逆転で掴み取ったトップチーム昇格
ハングリー精神で青赤の歴史を塗り替える
MF 38 田中希和
2026シーズンの明治安田J1百年構想リーグに臨む全青赤戦士を紹介する『PLAYERS FILE 2026』。果たしてハーフシーズンの特別大会を控えた選手たちはどんな想いを抱き、いかなる覚悟で一年に臨もうとしているのだろうか。
FC東京サッカースクール・アドバンスクラスから小平グランドに通い、青赤で育ってきた田中希和が今シーズンから念願のトップチーム昇格を果たした。その道のりは思いがけず険しいものとなり、危機感に苛まれながら懸命に成長を遂げ、大逆転で勝ち獲った“天然芝行きの切符”でもあった。彼が持つ強烈なハングリー精神は一見の価値ありだ。

2025年4月19日、クラブ史上初めて味の素スタジアムで開催されたFC東京U-18の公式戦。JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025 EAST第3節、青赤が市立船橋高校を“本拠地”で迎え撃った試合だ。
「次はプロとしてここ味スタで共に戦おう」。そう掲げられた横断幕に応えて記念すべき一戦で2ゴールをマークした田中希和が、今シーズンから晴れてトップチームに昇格。小平の人工芝ピッチから細い通路を隔てた場所に位置するあこがれの天然芝ピッチに降り立つことになった。
昨シーズンの開幕前に行われたトップチームの沖縄キャンプに呼ばれず、その悔しさをバネにU-18で評価を積み重ねた先の逆転昇格だった。沖縄に呼ばれるだろうと楽観視していたところに厳しい現実を突きつけられ、トップチーム昇格の可否が分かれる7月にまでに残された時間は約半年。「このままではやばい」という危機感に苛まれた。
だが、災い転じて福となす。これが功を奏した。今、自分にやれることをやる──シンプルに考え方を整理した結果、トップ下のポジションを任されてプレミアリーグで7得点。「自分がチャンスを作って、自分が決める。その形が安定してきた」という。追い込まれたことでプレースタイルが確立した。
夏にトップチーム昇格を決めた後も、田中の気は緩まなかった。10月26日、栃木シティとの練習試合で2本目に出場した田中は、0-1のビハインドから同点に追いつく貴重なゴールを決めた。素早く攻守を切り替える栃木シティに苦しめられるなか、田中を含めたFC東京U-18の選手を多く含んだ若くてフレッシュなメンバーは、相手と互角に渡り合う敏捷性を見せ、ゲームをひっくり返すのにあと一歩という状況まで押し返した。
しかし試合後、クラブハウスでベランダに腰掛ける田中の表情は厳しかった。
「点をとれたのは良かったんですけど、自分がこだわりたかったのは、その点をとったあとに自分がもう1点を決めて逆転すること。そこが心残りでした。同点にしたあと、すぐにボールを抱えて『もう1点いくぞ』と周りを巻き込むくらいの気持ちでやるべきだったなって。終わってからずっと反省していました」
トップチームの一員として迎えた2026年も田中の顔は引き締まっていた。「キャンプでめちゃめちゃアピールするしかない」と話していたとおり、沖縄糸満キャンプの練習試合で有言実行を果たす。シーズン初のトレーニングマッチとなった名古屋グランパス戦で、トータル2点ビハインドの状況で3本目に出場し、短い出場時間で一矢報いるゴールを決めた。その反骨心は栃木シティ戦のようだった。
「誰よりもゴールにどん欲な気持ち。ゴールに向かう姿勢やプレーを見てほしい」。その気持ちが劣勢を覆す。
青赤の歴史を塗り替えるのは、このハングリー精神の塊なのかもしれない。
(文中敬称略)
Text by 後藤 勝(フリーライター)

