歓喜をもたらす変幻自在の左足
『セットプレーで10得点以上に絡む』
MF 71 山田楓喜
2026シーズンの明治安田J1百年構想リーグに臨む全青赤戦士を紹介する『PLAYERS FILE 2026』。果たしてハーフシーズンの特別大会を控えた選手たちはどんな想いを抱き、いかなる覚悟で一年に臨もうとしているのだろうか。
まさに“伝家の宝刀”とも言える高精度の左足を誇る山田楓喜。重ねてのラブコールに応える形でFC東京への完全移籍を決めた。年間3本の直接フリーキックを叩き込んだ実績を持つレフティは、“力蔵トーキョー”にいかなるプラスをもたらすのだろうか。

かつて期限付き移籍ながら東京ヴェルディに身を置き、“決戦”の熱狂を肌で知るからこそ、心中はざわつき、揺れ動いた。「正直、すごく悩みました」。緑色のユニフォームに愛着を抱いていた自分は受け入れてもらえるのか。認めてもらえるのか──。
その胸中に渦巻く迷いを打ち消してくれたのは、松橋力蔵監督の熱意と真っすぐなメッセージだった。
「監督から『おまえの左足、特長的なプレーは絶対にフィットする』と本気で伝えられました。自分の価値を上げるためにも、次に向かうステップが必要だなと。FC東京で輝けると思ったのが、移籍を決意した一番の決め手でした」
さらなる高みをめざしたいという渇望と、東京Vとの一戦で生まれる濃密な空気さえも自分の力に変えたいという向上心。覚悟は固まり、腹を括るのに時間はかからなかった。
最大の特長は左足から放たれるキックの精度に他ならない。東京Vに在籍した2024シーズンにはリーグ最多となる3本の直接フリーキックを叩き込んだ。絶対的な自信に裏打ちされた武器とあって、「直接狙える位置であれば、ほぼほぼ入るかな」とこともなげに言い切る。
昨シーズン、FC東京の直接フリーキックでの得点はゼロ。セットプレーからの攻撃が大きなチャンスにつながることも少なかった。これまでのため息を歓声へ転化させる変幻自在の左足は、勝利に欠かせない最高のピースとなるはず。山田が敵陣でボールをセットした時、スタジアムのボルテージは否応なく高まり、左足から放たれた弾道はゴールへ向かって描かれるだろう。
「自分の左足は見ていて面白いかなと思う。直接フリーキックもコーナーキックも自信しかない。チャンスがあれば、セットプレーからの得点を増やせると思う」
パリ五輪アジア最終予選を兼ねた2024年5月のAFC U23アジアカップ決勝。カタール・ドーハで行われたウズベキスタン戦では、後半アディショナルタイムにもかかわらず足を止めずに駆け上がり、得意の左足シュートを射抜いて決勝ゴールを突き刺し、優勝を勝ち獲った。京都サンガF.C.で培ってきた泥臭く攻守でハードワークする高い強度のプレースタイルを土台に、美しく、華やかな花を咲かせるような左足のキックは、どんな相手に対しても鮮烈で圧倒的だ。
新天地で見据えるのは、10点以上のゴールに関与すること。「ゴール前、ペナルティエリアに入ったら、自分の左足はすごく活きてくるし、得点は増やせると思う」と自信は揺らがない。
彼が誇る“伝家の宝刀”はタイトル獲得への切り札となりうる。山田楓喜が歓喜の放物線を描き、その左足でチームを頂点へと導く。
(文中敬称略)
Text by 松岡祐司(中日スポーツ)

