ピッチ内外で精神的支柱に
歴史を変えるタイトル獲得をめざして
DF 2 室屋成
2026シーズンの明治安田J1百年構想リーグに臨む全青赤戦士を紹介する『PLAYERS FILE 2026』。果たしてハーフシーズンの特別大会を控えた選手たちはどんな想いを抱き、いかなる覚悟で一年に臨もうとしているのだろうか。
2025シーズンの5月、約5シーズンぶりの青赤復帰を果たし、リーグ後半戦巻き返しの立役者となった室屋成。球際の強さ、勝利への意欲などドイツで培った経験を存分に還元し、チームメイトの意識をも変えた。そんな背番号2が見据えるのは、東京が常勝軍団となる姿。歴史を変えるべく戦おうとする彼の想いに迫った。

圧倒的な闘志で一時は降格圏に沈んだチームを救い、小平でトレーニングに励むチームの基準を大きく引き上げた室屋成。昨シーズン序盤に苦しんでいた姿を吹き飛ばし、青赤のユニフォームがピッチで躍動した。それを背中で引っ張り、戦う姿勢をチームに伝播させたのが、東京に戻ってきた背番号2だった。
ドイツでの戦いに区切りをつけて昨シーズン6月に青赤復帰を決めると、チームは時を同じくしてシステムを3バックから4バックに変更。当初は右サイドバックで強烈な存在感を見せ、粘り強いディフェンスと果敢なオーバーラップで攻守に貢献。そしてシーズン途中からは左サイドバックとして全体のバランスをとり、周囲の良さを引き出しながら球際のバトルでチームに安定感をもたらした。昨シーズンのリーグ戦、室屋が出場した試合は8勝5分4敗の成績。17試合で勝点29をゲットし、チームは残留争いから脱して最終的に11位でフィニッシュした。
本人が「戦う姿は見せられたかな」と振り返ったとおり、明らかにチームの戦いに変化が生まれた。ドイツで手にしてきた戦う姿勢と勝利への意欲が周囲に伝わり、チームメイトも口々に「成くんがトレーニングの基準を上げてくれた」と評していた。伝わったものは確実にある。だからこそ、ここから成し遂げたい目標は大きくなる。
とにかくチームファーストの男だ。「(帰国後は)個人的な目標はそこまで立てていなくて、本当にチームが勝つために何ができるかを特に考えてきた。もちろん毎試合高いパフォーマンスを発揮したいとは思っていますけど、やっぱり勝つために何ができるかを常に考えてプレーしたい」と復帰後の意識について語る。勝つために周りの空気をしっかりと見定め、多くを語らず、背中で多大な影響をもたらすことができる。それが室屋成という選手なのだ。
先週まで行っていた沖縄糸満キャンプ。名古屋グランパスとのシーズン初の練習試合に臨んだチームには、左腕に腕章を巻いて先頭で入場してくる彼の姿があった。
「今年で32歳になりますし、試合だけではなくてピッチ外でもしっかりとチームをまとめなければいけない年齢ではあると思う。ただ、プレースタイルや取り組むべきこと、自分が果たすべき役割は変わらないので、(キャプテンマークを)巻くかどうかより、常にそういう気持ちを持ってプレーしたい」
思えば昨シーズン5月末の加入リリースで、室屋は「東京の歴史の大きな一部になれるよう信念を持って戦います」と語っていた。あらためて、その真意を聞くことができた。
「東京は本当にタイトルを獲らなければいけないクラブ。僕はそのために(東京に)帰ってきた。みんなで取り組んでいるプロセスをチーム全員が信じて、リキさん(松橋力蔵監督)のことも、クラブやチームのことも全員で信じて戦える組織にならないと優勝には届かない。一つタイトルを獲ったら勝てるチームになっていけると思うけれど、何よりその一つ目が難しい。そこを何とか自分が東京にいる間につかみたいし、それが自分の人生にとってもすごく大きなものになると思う。自分はクラブが掲げるプロセスに賛同して東京に戻ってきた。だからこそタイトルを獲りたい」
戦う姿勢を見せるのは最低限。そこからいかに自分とチームが持ち味を発揮し、勝負強く勝点を積み上げていけるかだ。「優勝できるのは1点差で勝ち切れるチーム。難しい試合で勝利を手にするために、練習からみんなで要求し合えるチームになっていきたい」と語る室屋は、「攻撃の部分でもっともっと厚みを加えていきたい」と意気込む。
精神的支柱として、チームを引っ張るリーダーとして、そして一人のサイドバックとして。クラブの歴史を変えるために、室屋成が強烈な覚悟を胸に青赤を高みに導こうとしている。
(文中敬称略)
Text by 青山知雄

