マッチレビュー
鹿島アントラーズとの開幕戦に続いてホーム連戦となる明治安田J1百年構想リーグ第2節。雪が舞い散る天候となった前節とは異なり、温暖な環境で浦和レッズを迎え撃つ一戦はスタートダッシュの成否にかかわる重要なゲームとなる。とはいえ、決して先を見過ぎることなく、目の前の一戦に集中して一つずつ勝利を積み上げていくことを大切にしていきたい。
東京のスターティングイレブン、ベンチ入りメンバーともに鹿島戦とまったく同じ陣容。ゴールキーパーにはキム スンギュ選手を起用し、最終ラインは右から室屋成、アレクサンダー ショルツ、稲村隼翔、長友佑都の各選手が並んだ。中盤は高宇洋選手と常盤亨太選手がボランチでコンビを組み、アタッカーは右に佐藤恵允、左に遠藤渓太の両選手を起用。最前線はマルセロ ヒアン選手と長倉幹樹選手が2トップを編成した。
「攻守に主導権を握って戦いたい」と話してきた松橋力蔵監督の狙いどおり、アグレッシブにプレスを仕掛け、ボールを大切にしながら臨機応変に鋭い攻撃を織り交ぜて相手ゴールに襲いかかりたいところ。PK戦を制して勝点2を手にした前節に続く連勝をめざす一戦は、15:03にキックオフを迎えた。
1stHALF—主導権を握るもノーゴールで折り返す

積極的なサッカーを展開したい東京は開始早々、立て続けにコーナーキックを獲得すると、そのこぼれ球に選手たちが連動したプレスを仕掛けて相手陣内に押し込み、立ち上がりから意欲的なサッカーを展開していく。前半5分には相手コーナーキックから一気にカウンターを発動。複数選手で縦方向へ鋭く攻め込んでいくが、高選手のラストパスに抜け出したヒアン選手のトラップが長くなってしまい、決定的なシーンを作り出すには至らない。
その後も室屋選手、佐藤恵選手が右サイドで連携してペナルティエリアの脇を突く攻撃が機能。流れるようなコンビネーションで何度も好機を生み出していく。前半8分には室屋選手の内側から縦へ飛び出した佐藤恵選手が逆サイドにフワリとした折り返しを供給。ここに走り込んだ遠藤選手が頭で合わせたが、これは相手ゴールキーパーの正面に飛んでしまいネットを揺らすことはできなかった。
序盤から試合を優位に進めた東京だったが、前半10分に相手の右フリーキックからゴール前で柴戸選手に押し込まれてしまう。だが、ここでVARのサポートが入ると、約8分間に及ぶ長い検証の結果、オフサイドが認められてノーゴールに。気を取り直して東京のフリーキックで試合が再開した。
2トップと両アタッカーのプレスにボランチが連動し、チーム全体もコンパクトな陣形を保ちながら主導権を握る東京。相手のプレスを回避するパスワークを見せながら、折を見てスピードアップを図る攻撃を狙っていく。前半29分にはヒアン選手が右サイドを力強く突破して横パス。これに並走していた佐藤恵選手がワントラップから右足シュートを放ったが、ボールは惜しくもゴール左に外れてしまった。
チームとして掲げるスタイルを攻守に表現した前半、戦う姿勢をベースにアグレッシブなサッカーを披露したが、7分間と表示されたアディショナルタイムでも試合は動かず前半終了。ビッグチャンスにつながりそうなシーンは多く生み出していただけに、アタッキングサードのコンビネーションと精度に課題を残して後半に折り返した。
2ndHALF—山田の劇的同点弾でPK戦に持ち込み連勝

何とかして浦和の堅い守備をこじ開けたい後半、東京が高い位置でプレスを仕掛けてボールを奪うが、さらに浦和が素早いネガティブトランジションで対応し、立ち上がりは激しく攻守が入れ替わる展開に。浦和がサイドから攻め込んで逆サイドにクロスボールを供給する形を増やせば、東京はセットプレーの流れからから押し込んでゴールを狙っていく。
後半22分にはドリブルで持ち上がった長倉選手がグラウンダーのミドルシュート。相手ゴールキーパーに防がれたこぼれ球を遠藤選手が狙って飛び込んだが、再び西川選手にセーブされてしまった。
お互いに相手の隙を突こうとする状況が続いた後半22分、先に動いたのは“力蔵トーキョー”だった。遠藤選手に代えて前節も途中出場でチャンスに絡んだ佐藤龍之介選手を左アタッカーに投入し、ボランチの高宇洋選手から橋本拳人選手にスイッチ。ピッチに変化をもたらすことのできる両選手に状況打開を託した。
球際のバトルで一歩も引かない東京。後半30分には攻め込んだところからカウンターを食らいかけたが、佐藤龍選手が猛然とプレスバックしてスライディングでカット。ノーファウルでボールを奪い返して再び東京が攻勢に出る。
良い守備から良い攻撃に結びつけようとしていた東京だが、後半33分に一瞬の隙を突かれてしまう。右サイドからクロスボールを許すと、中央で跳ね返したボールが渡邊選手に渡ってしまい、右足でミドルシュートを打たれて失点。ブロックに入った橋本拳選手に当たってコースが変わる不運もあり、悔しい形で先制点を奪われてしまった。
これにすぐさま東京ベンチが動く。長友選手、佐藤恵選手に代えて橋本健人選手、山田楓喜選手がイン。スペシャルな左足を持つ両選手を送り込むと、続く後半39分にはヒアン選手を仲川輝人選手にチェンジ。攻撃に変化を加える采配で反撃を期すことになった。
細かくボールをつなぎながら浦和陣内へ攻め込んでいく東京だが、リードを奪ってしっかりと中央を固める浦和守備陣を崩し切ることができず、なかなか決定的なシーンを生み出せない。
そして6分間の後半アディショナルタイム、ついに青赤が相手守備網を打ち破る。立役者となったのは、途中出場した二人のレフティだった。90+3分、左サイドを橋本健選手が縦へ力強く持ち上がって左足でクロスボールを送ると、逆サイドで待ち構えた山田選手が相手選手の背後から巧みに体を入れてボールをトラップすると、ボールの落ち際で得意の左足を一閃! 青赤ファミリーが待つゴールに気迫のボレーシュートをねじ込んで試合を振り出しに戻した。試合はこのままタイムアップ。90分間では決着がつかず、試合は2試合続けてのPK戦へともつれ込むことになった。
ホーム側のゴールを使用して行われることになったPK戦。二人目の中島選手がバーに当てて外した浦和に対して、東京は全員が成功。最後は佐藤龍選手が鹿島戦に続いて豪快に右足で蹴り込み、今節もPK戦の末に勝点2を獲得してホーム2連戦を見事に連勝で飾った。

松橋力蔵監督インタビュー

Q、試合の総括をお願いします。
A、前節とは逆の流れというか、最後は追いついて勝点2をとれたことは非常に評価できる部分だと思っています。前半、序盤は良いテンポではありましたが、最後のクオリティのところ、最後の3分の1のエリアでの形にとらわれ過ぎて、最初のシュートになかなか繋がらなかったところは惜しかった部分でした。後半は流れが少しずつ浦和レッズに向いたなかで、ボールのとりどころでのアプローチを躊躇してしまった部分があるのかな、と。そこからのセカンドボールを拾われて、ただし最後はしっかりとブロックにも入っていながら、それが入ってしまったことは非常に残念です。この試合に向けて準備をしてきたことは表現ができた部分もありますが、まだまだ質の部分や関係性の部分はもっと上げていかなくてはいけないと思います。
Q、前節とスターティングメンバーが同じでしたが、試合を見ていると交代で出る選手たちが流れを変えられる選手だと思います。これからスタメンを変更するなどのアイディアはお持ちでしょうか。
A、もちろん、ここからどういう編成になっていくかは、いろいろな形が出てくるとは思うのですが、本当に“控え選手”というわけではなく彼らには常に“ゲームチェンジャー”であってほしいと。試合に入った時にはそれぞれに自分の良さをしっかり出してほしいことと、リハーサルでやっていることを意識したなかでの良さを合わせて出すことが勝利に結びつく近道だと話をしています。そのなかで彼らが非常に良い働きを2試合ともしてくれています。今後はまた相手を見ながら、しっかり考えていきたいと思っています。
Q、PK戦で2連勝ですが、順番を少し変えただけで、あまり変えずに10本すべて成功という部分の受け止めと、2連勝でも勝点は4となっている今シーズンのレギュレーションについて考えていることを教えてください。
A、まずPK戦に関しては、良い結果を手繰り寄せてくれていると思っています。順番に関しては、この2試合で大きく変わっていないこと、また交代カードの切り方も似ている部分もあり、攻撃のセットプレー担当コーチが指名しています。同じであれば相手も研究してくる部分はあると思いますが、読まれていても、それをしっかりと決め切るということがすごく大事な部分で、そこは評価できる部分だと思います。このレギュレーションのなかでいかに勝点を積み上げていくかという点で、今のPK戦の話もそうですし、試合がどう転ぼうが勝点を積み上げて自分たちの目標に近付けるということが大事だと思います。レギュレーションがどうこうというよりは、試合の流れのなかで勝点をどう積み上げていくのかをどのように判断するかというところでは、終盤の戦い方も考えなくてはいけない部分が出てきます。たとえば相手がずっと良い状態、相手の攻勢で、我々が劣勢という場面で、ここで勝点2を拾うために、もしかすると守備のことをしっかりと意識した戦いをしなくてはいけなくなるかもしれませんし、自分たちの信念は曲げてはいけないとは思いますけれども、手法は柔軟に、どう勝点を積み上げていくか。それをどう判断していくかという可能性はあると思います。
Q、相手をうまく分断して、とくに前半はほとんど相手に攻めさせなかった。そういった守備面での評価はいかがでしょうか。
A、相手の特長を踏まえて、時崎悠コーチを中心にチームとして落とし込んでいる部分が非常に明確に出ていると思います。ただ、失点の部分は少し曖昧になってしまった。もちろんゲームのなかでは全部パーフェクトにはいかないにせよ、もし相手に優位性をとられたとしても流れを切ることができずにセカンドボールを拾われてシュートを打たれてしまった。なぜそうなったのかというところは詰めていく必要があると思います。ですが、2試合とも守備の面では非常に評価できるゲームをしているとは思っています。
Q、追い付いたシーンは途中交代の、しかも新加入の左利きの二人からでした。とくに山田楓喜選手について、あらためて評価を教えてください。
A、独特なリズムを持った選手というのもありますし、キックの精度も非常に高い。あの時間帯に入ることによって、我々がセットプレーでの優位性が高まる可能性もありますし、ゴール前でのフリーキックがあれば得点をする可能性も高まる。そのなかで、途中から入ったサイドバックの橋本健人選手のクロスボールは狙い通りだったかどうかは分かりませんけれども、そこを相手よりも先に予測して到達点にしっかりと入って、あのファーストタッチを決めたことでもう決まった。そのクオリティをゴール前で出せるということは、彼が冷静かつ精度の高いプレーを持っている証でもありますし、それがしっかりと発揮されたゴールだと思います。彼の働きは2試合とも非常に評価しています。
選手インタビュー
山田楓喜選手

Q、ナイスゴールでした。ゴールを振り返ってください。
A、クロスが入ってくる時に、自分は突っ込むというよりは、ディフェンスラインの一個手前にこぼれていくのをずっと狙っているので、そこにボールがきて、少しトラップミス気味ではありましたけど、そのミスをプラスに変えられたかなと思いますし、しっかりミートできて良かったなと思います。
Q、ディフェンダーの裏にいて、少し隠れている状態から前に出てきてトラップしました。イメージ通りですか。
A、もう感覚です。何も考えていないです。
Q、決めた時の心境はいかがですか。
A、もう少し早くに点がとれていれば逆転もできたかなと思いますし、あのタイミングで、同点に追い付けたことはすごくプラスです。勝点0 が勝点2 になったというのはすごくプラスでしたが、勝点3をとりたかったというのが正直なところです。でもこうして自分のゴールで勝点0から勝点2 にできたことは、これから優勝争いをしていくためにも必要だと思うので、それは良かったと思います。
Q、決めた瞬間、結構感情が昂っているような感じもありました。
A、いつもあんな感じです。
Q、結構煽っていましたね。
A、逆転しにいこうとしていたので、もっと盛り上げるためです。
Q、アシストした橋本健人選手が、普段からマイナス気味で左足に合わせるようにしていると話していましたが、その感覚や目線合わせはどうでしたか。
A、橋本健人選手があそこに蹴るというのは自分も知っていたので、長友佑都選手がいる時よりは重心がちょっと後ろに自分も構えているので、その特徴を理解しながら入っていけたことがゴールにつながったと思います。
Q、移籍後初ゴールです。ようやくチームの一員になれたという感覚でしょうか。今日のゴールをどうとらえていますか。
A、今シーズンはこのハーフシーズンで二桁以上とずっと言っているので、最初の1点に過ぎないですし、最終節が終わる頃にはもっとゴール数も増えて、“山田楓喜、山田楓喜”になっていると思うので、その1本目に過ぎません。まだまだ点をとって、アシストしていきたいと思います。
Q、PK戦ですが、開幕戦の時は右隅に決めましたが、今日は何を意識して蹴りましたか。
A、決めるつもりで蹴りました。PKで言うことはないですが、自信満々でした。
Q、メンタルはやはりPKを蹴るうえで重要なポイントになりますか。
A、自分に自信があれば、しっかり蹴り込めると思います。メンタルというより自信です。自信があればPKは優位に立てるのではないかと思います。
Q、ゴールの後は大声援で、ファン・サポーターにもかなり受け入れられているのではないですか。
A、1試合目、2試合目で少し良いプレーをしただけなので、まだこんなものではないというのを見せつけていきたいと思います。もっとチームが一体となって、もっと良いサッカーができると思うので、自分に限らずチームとして強くなりたいと思います。
Q、試合後にファン・サポーターへの挨拶の際に“シャー”の声がけがありました。
A、90分で勝利して勝点3をとってからやりたいと思っていましたし、勝点3をとってからやろうという声もあったので、「確かに」と思って、今日はやめました。
橋本健人選手

Q、前節に続いて途中出場でした。何を意識して試合に入りましたか。
A、負けている状況だったので、特別大会のレギュレーションで追い付ければ勝点2をとることができるチャンスがあったので、得点を奪うことにフォーカスして試合に臨みました。まずは1点をとることだけを考えてプレーしていました。
Q、得点をアシストした場面を振り返ってください。
A、持ち上がった時にクロスボールを上げることができる状況になりました。前回の反省もあって、空中戦では相手選手の方が強く、実際にそのシーンの5分前ぐらいにもクロスを上げた時に跳ね返されてしまっていました。なので、いつもはディフェンダーとゴールキーパーの間を狙ったりしますが、工夫やアイディアが必要だと思い、これまでとは違うところを狙いました。山田楓喜選手が左利きであのようなポジションに入ってくることは練習からもやっていたので、そのスペースを狙ってクロスボールを上げました。かなりスピードもあるボールを入れられて、得点につながったのでよかったです。
Q、2戦目にして数字を残しました。一つ安心したのではないでしょうか。
A、全然していないです。結果が出る時は出るべくして出る時もあれば、偶然出る時もあります。一つ数字を残しただけで、一喜一憂していては自分のパフォーマンスが積み上がっていきません。どんな時も、やるべきことをやり続けていきます。今日は勝点2を積み上げるための最低限の仕事はできましたが、自分はサイドバックとしてスタメンで出場して、勝点3を獲ることを目標にしています。チームとしてもタイトルを獲ることが目標だと考えれば、開幕からPK戦でしか勝てていないので、90分で勝ち切ることが重要です。なので、安心などの感情は一切ないです。
Q、長友佑都選手とのポジション争いをしていますが、橋本健人選手としてはどのようにとらえていますか。
A、加入する前から分かっていたことでした。ただ、加入してから思ったことがあって、長友佑都選手が本気で5度目のワールドカップ出場を狙っているタイミングで、日本国内ではナンバーワンの選手で、その選手と本気で争える選手は限られているなかで、今このタイミングで同じチームにいて競争できていることは本当に幸せなことです。自分の成長にしかならないですし、日々、長友選手から盗めることは盗めるようにアンテナを張りながら生活しています。


