マッチレビュー
開幕からのホーム2連戦をPK戦で勝利し、明治安田J1百年構想リーグの3連勝をめざして乗り込んだアウェイの川崎フロンターレ戦。チームはここまで攻守に主導権を握り、球際のバトルでも強さを見せ、アグレッシブで臨機応変なサッカーを見せることができている。今節、勝点5で2位の相手をきっちりと90分間で下し、多摩川クラシコに勝利することでスタートダッシュに拍車をかけたいところだ。
特別大会での好発進をさらに勢い付けたい東京のスターティングイレブンは、キム スンギュ選手を最後方に置き、最終ラインは右から室屋成、アレクサンダー ショルツ、稲村隼翔、長友佑都の各選手を配置。ボランチは3試合連続スタメンの常盤亨太選手と、今シーズン初スタメンの橋本拳人選手が並んだ。アタッカーは右に佐藤恵允選手、左に遠藤渓太選手を起用、2トップはマルセロ ヒアン選手と長倉幹樹選手がコンビを組んだ。
また、今シーズンからトップチームに昇格した尾谷ディヴァインチネドゥ選手がベンチ入り。FC東京U-18在籍中だった2024シーズンのJリーグYBCルヴァンカップのプレーオフラウンド第2戦で公式戦デビューを果たし、17歳の若さでゴールを決めた逸材の“プロデビュー”にも注目が集まる。東京はフィールドプレーヤーがライラックカラーのアウェイユニフォームを着用し、スンギュ選手がゴールキーパーの3rdユニフォームとして青赤を身にまとってキックオフを迎えた。
1stHALF—ヒアン先制弾&室屋勝ち越し弾でリードを奪う

試合はいきなり東京がビッグチャンスを作り出す。キックオフから戻したボールをショルツ選手がロングフィード。これをヒアン選手がヘディングで競り、長倉選手がつないだ落としをヒアン選手が右足でダイレクトシュート。これは相手ゴールキーパーに防がれたが、立ち上がりから意欲的な攻撃を見せた。
前半8分には右サイドで佐藤恵選手のパスに室屋選手が抜け出してチャンスメイク。同12分にはヒアン選手が長いドリブルでカウンターを仕掛け、同14分には橋本拳選手の持ち上がりからパスを受けた長倉選手がヒアン選手とのワンツーからミドルシュートを放つなど、臨機応変なスタイルを披露していく。
そして前半18分、序盤から見せてきた多彩な攻撃が実る。左サイドでボールを受けた遠藤選手が中央へ長いボールを供給。長倉選手が競り合ったこぼれ球をヒアン選手が拾い、右へ持ち出しながら右足を一閃! しっかりとコースを突いたシュートがネットを揺らし、東京がアウェイで先制点を奪うことに成功した。
さらに主導権を握り続ける東京。続く前半23分には右サイドを独走したヒアン選手が折り返すと、長倉選手、橋本拳選手の抜け出しをおとりに使うかのように走り込んだ遠藤選手が右足でダイレクトシュート。これは相手ゴールキーパーの正面に飛んでしまったが、流れるような攻撃で決定機を生み出した。
その後も攻守に集中したプレーを見せて相手の自由を奪い、速攻とポゼッションを織り交ぜながら試合を進める。前半29分には佐藤恵選手が力強いミドルシュート。これはバーを越えてしまったが、川崎戦に向けて松橋力蔵監督が「しっかりミートさせていくことが重要」とコメントしていたとおり、パンチ力のあるキックで怖さを出していく。
試合を優勢に進めていた東京だったが、前半31分に一瞬の隙を突かれて失点を喫してしまう。川崎は右サイドバックの山原選手が脇坂選手とのワンツーで中に入り込むと、東京はマークにつき切れずにカットインを許し、鮮やかな左足シュートを決められて同点に。わずかな綻びが失点に結びついてしまった。
試合を振り出しに戻された東京だったが、鮮やかなパスワークからすぐさま一歩前に出る。前半38分、最終ラインからつないだボールを常盤選手が縦に入れると、これをヒアン選手が右へ展開。抜け出した佐藤恵選手が持ち上がってタメを作ると、後方から全速力でアンダーラップしてきた室屋選手へ。ここで背番号2が角度のないところから豪快に右足を振り抜き、ニアサイドを打ち破るファインゴール! ビルドアップから一気にスピードアップする東京らしいアタックを見せ、指揮官が求める強烈なシュートをキャプテンが体現する形で青赤ファミリーに歓喜をもたらした。
前半は2分間のアディショナルタイムを経て、このまま2-1でタイムアップ。東京が攻守に持ち味を発揮して後半へと折り返した。

2ndHALF—攻守に相手を上回り決定機を作り続け勝点3

ハーフタイムは両チームともに選手交代なし。どちらも前半と同じメンバーで後半に臨んだ。
後半も立ち上がりから東京が攻勢に出る。開始直後に遠藤選手のシュートでコーナーキックを奪うと、そのこぼれ球を拾って押し込み、最後は室屋選手がミドルシュート。さらなる追加点を狙って川崎ゴールに襲いかかっていく。
後半も攻守に東京が良さを見せていく。前線からのプレスで相手にロングボールを蹴らせて回収すれば、細かくつないで厚みのある攻撃を披露。佐藤恵選手が味方のロストを助けるようにカウンターを防ぐ寄せを見せれば、後半8分には高い位置でのプレスバックからパスカットし、そのままドリブルで持ち上がって左足シュート。これは相手にブロックされてしまったが、攻守にシームレスなサッカーを見せて圧倒していく。
流れを変えたい川崎は後半12分に3選手を交代。東京は現状の良い流れを維持しながら攻撃することを選択していく。前半から好連携を見せてきた右サイドが継続して機能。後半16分には攻撃参加したショルツ選手が正確なクロスボールを送ると、中央の長倉選手が巧みな胸トラップから右足シュート。完璧な展開を作り出したが、フィニッシュが相手ゴールキーパーの正面に飛んでしまい追加点には至らない。
青赤ベンチが動いたのは後半20分。遠藤選手に代えて左アタッカーに佐藤龍之介選手をピッチへ送り込む。さらに後半24分にはヒアン選手から山田楓喜選手にスイッチ。佐藤恵選手を最前線に上げ、山田選手右サイドのアタッカーに投入。「圧倒的な結果を残したい」と話してきた期待のヤングスターと、スペシャルな左足から浦和戦で同点ゴールを決めたレフティに追加点を託した。
一進一退の攻防が続くなか、東京は佐藤恵選手、常盤選手を下げ、フォワードに尾谷、ボランチに小泉慶の両選手をイン。小平グランドで好パフォーマンスを見せていた尾谷選手がプロとして初のピッチに立った。
次のビッグチャンスは東京だった。佐藤龍選手が右サイドで周囲とパスをつなぎながらペナルティエリアへ入り込むと、巧みな身のこなしとボールタッチで一人をかわして中央へラストパス。これを長倉選手がワントラップから左足で狙ったが、わずかにゴール右へ外れてしまう。
90分間でのシーズン初勝利をめざし、追加点を狙いながらもしっかりと試合をクローズに向かいたい東京。後半45分には山田選手が斜めに差し込んだパスを長倉選手がトラップし、相手の股を抜いたところで倒されて直接フリーキックのチャンスを得る。しかし、山田選手の左足は壁に当たってゴール上へ。
しっかりとブロックを作りつつ、前線からのプレスを弱めることなく果敢な守備を見せていく。終盤、激しい守備で複数のイエローカードをもらってしまったが、相手の猛攻をしっかりとしのぎ切ってタイムアップ。好内容に結果が伴うゲームで今シーズン初となる90分間での勝利。アウェイの地に『眠らない街』の凱歌が響き渡り、多摩川クラシコで見事に開幕3連勝を記録した。

松橋力蔵監督インタビュー

Q、試合を振り返ってください。
A、ここまでの2試合は勝点こそ積み上げているものの、90分で決着がついていませんでした。今節は必ず90分で決着をつけようとチームとして話してきたなかで、その姿勢をしっかりと選手全員が体現してくれたことを誇りに思います。これを続けていかなければいけません。
Q、今シーズン初めて勝点3を獲得しました。リーグのレギュレーションでPK戦というものもありますが、監督として勝点の価値観は変わりますか。
A、このレギュレーションのなかでは、さまざまな要因で勝点を積み上げる方法を考える局面があると思っています。まだ3試合ということを考えると、ゲームのなかで最大の勝点をどうとっていくかという点では、今のところは達成できています。これがシーズンの終盤に入ってくると、内容が悪くて相手にイニシアチブを握られているような試合でも、勝点が2になるのか1になるのか0になるのか、積み上げの違いが重要になってくる局面が訪れる可能性はあると思っています。とはいえ、自分たちのクラブのフィロソフィーがそうなのですが、常にワンモアゴール、もう1点をとりにいくということを意識しています。そこを突き詰めていくスタンスがありながら、目標をどう達成していくかという意味では、勝点の積み上げについてシビアな考え方を持たないといけない局面が出てくるかもしれません。
Q、昨シーズンからの比較として、慌てずにボールを運ぶという監督の意図が表われているように感じました。この3試合を振り返って、手応えはいかがですか。
A、今シーズンに関して言うと、準備期間が短かったということもありますが、キャンプのスタートから戦術的なことを常に突き詰めながらコンディションも整えるという状況でした。戦術的なアプローチをしていくなかで、パフォーマンスや表現は現時点では素晴らしいものを発揮してくれています。自分たちのなかでも化学反応が起きつつあります。
Q、選手間の距離が整ったなかで攻守が進んでいるように見えました。選手たちにどのような声がけをしていますか。
A、距離感については、相手の立ち位置によってというところで、それほど大きく深くというわけではありません。自分たちがボールを動かすうえで、プラス1をどう作っていくかというポイントがあり、スタートがゴールキーパーであるということと、スタートからいかに前進して敵陣に近いところで作っていくか、ということはトレーニングの中で共有しながらやっています。立ち位置をとった時に、誰がスペースを埋めるかや、相手の誰が出てくるからウチの誰が入るのかということは、一般的な理念に見えるのかもしれません。ただ、行き先はそこではなく、自分たちのスタイルというレベルまで持っていきたいです。バランスがすべて整っているということもいいですが、相手が対応できない形も少しずつ生まれ始めているので、そこを選手がしっかりと理解して整えてくれています。
Q、今シーズン初のスタメン出場となった橋本拳人選手の評価をお願いします。
A、橋本拳人選手については言うことはありません。本当に素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれました。
Q、尾谷ディヴァインチネドゥ選手のメンバー選考理由と投入する際にどのような指示で送り出したかを教えてください。
A、見てのとおりですが、彼の高さが後から出てくる選手とフィットしたり、今日のようなゲーム展開が予想されるなかで高さがポイントになると思っていました。さらにしっかりとボールをコントロールして握ってくれるということも期待して、いろいろなことを想定した選択ではありました。本来であればあの時間帯よりももう少し前にということも考えていました。あとは終盤にセットプレーがあれば、そこで脅威になるということなども想定していました。指示については、彼もリーグ戦は初出場でトップチームに昇格したばかりなので、細かいことは言わずに「楽しんでやってこい」とだけ伝えました。ただ、ベンチからは、ずっと「戻れ!」と言っていました(笑)。それも言っておけば良かったと思っています。
選手インタビュー
室屋成選手

Q、復帰後初ゴールとなった得点シーンを振り返ってください。
A、試合前から、川崎フロンターレのウィングが特長のある選手が多く、カウンターの時には残っていることが多いと分かっていました。なので、佐藤恵允選手を外に開かせて自分が内側でボールを受けることを意識していました。試合前から話していたことが形にできて良かったです。ですが、あのシーンで言うと佐藤選手がカットインしてきて、少し被ってしまったのですが、チップキックで良いパスを出してくれました。あのシーンを映像で見てもらえれば分かりますが、ゴールを一切見ていなくてボールが浮いていたので、思い切り打つことだけを意識してシュートを打ちました。
Q、2得点だけに留まらず、チーム全体で3点目をとりにいく姿勢がありました。
A、ショートカウンターなどでも相手ゴール前までボールを運ぶことができていました。3点目をとることができればベストでしたが、とれない時間が続いても上手く試合を進めて勝利することができて良かったです。
Q、ただ繋ぐだけのチームではなく、チーム全員がハードワークして戦っていました。
A、マルセロ ヒアン選手も、前線から守備をしてくれています。そういうチームになっていかないと、勝点も積み重ねられません。あれぐらいの守備の意識を全員で持ち、今日のようなプレーを毎試合できるようなチームになっていかなければいけません。
Q、開幕から勝利が続いていますが、どのように今後に繋げていきたいですか。
A、僕たちからすると、ようやく90分間で勝利できたという感覚です。PK戦ですが勝ちながら修正し、今日の試合に臨みました。今日はどうしても勝点3が欲しいと、松橋力蔵監督も言っていましたが、選手たちも90分間で勝つことを意識していたので、実現できてよかったです。こういう試合をしながら、修正しなければいけない部分を修正し、しっかりと勝点を積み上げなら良いチームにしていきたいです。
Q、ここから勝利を重ねていくために、どのようなことが必要になると思いますか。
A、3点目をとれなかったことや、良い時間帯で失点してしまったところなど、修正すべきところはたくさんありました。鹿島アントラーズ戦でも、浦和レッズ戦でも自分たちが修正しなければならいところは多くあったなかで、少しずつですが良くなっている感覚はあります。チームとして勝ちながら修正して良くなっていっているので、もっと高いレベルに持っていきたいです。
マルセロ ヒアン選手

Q、ゴールシーンを振り返ってください。
A、中盤で長倉幹樹選手が競り合ってこぼれたボールを拾って決めることができました。目の前がゴールだったので、ゴールに入れることだけを考えていました。これまでの2試合で点を決められていなかったので、3試合目でようやく決めることができて、少し落ち着きが出てきました。引き続きゴールを決めて、チームに貢献したいです。
Q、背番号9を背負って初のゴールでした。
A、背番号が変わり、FC東京の9番としてゴールを決められたことが嬉しいです。チームのためにもっと決めたいですね。
Q、今シーズンは攻撃だけではなく守備の部分でもチームに貢献しているように見えます。
A、キャンプからプレスのかけ方をチームとして息を合わせる作業をしてきました。それができるようになってきたところです。前線の選手がプレスをかけて、そこで奪えることもあれば、他の選手で奪うこともできています。
Q、マルセロ ヒアン選手が周りの選手のプレスを促すような指示も出すなど、守備でもチームを牽引する姿勢が見えました。
A、自分がいったらみんなで一気にいきたいですし、特にボランチの声がよく聞こえているので、そこからの「行け!」という声に反応してプレスを仕掛けています。
Q、チームは3連勝となります。
A、良い形で3連勝して流れがあると思うので、この流れを継続させられるように続けていきたいと思います。
Q、前線でボールを収めて、味方が上がってくるタメを作るようなプレーが多く見られました。
A、今日は、何度かそのような場面があったと思います。自分のところでボールをキープできるとチームがすごく落ち着きますし、良い形でボールを収めてチームを救うことができたと感じています。

