからチーム全体で狙いどおりのサッカーを披露し、多くのチャンスを作って先制点を奪いながら、数的不利な状況に陥って試合展開が一変。思わぬスコアで開幕戦を落とすことになってしまった。
だが、残り時間が少なくなったところでゴール裏が再びボルテージを上げてチームを鼓舞してくれたように、しっかりと気持ちを切り替えて前向きに戦っていかなければならない。リーグ戦はまだ開幕したばかり。この悔しさをバネに、リバウンドメンタリティを発揮して再び青赤一丸となって戦っていく──。そんな誓いを新たにした開幕戦となった。
松橋力蔵監督インタビュー

Q、試合の総括をお願いします。
A、非常に難しい船出になってしまったゲームだったと思います。序盤には良さもありましたが、失点するまでの時間が少し早過ぎました。いくつか対応策を考えていたものの、一人少なくなってしまったことで、それがチームになじむ前にやられてしまいました。もちろん戦術やシステム、噛み合わせの問題もありましたが、数的不利がそのまま表れた失点だけではなく、セットプレーなどからも失点を重ねてしまったことでゲームを難しくしてしまいました。最終的に、そこから跳ね返すことができなかったのは残念です。ただ、選手たちは最後まで諦めず、与えたものに対してしっかりとプレーをしてくれました。そして試合後に、今日スタジアムに来てくださったファン・サポーターのみなさんからいただいた声援も、また次へ向かう我々の活力になりました。それを次のゲームでしっかりと発揮したいと思います。
Q、後半から3バックに変更し、前線の形も変更しましたが、どのような狙いがありましたか。
A、ウイングバックの選手がどんどん前に出ながら、中央はしっかり閉じて、そこからボールを引っ掛けられれば、という狙いがありました。ただ、序盤は距離感や、中盤で誰が絞って出ていくのかといった部分の噛み合わせがあまりうまくいっていませんでした。途中から少しずつ改善してきたなかで、ウイングバックが攻撃参加して前に出ていく、さらに3バックのうち1枚も、チャンスがあればどんどん出ていく、そういったサイドからの厚みを作っていこうという狙いで、あの形に変更しました。
Q、早い時間帯から、マルセロ ヒアン選手が背後へ飛び出す形を何度か作り、チャンスを作っていたと思います。オフサイドになった場面もありましたが、あのような攻め方は狙いどおりに出せていたのでしょうか。
A、相手の縦方向のズレや、ウイングバックがズレたことで起こるディフェンスラインのスライド、その瞬間に相手の背後を有効に使えると考えていました。そこに対する我々の選手のパフォーマンスも非常に良く、狙いをよく出せていた部分だったと思います。一方で、前進できるがゆえに少し早く突っ込みすぎてボールを失ってしまう場面もありました。しっかりボールを握り、相手を揺さぶりながら、もう少し押し込んだ状況でプレーできれば、さらに良い攻撃ができたのではないかと見ています。
Q、試合前に長友佑都選手の契約更新が発表され、今シーズンもともに戦うことになりました。今日のような劣勢の展開では、長友選手のような存在がチームに与えるものもあると思います。あらためて今シーズンの長友選手に期待することを教えてください。
A、彼の力は必ずクラブの力になると思っています。今日は試合中に影響力を出すことはできませんでしたが、試合前にはスタジアムの雰囲気を盛り上げ、また選手たちに対してしっかり働きかけ、さっそく貢献してくれました。それに結果で応えることができなかったのは残念です。ここから彼自身もコンディションを上げて、しっかりとした競争のなかでポジションを争っていくことになると思います。これまで同様、それ以上に、ここからチームのために貢献してほしいと思っています。
選手インタビュー
高宇洋選手

Q、今日の試合を振り返って、どのように受け止めていますか。
A、試合開始から、十一人で戦っていた時間帯については、ある程度良い手応えをみんな感じていました。試合後にもそういう話はありましたし、追加点をとれるチャンスもありました。そこで仕留め切れなかったことがすべてだと思います。一人退場者が出てから、もっと何とかできる部分はあったと思いますが、失点したタイミングが精神的にもかなり重くのしかかったのかなと思います。
Q、立ち上がりは攻守の入れ替わりが激しい展開でしたが、そのなかで良い形から先制点を奪いました。序盤の戦いについてはどう感じていましたか。
A、試合への入り方についてはキャンプからずっと意識してやってきたので、うまく入れたと思います。マルセロ ヒアン選手や、佐藤恵允選手のところなど、背後への意識を強く持っていました。そこをうまく使えていて、実際に得点やチャンスにもつながりました。本当にいい形があったと思います。ビルドアップでも相手をうまく剥がせるシーンが多かったと思いますし、みんな手応えは感じていました。
Q、縦への速い攻撃なども含めて、退場者が出るまでは狙い通りの形をつくれていたのでしょうか。
A、ある程度は理想通りの形をつくれていたと思います。プラン通りにボールを動かせている部分もありました。相手がインサイドを閉じてくるなかで、センターバックからサイドバックへシンプルにつないで相手を剥がし、そこから侵入していく形もあったので、そこはうまくできたと思います。中に入ってくる動きなども含めてバランス良くできていましたし、今後にも可能性を感じました。
1失点まではある意味想定内だったのですが、やはり失点したタイミングが良くなかったです。そこでみんなの気持ちが折れてしまったような感覚もあったので、そこは立て直さなければいけません。十一人で戦っている時間帯にも1失点していますし、スライドやクロス対応は練習からやっているので、勝つためにはもっとやらなければいけないと思います。
Q、後半は3バックに変更しました。準備していた形ではなく、即興での対応だったのでしょうか。
A、そうです。数的不利ということもあり、トレーニングを積んできた形ではなかったので難しさはありました。うまくいった部分もありましたが、後半に3失点しています。たとえ即興だったとしても、しっかり全員で目線をそろえなければいけないですし、一人少ない以上は走るしかありません。もっと自分たちでできることがあったのではないかと思います。
Q、開幕戦は厳しい結果となりましたが、試合後にはファン・サポーターから優勝をめざしてもう一度ここから進んでいこうという思いも伝えられたと思います。あらためて、どのように受け止めていますか。
A、開幕戦でこのようなゲームをしてしまいました。上をめざすのであれば、このような結果は絶対に良くないですし、どのような状況でもしっかり勝点をとっていかなければいけません。ファン・サポーターのみなさんの気持ちはしっかりと伝わっています。次に向けてまた準備していきます。
石原広教選手
Q、急きょ試合に出場することになりましたが、どのようなことを考えてプレーしましたか。
A、本当に急だったので、特に準備していたわけではありませんでした。まずは守備で失点しないようにすることを考えて、あとは特に何かを考え過ぎずに入りました。
Q、2失点目を喫した後も、手を叩いてチームを鼓舞する姿がありました。どのような想いでしたか。
A、やっぱり諦めてはいけないですし、十人だろうが何だろうがプレーは続けなければいけない。チャンスはあるというか、隙はあるように見えていたので、そこを突ければよかったと思いますが、うまくいかずに失点してしまいました。それでも、今日来てくれた人たちのためにやらなければいけないという思いもありました。プレーする姿勢をみんながなくさないように、鼓舞するというか、「みんなでやろう」という姿勢は出せたかなと思います。
Q、個人としてボールを持ち上がってパスを出すなど、背中でチームを引っ張ろうとする姿も見えました。一方で、それがチーム全体の流れにはなかなかつながらなかったように見えましたが、どのように捉えていますか。
A、5枚になって距離感の難しさもありましたし、自分自身も左でプレーするのは久しぶりでした。横へのパスがずれてしまう場面も結構目立ってしまいました。厳しい状況でも、そういう一本のパスは、距離が遠くなったとしても通さなければいけないと思います。十人で戦うなかでは、少しでもプレーの精度を高くすること、相手より走ることが必要です。走る部分はできていたと思いますが、少し足りなかったのかなと思います。
Q、ディフェンダーが増えたり、ボランチが少なくなったりと、システムや配置のバランスが変わるなかで難しさもあったと思います。ピッチのなかではどのように感じていましたか。
A、たぶん、みんながあの形でやることにはあまり慣れていなかったと思います。ウイングバックがどこまでいくのか、どのタイミングでいくのかという話はしていましたが、耐えるのであれば、もっとしっかりブロックを作るのか。そういうところは声を掛けながら、もっとはっきりさせなければいけなかったと思います。イレギュラーな形だったので難しさはありましたが、次につながると思います。今日十人で戦ったことで、次に同じような状況になった時にどうすればいいかということは、みんな分かったと思います。
Q、試合後、選手同士ではどのような話をしましたか。
A、まだ1試合目なので、切り替えてやっていこうという話をしました。またすぐに試合がきます。戦った結果について誰かを責めることはなく、しっかり前を向いて、全員で支え合っていくというところは変わらずやっていきたいです。
Q、サイドバックの競争がさらに激しくなるなかで、今日出場機会を得られたことについて、どのように捉えていますか。
A、結果がすべてなので、今日これだけ失点してしまって、チームとして良くない結果になってしまった。個人がどうということよりも、チームとして優勝するために次に何をすべきか、ということが大事です。「あの試合で自分が出たから」というような考えにはならないですし、みんなで前を向いてやっていけるように雰囲気を作ることも自分の仕事だと思っています。そういうところにしっかり目を向けてやっていきたいです。
Q、ポジション争いが非常に激しくなっていますが、その競争とどのように向き合っていますか。
A、競争するためにきたというところもあるので、自分自身はすごく楽しいです。それぞれキャラクターが違う選手たちですし、誰が出てもJ1リーグでやれる、トップレベルの選手たちが揃っていると思います。自分の成長という意味でもすごく熱くなれると思いますし、競争としてもすごく面白いものになると思います。
Q、その競争によって、さらに成長を加速させることもできると思います。今、自分自身で何をやらなければいけない、あるいは何を伸ばしていきたいと考えていますか。
A、自分は左右両方でプレーできるので、まずは左でもしっかりやれるというところを見せたいです。もちろん右でもどこかでチャンスがくると思うので、その時には自分の一番の個性、やれることをしっかり出したいです。今から何か新しいものを伸ばすというより、自分の武器をしっかり出せるように準備していきたい。今日もしっかり準備してきたつもりですし、左での出場でしたが、試合に入れなかったという感覚はなかったので、そこは前向きにやっていきたいです。
Q、チームを優勝させるために、これから何が必要になってくると思いますか。
A、若い選手が多いので、まずは上の世代の選手たちがしっかり引っ張っていくこと。そして若い選手や、キャプテンではない選手たちも、どれだけ「自分が引っ張ってやる」という強い気持ちを持てるかだと思います。サッカーの技術という部分では、すごく良い選手が揃っています。だからこそ気持ちの部分、メンタリティが大事だと思います。例えば鹿島アントラーズのように、どれだけ点をとられても「自分たちは勝てる」と思える勝者のメンタリティ。そういうものが必要なのではないかと思います。



