マッチレビュー
青赤の誇り、そして意地を見せなければならない一戦だ。
明治安田生命J1百年構想リーグの地域リーグラウンド最終節。前週の結果を受けてEASTグループ1位が鹿島アントラーズに決まり、東京はこの試合に逆転優勝の可能性を残すことができなかった。だが、東京としてはここで勝利を収めることが、チームとしての着実な積み上げをあらためて証明することにもなる。この順位で対戦することに関して、松橋力蔵監督が「自分たちの力を証明し続けてきたからこそ。勝つにいくだけです」と話せば、アレクサンダー ショルツ選手は「リーグ全体で見ても1位と2位の対戦であることを示さなければならない。チームとして次のステップに進んだことをしっかりと見せつけなければいけない試合になる」と意気込む。
逆転優勝こそなくなったが、だからこそプライドを懸けて鹿島を打ち破りたい試合となる。東京はFIFAワールドカップ2026で日本代表に選ばれた長友佑都、韓国代表入りを果たしたキム スンギュの両選手がベンチ外となり、ゴールキーパーは4月1日のFC町田ゼルビア戦以来となる田中颯選手がスタメン出場。最終ラインは右から室屋成、ショルツ、稲村隼翔、橋本健人の各選手が並び、ボランチには橋本拳人選手と常盤亨太選手を起用。アタッカーは右に佐藤恵允、左に遠藤渓太の両選手を置き2トップはマルセロ ヒアン選手と佐藤龍之介選手が2トップを組んだ。また、ベンチには小泉慶選手と小林将天選手がそれぞれ約1か月半ぶりにメンバー入りを果たした。
お互いに対応力を武器とする両チームだけに、東京としては先手をとる形で主導権を握って戦いを進めたいところ。試合は季節外れの寒さに見舞われたメルカリスタジアムで17:33にキックオフを迎えた。
1st―高い強度と鋭いカウンターで好機を演出する
試合は相手の良さを消し合うような展開からスタートした。中盤で双方の縦パスを網に掛け合うような形でカットし、裏抜けに対してもタイトな守備で封じ込める。前半10分には東京が厚みのある攻撃でチャンスを迎えたが、鹿島がしっかりと中央を締めてブロック。ペナルティエリア内で室屋選手、佐藤龍選手が狙うも押し込むことができない。
ネガティブトランジションへの高い意識と、自陣に引き込んでからスピードアップする攻撃で東京が攻め込むシーンが増えていく。前半16分には中盤で鋭く寄せてボールを奪い、遠藤選手、ヒアン選手とつないで佐藤龍選手がシュート。良い守備から良い攻撃につなげ、ここまで積み上げてきた東京らしさをしっかりと体現していく。

その後も連動したプレスで鹿島に自由を許さず、集中したプレーでチャンスを作らせない。中盤で球際の勝負を制していくことで良い攻撃につなげ、鋭いアタックで先制点を狙っていく。守ってはアタッキングサードに入る前にほとんどのボールをカット。相手に攻撃の形を作らせず、相手の良さを消しながら自分たちの持ち味を発揮していくサッカーを見せていった。
前半33分には鋭いカウンターから右サイドで佐藤恵選手が縦へ突破してクロスボールを供給。ゴール前の競り合いから遠藤選手、常盤選手が立て続けに狙ったが、鹿島が身体を張ったブロックで決定機を阻止。ここも先制のネットを揺らすことはできない。

前半42分にはセットプレーからレオ セアラ選手にヘディングで合わされたが、これはわずかにゴール左へ。危ないシーンだったが、何とかピンチを免れることに成功した。
直後の45分には東京が左サイドで起点になった遠藤選手の落としをオーバーラップしてきた橋本健選手が受け、そのまま縦へ勝負して左足シュート。これはゴール左に外れてしまったが、後方からクロスオーバーして一気にチャンスを作り出す攻撃でチャンスを作り出した。前半は東京が優勢に進めながらタイムアップ。スコアレスのまま後半へ折り返すことになった。

2nd―主導権を握りながら一発の勝負強さに泣く
しっかりとリスクマネジメントをしながらゴールへの圧力を強め、しっかりと決定機を決めていきたい後半。東京はハーフタイムの選手交代なく臨むことになった。

後半、鹿島が前からの圧力を強めてきたなかで、東京もゴールキーパーを使いながら角度をつけたワンタッチパスや狭いエリアでのダイレクトプレーで相手のプレスを回避。ポゼッションしながら攻め手を探っていく。

後半16分に先手を打って2選手を交代していた鹿島に対し、東京は後半21分に橋本拳選手から高宇洋選手にスイッチ。ボランチを入れ替えて先制点を狙っていくことになった。東京は、ピッチを広く使ったワンタッチプレーでヒアン選手の裏抜けを促し、中央で鋭く縦に差し込むパスを織り交ぜながら打開を図る。
各選手がしっかりと立ち位置をとり直し、プレスを仕掛けてくる相手の矢印を的確に折るようなビルドアップを見せていく東京。後半立ち上がりこそ押し込まれるシーンが目立っていたが、冷静に見極めて再び主導権を握り直して試合を進めていく。
ピッチに変化を生み出したい東京は後半31分、遠藤選手に代えて左アタッカーに俵積田晃太選手を、佐藤龍選手に代えて2トップの一角に山田楓喜選手を投入。新たなコンビネーションに期待して選手交代を敢行した。
しかし後半35分、中盤でのパス交換をカットされてカウンターから失点。一瞬のスキを突かれて先制点を奪われてしまう。
攻勢を強めたい東京は佐藤恵選手が粘り強いキープからコースを狙ったミドルを狙えば、ヒアン選手が抜け出しから強烈な右足シュートを放っていく。だが、いずれも相手ゴールキーパーのセーブに阻まれて同点ゴールには至らず。松橋監督は後半39分、最後の交代カードを使ってヒアン選手、佐藤恵選手から野澤零温選手、仲川輝人選手にスイッチ。同点、そして逆転を託して前線の選手を入れ替える決断を下した。

5分間と表示されたアディショナルタイム、青赤の意地を懸けて俵積田選手のドリブル突破、橋本健選手の鋭いクロスなどで鹿島ゴールに襲いかかったが、最後までネットを揺らすことはできず。前半から東京らしさを見せながら、鹿島の試合巧者ぶりに屈する形で悔しい敗戦を喫する結果となってしまった。
東京はこれでEASTグループの2位が確定。5月30日からホーム&アウェイ形式で行われるプレーオフラウンドの対戦相手は、明日24日に行われるWESTグループのセレッソ大阪の試合結果を待つことになった。
松橋力蔵監督インタビュー

Q、試合の振り返りをお願いします。
A、本当に悔しい敗戦になってしまったと思いますが、選手はしっかりとこの試合に向けて気持ちも含めてしっかりと準備をして、非常に素晴らしい姿勢を見せてくれました。今日のプレーも決して悲観するものではありませんし、しっかりと戦ってくれたと思っています。ただ、やはりそういうなかでも勝点3をどうやって我々に手繰り寄せられるかということは、これからもさらに追い求めなくてはいけない部分だと思います。
Q、東京らしさを出しながらも、鹿島アントラーズの勝負強さにやられてしまった印象ですが、監督から見て鹿島との差というものはどのように感じていますか。
A、鹿島は、本当に、勝つべくして勝つというチームなのだと感じました。常に勝利を求め、チャンピオンになることも数多く成し遂げているチーム。そうしたチームと我々の足りない部分には、まだまだ大きい差があるとは思っています。しかし、我々もそこに近付くために、そこにふさわしいチームになることを求めて今シーズンはずっとやってきました。そこにふさわしい姿、ふさわしいサッカー、ふさわしいプレー、ふさわしい姿勢や言動。そういうものが最終的にはしっかりと積み上げられたのが、今の我々の結果だと思っていますが、そこをさらにもう一つ上げなくてはならないですし、鹿島にまたチャレンジできる、自分たちより上のチームにどんどんチャレンジできるようなものを、さらに求めていかなくてはいけないと思っています。
Q、ある程度は戦えているなかで、フィニッシュまではなかなかいけていない印象でしたが、普段から監督がよくおっしゃっている『相手を見る』部分で足りない部分があったのでしょうか。
A、相手がどうこうというわけではなくて、我々がやりたいようにやっていくというところがすごく大事なポイントだと思っています。そういう意味では、そこでのエラーというか何か悪い点があったのかというとそうではなく、我々のクオリティをもっと上げなくてはいけないということです。その狙いに対しては、特に後半はしっかりと表現できたと思いますし、そのなかでチャンスも作ることができた。ただ、最後はやらせてくれない相手の固さというのは、やはり鹿島の強みだと思います。そこをどうやってフィニッシュまで持っていくかというところで、もっと質を上げていかなくてはいけないと思います。
Q、次はプレーオフラウンドでの戦いとなります。まだ現時点では対戦相手が決まっていませんが、どのような戦いを見せたいですか。
A、今自分たちが狙うことができる最高順位をしっかりと手繰り寄せられるように、相手がどこであれしっかりと自分たちの準備をするだけだと思っています。
選手インタビュー
室屋成選手

Q、最後に相手の勝負強さを見せつけられたゲームになりました。
A、鹿島アントラーズらしくやられてしまったという試合でした。相手もそこまでチャンスはありませんでしたが、自分たちもそこまで決定機と言える決定機は作れていなかったので、もっとファイナルサードのところで押し込む時間というのを増やし、高いクオリティを出したかったと思います。
Q、地域リーグラウンドが終わり、首位争いをしている時もありましたが、鹿島との差はどこに感じましたか。
A、鹿島は自分たちのスタイルを確立しているし、うまいかない時間帯では、しっかりと耐えながらチーム全員が状況を共有してシンプルにプレーしてきます。そういったゲーム運びはやはり相手の方がうまく、そこでの差はすごく感じています。
Q、本当に細かいところかもしれませんが、リスクマネジメントなど試合の勝敗を分ける部分もさらに積み上げていきたい部分でしょうか。
A、今日の試合でいうと、やはり0–0で終わらなければいけない試合だったと思いますし、そういった差はあるのかなと感じました。でも、それはそこまで大きな差ではなくて、今シーズン自分たちがやってきたことに対して自信を持っていいと思います。来シーズン、自分たちは引っくり返せると思うし、そう思ってやり続けるだけだと思います。
Q、プレーオフラウンドはどのような試合にしたいですか。
A、まだ相手が決まっていませんが、3位で終えるということは重要なことだと思いますし、来シーズンに繋がる試合をしなければいけないと思います。
常盤亨太選手

Q、悔しい結果になってしまいましたが、試合を振り返ってください。
A、試合前から鹿島アントラーズの地域リーグラウンド1位が決まっていたからこそ、絶対に勝ちたいゲームでした。結果がすべてなので、0-1が今の自分たちの姿なのだと思います。効率良くサッカーをされたと感じています。内容はそこまでやられた感じはしなかったですが、それでもやられてしまう。言葉にすることは難しいです。ただ、やはり自分たちがファイナルサードの質を出せなかったから、決め切れなかったからこういう結果になったと思っています。相手の土俵で戦うのではなくて、自分たちのゲームをしてこのゲームを制するというなかで、自分たちのビルドアップだったり、前進した後の最後の部分が大事だったと思います。自分自身、前半にビッグチャンスがあったなかで決められなかったので、自分の責任だと感じています。
Q、東京らしさというのは一定出せたという手応えはあると思いますが、その上で届かなかったということは、鹿島との差をここから詰めていく作業が必要になってくると思います。自分たちの良さを出していきながらさらに上回っていくためには必要なものは何だと考えていますか。
A、少し抽象的になってしまいますけれど、まずは勝負に対するこだわりです。この重要なゲームで勝つために練習からこだわる部分。昨シーズンと比べたら本当に良くなっているのですが、届かなかったということは足りていないということだと思っているので、ネガティブな意味ではなくて、ポジティブにもっとやっていけるという部分だと思います。あとは単純に、サッカーなのでゴールをとる、ゴールを守る。その差かなと思います。今日も前節の浦和レッズ戦もゼロ得点で、今日は失点して結果として負けているので。
Q、裏を返すと、これをやらなければいけない、というものが見えた感覚はありますか。
A、この半年やってきて、今日もそうですが、とにかく自分たちのサッカーをしようというキーワードが出ていて、それは自分たちに矢印が向いているからこそ出る話だと思います。自分たちに自信があるからこそ、それをやれば勝てるとみんなが思っているからこそ出てくる言葉だと思います。そこは相手がどうこうとか他に目を向けるのではなくて、自分たちのサッカーをもっと突き詰められるところが、最後の守るところや決め切るところ。そこは詰められるのではないかなと思いますし、チームは良い方向に向かっていると思います。
Q、一番難しい最後の本当に際の部分。決める、止めるという部分。これに答えはないと思うのですが、どのように取り組んでいきますか。
A、そこが先ほど言ったこだわりにもつながるのですが、練習中のシュート一本を決めるか決めないかでも、『これで試合が決まるんだ』というぐらいの気持ちで打っているか、ということが重要だと思います。自分も今シーズンはボランチとして点をとれていないので、全体練習の後にも個人練習をしていましたが、そこでゲームと同じ緊張感でやれているのかと自分自身に問いかけてみると、まだまだ足りないなと思うので、そういったところは必要なのだと思います。
Q、今シーズンの前から、勝点や得失点の『1』の重みを大事にしながらみんなで声を掛けてやってきたと思いますが、それを本当に肌で感じて、日常から意識を高めていかなければいけないとチーム全体が本当に感じた半年間になったのではないですか。
A、昨シーズンは残留争いをしていたので、そこまで目が向いていなかったと思いますが、今シーズンは本当に優勝をめざしてシーズン始動からやっていましたし、実際に首位争いにも加わってきたなかで、やはり勝点1の重みだったり、 1試合の1ゴールの重みというのを全員が経験できたシーズンでもあると思います。この経験を生かすも殺すも自分たち次第です。まだプレーオフもあるので、そこでもう一度自分たちを見つめ直して勝負強さを身に着けていけば、自分自身でも成し遂げられる自信がありますし、このチームであればもっと上をめざせる、優勝できると本気で思っています。今回肌で感じた選手がもっとやっていくだけだと思います。
稲村隼翔選手

Q、悔しい結果になりましたが、試合を振り返っていかがでしたか。
A、試合をうまく進められていた時間帯もあったと思いますし、この半年で積み上げてきたものが鹿島アントラーズ相手にも出せていたところもあったと思います。守備でも要所要所では抑えられていたので、前半は評価できるゲームだったと思いますし、後半も途中まではお互い五分五分だったと思います。こちらのチャンスもあったと思いますが、そのなかで相手のワンチャンスにやられてしまった。そこが鹿島の強さなのかなと思います。自分たちは逆に、あそこで守り切らないといけない。自分の弱さが出てしまったと感じていますし、非常に悔しい結果になりました。
Q、後ろで我慢してボールをつなぎながら、稲村選手とショルツ選手のところからロングボールも織り交ぜて試合をコントロールできていたと思いますが、ご自身のプレーについてはいかがでしたか。
A、前半はうまく狙ったところを通せていたのですが、後半は相手も警戒してきたなかで、特に失点した後からはちょっとバタバタしてしまって、ミスも増えてしまったので、そこは反省点だと思っています。
Q、優勝争いをしてきたなかで最後は少し差が出たと思います。どういったところに優勝するクラブとの差を感じましたか。
A、やはり最後まで守り切るところと、1-0でも勝ち切る、1点でもとり切るところかなと思います。あとは、セットプレーが鹿島の武器だったと思いますし、おそらくセットプレーで15点近くとっていると思うのですが、そこは自分たちになかったところだと思います。そこは最後に大きな差になってしまったと思います。
Q、次はプレーオフラウンドでの戦いとなります。ファン・サポーターにどういったところを見せたいですか。
A、本当に、本気で優勝をめざしてやってきたシーズンだったので、今日の結果も本当に悔しいです。そういう想いをプレーオフラウンドの2試合にすべてぶつけて、めざすところには届かなかったのですが、それでも3位で終わることがすごく大事だと思います。それが来シーズンにつながっていくと思いますし、何が何でも勝ちたいと思います。
Q、試合後の選手周回の時に、ゴール裏のファン・サポーターは『You’ll Never Walk Alone.』を歌ってチームを迎えてくれました。どのような気持ちで聞いていましたか。
A、ウォーミングアップ中から応援してほしいという僕たちの要望を聞いてくれたり、負けた試合でも『まだ次だ!』というメッセージを行動で示してくれたり、本当に常にチームを鼓舞し続けてきてくれたので、自分たちは結果で応えたいと思ってずっとやってきました。今日も勝ってみなさんと喜びたいと強く思っていたのですが敗れてしまって、本当に申し訳ない気持ちがあります。だからこそラスト2試合、しっかりと勝ち切って、感謝を伝えたいと思います。




